2020.02.24  トランプ大統領、最後の1年(9)
     軍事予算を大幅拡大、核戦力の使いやすさを強化、
     対人地雷の使用拡大など軍拡を推進


坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 トランプ政権は軍事予算を大幅増、中距離核戦力(INF)全廃条約を失効させ、使いやすい小型核兵器を原潜に配備、対人地雷の使用制限を撤廃した。オバマ前政権が8年間に進めた、核軍縮の取り組みを逆行させている。トランプ流の冷戦を推進しているのだ。中国も軍拡を進めている。今年に入ってから、“最後の1年”の仕上げのように、トランプ政権の発表が続いた。
 1月31日、トランプ政権は、オバマ前政権が決定した、対人地雷の使用を朝鮮半島だけに限るとした規定を撤廃すると発表した。米軍は今後、世界どこででも対人地雷を使うことができることになった。国際社会は、人間を無差別に殺す対人地雷を禁止する流れになっていたが、トランプ政権は、その流れに逆行したのだ。米国防総省の発表によると、自動的に破壊される機能や自動停止の機能を持つ対人地雷は、製造,使用ができる。オバマ政権は2014年、朝鮮半島での対人地雷の使用を例外的に認めたが、それ以外の地域では、製造も使用もやめる方針を決定した。この日の国防総省の声明では、前政権の方針を「米軍部隊を危険にさらす」と非難した。
 対人地雷については、その使用、製造、保有を禁止する対人地雷禁止条約がクリントン米大統領の積極的な努力もあって1999年に発効、日本を含む104か国が締結している。
 トランプ政権の米国防総省は2月4日、原子力潜水艦に「低出力の核弾頭を実践配備した。米国と同盟国がいかなる攻撃を受けても、速やかに応じられる態勢が整い、抑止力が高まった」と発表した。これまで原潜に搭載されている核弾頭ミサイルは破壊力が巨大で、使用条件に柔軟性がなかったが、その小型化で使用しやすくなった、というのだ。トランプ政権は、クリントン政権からオバマ政権にいたる米国の核軍縮への努力をぶち壊し、ロシアや中国との核軍拡競争を再現しつつある。
 1987年に発効した米国とソ連の「中射程および短射程核ミサイル全廃条約」(INF全廃条約)はトランプ政権が更新せず昨年夏失効した。米国とロシア間に残る新戦略兵器削減条約(新START)も来年が期限だが、トランプ政権は延長を約束せず、無条約状態に逆戻りするかもしれない。
 英国際戦略研究所が2月14日に発表した年次報告「ミリタリーバランス2020」によると、2019年の世界各国の防衛費は総額1兆7千3000億ドル(約190兆円)で、前年比4.0%増。過去10年で最大になった。米国と中国はそれぞれ前年比6.6%増。
 トランプ政権下、米国は防衛費の増額を続け、2019年は前年比534億ドル増の6、846億ドル。増額分だけで、英国やフランスの防衛費総額に匹敵している。中国も106億ドル増の1,811億ドル。増額分だけで台湾の防衛予算に匹敵する。
2019年の世界各国防衛費(1位―10位)(英国際戦略研究所ミリタリーバランス2020による)
① 米国     6846億ドル
② 中国     1811億ドル
③ サウジアラビア 784億ドル
④ ロシア     616億ドル
⑤ インド     605億ドル
⑥ 英国      548億ドル
⑦ フランス    523億ドル
⑧ 日本      486億ドル
⑨ ドイツ     485億ドル
⑩ 韓国      398億ドル 

2020.02.23  「本日休載」
今日02月23日(日)は休載します。

リベラル21編集委員会

2020.02.22  身 辺 雑 記 
    韓国通信NO630

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)
             
 2020年、1月は、あっという間に過ぎて2月も半ば過ぎ。近所の木蓮はすでに芽をふくらませている。冬ごもりなどしてはいられない。

<中村哲さんの死>
 昨年12月、アフガニスタンで中村哲医師(73)が射殺された。平和のための戦争、テロが横行する世界のなかで、その活躍と人柄はカネと力による「国際貢献」の愚かさを私たちに教えてくれた。失ってその存在の大きさに気づく人も多い。
 安倍首相が中村医師の活躍を称賛して追悼の言葉を送った。さすがに、危険なところに出かけて遭難したことを「自己責任」と言わなかった。
 2011年、中村氏はテロ特措法の審議に参考人として国会に呼ばれ、自衛隊の海外派遣は有害無益。それよりも飢餓の解消を支援するよう訴えた。また紛争地帯で活動の支えになった憲法九条の大切さを訴え続けてきたことでも知られる。

 年末にアルンダティ・ロイのエッセイ集『帝国を壊すために』(岩波新書)を読んだ。
アメリカは2001年9.11のテロの報復としてアフガニスタンで戦争を始めた。「無限の正義」を標榜した大義のまったくない戦争。アメリカは国益のために反政府勢力を育てるかと思えば、都合によってはそれをテロリストの国としてせん滅をはかる独善国家である。アメリカに対する鋭い指摘、その後の国際社会は彼女の予見通りになった。テロとの戦いを口実に「市民の自由を拘束し、表現の自由を否定し、労働者を解雇し、少数民族や宗教的マイノリティを迫害し、公共予算を削減し、多額の予算を防衛産業にふりむけた」(同書18P)

 死者を山のように積み上げ、全土が瓦礫と化したアフガニスタンで中村医師たちは命を救う懸命の努力を続けた。ブッシュからクリントン、オバマ、トランプと続く歴代大統領のもとでアメリカ中心主義は変わることはなく、日本はそのアメリカに寄り添ってきた。安倍首相の中村医師への追悼の言葉などは「片腹痛い」限りだ。アメリカこそがテロ国家ではないのか。凶弾を向けた犯人探しは余り意味を持たない。中村医師がアメリカの独善主義の犠牲者だと気づかされる。著者ロイは1961年インド生まれの女性作家。覇権国家アメリカに立ち向かう人たちに彼女のメッセージは勇気を与え続けている。

<幻のジョン・レノン>
 ジョン・レノンの『イマジン』をピアノで弾いたことがある。レノンが凶弾に倒れてから40年になる。同世代の彼は気になる存在だった。ビートルズのメンバー、オノ・ヨーコの夫、作曲家、詩人、哲学者。麻薬患者、アル中、ブラックパンサーと交流のあった過激派と聞くと日本人は引いてしまうが、晩年は専ら家事と育児に専念した。愛と平和と人生に多くのメッセージを残した。もちろん「イマジン」も。
 「僕らの社会は、ばかげた目的のために、あきれた人々によって動かされている。」
「ひとりで見る夢はただの夢、みんなで見る夢は現実になる。」 (ジョン・レノン)
 レノンが日本語の勉強をしていたことを『Ai(愛) ジョン・レノンが見た日本』から知った。記憶は定かではないが、インタビューに応えて地方自治の大切さを語ったことがある。地方自治を民主主義の原点というレノンらしくない地味な発言なので、それだけ印象に残った。中央集権のトップがすべてを仕切る社会より、小さなコミュニティの中に人間らしい生き方を求めたと理解した。人間一人ひとりの存在と生活を大統領や首相に任せるわけにはいかない。民主主義は個人から、地方から育てていくというジョン・レノンの思いが、死後40年たって私に実感をもって蘇る。

<辺野古署名奮闘記>
 政府は何が何でも辺野古に米軍基地をつくるという。沖縄の意思は完全に無視されている。これではまるで植民地扱いだ。沖縄の独立という選択も考えられる。戦勝国アメリカが日本占領時に沖縄が独立国だったという認識をもっていたくらいだから、沖縄の独立は決して異説ではない。
 始めた辺野古署名運動。地元市議会に請願して政府に意見書提出を求めるものだが、沖縄独立とは全く違う視点から、沖縄県外の住民として沖縄県民の尊重と民主主義を求める運動だ。大浦湾が埋め立てられる光景から、自然(環境)の破壊、県民の悲鳴を、日本の民主主義の悲鳴と感じる人は多く、何もできないことに苛立つ人も多い。その思いを請願署名で明らかにする。関心がない人には、辺野古基地問題の大切さを訴える。ジョン・レノンから学んだ地域発、中央政府に対する市民の異議申し立てである。市議会の採決が当面の目標だが、「一粒の麦」のつもりで署名運動を始めた。

私は「沖縄応援団長」
 話をしたことのない人に署名をしてもらうのは結構シンドイ。友人への依頼、駅頭での宣伝、「通信」の読者からの署名も集まりだした。小さな集会でも、3.20亀戸公園で開かれる「さようなら原発」集会でも訴えたい。預金集めをした30年間の経験から学んだのは、コツコツと一人ひとりに話をして勧誘することの大切さ。自分の足で稼ぐこと。当地に引っ越してきて10年以上になるが、知り合いは多いようで少ない。週2、3回通っているスポーツクラブを主戦場に署名活動に励んだら、思わぬ発見があった。
小原画像
         <写真/駅頭に新ステッカー登場!>
 筋トレに励む大学生に沖縄の応援団長と触れ込んで話しかけたら署名に応じてくれた。修学旅行で沖縄に行った彼らが、美しい海を埋め立てて米軍基地を作らせない請願運動に異存はなかった。
 「応援団長ガンバレ」と、ヨガ好きの婦人が2枚の署名用紙を持ち帰り、署名を集めてくれた。スポーツクラブには、私が駅頭で「アベ政治を許さない」のステッカーを掲げていることを知る人も多い。若い人から「政治オジサン」とからかわれるが、「今度は何の署名?」と気軽に応じて、友達にも声をかけてくれる。名前を書いてもらえると友だちになれるので、一石二鳥。署名用紙が足りなくて説明だけ、翌週、待ってましたとばかりに署名してくれた男性もいた。2週間足らずで自分で集めた署名は50名になった。最年少を狙って高校生に声をかけた。応援団長の説明を素直に聞いていたが署名を渋った。「未来は君たちのもの。社会にもっと関心を持ってね」と励まして、その場を離れた。
 いつの間にか若者と話をするのがおっくうになっている。自分の主張を伝えなくなったのは年齢のせいかも知れない。フィンランドに誕生した女性首相34才。政治の話がタブー視されがちな日本と違い、フィンランドでは若者を含めて政治が身近だという。個人の主張があるから大いに議論が始まるらしい。私に付けられたニックネームは「政治オジサン」。結構じゃないか。

2020.02.21  護憲団体と改憲・自民党が“草の根”の対決へ
     両陣営とも世論の喚起に躍起

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 護憲団体が結集する「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が、新しい署名運動を始めた。新署名のタイトルは「安倍9条改憲NO! 改憲発議に反対する全国緊急署名」で、東京で2月6日に開いた署名スタート集会には市民や野党代表がつめかけた。一方、自民党は昨年10月、幹部を動員した改憲運動を全国各地でスタートさせている。両陣営とも自らが目指す方向に世論を喚起するのに必死で、護憲・改憲をめぐる問題は両陣営による“草の根”からの対決という様相を帯びてきた。

 「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」は、学者・文化人ら19人の呼びかけで、2017年8月に結成された。これには個人のほか、旧総評系の「戦争をさせない1000人委員会」、共産党系団体が中心の「戦争する国づくりストップ!憲法をまもり・いかす共同センター」、市民団体の「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」、九条の会などが加わった。

 発足直後の全国市民アクションが取り組んだのは「安倍9条改憲NO! 憲法を生かす全国統一署名」で、3000万筆を目標にしていたことから、「3000万人署名」という略称で呼ばれた。
 この署名は2019年6月までに947万筆余を集め。国会に提出された。

 全国市民アクションが新署名を始めた理由は何か。
 全国市民アクションが「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」と連名で1月1日に発表した声明には、こうある。
「先の参院選で改憲派が発議可能な3分の2の議席を失ったにもかかわらず、安倍首相は臨時国会終了後の記者会見で『必ずや私の手で(改憲を)成し遂げていきたい』と語り、自らの自民党総裁任期の2021年9月までに実現する決意を語りました」「この改憲スケジュールからみて、安倍改憲をめぐるたたかいはいよいよ最大の山場にさしかかったというべきでしょう。2020年の通常国会と臨時国会で『改憲発議』を許すかどうか、さらに2021年通常国会会期中に安倍改憲国民投票を許すかどうかの正念場になりました。この安倍首相の企ては絶対に阻止しなければなりません」「事態は緊急です」
 要するに、護憲派としては、安倍首相の改憲に向けての決意表明に危機感を高め、改憲発議に反対する署名運動をスタートさせたというわけである。

 一方、自民党も国民世論を改憲に引きつけようと躍起だ。二階幹事長、岸田政調会長ら党の幹部が先頭に立ち、全国各地での集会を計画するなど、挙党態勢で改憲運動の盛り上げを図る。
 昨年10月18日には、二階幹事長の地元の和歌山市で約1600人を集めて改憲集会を開いた。
 また、同党は改憲をテーマとした地方政調会を全国各地で開催することになり、昨年10月28日には、さいたま市で、11月18日には広島市で、12月3日には福島市で、それぞれ岸田政調会長らが出席した地方政調会を開いた。
 さらに、同党の憲法改正推進本部に新設された遊説・組織委員会は、全国を10ブロックに分けて担当議員を配置した。
 同党が各地での改憲集会で使用するために、同党所属の国会議員や都道府県連に安倍首相のメッセージ動画を配布した。

 国民世論を盛り上げるための大衆運動、例えば集会、演説会、講演会、デモ行進、署名といった活動は、これまでは労組など革新系団体のおはことみられてきた。が、 いまでは、右派系や保守系の団体もこうした大衆運動に力を入れるようになった。
 護憲・改憲をめぐる対決は、今や大衆運動の分野にまで広がってきたと言えよう。

2020.02.20  コロナ・ウイルスの中南海への浸透度は?―新型肺炎と習近平政治
 
田畑光永 (ジャーナリスト)
                      
 2月18日の中国政府の発表によれば、中国のコロナ・ウイルス肺炎の感染者は7万2436人、死者は1868人に達したということである。この後、その数字はさらに増えるのか、それともそろそろヤマを越えて終息に向かうのかが世界の関心であるが、同日、中国紙が伝えた国家呼吸系統疾病臨床医学研究センターの鐘南山主任の見立てでは、「このところ湖北以外では新感染者数が減っているとはいえ、病勢がヤマを越えたかどうかはなお数日、状況を見る必要があり、全国的に事態が収まるのはごく大雑把に言って、4月末ではなかろうか」、ということである。(2月18日『中国青年報』)
 4月末とすれば、まだ2か月余も世界はこの病気に振り回されることになるわけで、その間に世界がどれほどの影響を受けるのか予想もつかない。
 しかし、事態が発覚してからすでに2か月近く、ここへきて中国の政治面での影響が徐々に表面化しつつあるので、それを紹介しておく。
********
 1つは、国家のトップである習近平に対する不信感がかなりの程度に広がっているらしいことである。勿論、国家指導者に対する批判がメディアに堂々と載る国柄ではないので、側面からの推測としてお読みいただきたい。
 まず、習近平がいつからこの問題に関心をもって事態収拾の指揮を執り始めたか、という問題である。なぜそんなことが、と思われるかもしれないが、その日付がだんだん前倒しに早くなってくるから、かえって人目をひくのである。
 普通に中国のメディアに目を通していた限りでは、この病気のことが大きく報道されたのは1月25日から26日にかけてであった。25日は中国で言う「初一」、つまり旧暦の元旦である。だれでも普通は新年を祝って休むはずのこの日、北京では中国共産党の中央政治局常務委員会、つまり習近平以下最高首脳たちの会議が開かれて、コロナ・ウイルス肺炎の蔓延についての対策が検討された。そして、党中央は元旦にもかかわらず、この問題に取り組んだということが強調されて報道された。
 しかし、病気そのものは12月から広まり始めていたから、すこしでも早いほうが望ましいということか、その後、1月20日と22日にも、習近平は新型肺炎の蔓延防止について湖北省からの人間流出を抑えるなど、重要な指示を出したという活動が付け加えられた。ただ、特に会議などは開かれなかったためか、当時の報道には見当たらない。
 そこで、それでは不十分と見たか、今度は1月7日に中央政治局常務委員会が開かれた際に、習近平は新型肺炎の防護策についての要求をしたと明らかにされ、この段階から習近平はこの問題に心を砕いていたと報道されるようになった。
 当初の25日から大分、早まったわけだが、20日、22日は指示を出しただけだったのが、7日は最高首脳会議の席上でのことだから、当然、報道されていなければおかしい。ところが、1月8日の『人民日報』には常務委員会の記事は1面トップに大きく載っているが、そこには新型肺炎のことは全く触れられていない。年末(旧暦)の会議らしく、全人代、政府、裁判所、検察院などの活動報告が行われたということと、ほかには党の統一した指導を強化しようといった、習近平政権の決まり文句が並んでいるだけである。
 ヘンだな、ウソだろう、誰しもそう思うような話である。するとそこでまた、ウソの上塗りのような報道が出てきた。2月15日発行の『求是』という共産党の理論誌に、「中央政治局常務委員会における新型コロナ・ウイルス肺炎の病状対策についての講話」という「2月3日」付けの習近平の文章が掲載されたのである。
 この文章はかなり長文のものであるが、その冒頭には「武漢で新型コロナ・ウイルス肺炎が発生した後、私は1月7日に中央政治局常務委員会を招集した際、新型肺炎対策について私の要求を提出し、1月20日には・・・・・、1月22日には・・・・、元旦には・・・・・党中央に病状対策指導小組の設立を決定した」という、自分のアリバイ証明を書き連ねて(本人が書いた可能性は低いが)ある。
 なぜこんなことまでして、いかに真剣にこの問題に取り組んでいるかということを印象付けようとするのか。言うまでもなく、国民の間に習近平に対する不信が高まっていることを自分でも知っているからであろう。それ以外に理由は考えられない。
*******
 2つ目は、久しぶりに珍しい中国語を目にした、という話である。最近、知人から1枚の文章をもらった。タイトルは「言論自由 従今天開始」、字だけでお分かりだろうが、念のため日本語にすれば「言論の自由は今日から始まる」である。その「今日」の日付はないが、コロナ・ウイルス肺炎について医師として警鐘を鳴らしたために、警察から「訓戒」処分を受け、2月6日に自らこの病気で命を落とした武漢の李文亮氏を悼むと同時に言論の自由を訴える内容である。宛先は日本の国会にあたる全国人民代表大会とその常務委員会、末尾に28人の実名が並んでいる。中には言論の自由のためにあえて実名で活動している清華大学の許章潤教授の名前もある。
 余計な解説はやめて、内容を以下に紹介するー
 2020年2月6日、ラッパ手李文亮烈士は武漢において肺炎で死去し、言論の自由に対する圧制の犠牲者となった。その心情は人心を打ち、天地を悲しませた。
 当局による言論と真実への圧制により新型ウイルスの病毒は嗜虐をほしいままにし、億万の中国人をもっとも喜ばしい伝統的な祝日のさなかに隔離と恐怖の中に陥れ、事実上の軟禁が社会と経済を停頓させている。これまでに少なくとも637人の同胞が命を落とし、数百万を数える武漢、湖北戸籍の人々が寒冷のなか、助けもなく流浪している。
 この悲劇の始まりは、李文亮ら8人の医者が1月初めに警察による訓戒の処分を受け、医師の尊厳が警察の暴力による言論の自由に対する横暴の前で踏みにじられたことであった。
 30年来、安全のために自由を譲り渡してきた中国人民は、その結果、さらに不安全な公共的衛生危機の中に陥ってしまった。人道主義に対する災難が間近に迫っている。世界の人々の中国に対する恐怖は病毒の伝染速度よりも速いスピードで、中国を前代未聞の地球的孤立に追い込んでしまった。
 このすべては自由の放棄、言論への圧制の代価であり、中国モデルなるものは今まさに泡沫と化した。今日に至るまで当局は防疫を第一に口実に、最高法と行政機関に対して、憲法に優越する法律外の方式によって、開始の知らせもないままに緊急事態を実行し、不法に、言論の自由、移動の自由、私有財産の権利を含む憲法上の公民の権利を停止している。
 これらはすべて終わらせなければならない。言論の自由なくして安全はない!公民の名によって、われわれは五大要求を提出する。
一、 われわれは要求する、2月6日を国家言論自由日(李文亮日)とすること。
二、 われわれは要求する、今日から中国人民は憲法35条によって賦与された言論の自由の権利を現実のものとすること。
三、 われわれは主張する、今日から中国人民はもはや言論を理由に、国家機関、政治組織によるいかなる脅迫委も受けず、結社および通信の自由などの権利はいかなる政治勢力、国家機関による侵害も受けないこと。
四、 われわれは希望する、武漢および湖北戸籍の公民は平等な公民の権利を得るべきであること、すべての武漢の肺炎患者は適時、妥当にして有効な医療救助を受けること、封鎖および隔離によって生活困難となった民衆に生活補助をあたえること。
五、 われわれは呼びかける、全国人民代表大会は直ちに緊急会議を招集し、いかなる政治勢力によるものにせよ今年の定例会議を不法に中止するのを避けること、あわせて直ちに公民の言論の自由を保障する問題を討議すること。言論の自由から、今日から、憲法を実行しよう!
 あらゆる人々が署名に加わることを歓迎し、永く持続し、永久に名簿を開放する。
 以下署名
******
 余計な解説は不要であろう。ひさしぶりに中国人の肉声を聞いた感がする。最近も言論活動家や弁護士などが「行方不明」(当局による拘束)になったという話はつきない。それらについてはまた材料があつまったところで。                                 (200218)

2020.02.19 北東アジアの非核化と平和について市民社会がなすべきこと
■短信■
     ピースデポが講演会

「市民の活動に役立つ平和問題のシンクタンク」を目指して平和問題に関する系統的な情報・調査研究活動を続けているNPO法人ピースデポ(平和資料協同組合)による講演会です。
日時:2月22日(土)14:00~16:30

会場:明治学院大学白金校舎本館1253教室(白金台駅2番出口、白金高輪駅1番出口、高輪
   台駅A2番出口から徒歩7分)

講師:グレゴリー・カラーキー氏(憂慮する科学者同盟:UCS)
   米国メリーランド州立大学で政府・政治学博士号取得。国際教育交流協議会の中国
   担当デイレクター、グリーン・マウンテン大学准教授を経て、2002年にUCSに
   参加。専門は中国の核兵器政策、宇宙計画(遂次通訳)
   梅林宏道氏(ピースデポ特別顧問)
   長崎大学核兵器廃絶研究センター初代センター長、ピースデポ設立者・元代表、核
   軍縮・不拡散議員連盟東アジアコーデイネーター

資料代:500円(事前申込み不要)

主催:NPO法人ピースデポ(平和資料協同組合) 電話045-563-5101

後援:明治学院大学国際平和研究所

なお、ピースデポは同日10:30から明治学院大学白金校舎本館81会議室で第21回総会を開催するが、これにはどなたでも参加できる。
                                   (岩)
2020.02.18  トランプ大統領、最後の1年(8)
    世界に対する最悪行のパリ協定離脱
    次期大統領選翌日に発効


坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 オバマ政権下の米国をはじめ世界の主要国のすべて196ヵ国が参加を表明した、気候変動抑制ための国際的枠組み(パリ協定)。2016年11月4日に正式発効した。しかし16年11月の米大統領選挙で勝利したトランプ大統領は、公約の一つだったパリ協定からの離脱を宣言。「国内の石炭産業に対する戦争を終らせる」大統領令に署名した。離脱プロセスには時間がかかり、2020年11月4日に正式に離脱が発効する。次期大統領選挙の翌日だ。
 パリ協定は今年2020年以降の地球温暖化対策を定め、2016年4月22日のアースデーに各国の署名が始まった。同年9月3日に温室効果ガスの二大排出国である中国と米国が同時批准、10月5日にはEUも批准、前記のように2016年11月4日に発効した。温室効果ガス排出量2位の米国が不参加でも、1位の中国はじめ他の参加国は、すでに削減目標を作成、そのための国内対策の義務を負っている。目標達成自体は、義務とは明記されず、もちろん罰則もない。各国のおもな削減目標は、ウイキペディアが紹介する「パリ協定」によると以下の通りだ-(他の各国から提出の目標もある)
中国 2030年ごろまでにCO2排出量がピークになることを達成し、より早期にピークなるように最
 大限の努力を行う。
 2030年までに、2005年比で、GDP当たりのCO2排出量を、60~65%削減する。
 2030年までに一次エネルギー消費に占める非化石燃料(エネルギー)の割合を20%に増や
 す。
 2030年までに、2005年比で、森林ストック容量を約45億㎥増加させる。
日本 2030年までに、2013年比で、温室効果ガス排出量を26%削減する
 森林・土地利用部門での吸収量を3700トン(2013年度排出量の2.6%相当)見込んでいる。
 京都議定書と同じ方式で算定する。
 JCM(2国間クレジット制度)については、削減目標の試算には含まれていないが、JCMの下で
 の削減量や吸収量は、適切な方法でカウントする。
韓国 2030年までに、温室効果ガス排出量を37%削減する。
EU 2030年までに、1990年比で、35%の削減が予期される。
米国(協定離脱) 2025年までに、2005年比で、温室効果ガス排出量を26~28%削減する。
 28%削減へ向けて最大限の努力をする。
カナダ 2030年までに、2005年比で、温室効果ガス排出量を30%削減する。
オーストラリア 2030年までに2005年比で、温室効果ガス排出量を6~28%削減、(了)
2020.02.17  「著者と読者の対話」
          ―吉田裕著 『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』を読む―

半澤健市 (元金融機関勤務)

 一つの読書会が『日本軍兵士』を読み、著者吉田裕氏を招いて「著者と読者の対話」を行った。本稿はその会合の報告である。

《読書会と著作の問題意識》
 私(半澤)が属しているその読書会は、中江兆民の研究者松永昌三氏(以下人名の敬称略)を囲んで一〇数年続いている。メンバーは二〇数名。一年に二冊を各四ヶ月で六回かけて輪読する。報告者は参考文献をいくつか読んでレジュメをつくり内容紹介と分析を行い感想や批判や賛辞を発表する。あとは討論である。その内容は大学院レベルから居酒屋の放談レベルまで広い。退職者の多いメンバーが人生体験から発する発言が面白い。

 軍事史を専門とする吉田裕(よしだ・ゆたか、1954年~)が書いた『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』(2017年刊・中公新書、以下「本書」)は、硬派な内容ながら20万部に達するベストセラーとなった。

 本書を書くときの吉田の問題意識は次の三点であった。
 一つは、戦後歴史学ではほぼ関心外にあった軍事史を、歴史学の立場から主題化すること。二つは、「兵士の目線」を通して戦場の現実を描くこと。元兵士の俳人金子兜太のいう「死の現場」の再現である。
 三つは、「帝国陸海軍」の軍事的特性がもたらす現場の兵士への負荷を明らかにすること。その特性が、戦争指導や軍の組織的特性とどう関係したかを追跡する。

《三年八ヶ月に亘った戦場の実相》
 著者は、「アジア・太平洋戦争(1941~45)」を、戦略的攻勢期・対峙期・戦略的守勢期・絶望的抗戦期の四期に分けた。各時期におけるこの戦争の特質の可視化を図った。全ては述べられないが、読書会では次に列挙する事柄が関心を集めた。

・1944年以降に日本人の戦争死者は全体の91%を占めた。敗北の決定が遅れたから である。
・これら戦没者のうち餓死者が60%もいた。
・不完全な疾病対策により、兵士は虫歯・マラリア・水虫に悩まされた。精神障害への認 識と対策が皆無に等しかった。士気高揚に覚醒剤を使用した。被服・装備が劣悪だった。 食糧の調達は住民からの掠奪を暗黙の前提としていた。
・作戦至上主義をとった。その内容は、短期決戦と精神主義の重視だった。絶望的抗戦期 では、航空・水上・水中・対戦車特攻など非合理・非人道的な作戦を採用した。
・日本戦傷兵らの「処置」や、国際法違反である捕虜虐待などが発生した。
・これらは、国内生産力の国際的劣位と国際法規の無視を反映している。
・統帥権維持のために国内政治権力の分立を方針とした。従って戦争指導の統一が乱れた。 海軍のミッドウェイ海戦敗北は当初、天皇にも陸軍にも伝達されなかった。
・全体に、近代的な軍事力行使には非効率なのが日本軍のシステムであった。

《読書会メンバーからの質問》
 五回の本書読書会は一回3時間の発表と議論に費やした。そのために読書会メンバーの本書に関する「事実認識と問題意識」は、一定程度は共通となった。
 そこで事前にメンバーから著者宛の質問を募った。7名から応募があり質問集として著者に送付した。質問は著作の内容に関するものだけでなく一般的なものもあった。それらの主な項目は次の通りである。

・日本軍の非合理的な精神主義の源泉はどこにあるのか。軍隊だけの問題か。日本近代の 問題か。日本人特有の問題か。
・短期決戦思想を、総力戦体制に学び変更したのに、なぜ再修正して元に戻したのか。
・指導者に失敗の反省がなく責任を取っていない。戦後の企業社会は戦中の軍隊社会の文 化を引き継いでいるのではないか。

・戦争指導及び天皇の戦争責任は何か。統帥権行使の実態はどうだったのか。天皇が個別 の戦闘指導に深く介入したことの意味。仮想敵国を中国・ソ連とし対米戦略への転換が 遅れた理由はなにか。
・本書の読者層と読者からの反応はどんなものか。
・兵士の身体性、兵士の戦場生活と銃後の日常生活との関連、戦後へ連続したものは何か。
・歴史修正主義・右翼言説の猖獗。それらの発生理由は。彼らとの対話の可能性はあるか。・戦争経験者がほぼ消滅した今、戦争認識どう継承してゆくべきか。

《吉田スピーチと丁寧な回答》
 当日の吉田の発言は、スピーチと質疑への応答であったが、前者は著者自身の学問史紹介に始まり本書で強調した点を再説した。後者は読書会の質問個々への丁寧な回答である。
発言の主要な項目と内容は次の通りである。

・吉田軍事史の起源は「軍事オタク」の少年時代である。軍事史を志したのは学部のころ であった。東京教育大文学部・一橋大大学院社会学研究科で学んだ。研究当初のころに 影響を受けたり意識した学者・研究者に藤原彰・黒羽清隆・鹿野政直・秦郁彦がいる。

・日本軍の精神主義は「天皇の軍隊」であったこと、これが天皇制イデオロギーとの接合 してワンセットになったのが主因である。
・統帥権と立憲性原理の両立は、補弼・補翼(ほひつ・ほよく)制度によって、正当化さ れた。特定の補弼主体が権力を握ると天皇大権が空洞化することを恐れて、(権力をも つ)国家機関の分立を図った。このため「統帥と国務」という権力の一元化が成立せず 混乱が生じた。
・天皇の戦争責任は、硫黄島への「特攻をやれ」という発言や、特攻作戦への裁可、海軍 への大海令などの実態をみれば、明治憲法の「無答責」規定によって免責されない。
・兵士による加害と被害の関係は重層的である。どういう歴史叙述が可能かはまだ見通し がない。

・軍隊と社会の関係、兵士の身体性などの研究は『日本の軍隊』(岩波新書)に書いたが、 近刊の『兵士たちの戦後史』(岩波現代文庫)も参照されたい。
・本書読者の反応をみると、この読書会の感想・質問と共通するものが多い。軍隊の組織 原理と戦後企業のそれの類似性を指摘した読者も多かった。
 
《半澤の感想一束》
 吉田軍事史は、軍事研究を回避した戦後歴史学への反省に立ち、細かい事実を積み重ねる方法で本書にみるような成果を生んだ。無論、鳥瞰認識もある。この実証主義の結晶への共感が読書会でも多く聞かれた。しかし誤解を恐れずに言えば、戦後75年にしてこういう状況が生まれたという事実は、我々に反省を促すものである。それは戦争体験の世代間継承に欠落が生じた原因にもなった。その責任は、研究者はもとより「高度成長」の達成に邁進した我々一人ひとりにある。
 一方で論証抜きの歴史修正主義の言説が政権から発せられ、書店の歴史書売場には戦前・戦中と見まがうばかりの出版物が氾濫している。ナショナリズムに負の記号を付して真っ向から論ずることの少なかった戦後の歴史認識の責任でもあろう。

 吉田は本書読者にネトウヨ的読者は少ないと語った。これは読者が自分の好みの書物だけを読むという分断の存在を示して
いる。多様性を認め相対化の精神が必要な戦争認識の継承に困難が待ち受けていることを示す。読書会メンバーからも同様な指摘が多く、しかも速効薬はないとして、黙り込む空気を感じた。

 「著者と読者の対話」は簡単には実行できない。今回報告した「対話」は、必要な条件が絶妙に重なり可能となったケースである。本来、何万部の読者をもつ著者と一人ひとりの読者との会話は「マスメディア」の自己矛盾である。しかし人々が活字を読まなくなった今、「書評的な報告」を書いたのは、読書家に何か参考になろうと思ったからである。(2020/02/12)

■吉田裕著『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』(中公新書・2017年・中央公論新社)、820円+税■
2020.02.16  「本日休載」

今日02月16日(日)は休載します。

リベラル21編集委員会

2020.02.15  自衛隊中東派遣に反対し閣議決定の撤回を求める集会
■短信■

今回の中東派遣、どんな問題がある?

 私たちは、昨年12月12日に自衛隊の中東派遣の閣議決定に反対する声明を発表しましたが、こうした今回の中東派遣の法的問題やその危険性について広く知ってもらおうと、本集会を企画しました。

日時:2月20日(木)18:30~

会場:東京の文京区民センター 3―A(都営三田線・大江戸線春日駅、東京メトロ丸ノ内線後楽園駅、東京メトロ南北線後楽園駅から2分~5分)
 
講演1:「自衛隊の実態、中東情勢について」半田 滋氏
東京新聞論説兼編集委員。獨協大学非常勤講師、法政大学兼任講師、1992年から防衛庁取材を担当。2007年、東京・中日新聞連載の「新防人考」で平和・協同ジャーナリスト基金賞(大賞)を受賞

講演2:「憲法的視点から中東派遣を考える」永山茂樹氏
東海大学法学部教授(憲法学)。一橋大学・同大学院法学研究科修了、青年法律家協会前議長

連帯挨拶:各党から

資料代:500円

共催:改憲問題対策法律家6団体連絡会(社会文化法律センター、自由法曹団、青年法律家協会弁護士学者合同部会、日本国際法律家協会、日本反核法律家協会、日本民主法律家協会)
戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

問い合わせ先:日本民主法律家協会(03-5367-5430)
                                             (岩)