2009.11.07
金飯椀・銀飯椀・銅飯椀 就職難で公務員に応募殺到
こんな「言葉」が!(41) 中国で
丹藤佳紀 (ジャーナリスト)
中国の古典の『漢書』に「民以食為天」(民百姓は、食べることを以って天と為す)という。その意味は、口をもった生き物としての人間に共通するものだろうが、それにとどまらず、形而上学的な分野に及んでいきそうな気がする。それは、食べることが生き方と同じものとみなされる物言いがあるからだ。われわれも日常的に「あいつ、何やって食っているんだ」式の言い方をするときがある。
さて、食べることにかけては、いろいろな意味で世界に冠たる中国だから、「食」に関わる言葉がよく別の意味にも使われる。猿を相手にした4文字成語「朝三暮四」がその一つだが、標題に掲げた「金飯椀」もいい例だろう。「飯椀」は文字通り「飯茶わん」。
この系統の単語でこれまで最も多く使われ、読者のみなさんも目にしたことのあるのは「鉄飯椀」(鉄の飯茶わん)だろう。1970年代までの社会主義経済の時代、国営企業(のちに国有企業と改名)に勤める職員・労働者は、安定した身分で企業の業績にかかわりなく給与は保障され、退職後は年金を受けるという恵まれた待遇だった。食いはぐれのないという意味から、これが鉄飯椀と表現されたのである。
それなら金飯椀とは何をさすのか。大学卒業生の激増した中国では、この数年、厳しい就職難の状況にある。そこで国家公務員が人気を呼んでおり、10月末から始まった採用試験に応募者が殺到している。ただ、そのなかみは後述するが、国家公務員にも格差がある。
いわゆる中央省庁の公務員が金飯椀であり、北京・上海など直轄市と省・自治区の公務員が銀飯椀で地区・市レベルの公務員は銅飯椀、そして町村段階の公務員が鉄飯椀と言い慣らわされているという。
金飯椀から鉄飯椀まで4段階、この段差はどうしてできたのか。職務の範囲や権限、それに将来の昇進などの違いは容易に推測できるだろう。たとえば 胡錦涛総書記の場合、清華大学水利学部出身の彼は水利電力省に勤務し、辺境の甘粛省のダム工事現場に派遣された。そこでの仕事ぶりが中国共産党の同省トップの目にとまり、そこから共産主義青年団を経て党幹部として順調に昇進していったのである。
2009.11.06
韓国李明博政権初の北朝鮮への食料援助
ソウルからの報告(2)
韓国の李明博政権が10月に初めて北朝鮮への食糧支援に踏み切った。しかしその中身は、トウモロコシわずか1万トンの最小限のものだった。支援は、北朝鮮側の要請に応じたもので、韓国側は当初、北が量や品目については注文をつけなかったと説明した。しかしその後韓国大統領府の高官は、北がトウモロコシ10万トン要請したにも関わらず、これを断り、1万トンに限定したことを明らかにした。この高官によれば、北は驚いた様子だったが、渋々受け取ったという。
北が驚いたのも無理はない。李明博政権は、発足間もない去年5月、北に5万トンのトウモロコシ支援を提案したものの、これを逆に拒否された経緯があるからだ。北にすれば、トウモロコシであれば、今回も少なくとも5万トン程度は受け取れると踏んでいたはずだ。実際に韓国政府の実務レベルでは、3万トンの線で議論がされていたが、最終的には李明博大統が1万トンを決断した。北にとっては屈辱的な量だが、米朝協議に向けた雰囲気を壊すこともできず、最終的に受け取ることにしたのだろう。
量に加え、品目をトウモロコシにしたのも李明博大統領だ。コメは、食糧不足に苦しむ一般の国民でなく、軍部や政府の幹部に配給される可能性が高いからだ。その分浮いた経費が、核やミサイルの開発にまわされる懸念もある。10月初めに中国の温家宝首相がピョンヤンを訪れ、中朝友好60周年を記念して、北朝鮮に食糧支援を含む経済支援を約束したが、韓国政府がただちに国連の制裁決議に違反しないとして理解を示したのも、支援の中にはコメが含まれていなかったからだとされている。
韓国政府は、1万トンのトウモロコシ支援は人道的な支援としては「適当な量」だと説明している。しかし北朝鮮に融和的だった過去10年の政権が、▼毎年30万トンから40万トンのコメを送っていたことや、▼慢性的な食糧難に直面している北朝鮮では不足する食糧が毎年100万トン前後に達していることを鑑みれば、1万トンという量がいかに少ないかは明白だ。
李明博大統領は、北への人道支援はしながらも、核開発を続ける限りいかなる妥協もしないという姿勢を「1万トンのトウモロコシ」に込めたのであろう。そうであるなら、北が驚きながらも、渋々受け取ったとのを見て、大統領は「わが意を得たり」と内心、ほくそ笑んでいたに違いない。
大統領にとって誤算だったのはむしろ韓国国内の反応だった。今回の支援に最も反発したのは国内でコメを生産する農業団体だった。背景には、韓国の深刻なコメあまりの現状がある。食の多様化などで、韓国でもコメの消費量が減り続け、毎年平均およそ40万トンの余剰米が生まれている。これまで政府がこれを買い取って北朝鮮に送っていたため、余剰米の問題は表面化してこなかった。しかし2年連続のコメ支援を見送ったことで、すでに80万トンのコメが倉庫に眠っている。
余剰米が少なかったときに比べ、コメの価格はことし10パーセント近く下落し、農民たちの不満が高まっているのだ。「南であまったコメを飢えている北の同胞に送れ」、各地の農業団体が連日集会を開いている。政府は、コメを原料にした加工品の開発を奨励するなど、消費量の拡大を目指しているが、長期的な対策に過ぎず、価格の下落防止にはつながっていない。全国で350万人を占める農業従事者、今月17日にソウルで大規模な抗議集会を開くことにしており、北への食糧支援をめぐって、今後、李明博大統領は難しい判断を迫られることになりそうだ。
K.I.(ジャーナリスト、在ソウル)
韓国の李明博政権が10月に初めて北朝鮮への食糧支援に踏み切った。しかしその中身は、トウモロコシわずか1万トンの最小限のものだった。支援は、北朝鮮側の要請に応じたもので、韓国側は当初、北が量や品目については注文をつけなかったと説明した。しかしその後韓国大統領府の高官は、北がトウモロコシ10万トン要請したにも関わらず、これを断り、1万トンに限定したことを明らかにした。この高官によれば、北は驚いた様子だったが、渋々受け取ったという。
北が驚いたのも無理はない。李明博政権は、発足間もない去年5月、北に5万トンのトウモロコシ支援を提案したものの、これを逆に拒否された経緯があるからだ。北にすれば、トウモロコシであれば、今回も少なくとも5万トン程度は受け取れると踏んでいたはずだ。実際に韓国政府の実務レベルでは、3万トンの線で議論がされていたが、最終的には李明博大統が1万トンを決断した。北にとっては屈辱的な量だが、米朝協議に向けた雰囲気を壊すこともできず、最終的に受け取ることにしたのだろう。
量に加え、品目をトウモロコシにしたのも李明博大統領だ。コメは、食糧不足に苦しむ一般の国民でなく、軍部や政府の幹部に配給される可能性が高いからだ。その分浮いた経費が、核やミサイルの開発にまわされる懸念もある。10月初めに中国の温家宝首相がピョンヤンを訪れ、中朝友好60周年を記念して、北朝鮮に食糧支援を含む経済支援を約束したが、韓国政府がただちに国連の制裁決議に違反しないとして理解を示したのも、支援の中にはコメが含まれていなかったからだとされている。
韓国政府は、1万トンのトウモロコシ支援は人道的な支援としては「適当な量」だと説明している。しかし北朝鮮に融和的だった過去10年の政権が、▼毎年30万トンから40万トンのコメを送っていたことや、▼慢性的な食糧難に直面している北朝鮮では不足する食糧が毎年100万トン前後に達していることを鑑みれば、1万トンという量がいかに少ないかは明白だ。
李明博大統領は、北への人道支援はしながらも、核開発を続ける限りいかなる妥協もしないという姿勢を「1万トンのトウモロコシ」に込めたのであろう。そうであるなら、北が驚きながらも、渋々受け取ったとのを見て、大統領は「わが意を得たり」と内心、ほくそ笑んでいたに違いない。
大統領にとって誤算だったのはむしろ韓国国内の反応だった。今回の支援に最も反発したのは国内でコメを生産する農業団体だった。背景には、韓国の深刻なコメあまりの現状がある。食の多様化などで、韓国でもコメの消費量が減り続け、毎年平均およそ40万トンの余剰米が生まれている。これまで政府がこれを買い取って北朝鮮に送っていたため、余剰米の問題は表面化してこなかった。しかし2年連続のコメ支援を見送ったことで、すでに80万トンのコメが倉庫に眠っている。
余剰米が少なかったときに比べ、コメの価格はことし10パーセント近く下落し、農民たちの不満が高まっているのだ。「南であまったコメを飢えている北の同胞に送れ」、各地の農業団体が連日集会を開いている。政府は、コメを原料にした加工品の開発を奨励するなど、消費量の拡大を目指しているが、長期的な対策に過ぎず、価格の下落防止にはつながっていない。全国で350万人を占める農業従事者、今月17日にソウルで大規模な抗議集会を開くことにしており、北への食糧支援をめぐって、今後、李明博大統領は難しい判断を迫られることになりそうだ。
2009.11.05
なぜ?世界を裏切ったオバマ政権
坂井定雄 (中東ジャーナリスト)
オバマ政権は、イスラエルの入植地拡張について政策を変更した。パレスチナ人、イスラム諸国だけでなく、世界の人々を裏切った。オバマ大統領がイスラム世界との相互理解・尊重への決意を示したカイロ演説(6月)で高まった人々の希望と期待が、大きな失望に変わりつつある。
10月末、パキスタンに次いでイスラエルを訪問したクリントン国務長官は28日、訪問を締めくくる記者会見で、「中東和平交渉再開には(これまでにも)決して前提条件はなかった。いまや入植地問題は交渉の中の問題とみなされる」と、イスラエルの入植地拡張の凍結を前提条件にせずに、中東和平交渉を再開するよう表明した。クリントン発言はもちろん個人的見解ではなく、オバマ大統領の了解のもとでの発言に違いない。
オバマ大統領は就任以来、一貫してイスラエルの入植地拡張に反対を表明してきた。5月にはクリントン長官は大統領の意を受けて「大統領は入植地拡張の停止を望んでいる。例外はない。入植地の一部でもない、前哨拠点でもない、自動的拡張でもない(全部だ)」と明言した。オバマ大統領自身カイロ演説で、入植地拡張の凍結を求めた。そしてオバマから就任2日後に任命されたミッチェル特使は、再三、イスラエルを訪れ、米国が仲介する和平交渉再開のために、入植地拡張の凍結が必要だと、強く要求し続けてきた。
しかし、イスラエル側はごく一部の抑制を表明しただけで、入植者用住宅3000戸の建設など入植地拡張工事を続け、私も「リベラル21」で報告した通り、東エルサレムではパレスチナ人住居の破壊、追い出しを加速した。このため、ミッチェル特使とイスラエル側の交渉は事実上暗礁に乗り上げていた。
2009.11.04
嫌味だけに成り下がった自民党
暴論珍説メモ(69)
2日、衆議院予算委員会が開かれた。民主党新政権と野党自民党との本格的な論戦が始まるかと多少は期待してテレビの前に座ったのだが、やはりそんな期待はむなしかった。「国会で大いに論議を戦わせたい」と双方が言っていたわりには、自民党はどこでどう戦っていいのか分からないといった風で、嫌味ばかりが耳についた。
自民党が繰り出したのは大島理森、町村信孝、加藤紘一のベテラン3人に中堅の後藤田正純という顔ぶれ。とくにひどかったのは大島、町村の両氏で、「おれ達はさんざん政権を運営してきたのだ」という態度を表に出して、素人政権の揚げ足をとるのが論戦と思っているごとくであった。そこにはなぜ自民党があれほどの大敗を喫して、政権党の座から滑り落ちることになったかを考えた形跡はまるでなかった。
嫌味の標的となったのは、予想通りまず沖縄・普天間基地の移設をめぐる鳩山内閣の足並みの乱れである。これについては周知のごとく北沢防衛相は「辺野古移設やむなし」、岡田外相は「嘉手納基地へ統合」という立場をそれぞれ公にして、「閣内不一致」をさらけ出している。統率者の鳩山首相は決定に至る過程では、閣僚がそれぞれの考えを明らかにしてもいい、最後は自分が決めるという態度だ。
まあ格好の攻撃材料だが、町村氏は過去の経緯をれいれいしく何枚もの図表にして持ち出して、自分たちはいかに周到にことを進めて来たか、それに引き換えあなた方は・・・というだけだ。沖縄県民の気持とか、日米安保そのものを取り上げて議論するという気配はまるでない。だから質問はといえば、いったい何時になったら政府の方針を決めるのだということだけだったと言っていい。
民主党政権は自民党政権が5月に成立させた補正予算のうちの約3兆円を執行停止にした。この補正予算は緊急経済対策の一環として本予算に続けて出されたものだから、本来なら「なんということをするのだ!」と拳の一つも振り上げて見せるべきところだ。ところがどうも自民党議員は自分たちが成立させた予算のどこが「ムダ」「不要不急」とされたのかを、調べてもいないらしい。「これをやめたらこういうマイナスがある、景気にこういう悪影響がある」という指摘は全くと言っていいほどなかった。
田畑光永 (ジャーナリスト)
2日、衆議院予算委員会が開かれた。民主党新政権と野党自民党との本格的な論戦が始まるかと多少は期待してテレビの前に座ったのだが、やはりそんな期待はむなしかった。「国会で大いに論議を戦わせたい」と双方が言っていたわりには、自民党はどこでどう戦っていいのか分からないといった風で、嫌味ばかりが耳についた。
自民党が繰り出したのは大島理森、町村信孝、加藤紘一のベテラン3人に中堅の後藤田正純という顔ぶれ。とくにひどかったのは大島、町村の両氏で、「おれ達はさんざん政権を運営してきたのだ」という態度を表に出して、素人政権の揚げ足をとるのが論戦と思っているごとくであった。そこにはなぜ自民党があれほどの大敗を喫して、政権党の座から滑り落ちることになったかを考えた形跡はまるでなかった。
嫌味の標的となったのは、予想通りまず沖縄・普天間基地の移設をめぐる鳩山内閣の足並みの乱れである。これについては周知のごとく北沢防衛相は「辺野古移設やむなし」、岡田外相は「嘉手納基地へ統合」という立場をそれぞれ公にして、「閣内不一致」をさらけ出している。統率者の鳩山首相は決定に至る過程では、閣僚がそれぞれの考えを明らかにしてもいい、最後は自分が決めるという態度だ。
まあ格好の攻撃材料だが、町村氏は過去の経緯をれいれいしく何枚もの図表にして持ち出して、自分たちはいかに周到にことを進めて来たか、それに引き換えあなた方は・・・というだけだ。沖縄県民の気持とか、日米安保そのものを取り上げて議論するという気配はまるでない。だから質問はといえば、いったい何時になったら政府の方針を決めるのだということだけだったと言っていい。
民主党政権は自民党政権が5月に成立させた補正予算のうちの約3兆円を執行停止にした。この補正予算は緊急経済対策の一環として本予算に続けて出されたものだから、本来なら「なんということをするのだ!」と拳の一つも振り上げて見せるべきところだ。ところがどうも自民党議員は自分たちが成立させた予算のどこが「ムダ」「不要不急」とされたのかを、調べてもいないらしい。「これをやめたらこういうマイナスがある、景気にこういう悪影響がある」という指摘は全くと言っていいほどなかった。
2009.11.03
アフガン戦略の決断できぬオバマ大統領(2)
増派めぐり政権内で意見割れる
在アフガニスタン米軍司令官と国際治安支援軍(ISAF)司令官を兼ねるマクリスタル将軍は、8月30日付でゲーツ国防長官あてに詳細なアフガン情勢報告を提出、その中で4万人規模の米軍増派を要請し、増派が得られなければこの戦争に勝てないとの分析を伝えた。この報告を受けたオバマ政権は9月以降、2カ月にわたり米軍増派について鳩首協議をつづけてきたが、未だに結論が出ていない。それは政権内部で米軍増派積極論と慎重論に意見が割れているからだ。
慎重論を代表しているのはバイデン副大統領だ。バイデン氏は以前からカルザイ政権に対する不信感が強く、その汚職体質を厳しく批判してきた。腐敗堕落した今のアフガン政府に支援してもざるに水を注ぐようなものだし、アフガン人を訓練して軍や警察を乱造してもタリバンに対抗できるかどうか疑わしい。むしろ支給された兵器・弾薬は、金のためにタリバン側に横流しされかねない。さらにアメリカの主敵であるアルカイダの首脳部、ウサマ・ビンラディンやザワヒリたちはアフガン領からパキスタン領のパシュトゥン居住区に逃れて、パキスタン・タリバン運動(TTP)にかくまわれている公算が強い。だからアメリカはカルザイ政権を支えるより、TTPと戦っているパキスタン政府をもっと支援すべきだ。したがってアフガニスタンに米軍を増派する必要はない。こうしたバイデン副大統領の考え方に、安全保障担当の大統領補佐官ジョーンズ提督(海兵隊大将)も同調しているという。
アメリカの世論も今や、アフガン戦争に冷たい。今年3月、オバマ大統領がブッシュ政権の対テロ戦争とは異なるアフガン新戦略と米軍2万1千人増派を発表した当時、6割以上のアメリカ人がアフガン戦争を支持した。しかし新戦略の効果は現れず、アフガニスタンの治安は悪化、タリバンの支配区が国土の半分を占めるまでに拡大した。9月以降の世論調査では、「アメリカがアフガン戦争を続ける価値はない」と考える国民が半数を超えている。特にオバマ政権与党の民主党に消極論が強い。かつて現地司令官の要請に応えて最高55万の大軍を送ったのに勝てなかったベトナム戦争を教訓に「オバマのベトナム」を避けよという意見がリベラル派に広がっている。
伊藤力司 (ジャーナリスト)
在アフガニスタン米軍司令官と国際治安支援軍(ISAF)司令官を兼ねるマクリスタル将軍は、8月30日付でゲーツ国防長官あてに詳細なアフガン情勢報告を提出、その中で4万人規模の米軍増派を要請し、増派が得られなければこの戦争に勝てないとの分析を伝えた。この報告を受けたオバマ政権は9月以降、2カ月にわたり米軍増派について鳩首協議をつづけてきたが、未だに結論が出ていない。それは政権内部で米軍増派積極論と慎重論に意見が割れているからだ。
慎重論を代表しているのはバイデン副大統領だ。バイデン氏は以前からカルザイ政権に対する不信感が強く、その汚職体質を厳しく批判してきた。腐敗堕落した今のアフガン政府に支援してもざるに水を注ぐようなものだし、アフガン人を訓練して軍や警察を乱造してもタリバンに対抗できるかどうか疑わしい。むしろ支給された兵器・弾薬は、金のためにタリバン側に横流しされかねない。さらにアメリカの主敵であるアルカイダの首脳部、ウサマ・ビンラディンやザワヒリたちはアフガン領からパキスタン領のパシュトゥン居住区に逃れて、パキスタン・タリバン運動(TTP)にかくまわれている公算が強い。だからアメリカはカルザイ政権を支えるより、TTPと戦っているパキスタン政府をもっと支援すべきだ。したがってアフガニスタンに米軍を増派する必要はない。こうしたバイデン副大統領の考え方に、安全保障担当の大統領補佐官ジョーンズ提督(海兵隊大将)も同調しているという。
アメリカの世論も今や、アフガン戦争に冷たい。今年3月、オバマ大統領がブッシュ政権の対テロ戦争とは異なるアフガン新戦略と米軍2万1千人増派を発表した当時、6割以上のアメリカ人がアフガン戦争を支持した。しかし新戦略の効果は現れず、アフガニスタンの治安は悪化、タリバンの支配区が国土の半分を占めるまでに拡大した。9月以降の世論調査では、「アメリカがアフガン戦争を続ける価値はない」と考える国民が半数を超えている。特にオバマ政権与党の民主党に消極論が強い。かつて現地司令官の要請に応えて最高55万の大軍を送ったのに勝てなかったベトナム戦争を教訓に「オバマのベトナム」を避けよという意見がリベラル派に広がっている。
2009.11.02
好況と就職難と留学について
―チベット高原の一隅にて(57)―
6年ほど前に教えた学生が先日突然やってきた。彼は牧畜地帯の村長の秘書である。村長が漢語の読み書きができないから公文書を読んだりその作成を代行している。遠慮がちに「日本のどこからかカネを出してもらうわけには行かないだろうか」という。
幼稚園を作りたいのだそうだ。彼はわたしが日本大使館の「草の根無償資金」を引出して青海省黄南蔵族自治州で小学校を建てるのに協力したことを知っている。
最近「生態移民」政策のため牧民は彼の故郷の町に集まってきた。町に子どもが増えた。小学校の統廃合で小学1年生から寄宿生活をすることになった。子どもたちのために小学校前の教育は絶対に必要だ――。「だから幼稚園をつくりたい」
「大学卒失業の連中を2,30人雇いたい」
といわれて仰天した。
「それじゃ先生が多すぎるじゃないか」
聞いてみると、彼の小さな県に大学を卒業して失業状態のものが400人はいる。これを雇ってやりたいのだという。わたしはカネの出どころを思案するより大卒失業者の多さに驚いた。この話をさる大学の先生にしたら、「それはまだ少ない、黄南蔵族自治州同仁(レゴン)には千人以上いる」といった。
10月24日付中国「環球時報」紙は「中国GDP成長は再び世界をゆるがせた」とたからかに叫んだ(ように感じる)。
それによると、中国の「第3四半期」(7〜9月期の国内総生産)の経済成長率は8.9%で、世界には中国はどん底を通過したと評価している人が多い。欧米日メディアはみんな驚いている。ロイターなんか「チャイナ=ドラゴンの咆哮再来」といったそうだ。
読売新聞」社説(10月24日)も「中国GDP 高度成長の軌道に戻れるか」という見出しで、「大型の景気刺激策の効果が、各国に先がけて表れた形である。1〜9月で見れば7・7%の伸びで、政府が目標として掲げる通年で8%の関門も、突破できる公算が大きい」という。「日本経済新聞」も回復を伝えている。日本経済には追い風だそうだ。
阿部治平 (中国青海省在住、日本語教師)
6年ほど前に教えた学生が先日突然やってきた。彼は牧畜地帯の村長の秘書である。村長が漢語の読み書きができないから公文書を読んだりその作成を代行している。遠慮がちに「日本のどこからかカネを出してもらうわけには行かないだろうか」という。
幼稚園を作りたいのだそうだ。彼はわたしが日本大使館の「草の根無償資金」を引出して青海省黄南蔵族自治州で小学校を建てるのに協力したことを知っている。
最近「生態移民」政策のため牧民は彼の故郷の町に集まってきた。町に子どもが増えた。小学校の統廃合で小学1年生から寄宿生活をすることになった。子どもたちのために小学校前の教育は絶対に必要だ――。「だから幼稚園をつくりたい」
「大学卒失業の連中を2,30人雇いたい」
といわれて仰天した。
「それじゃ先生が多すぎるじゃないか」
聞いてみると、彼の小さな県に大学を卒業して失業状態のものが400人はいる。これを雇ってやりたいのだという。わたしはカネの出どころを思案するより大卒失業者の多さに驚いた。この話をさる大学の先生にしたら、「それはまだ少ない、黄南蔵族自治州同仁(レゴン)には千人以上いる」といった。
10月24日付中国「環球時報」紙は「中国GDP成長は再び世界をゆるがせた」とたからかに叫んだ(ように感じる)。
それによると、中国の「第3四半期」(7〜9月期の国内総生産)の経済成長率は8.9%で、世界には中国はどん底を通過したと評価している人が多い。欧米日メディアはみんな驚いている。ロイターなんか「チャイナ=ドラゴンの咆哮再来」といったそうだ。
読売新聞」社説(10月24日)も「中国GDP 高度成長の軌道に戻れるか」という見出しで、「大型の景気刺激策の効果が、各国に先がけて表れた形である。1〜9月で見れば7・7%の伸びで、政府が目標として掲げる通年で8%の関門も、突破できる公算が大きい」という。「日本経済新聞」も回復を伝えている。日本経済には追い風だそうだ。
2009.11.01
アフガン戦略の決断できぬオバマ大統領(1)
af-pak現地情勢日に日に悪化
オバマ米大統領はイスラム過激派武装組織のタリバンがアフガニスタン各地で攻勢を活発化している中で、9月から主要補佐官たちとアフガン戦略の見直しを進めているが、2カ月を経てもなお決断できないでいる。この間、現地のアフガニスタン、パキスタンでは情勢が日ごとに悪化、敵対する勢力双方の死傷者が激増し、アフガン戦争開始以来の8年間で最悪の数字を更新している。遅くともアフガン大統領選挙決選投票の11月7日の前後には、オバマ大統領も米軍増派を含む決断を下すとみられているが、それが吉と出るか凶と出るか。ノーベル平和賞を受けるオバマ氏にとって最大の試練が待ち構えている。
8月20日に行われたアフガン大統領選挙は、開票直後から再選を目指すカルザイ大統領派の「不正選挙」を告発する声が上がり、国連の監視団が2カ月もかけて調査をしたあげくに、1位のカルザイ候補と2位のアブダラ候補(元外相)との間で決選投票を11月7日に行うことで決着した。渋るカルザイ氏にスポンサーの米国が強い圧力を掛け、決選投票を呑ませた。カルザイ氏と言えば2001年末米軍と北部同盟がタリバン政権を追放した後、米国が暫定政府の議長に担ぎ出したことで頭角を表し、以後2004年の大統領選挙で当選した人物で、反政府派からは「アメリカの傀儡」視されてきた。
そのカルザイ大統領を頂いたアフガン政府は、汚職と麻薬密輸のスキャンダルにまみれている。大統領はタリバンが基盤としているパシュトゥン民族(多民族国家アフガニスタンで一番多い民族。全人口の44%を占める)の出身だが、タジク民族(同2番目で25%)を中心に構成され、タリバン追放に功績のあった北部同盟には足場がない。そこで北部同盟のファヒム前国防相とコンビを組んで権力を維持してきた。しかしタジク軍閥の頭であるファヒム氏は麻薬財閥の顔も持っている。軍閥の頭にとって、兵員を養い武器を入手するための資金を稼ぐの手っとり早い手段は、この国特産のヘロインの密輸ビジネスである。彼は米国からの軍事援助資金をを流用してロシア製の貨物機を購入、ロシアからヨーロッパへの密輸ルートを開いて、アフガン随一の麻薬王になったと言われている。
伊藤力司 (ジャーナリスト)
オバマ米大統領はイスラム過激派武装組織のタリバンがアフガニスタン各地で攻勢を活発化している中で、9月から主要補佐官たちとアフガン戦略の見直しを進めているが、2カ月を経てもなお決断できないでいる。この間、現地のアフガニスタン、パキスタンでは情勢が日ごとに悪化、敵対する勢力双方の死傷者が激増し、アフガン戦争開始以来の8年間で最悪の数字を更新している。遅くともアフガン大統領選挙決選投票の11月7日の前後には、オバマ大統領も米軍増派を含む決断を下すとみられているが、それが吉と出るか凶と出るか。ノーベル平和賞を受けるオバマ氏にとって最大の試練が待ち構えている。
8月20日に行われたアフガン大統領選挙は、開票直後から再選を目指すカルザイ大統領派の「不正選挙」を告発する声が上がり、国連の監視団が2カ月もかけて調査をしたあげくに、1位のカルザイ候補と2位のアブダラ候補(元外相)との間で決選投票を11月7日に行うことで決着した。渋るカルザイ氏にスポンサーの米国が強い圧力を掛け、決選投票を呑ませた。カルザイ氏と言えば2001年末米軍と北部同盟がタリバン政権を追放した後、米国が暫定政府の議長に担ぎ出したことで頭角を表し、以後2004年の大統領選挙で当選した人物で、反政府派からは「アメリカの傀儡」視されてきた。
そのカルザイ大統領を頂いたアフガン政府は、汚職と麻薬密輸のスキャンダルにまみれている。大統領はタリバンが基盤としているパシュトゥン民族(多民族国家アフガニスタンで一番多い民族。全人口の44%を占める)の出身だが、タジク民族(同2番目で25%)を中心に構成され、タリバン追放に功績のあった北部同盟には足場がない。そこで北部同盟のファヒム前国防相とコンビを組んで権力を維持してきた。しかしタジク軍閥の頭であるファヒム氏は麻薬財閥の顔も持っている。軍閥の頭にとって、兵員を養い武器を入手するための資金を稼ぐの手っとり早い手段は、この国特産のヘロインの密輸ビジネスである。彼は米国からの軍事援助資金をを流用してロシア製の貨物機を購入、ロシアからヨーロッパへの密輸ルートを開いて、アフガン随一の麻薬王になったと言われている。
2009.10.31
日航の再建はGM方式しかない
政府のご都合主義は甘やかしの継続に通じるだけ
前原誠司・国交相は29日、破綻寸前の日本航空を、企業再生支援機構を利用して救済することを決めた。同機構が保有する1.6兆円規模の公的資金枠を使えば自立再建が可能という判断のようである。だが、政府が自立再建にこだわるのは、日航を破綻させると社会的、経済的影響が大きすぎるので避けたいという、政府のご都合主義からきているのではないか。ご都合主義は、日航の破綻の原因となった「甘やかし」の継続に通じるだけである。日航の再建は法的処理と公的支援を組み合わせたGM方式によるほかないと思う。
前原氏が国交相就任以来、意図した「JAL再建タスクフォース」による再建が成功しなかったのは、タスクフォースの権限不足もあるが、国交省が自立再建にこだわったからである。その結果、日航のOBは年金の減額を拒否、融資銀行団は債権放棄に応じず、問題解決の高い壁となった。
オバマ政権がGM再建の際使った法的処理と公的支援を組み合わせた方式を採用していれば、2つの壁は容易に越えることができたはずである。国交省が最もオーソドックスと見られる方式を避けたのは、法的処理を行うと、日航の再建を確実にするために不採算路線の廃止などに大ナタを揮わなくてはならず、その結果、民間航空の来ない地方空港が続出することを恐れたためと見られる。
企業再生支援機構を利用しても、自立再建であることには変わりはない。公的資金を利用しやすくなるだけである。それに伴って銀行団に債権放棄を求めやすくなるかもしれない。しかし、最大の問題である年金基金の積立不足額の圧縮のメドは立たない。日航社員の再建のために犠牲を払う姿勢はむしろ緩むであろう。
年金の減額を特別立法で強制的に行うという案が浮上しているが、無理筋ではないか。逆に、年金水準が世間の相場より高いままであると、企業再生支援機構の最大のメリットであった公的資金の投入が難しくなってしまうというジレンマに陥る。
早房長治 (地球市民ジャーナリスト工房代表)
前原誠司・国交相は29日、破綻寸前の日本航空を、企業再生支援機構を利用して救済することを決めた。同機構が保有する1.6兆円規模の公的資金枠を使えば自立再建が可能という判断のようである。だが、政府が自立再建にこだわるのは、日航を破綻させると社会的、経済的影響が大きすぎるので避けたいという、政府のご都合主義からきているのではないか。ご都合主義は、日航の破綻の原因となった「甘やかし」の継続に通じるだけである。日航の再建は法的処理と公的支援を組み合わせたGM方式によるほかないと思う。
前原氏が国交相就任以来、意図した「JAL再建タスクフォース」による再建が成功しなかったのは、タスクフォースの権限不足もあるが、国交省が自立再建にこだわったからである。その結果、日航のOBは年金の減額を拒否、融資銀行団は債権放棄に応じず、問題解決の高い壁となった。
オバマ政権がGM再建の際使った法的処理と公的支援を組み合わせた方式を採用していれば、2つの壁は容易に越えることができたはずである。国交省が最もオーソドックスと見られる方式を避けたのは、法的処理を行うと、日航の再建を確実にするために不採算路線の廃止などに大ナタを揮わなくてはならず、その結果、民間航空の来ない地方空港が続出することを恐れたためと見られる。
企業再生支援機構を利用しても、自立再建であることには変わりはない。公的資金を利用しやすくなるだけである。それに伴って銀行団に債権放棄を求めやすくなるかもしれない。しかし、最大の問題である年金基金の積立不足額の圧縮のメドは立たない。日航社員の再建のために犠牲を払う姿勢はむしろ緩むであろう。
年金の減額を特別立法で強制的に行うという案が浮上しているが、無理筋ではないか。逆に、年金水準が世間の相場より高いままであると、企業再生支援機構の最大のメリットであった公的資金の投入が難しくなってしまうというジレンマに陥る。
2009.10.30
残したい「国の宝」である自然景観
「八ツ場ダム」と「上関原発」の現地を見て思う
「うわー、あそこの写真じゃないか」。10月26日付の朝日新聞朝刊に目をやって思わず声をあげた。一面に渓谷を鮮やかに彩る紅葉のカラー写真が載っており、「八ツ場ダム 色づく予定地」との見出しがついていた。いま問題になっている、群馬県の八ツ場(やんば)ダム建設予定地の紅葉が見頃を迎えているという記事だったが、なんと私はその前日の25日にこの紅葉を現地で堪能したばかりであったからである。
私は埼玉県南部に住んでいるが、私が入会している町内会は、毎年秋、会員親睦のための日帰りバス旅行を実施している。今年は、60数人が観光バス2台に分乗して群馬県沼田市へリンゴ狩りに出かけた。
毎年、リンゴ狩りの後、一、二カ所の観光地を回る。今年は浅間山麓の鬼押出しの探訪が予定に組まれていた。このため、バスは沼田から日本ロマンチック街道(国道145号)を西に向かった。すると、添乗員からアナウンスがあった。「途中、八ツ場ダムの建設予定地を通ります。ダム建設中止問題が持ち上がってから、現地を見ようと車でやってくる人が増え、このところ、連日、車の渋滞が続いているとのことです。きょうは日曜日なので一層混んでいるかもしれません」
私は、八ツ場ダム建設予定地を見たことがなかった。だから、建設中止問題が持ち上がって以来、一体どういうところなのか、一度この目で見てみたい、と思うようになっていた。それだけに、添乗員のアナウンスに大変興味を覚えた。
山あいを縫うように進む街道が、高山村、中之条町を過ぎると、左手に渓谷が見えてきた。「吾妻(あがつま)渓谷」だった。渓谷には利根川の支流である吾妻川が流れていた。大昔に火山から流れ出た溶岩を吾妻川の川水が浸食してできた深い渓谷だった。長さは約3・5キロ。
両岸に生い茂るカエデ、クヌギ、アカマツなどが赤く染まり、ちょうど紅葉の最盛期だった。急峻な崖に挟まれた谷底には清澄な川水が静かに流れていた。清冽なせせらぎだった。渓谷には遊歩道があり、その近くの駐車場は車で満杯だった。観光客の車だった。
バス内からこうした景観を眺めていた町内会会員から次々と歓声があがった。「わあ、きれい」「すごい紅葉ね」「川水もきれいだこと」。それもそのはず、聞くところによると、この吾妻渓谷は国指定名勝とのことだった。私もその景観に魅せられ、まさに国指定名勝の名にふさわしいと思った。
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
「うわー、あそこの写真じゃないか」。10月26日付の朝日新聞朝刊に目をやって思わず声をあげた。一面に渓谷を鮮やかに彩る紅葉のカラー写真が載っており、「八ツ場ダム 色づく予定地」との見出しがついていた。いま問題になっている、群馬県の八ツ場(やんば)ダム建設予定地の紅葉が見頃を迎えているという記事だったが、なんと私はその前日の25日にこの紅葉を現地で堪能したばかりであったからである。
私は埼玉県南部に住んでいるが、私が入会している町内会は、毎年秋、会員親睦のための日帰りバス旅行を実施している。今年は、60数人が観光バス2台に分乗して群馬県沼田市へリンゴ狩りに出かけた。
毎年、リンゴ狩りの後、一、二カ所の観光地を回る。今年は浅間山麓の鬼押出しの探訪が予定に組まれていた。このため、バスは沼田から日本ロマンチック街道(国道145号)を西に向かった。すると、添乗員からアナウンスがあった。「途中、八ツ場ダムの建設予定地を通ります。ダム建設中止問題が持ち上がってから、現地を見ようと車でやってくる人が増え、このところ、連日、車の渋滞が続いているとのことです。きょうは日曜日なので一層混んでいるかもしれません」
私は、八ツ場ダム建設予定地を見たことがなかった。だから、建設中止問題が持ち上がって以来、一体どういうところなのか、一度この目で見てみたい、と思うようになっていた。それだけに、添乗員のアナウンスに大変興味を覚えた。
山あいを縫うように進む街道が、高山村、中之条町を過ぎると、左手に渓谷が見えてきた。「吾妻(あがつま)渓谷」だった。渓谷には利根川の支流である吾妻川が流れていた。大昔に火山から流れ出た溶岩を吾妻川の川水が浸食してできた深い渓谷だった。長さは約3・5キロ。
両岸に生い茂るカエデ、クヌギ、アカマツなどが赤く染まり、ちょうど紅葉の最盛期だった。急峻な崖に挟まれた谷底には清澄な川水が静かに流れていた。清冽なせせらぎだった。渓谷には遊歩道があり、その近くの駐車場は車で満杯だった。観光客の車だった。
バス内からこうした景観を眺めていた町内会会員から次々と歓声があがった。「わあ、きれい」「すごい紅葉ね」「川水もきれいだこと」。それもそのはず、聞くところによると、この吾妻渓谷は国指定名勝とのことだった。私もその景観に魅せられ、まさに国指定名勝の名にふさわしいと思った。
2009.10.29
「頼りない鳩山!」の復活?
「暴論珍説メモ」68
「あれもやります、これもやります、財源は確保できると信じます、国債は抑えます」
26日から始まった鳩山政権下での臨時国会、初日の所信表明演説、28日の自民、公明両野党の代表質問を通じて、鳩山首相の言ったことは上の一行につきる。そして「皆さん、一緒にやろうじゃありませんか」という選挙中さながらの呼びかけばかりが耳に残る。
政権発足から2ヶ月強、まだスタート直後だから多少は大目に見なければという気持は勿論ある。応援する気持も。しかし、2ヶ月経ったのだからもう少し内閣らしく居住まいを正して欲しいという気持もわく。そして後者が日々強くなる。
まず所信表明演説、確かに力は入っていた。そして長かった。52分あったそうである。普通の倍くらいである。しかし、新聞紙上であらためて通読してみると、長い選挙公報のごとくである。読むのがすこし辛い。
「議員の皆さん、皆さんが受け止めた、国民一人ひとりの願いを、互いにかみしめ、しっかりと、一緒に実現していこうではありませんか」
選挙で勝った感動が素直に表現されている。でも大人なのだから、こういう部分はなるべく小さくして、政権運営をこうするというところを聞きたい。しかし、この演説には青森県のおばあさん、チョーク工場の社長さん、アインシュタイン博士の言葉が引用される。ご本人がそれぞれ感動されてのことだから仕方がないが、ファンを相手の個人講演会ではない。私などはこういう話は衆院本会議場で聞きたくない。もっとドライに必要なことだけを言ってもらいたい。
その政権運営に関する部分だが、それがほとんどマニフェストをなぞるだけで、先へ進んでいない。むしろマニフェストより冗長である。すくなくとも2ヶ月は政権を運営したのだから、マニフェストのこれは難しい、これは出来そうだ、くらいのことは言ってもらいたかった。どうも鳩山氏、選挙の勝利に感動のあまり、頭がそこでストップしてしまったのではないだろうか。だから口を開けば、あの勝利した選挙の日々の台詞が何度でもとび出してくるのではないか。
田畑光永 (ジャーナリスト)
「あれもやります、これもやります、財源は確保できると信じます、国債は抑えます」
26日から始まった鳩山政権下での臨時国会、初日の所信表明演説、28日の自民、公明両野党の代表質問を通じて、鳩山首相の言ったことは上の一行につきる。そして「皆さん、一緒にやろうじゃありませんか」という選挙中さながらの呼びかけばかりが耳に残る。
政権発足から2ヶ月強、まだスタート直後だから多少は大目に見なければという気持は勿論ある。応援する気持も。しかし、2ヶ月経ったのだからもう少し内閣らしく居住まいを正して欲しいという気持もわく。そして後者が日々強くなる。
まず所信表明演説、確かに力は入っていた。そして長かった。52分あったそうである。普通の倍くらいである。しかし、新聞紙上であらためて通読してみると、長い選挙公報のごとくである。読むのがすこし辛い。
「議員の皆さん、皆さんが受け止めた、国民一人ひとりの願いを、互いにかみしめ、しっかりと、一緒に実現していこうではありませんか」
選挙で勝った感動が素直に表現されている。でも大人なのだから、こういう部分はなるべく小さくして、政権運営をこうするというところを聞きたい。しかし、この演説には青森県のおばあさん、チョーク工場の社長さん、アインシュタイン博士の言葉が引用される。ご本人がそれぞれ感動されてのことだから仕方がないが、ファンを相手の個人講演会ではない。私などはこういう話は衆院本会議場で聞きたくない。もっとドライに必要なことだけを言ってもらいたい。
その政権運営に関する部分だが、それがほとんどマニフェストをなぞるだけで、先へ進んでいない。むしろマニフェストより冗長である。すくなくとも2ヶ月は政権を運営したのだから、マニフェストのこれは難しい、これは出来そうだ、くらいのことは言ってもらいたかった。どうも鳩山氏、選挙の勝利に感動のあまり、頭がそこでストップしてしまったのではないだろうか。だから口を開けば、あの勝利した選挙の日々の台詞が何度でもとび出してくるのではないか。












