2017.11.24 「イスラム国(IS)」イラク・シリアで壊滅(3)
―生き残り組は投降、分散、再建不可能

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 「イスラム国(IS)」はついに壊滅した。最終段階まで、シリア、イラクで抵抗し続けたISの指導部と戦闘員たちは、おそらく数千人。その大部分が、都市で地下壕を掘り、包囲作戦に抵抗し続けたが、地上の戦闘、空爆、砲撃で死亡するか、投降した。両国は投降者の総数は発表していないが、イラク当局者は多くが死刑になると予想している。しかし、最終段階の前に、ISの中核だった旧イラク軍とフセイン時代の支配政党バース党の幹部級、宗教指導者らは、イラクのモスルからシリアのラッカへと逃れ、さらにラッカがクルド人勢力に完全包囲される前に逃げ出し、一部はイラクに戻って協力者、近親者のもとに潜んだと思われる。また一部はトルコに向かい、さらにエジプトのシナイ半島やリビアの「イスラム国」を名乗る武装集団の下へ、一部はアフガニスタンにまで逃げたとみられている。
 このうちリビアでは、16年1月以来、中部の石油施設や地中海岸の都市シルトの港湾部などを「イスラム国」を名乗る武装勢力が占領したが、リビア暫定政権下の政府軍が米軍の支援爆撃を得て反撃し、6月には奪回している。
 またエジプトのシナイ半島では、2011年の民主革命以来、国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派が活動していたが、14年のクーデターで政権を握ったシシ政権に対して、「シナイ半島のイスラム国(IS)」と改称して、テロ攻撃を開始した。以後、政権側は軍を動員して同組織の壊滅に努めているが、(IS)のテロ攻撃が繰り返されている。
 また、アフガニスタンでは、東部ナンガハル州に、「イスラム国(IS)」が16年以来拠点を築き、首都カブールなどへのテロを繰り返し始めた。17年に入って、発足間もないトランプ政権下の米軍はナンガハル州のIS拠点を空爆し、地下深くまで破壊できる巨大爆弾を使用してIS側に打撃を与えたが、その後もISのテロは繰り返されている。
 さらに、フィリピンでもミンダナオ島に入り込み、同島のイスラム武装勢力に支援を得て根拠地を築き始めたが、政府軍がいち早く鎮圧作戦を開始して、ほとんど絶滅した。
 こうして列挙すると、ISの勢力は中東からアフガニスタンさらにはフィリピンへ、中東から北アフリカ、中央アジア、東南アジアに勢力を広げているように見えるが、決してそうではない。ISは豊富な資金力によって、各地のイスラム過激派に接近し、支援して「イスラム国(IS)」を名乗らせるが、実態は各地の紛争の歴史的、政治的経過、民族性の違いに阻まれ、一体化、指揮命令系統を築くことは困難だった。
 まして現在、イラク、シリアでのIS本体の巨大な資金源はなくなり、各地のISを名乗るイスラム過激派組織に逃げ込んでも、主導権を握るどころか、合体することもできないだろう。バグダーディが死亡して、彼の卓越したカリスマ性に導かれた「イスラム国(IS)」の再建はできるはずがない。(続く)
2017.11.23 日本政治の劣化と退廃を象徴する出来事(事件)だった、小池都知事の希望の党代表辞任が物語るもの
                 
広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)
                  

 小池東京都知事が希望の党代表を突如辞任した翌日、一連の「小池騒動」を報じた11月15日の各紙朝刊には、「投げ出し」「丸投げ」「風頼み」「身勝手」「無責任」「不信」「分裂」「瓦解」など、最大級の侮蔑を意味する言葉が紙面に躍った。小池氏が臨時記者会見を開いて希望の党結成宣言と自らの代表就任を表明したのはついこの間の9月25日のこと、それから僅か50日で小池氏は代表辞任の理由を何一つ語ることなく国政の舞台から突然消えた(身を隠したのである)。

 一方の主役(あるいは脇役)だった前原民進党前代表もそれ以降、ぱったりと姿を見せなくなった。地元の京都ではいまや居酒屋でしか話題にならないような存在となり、「馬鹿な奴!」との巷の声も最近はだんだん聞かれなくなってきている。前原氏はもはや京都市民にとっては「過去の人」となり、誰も関心を持たなくなった。唯一張り切っているのは、希望の党共同代表選に手を挙げ、国対委員長に就任した泉氏ぐらいのものだ。もっともこちらの方は、この前の衆院補選で「野党統一候補」と勝手に思い込み、泉氏に投票した革新系有権者の方が臍(ほぞ)をかんでいる。でも今さら悔やんでも遅い。

 余談はさておき、小池氏の電撃辞任から数日経った現在、朝日新聞などでは「小池騒動=民進分裂劇」の検証が始まっている。目下連載中なので結論がどう落ち着くかは分からないが、少なくとも出だし部分はこれまでの予想とそれほど違わない。要するに、全ては前原氏が民進党代表に選出された9月1日から始まり、小池新党立ち上げの匂いを嗅ぎ取った前原氏が「民進党解体シナリオ」を描いたときから事態は動き始めたのである。

 「民進党を解党したい。民進の衆院議員は希望の党に公認申請させます」(前原)、「それでいきましょう」(小池)...。朝日新聞19日朝刊の紙面に掲載されたドキュメント記事は余りに生々しい。9月26日深夜、帝国ホテルで持たれた密室会談では、前原民進党代表と小池都知事が神津連合会長(立会人)らの前で密約をかわした。それも、前原氏が民進の100億円超の政治資金(国民の税金である政党助成金)と党職員を提供し、連合は総選挙で「ヒトもカネ」も出すという好条件付きだ。

 おそらくこの時点では、前原氏は人気のない民進に「小池新党」というヴェールをかぶせて党勢を拡大し、実質的には「前原一派=民進右派=連合支持勢力」が党運営を仕切ることで、やがては自らが新党党首としてデビューするという「甘い夢」を描いていたのだろう。だが、こちらの方は小池氏の方が1枚も2枚も上だった。民進や連合の「ヒトとカネ」は欲しいが、リベラル系まで来てもらっては困る、彼らを排除するなら受け入れもいいという条件を出したのだ。

 前原氏はここで第2の決断に踏み切る。「リベラル系排除」という条件を曖昧にしたままで民進両議員総会に臨み、総選挙直前という引き返せない状況の中で、小池条件を口実にして「リベラル系排除」を実行に移す道を選んだのである。それが小池氏の「排除宣言」となり、公認申請時の安保法制容認・憲法改正賛成の「誓約書」提出となった。ここまでは何もかも前原・小池シナリオで事が進んでいた。

 だが、余りにも露骨な「誓約書=踏み絵」に反発した枝野氏らが立憲民主党結成に踏み切り、「排除リスト」が流出するなかで世論の流れが変わって希望の党は急速に失速した。選挙結果はもう繰り返さない。呆れるほどの自民圧勝となり、改憲勢力は自公与党だけで3分の2を超える始末。いったい日本の政治はどうなっているんだと(少数派となった)心ある有権者は嘆いている。

 私は、小池氏の希望の党代表辞任に至る一連の騒動を最近の日本政治の劣化と退廃を象徴する出来事(事件)だと考えている。第1に、それは前原氏と小池氏という政治家の「首相になりたい」という個人的野望のために引き起こされた騒動、すなわち「究極の国政私物化」のあらわれだと言うことだ。井戸塀政治家などは望むべくないにしても、国民と政党を自らの野望のためには容赦なく足蹴にしても構わないという政治リーダーが今や堂々と登場する時代になったのである。それをポピュリスト政党というかどうかは別にして、前原・小池両氏がその象徴的存在であることは間違いない。

 第2は、そんな人物をリーダーとする希望の党に1000万人近い有権者が投票したことだ。政党としての理念も理想もなく、政策も綱領も定かでない即席政党に対して1千万票近い大量投票が流れる事態など想像もつかない。だが、それが現実の投票行動としてあらわれるところに、国民の果てしない政治意識の劣化が見てとれると思うのは決してひとり私だけではあるまい。

 第3は、前原・小池両氏の策謀に踊らされた(乗った)民進党国会議員の愚かさだ。自らが所属する政党の解党提案に対してほとんど議論らしい議論もなく了承し(枝野氏らも同じ)、事態が明るみに出るにつれて右往左往する有様は、これが野党第1党の姿かと目を疑わせる。加えて、小池氏らの「誓約書」に署名して希望の党衆院議員に当選したにもかかわらず、その直後から安保法制は容認できないとか、憲法改正には反対だなどと言い出す人たちにも呆れる。要するに、当選するためにはどこの政党に乗り換えても構わないと考える「渡り鳥議員」がそこにいるだけで、そのことを実践してきた小池氏と体質は寸分も変わらないのである。

 こうした「風見鶏議員」「渡り鳥議員」が様子を見て次々と前言を翻し、民進党が分裂に次ぐ分裂を重ねているところをみると、今後の政局がどうなるかは「一寸先が闇」としか言い様がない。枝野氏ら立憲民主党が軽々に野党再編に組みしない、野党共闘に乗らないと言っているのは、民進党が犯した過ちの大きさを痛感しているからではないか。いずれにしても、これからの日本の政治は当分闇夜の中を歩き続けるしかないと私は絶望している。

2017.11.22 「イスラム国(IS)」イラク・シリアで壊滅(2)
バグダーディのカリフ国家樹立宣言も4年間で終わる

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 シリアのラッカ、イラクのモスルを最大拠点として、イラク人のバグダーディが自らをカリフ(最高権威者)として樹立を宣言したイスラム宗主制国家は4年足らずで崩壊した。
 バグダーディはすでに死亡したと思われ、後継者もいない。
 2003年のイラク戦争で、米軍を中心とした多国籍軍がフセイン政権を打倒、イラクを占領して以来、占領支配と、その後も駐留米軍によって支えられてきた11年にわたるマリキ首相のシーア派偏重統治のもと、スンニ派のフセイン政権残党による反米、反政府反乱が広がった。それに結び付き反米テロを続けてきたイスラム過激派組織「イラクのアルカイダ」(AQ)は米軍撤退完了の2010年にバグダーディが後継者に就任、イラク中部のファルージャなどスンニ派多数の都市を根拠地にして組織を強化した。そのころAQは「イラクとシリアのイスラム国」(ISI)と改称した。すでに、イラク国内だけでなく、シリアはじめ国境を越えた勢力拡大を目指していたのだ。
 2011年、シリアでアサド政権と反政府民主化勢力の内戦が始まるとISIはシリアに幹部と戦闘員を派遣、現地で若者たちを2,3千人集め、武器を与え、訓練を施して、政府軍支配が弱体のシリア東部で支配地域を広げていった。2013年、ISIは「シリア北東部の中心都市ラッカを占領、「イラクとアッシャムのイスラム国」と改称した。アッシャムとは、パレスチナからレバノン、ヨルダン、シリア、イラクに至る地中海東部沿岸地域を包括する地域名。ラッカはシリア北東部の産油地域にあり、「イスラム国」は大きな資金源を獲得した。「イスラム国」は原油と豊富な古代遺跡の出土品をトルコ経由、国際市場への密売を拡大した。その資金をもとに、アラブ・マグレブ諸国、欧州さらには中央アジア、中国新疆ウイグル自治区まで、イスラム過激派への人的働きかけと、インターネットを通じた宣伝・募集活動を展開。とくに欧州と中東諸国からは、ユーチューブやネット・システムの専門家を集めた。また、武器・弾薬製造、修理の技術者には、旧イラク軍、バース党の残党を活用した。
 そして2014年6月、イラクにシリアから逆侵攻、短期間にイラク第2の都市モスルを占領した。最高指導者のバグダーディの幕僚を構成する旧イラク軍とバース党の残党が、イラク政府軍の弱点とイラクのマリク独裁政権へのスンニ派国民の強い不満を知り抜いていたからこそ、モスルとイラク北部の都市を占領がこれほど敏速にできたのだ。
 こうして、イラク、シリアの広い地域を占領し、樹立宣言をした「イスラム国」(IS)は消滅し、主要幹部は姿を消し、最盛時3万人を超えた戦士たちは、戦闘で死亡したか、イラク軍の捕虜になったか、中東や、北アフリカ、欧州諸国、アフガニスタンなど過激派組織に保護を求めたか、母国に帰国しただけなのか、各国は行方の把握に必死だ(続く)
2017.11.21 護憲の中身を決めるときがきた
                ――八ヶ岳山麓から(241)――
                 
阿部治平 (もと高校教師)

2017年衆院選では、急ごしらえの立憲民主党が気を吐いたけれども、護憲・リベラルとでもいうべき「立憲民主党+共産党+社民党と市民連合」は3分の1に至らず惨敗となった。今後、安倍晋三氏率いる改憲・加憲派はいよいよ攻勢に出る。これに倣って産経・読売系メディアは、テレビ・新聞・インターネット上でいままで以上に強力なキャンペーンを打つことは確実だ。

9条改憲に反対する議論には、おおまかにつぎの四つの流れがあるとおもう。
①改憲せず、日米安保条約は将来破棄する。9条を文字通りに理解して、一切の「戦力の不保持」「交戦権の否認」をつらぬく。急迫不正の主権侵害にはもてる限りの手段をもって抵抗する。
②改憲せず、将来日米安保条約を破棄するのは①と同じ。ただし現行憲法の下でも個別的自衛権があるものとし、急迫不正の主権侵害には自衛隊をもって対抗する。
③日米安保体制を認め、防衛力増強もはかり、将来の改憲を視野に入れる。ただし、新安保法制下の(あるいは安倍政権下の)集団的自衛権・海外派兵を容認するような憲法9条の改定には反対する。
④改憲し、個別的自衛権・専守防衛に厳格に限定した自衛権を憲法に書き込む。すなわち②と同じ論理を改憲によって実現しようとするものだが、憲法9条改定に及ぶので、①②の護憲派にはなかなか受け入れられない。

以上四つの間にはさまざまなバリエーションがあるし、議論も錯綜している。
そこでさきにあげた3党について日米安保体制および自衛隊を含む防衛問題にたいする姿勢を見ると、次のようになる。

立憲民主党は、民進党綱領を引継いで「私たちは、専守防衛を前提に外交安全保障における現実主義を貫く。我が国周辺の安全保障環境を直視し、自衛力を着実に整備して国民の生命・財産、領土・領海・領空を守る。日米同盟を深化させ、アジアや太平洋地域との共生を実現する(立憲民主党綱領2017年10月2日)」という。同党は年内には新綱領をつくるらしいが、これと大きな違いが生まれるとは思えない。
というのは、憲法9条については党代表の枝野幸男氏は、10月9日のBuzzFeed NEWSのインタビュー記事で、「私は護憲派ではない」「いまの日本国憲法が持っている価値観を発展させるなら、改憲は大いにあり」と明言する。同時に「そのことといま憲法9条を変えるべきかどうかは、切り離して考えるべきだ」ともいっている。
結局、さきの衆院選での立憲民主党の公約は下記のようになった。
「専守防衛を逸脱し、立憲主義を破壊する、安保法制を前提とした憲法9条の改悪に反対。領海警備法の制定と憲法の枠内での周辺事態法強化で専守防衛を軸とする現実的な安全保障政策を推進する(10月7日、福山・長妻両氏による)」
立憲民主党は、冒頭の③の路線と見ることができよう。国会を中心にみるかぎり、立憲民主党が改憲反対運動を主導せざるを得ない。枝野幸男代表に揺らぐことなきを祈るのみ。

これと対照的なのは旧社会党である。①で述べたように旧社会党は憲法9条を文字通りに理解し、「非武装・中立」をとなえた。中立とは、米ソ冷戦時代は日米安保体制からの脱却を意味した。急迫不正の主権侵害に対しては、警察力やストライキでこれを排除し国民の安全を図るとした(それでもなおやられたら「降伏」という選択肢もあるといった社会党幹部もいた)。
当時は自衛隊は違憲という主張だったが、委員長村山富市氏が首班となった内閣では「合憲」とした。内閣としては、自衛隊を現下の防衛力とするかぎり、違憲とするわけにはいかないからだろう。
社民党に看板を変えても、政策の大筋は変らなかった。2006年の「社民党宣言」では、違憲状態にある自衛隊は縮小を図り、国境警備・災害救助・国際協力などの任務別組織に改編・解消して非武装の日本を目指す。また日米安全保障条約は、最終的に平和友好条約へと転換させ、在日米軍基地の整理・縮小・撤去を進めるとした。

共産党は1960年代後半から90年代前半くらいまでは、「中立・自衛」を提唱した。自衛とは他国からの侵略から国民の生命と生活を守るという意味である。だから共産党が目指す安保条約廃棄の民主連合政府は、国民の多数の意見の同意があれば自衛隊を解散し、その後改憲して自衛力を再建するとした。
ところが1994年党大会で「中立・自衛」の解釈を変え、社民党と同じく、憲法9条に「先駆的な意義」みとめ、軍隊をもたなくても主権は保てるといいだした。
さらに2015年9月新安保法制が国会を通過したとき、志位委員長は臨時的政府を提案して、日米安保条約は「凍結」、新安保法制は廃止、日本に対する急迫不正の主権侵害に対しては、自衛隊は新安保法以前の自衛隊法で行動すると発言した。当時の山下書記局長も、政党としては自衛隊違憲論は変えないが、反安保連合政府としては合憲という立場で臨むとした。
いまのところ、地方レベルの改憲反対運動の足になるのは共産党である。だが日本には共産主義に対するアレルギーがあるから、これが出過ぎたとき、支持者が減る危険がある。

憲法9条と自衛という二者対立的な論理を統一しようとすれば、社民党以外は複雑でわかりにくい政策にならざるを得ない。この点は、自民党だって同じことだ。敗戦直後の憲法制定議会では吉田茂氏は自衛権を否定したが、やがて警察予備隊をつくり、保安隊に至って「戦力なき軍隊」といい、自衛隊になってからは専守防衛・個別的自衛権を主張した。
安倍晋三政権に至って、「非戦闘地域」とか「駆けつけ警護」とか「後方支援」といった屁理屈をこね、ついには閣議による解釈改憲という奇手を使って自衛隊の海外派遣を正当化した。だがいま安倍晋三氏の願う国家実現のためには、現行憲法の解釈改憲ではもはや限界、改憲は必至という段階に至った。

ところで、従来の改憲反対論には国際的観点が少しばかり欠けていたように感じる。安倍内閣が掲げる新安保法制や集団的自衛権、さらには憲法9条改定などの震源地は間違いなくアメリカである。護憲派は将来アメリカとの関係をどうするか。これを議論しなければならない。
今次総選挙では、安倍政権は国際情勢を上手に利用した。トランプの北朝鮮に対する威嚇と悪罵に同調して対北朝鮮の日米軍事演習をやり、Jアラートを鳴らして作為的に緊張を煽り、北朝鮮の「挑発」と「国難」を宣伝した。
だが「北」が日韓に先制攻撃をかけたら「北」は壊滅する。このことは金正恩委員長は百も承知している。彼の気が触れでもしないかぎり、「北」には攻撃意思はないと見るのが自然である。当の韓国では人々が冷静だというのに、日本では安倍政権ばかりかメディアも、いまだ「挑発」を連発し危機を煽っている。だいたい日本海沿岸に原発をぞろぞろ並べておいて北朝鮮の脅威もないものだ。
中国の習近平政権は、今後もナショナリズムを煽りつつ、軍事力に経済力を加えて勢力を拡大し続ける。国内矛盾が高まれば当然のように尖閣問題も過熱させるだろう。タイミングよくこれがおきれば、安倍政権にとっては願ってもないことである。我々はこれも警戒しなければならない。

今日、改憲・加憲勢力の間に意見の相違がある如く、護憲・リベラルを掲げる人々にもそれぞれ異なった見解がある。なにがなんでも9条を守り戦力は保持しないとするか、自衛隊は合憲だが憲法にはその存在を書きこませないとするか、日米安保を認めるが、安倍政権のもとでは改憲には反対だとするか、それともアメリカから自立した専守防衛の自衛権を憲法に書き込めというか。
もし希望の党の改憲慎重・新安保法制反対の人々までも含めた野党共闘をはかろうとするなら、どのような意見をひっこめ、どこで妥協するか、互いに身を切る努力が必要である。

日本人は、現状が気に染まなくても仕方がないとあきらめがちだ。改憲に反対という人でもかなりが「自衛隊はなくては困るが、憲法9条の改定まではどうかとおもう」という漠然とした気分である。これは韓国の「ローソク革命」に現れた主権者意識とは著しく異なる。我々は運動の中で、この長いものには巻かれる気分をどうしても克服しなければならない。
これに成功するか否かで日本の歴史的方向が決まる。

2017.11.20 タケシ風パロディ:町人国家日本の卑屈な接待外交
盛田常夫 (在ブダペスト、経済学者)

 微に入り細にわたる日本の「おもてなし」は世界に稀にみる美徳だけどさ、これに政治的な魂胆が絡んでくると意味が変わるんだな。政治の世界じゃ、いくら接待にお金をかけたって、外交方針が変わることなんてないんでさ。大げさな接待を準備すれば、逆にその魂胆を勘ぐられるんでね、だからプーチンなんかは、当て付けがましい接待を知っていたから、わざと何時間も遅れて到着したもんね。
 いくら日本食が世界に誇ることができる食文化だと言ってもさ、それを本当に賞味できる外国人なんて、そんなに数がいるわけないんでさ。アングロサクソン系なんぞは、日本人のように、食べることに拘りなんてないんでね、名人シェフが料理したってその価値が分かる人なんて少ないんだよ。文化的素養に欠ける知性のない政治家には「猫に小判」、欧米風に言えば「豚に真珠」ってとこだな。「これだけ接待してんだから、良いことしてくれるよね」というのは日本人にだけ通用する「常識」だね。もっとも、今回は生食を好まないトランプ一家のために、今回は牛肉のオンパレードだったようだがね。

 もっともさ、アメリカに諂(へつら)うだけの外交なら、襟を正して正面から議論する話もないんでさ、せめて日本のおもてなしをたっぷり楽しんでもらって、機嫌を取ろうってことだな。沖縄の基地をどうするのか、日米地位協定をどうするのかって話を正面から切り出す熱い思いなど一欠けらもないから、一国の首相がアメリカの大統領と何を話し合ったのかなんてほとんど話題にならないってわけさ。ゴルフや「銀ぶら」の話、どこのレストランでどんな料理を食べたかって話だけだもんな。公式晩餐会に「ピコ太郎」を招待するなんて、あまりにトランプ一家のご機嫌取りの卑屈な外交で、とても独立国の外交とは言えないね。
 もっとも、安倍さんの頭には独立や自立という観念そのものがないんだよな。単純に、仲良くしていれば、「同盟」だと思ってんだろうね。根っからの属国政治家だから、自立とか独立という観念も概念もないってことさ。まさに属国政治家の面族躍如だよ。「週刊新潮」の「米中韓のメディアが冷笑! 『安倍総理』は『トランプ父娘』の靴を舐めたか」は正論だね。こういう外交を可笑しいとも思わないマスコミも国民も世界の田舎モンだな。欧州の政治じゃ、絶対にあり得ない卑屈な接待外交だよ。だから、トランプも、好き放題に振舞って気持ち良く気軽に観光気分で日本に来れるってわけさ。「なぁ、それでいいだろう、Shinzo」ってことさ。政府の累積赤字が積もりに積もっているのに、公金を垂れ流して、トランプ一家を接待しなけりゃならない義理がどこにあるのさ。

 それにしても、ゴルフ外交って言うけどさ、ありゃ一体なんなのさ。トランプがラウンドしたかったのは松山選手で、下手くそな安倍首相じゃないってことが明々白々だったね。だってさ、1番ホールで安倍さんがまだバンカーから抜け出だしたところなのに、トランプと松山選手は次のホールに向かってさっさと歩いているもんね。だからホールアウトもしていない安倍さんは慌ててしまって、追いつこうとバンカーの一番高い壁を駆け上ったのは良いが、エッジに足をかけた途端に、バランスを崩してひっくり返ってバンカーに逆戻りだもんね。「体調が悪いのか」なんて報道があってけど、置いてきぼりになって慌てただけのことさ。
 このずっこけ動画がネットの世界に広まって、首相官邸も慌てたようだな。「ゴルフ談義をやっていたのはトランプ大統領と松山選手で、安倍首相はあっちこっちと球を追いかけていただけ」という真実を知られたくないということさ。ゴルフの後で、安倍さんは「難しい話もできました」なんて言ってたけどさ、簡単な話すらできる余裕もなかったというのが真相なんでね、格好をつけただけだよ。そうでも言わないと、「どうして一国の首相が、トランプと松山選手のゴルフ遊びの接待役になる必要があるのか」ってことになるんでね。要するに、芸者の代わりにゴルフ選手を当てがって、ご機嫌を取ったってことさ。このゴルフ接待のために、警備費を含めて、いったいどれだけの経費がかかったのか知りたいね。

 そもそも、「主権国」を公式訪問するのに、大統領専用機が日本の軍事占領基地であるアメリカ軍横田基地に到着するなんて、日本も舐められたもんだな。要するに、占領基地から日本の地へ足を踏み入れたってことだよ。だってトランプが叫んだって言うじゃない、「世界を支配しているのはアメリカだ」、って。日本は未だにアメリカの占領国だという感覚なんだよな。繰り返しトランプに恭順の意を表し続けるShinzoの日本は、最初から見下されてるってことだよ。日本は対米主権国ではなく、対米従属国だということを今更ながらに知らされたね。しかも、最初の行き先がゴルフ場だなんて、馬鹿にするのもほどほどにして欲しいね。「Shinzoが来てくれっていうから、来てやったんだ」ということなんじゃないの。だから、日本はアメリカの占領国家で、アメリカの庇護の許に日本は育ったってことを態度で示したんでね、こういう好き勝手な振る舞いに、政府・外務省は何も言えないしできないのが真実さ。何が日米同盟かね。戦後70年たってもアメリカへの従属関係が継続していることだよ。
 こういうことを理解できる日本人はもう一握りなんだろうな。ネットじゃ、「アメリカ大統領とゴルフができる安倍首相の外交力はすごい」っていうバカな奴が多いけど、あまりにアメリカべったりなんで、何が独立国として基本的な振る舞いなのかってことさえ、分からなくなってんだよな、政治家も国民も。「屈辱」という言葉も忘れてしまっているじゃないかと思うね。韓国や北朝鮮を批判する時だけは、やけにプライドが高いんだけどね、アメリカになると平身低頭だよ。「なぁ、Shinzo、そうだろう」、「へい、仰せの通りでございます」。卑しいね、日本の外交は。
 屈辱から始まってゴルフ接待で嬉々としている安倍外交なんて、朝貢外交というより、町人国家の卑屈な属国外交だよ。日本人の外交音痴が世界の嘲笑の的になっているの分からないんだよな。政治家も国民も。悲しいね、おしまい。
2017.11.19  「本日休載」

今日11月19日(日)は休載します。

リベラル21編集委員会

2017.11.18 「イスラム国(IS)」イラク、シリアで壊滅(1)
偏狭なイスラム過激勢力との三つの戦いの教訓は?

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 約3年半前の2014年6月、偏狭なイスラム過激派武装勢力がイラク北部の同国第二の都市モスルを占領し、カリフ(最高指導者)を自称したバグダーディが歴史豊かなモスクで「イスラム国」樹立を宣言してから3年5か月。イラク、シリア両国政府軍とクルド人武装勢力はじめ民兵勢力の地上作戦、さらには米軍はじめ有志国軍、ロシア軍の主に空爆支援によって、「イスラム国」はついに壊滅した。バグダーディの生死については、ロシア軍が空爆で死亡したと非公式に発表したが、信頼できる確認情報はない。しかし、生きていることを示す情報は全くないので、死亡していると思う。ISの軍事部門の中枢を占めた旧イラク軍・情報機関の残党組については、これまでに死亡がつたえられた一部幹部以外についての情報はほとんどない。
イラクでは、モスルが今年7月、「イスラム国」の首都とされてきたシリア北東部のラッカが9月、最後の拠点としデリゾールが10月に陥落。残存していたISの戦闘員たちは、一部は砲爆撃と自爆で死亡、一部は車両で脱出して姿を消すか、投降した。いずれも悲惨な最期だった。
 イスラム世界の歴史は、キリスト教世界と同様、大部分が自世界内部だけでなく他宗教の世界との共生に努力、実現してきた。その一方で他宗教、宗派間との争いも、過激派による非人道的な殺戮まで含め、繰り返されてきた。「イスラム国」との攻防と今後への教訓のためには、最近の偏狭なイスラム主義武装勢力、アルカイダ、タリバンとの比較が役立つ。
 90年8月、産油国クウエートに独裁者サダム・フセイン大統領支配下のイラク軍が侵攻、占領した。それに対して米軍中心の多国籍軍が91年に空爆を開始、イラク軍がクウエートから敗走した湾岸戦争の中で、アルカイダは生まれた。米軍がイラク空爆にサウジアラビアの空軍基地を使用したことに怒った大富豪の息子ウサマ・ビンラディンが組織した。それまで、イスラム教の聖地であるサウジアラビアは外国軍の軍事基地は許されなかった。ビンラディンは80年代のアフガニスタン戦争で、反ソ連武装勢力を支援する国際的支援活動で中心的な役割を果たしたが、湾岸戦争以後、国際的反米テロ活動を展開。本拠地のスーダンを追われてアフガニスタンに本拠地を移し、タリバン政権の保護のもとに2001年9月11日「9.11」の米同時テロを実行した。
 アフガニスタンのタリバンは、70年代末から88年まで続いたソ連との戦争のあと、92年から始まった内戦のなか、94年に生まれた。内部抗争が続く政権への国民の強い反感を背景に、保守的、偏狭なイスラム思想と厳しい戒律を強制する最高指導者オマルに率いられて政権への武装攻撃を展開、98年にはほぼ全土を制圧してタリバン政権を樹立した。タリバン政権は、それなりの統治を続けたが、アルカイダの本拠地、訓練施設を保護していたため、「9.11」後の2001年10月、米軍の攻撃(アフガン戦争)で壊滅状態となり、オマル以下政権幹部はパキスタンの山間部に脱出した。それより先にウサマ・ビンラディンらアルカイダ幹部もパキスタン山間部に脱出、根拠地を築き始めていた。
 「イスラム国」とアルカイダ、タリバンには、多くの共通点と相違点がある。
 どれも、厳格・偏狭な原理主義的イスラム主義であることは共通している。神の予言である経典コーランと、ムハンマドの膨大な言行伝承を記録し、解釈を示したハディースに基づき、指導者が自らの組織と支配下の民衆に、イスラムの教えとして強制する。アルカイダにはウサマ・ビンラディン、タリバンにはオマル、「イスラム国」にはバグダーディが最高指導者に就任した。バグダーディは、第一次大戦で崩壊したカリフ制国家の再現と自らカリフであることを宣言した。カリフは全イスラム共同体の最高指導者とされてきた。バグダーディはイラク、シリアだけでなく、全世界のイスラム国、イスラム教徒を一つにする国家を宣言したのである。もちろん、“空想の産物”に過ぎないのだが、中東から北アフリカ、西アジアへとイスラム国家を広げる夢を示し、それらの地域だけでなく欧州で生活するイスラム移民まで戦闘員として呼び寄せ、あるいはそれぞれの相手国での決起をうながした。
 バグダーディには、ビンラディンやオマルにはない、卓越した能力があったといえよう。それを示したのが、ユーチューブなどを駆使した宣伝工作だ。また、占領地で強制連行した異教徒の女性たちを、市場で外国人兵士たちに安価で売り、強制妻とさせるのもその一つ。こうして、3万人を超える若者たちを志願兵として集め、原油と盗掘美術品の密売、銀行襲撃で集めた資金で、給与を支払っていた。(続く)

2017.11.17  たかが選挙されど選挙-我孫子市の選挙結果から見えてきたこと
           韓国通信NO540

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

2017衆院選挙で安倍首相の悲願がまた一歩、現実味を帯びてきた。比例区得票率33.3%の自民党が61%に相当する284議席を獲得したとはあきれる。イカサマ選挙というほかない。
二十歳になり、初めての選挙で社会党の木村禧八郎さんに投票した。半世紀以上の昔のこと。インフレーションの研究で有名な経済学者だった。
今回、小選挙区は共産党、比例区は立憲民主党に投票した。選挙だけで世の中が変わるとは思っていないが、世の中を変える有力な手段のひとつと思いこれまで投票所には皆勤である。前回の参院選挙では「選挙に行こう!原発なくせ」の名刺を作って若者たちに配った。

<I am not ABE>
特定の政党や個人への投票を依頼する選挙運動はしたことがないが、自分の気持だけは伝えたい。「アベ政治を許さない」のプラカードを駅頭で掲げるのはそのためだ。
通っているスポーツジムで「I am not ABE」とプリントしたスポーツウェアを着て「選挙運動」をした。それを見て「何?」と聞いてくる人、気がつかない人には「ちよっと見てよ」と話しかけた。私が何故「安部ではないのか」そのわけを話した。週2回のジム通いで多くの人と話をした。もちろん「安倍首相が好き」という人にも出会った。17才の高校3年生にも声をかけた。誰に投票したらいいか相談をもちかけられた。「安倍首相は好きか」「嫌い」と即座に返事がかえってきた。希望の党は「自民と変わらないね」というと「そうね」。「残るのは共産党しかない」。
選挙が終わりエアロビクスのスタジオで会った。
候補者は自民と希望と共産の3名だけ。共産党に生まれて初めて投票したと語ってくれた。

<「小選挙区は共産党へ 比例は立憲」>
千葉8区(柏・我孫子)では現職の自民党候補桜田が当選した。日本会議所属で文科副大臣を務めたバリバリの極右議員である。「従軍慰安婦はデッチあげ」と安倍首相の持論と同じ発言を展開して副大臣をクビになった。太田は民主党から生活の党、維新の党と渡り歩き、今回は希望の党から立候補した。共産党からは小野里が急遽立候補した。
得票数では自民桜田が圧勝。しかし二人の非自民候補の得票が自民を上回り、比例の得票数では希望の得票をいれなくても立憲、共産、社民で自民を上回った。
人口約13万人、有権者数111千人(投票率55.47%)の我孫子市を含む8区で野党統一候補が出馬したら当選は間違いなかった。全国64の選挙区で野党が一本化したら自民が敗北したといわれる(産経新聞デジタル)。千葉8区もそのわかりやすい例である。平和、護憲の勢力の結集に教訓を残したが、今回の自民圧勝は選挙民の意思からかけ離れた空中の楼閣、虚構だったことがわかる。「I am not Sakurada」。安倍首相のオトモダチ桜田の落城も目前だ。

<仲間を捨てて 街に出よう>
11日、埼玉県大宮市で開かれた会合で韓国のローソクデモの話をした。元国鉄の労働者で組合活動の中心になって活躍してきた人ばかり30名ほどが集まった。
昔、藤田省三さんと酒を飲んだ時のこと。酔いが回るうちに「銀行の組合なんか御用組合に決まっている」と藤田さんが断言したことに私が腹を立て大喧嘩になった。私が銀行の組合の組合員だったからである。「学者は本ばかり読んで現実を知らなすぎる」と、私も一歩も譲らなかった。でも、労働運動の現状を見ると、組合に期待をしないと「暴言」を吐いた藤田さんは真理の一面を突いていたことになる。
私がいた組合は会社とともに消滅した。今では組合運動のことを考えることはあまりない。かつて情熱を注いだ組合運動を「卒業」してもなお、仲間と定例的に学習会を開いている今回のグループの存在に正直驚いた。彼らは今でもさまざまな政治集会に出かけ、最近は福島の被災地に出かけたりもしている。
労働運動のOBとして運動を模索するひとたち。ローソクデモと市民運動についての話を聞きたいという手ごわい聞き手を前に緊張した。一市民としてどう生きるか、何が出来るかが、その日のテーマだった。私に答えを出せるはずはなく、知りえたローソクデモと私の体験談を話した。
日本と共通する問題を抱えながら何故韓国で延べ1700万人、毎週100万人もの市民が集まったのか。その背景にある民主化運動の歴史と、韓国社会に積もりに積もった不満の数々。民主化闘争から生まれた『朝露』や『君のための行進曲』を熱唱して過去の運動の記憶を現在に蘇らせる人々。市民運動から生まれた自立した市民たちの存在。組織に依存しない確立された個。同じ儒教社会ながら、「一君万民」は万民のための君主と理解する韓国と、君主のための万民と考える日本との違い。韓国人の、倫理観にもとづく自己主張の激しさなど、思いつくままに話した。
韓国の社会運動では「希望」が語られ、日本では「挫折」が語られる。孤立した運動は社会を動かす力に乏しい。それに比べネットワーク化が進み社会的影響力を持つ韓国の市民運動(後に紹介する丸山茂樹氏の評価も引用した)。脱原発に突き進み、貧困問題への具体的着手も始まった。
参加者の顔を見ながら、「わが国にあって韓国にないもの。それは、社会運動の経験を豊富に持つ高齢者たちの存在」と気づいた。高齢者が元気な日本社会の可能性を韓国の友人から指摘されたことを思いだした。
仲間内で「愚痴」を言うより少しでも若者と付き合おう。一人でもやれることはいっぱいある。「ひとりデモ」「東京電力から電気を買わない」「I am not ABE」「NHKとのバトル」「家族との話し合い」といったことの大切さを述べ締めくくった。
懇親会に参加した。「あなたを見習って一人で駅頭に立ちますよ」と声をかけてくれた人がいた。労働運動の仲間と話をするのは久しぶりだった。古巣に帰ったようで気分が高揚した。銀行の合併を世に問うた『三菱銀行の野望』を二十冊贈呈した。銀行も組合も認めなかった有志個人発行。処分覚悟の抵抗の「書」である。
 

『共生と共歓の世界を創る-グルーバルな社会連帯経済をめざして』

尊敬する先輩丸山茂樹さんが本を出版した。グラムシ、ポランニー、さらにブラヴォイの思想を紹介しながら共生社会の実現を社会的連帯経済に求めるという意欲的な内容。朴元淳ソウル市長の提言と協同組合づくりの実践、日本の重茂漁協などが紹介されている。著者は長年にわたる生協活動の実践と理論研究をとおして人間と仕事、社会のあり方に提言をおこなってきた。「持続する社会」とは? 示唆と刺激に溢れる好著として一読をお薦めしたい。
                      社会評論社発行 本体2200円+税




2017.11.16 選挙総括は双方向でなければ機能しない、上からの「常幹声明」の徹底討議だけでは一方通行になる
              
広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)
                 
 トランプ旋風が東南アジア一帯に吹き荒れる中、もう総選挙のことなど何処かへ吹き飛んでしまったような気がする今日この頃だ。それほど昨今の情勢の移り変わりは早いので今さらとは思うが、それでも周回遅れの話をするのも無駄ではないと思い直して書くことにした。それは共産党の選挙総括のやり方についてである。

 10月22日の投開票が終わって選挙結果が判明した翌日の23日、「総選挙の結果について」と題する共産党中央委員会常任幹部会声明が出された。政党として選挙結果についての声明を出すことは党支持者に対する責務であり、有権者の関心に応えるうえでも必要不可欠な行動だといえる。

 私の周辺でも、民進が選挙直前に希望の党へ合流するという逆流のもとで共産が市民と野党の共闘をぶれずに追求し、共闘勢力の一本化のために全国67の小選挙区で予定候補者を降ろすなどして共闘勢力(特に立憲民主)の議席獲得に貢献したことは高く評価されている。小選挙区で候補者を立てないことは比例区の得票減につながることを百も承知の上で敢えて決断したのだから、共産の行動は大いに称賛されていい。支援を受けた立憲民主からは感謝の言葉があまり聞こえてこないが、これなどは政党間の信義にもとる態度といってもよく、今後の野党共闘の在り方に影を投げかけるものだ。

 とはいえ、共産にとって比例代表選挙で前回606万票(11・4%)から440万票(7・9%)へ後退したことは痛恨の極みだったに違いない。もともと850万票を目指していたのだから、目標の約半分という結果は言葉を失うほどのショックだったのではないか。常幹声明はその原因を「党の力不足」に求め、「総選挙の教訓と総括は、党内外のみなさんのご意見に真摯に耳を傾け、次の中央委員会総会で行います」と述べている。選挙総括についての本格的な討議はこれから始まるのだろう。

 だが私としては、これに続く11月4日の赤旗主張として出された「『常幹声明』を討議・具体化し、草の根から『集い』を開いて広範な国民と日本の未来を語り合い、強く大きな党づくりへ、11月から前進しよう」との檄文の内容が気になった。檄文の前半は、逆流の中で共産が奮闘したことに確信を持ち、市民と野党の共闘のさらなる発展を呼びかけるもの。後半は、そのための具体的な行動として「共産党をまるごと支持してもらえる人を広げていくための集いを開く」「機関誌拡大を通して党勢拡大を追求する」「世代的継承のため青年、学生、労働者へ働きかける」ことが提起されている。

 この内容は政党としては当然の行動提起であろうが、檄文は組織を元気づけるための「チラシ」のようなもので「選挙総括」とは到底言えない。ところが、檄文の中には「『常幹声明』の討議を通じて、選挙戦の特徴と結果の見方、党が果たした役割などへの理解を深め、次のたたかいへ立ち上がりましょう」といった趣旨のことが繰り返し強調されているので、それがあたかも「選挙総括まがい」のような印象を与えてしまうのだ。

 上部組織が出した「選挙戦の特徴と見方」を下部組織や末端組織が討議(学習)するだけでは、選挙総括としては不十分なのではないか(成立しない)。民主集中制という組織原則は、「民主」が前提にならなければ機能しないものだ。選挙総括は、全国津々浦々で選挙戦をたたかった支持者や地方組織など党内外の声をまず取り上げ、そこでの様々な意見や討論を積み重ねながらでなければ「本音の総括」にはならないだろう。「党内外のみなさんの真摯なご意見」に耳を傾ける前に「常幹声明」を徹底討議してしまっては、個人や地方組織の本音は消えてしまう(消されてしまう)。これでは「民主なき集中」になってしまうのである。
 
 常幹声明のいう「党の力不足」とは、この檄文を読む限り目に見える(物理的な)党勢後退と機関紙数の減少を意味しているようだ。なにしろ選挙戦最中の10月に「赤旗読者は全都道府県が日刊紙、日曜版ともに後退しました」とあるのだから、事態が重大な局面にあることは想像できる。しかし本当に重要なのは、政党への幅広い共感と信頼を呼び起こすような「力=政治力」の涵養であって、機関紙拡大はその一面にすぎない。そして本物の政治力の涵養は、自由で闊達な選挙総括の中から生まれるのであって、「常幹声明」を討議するだけの上意下達的な一方通行からは生まれない。

 地元の新聞販売店の店主から聞いた話では、最近引っ越してきた新しいマンションの住民たちはそのほとんどが新聞の定期購読をしないのだという。つい最近も知人の店主が「30戸もあるマンションで新聞を取ってくれたのはたった4軒でっせ!」と嘆いていた。学生たちが新聞を読まなくなったのはかなり以前からだが、最近は大人も読まなくなってきたのだろう。こんなご時世に「1カ月でも3カ月でもいいから置いてください」というだけでは先が見えている。本当の「力=政治力」を付ける方法を真剣に考えるときがやってきたのである。
2017.11.15 安倍内閣の支持率はなぜ高いのか(10)
―「死の商人」を歓迎する日本は嘲笑の的なのに―

半澤健市 (元金融機関勤務)

 ドナルド・トランプ米大統領は訪亜外交の途次にある(2017/11/12現在)。
大統領選挙以来、トランプは商売人で、政治も「ディール(取引)」だと考えていると報
道されてきた。その通りだった。

《死の商人としてのトランプ「外交」》
 日本と韓国に対しては、北の「ならずもの国家」を材料に、商品の売込に専念し成功し
た。彼のトランクには何のカタログが入っていたのか。「防衛装備」のそれである。
「防衛装備」とはなにか。「武器、つまり人殺しの道具」のことである。
トランプ政権の主要閣僚は、金融企業家と軍人である。その後ろに金融資本と軍需産業が
ある。彼の成功は、それらの産業の繁栄に寄与する。米国軍需株は平均株価以上に上がっ
た。今回、トランプは「死の商人」として外交しているのである。
トランプ外交の成功は、論理的には「アジア人同士の戦い」へとつながる。勃発せずとも
アジアでの緊張の高まりには確実につながる。トランプは、(戦争は米国ではなく)「あっ
ち」で起こると言った。「あっち」とはアジアのことである。

《アメリカ人よりアメリカ人な人物》
 米国内でトランプ政権への支持率は30%台、不支持が50%を超えている。トランプ
留守中に行われた米二州知事選とNY市長選で国政野党の民主党が勝利した。NYタイム
ズは「有権者は、移民と犯罪を結び付ける挑発的な訴えを拒絶した」と報じている。
安倍晋三首相はトランプを100%支持している。日本の首相はアメリカ人よりもアメリ
カ人である。
トランプは、治外法権の横田基地に降りたち横田基地から飛び立った。ゴルフと食事
を接待してくれた上、シンゾーは「人殺しの道具」を積極的に買ってくれる。二人でみん
なの前でそう発表した。この同盟国なら国会議員への演説は不要だ。
「おもてなし」を好きな日本メディアは、ゴルフとキャップ交換と四回の会食メニューと
メラニアの服装だけを報道し、安倍外交は成功したといっている。英米の有力紙は安倍の
隷従振りを嘲笑している。

《「パールハーバーを忘れるな」へ一矢》
 トランプ発言に一矢を報いた一人の日本人がいた。
女優吉永小百合である。吉永は、11月5日の「第五福竜丸建造七〇周年記念特別展」の
会場で、同日のトランプ来日に関して問われ、次のように話した。

■「パールハーバーを忘れるな」とおっしゃったみたいですけど、私たちは、やっぱり広
島、長崎、第五福竜丸のこと、(11年の東日本大震災によって福島第1原発事故が発生
した)福島のことを忘れないでいましょうって、今日は言いたいですね。(『日刊スポー
ツ』紙、2017年11月05日)

私は山田洋次・吉永小百合の優等生コンビを揶揄したこともある。
しかし歓迎ムード一色のなか、この吉永発言を評価したい。そして安倍内閣の支持率はま
だまだ高い。(2017/11/12)