2017.07.19 稀代の弁護士・池田眞規さんを悼む
              核兵器廃絶と被爆者救援に献身

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 国連の会議で核兵器禁止条約が採択されたというニュースに接したとき、私の脳裏に浮かんできたのは、昨年11月13日に88歳で亡くなった池田眞規・弁護士のことだった。池田さんこそ、全身全霊を込めて平和憲法擁護と核兵器廃絶、被爆者救援に奔走した稀代の弁護士だったからである。「池田さんも、あの世で核兵器禁止条約の採択を喜んでいるに違いない」。そんな思いに私はしばし浸った。

 核兵器の廃絶をめざす日本法律家協会(略称・日本反核法律家協会、JALANA)の機関誌『反核法律家』の最新号である第91号(2017年 春号)に、特別企画「池田眞規前会長を偲んで」が掲載されている。同号58ページのうち21ページがこの特別企画。大特集と言ってよい。これをベースに池田さんの生涯を紹介したい。

 池田さんは1928年(昭和3年)に韓国・大邱で生まれ、釜山で育った。敗戦後、日本に引き揚げ、1953年に九州大学法学部を卒業。風早八十二弁護士事務所の事務員となり、1966年に弁護士登録。

 弁護士登録とともに、池田さんは百里基地訴訟の弁護団に加わり、やがて、その事務局長になるが、これは、航空自衛隊基地建設をめぐる憲法訴訟だった。1950年代半ば、政府は茨城県小川町(現小美玉市)にあった旧海軍航空隊の跡地を買収し、航空自衛隊の基地を建設しようとした。これに対し、地元の反対派農民が、自衛隊を憲法9条違反として土地買収の無効を主張し、土地所有権をめぐる裁判となった。結局、1989年に最高裁が憲法判断を回避して国の所有権を認める判決を下し、農民側の敗訴となった。

 池田さんはそのかたわら、長沼ナイキ基地訴訟の弁護団にも加わる。これも自衛隊の合憲性が問われた訴訟だった。北海道長沼町に航空自衛隊のナイキ地対空ミサイル基地を建設するため政府が1969年に国有保安林の指定を解除、これに対し地元の住民が、「自衛隊は違憲、したがって保安林指定解除は違法」として、処分の取り消しを求めて起こした訴訟だ。一審の札幌地裁は初の違憲判決で処分を取り消したが、二審の札幌高裁は一審判決を破棄。住民側は上告したが、最高裁は1982年、憲法には触れず、原告適格がないとしてこれを棄却した。
 
 百里基地訴訟、長沼ナイキ基地訴訟は、北海道の恵庭事件と並んで自衛隊の憲法違反を問うた裁判であった。池田さんは、憲法第9条がうたう「戦争放棄」「戦力不保持」を実現するためひたすら奔走したわけである。
 その延長だろう。1991年に湾岸戦争が勃発し、海部政権が多国籍軍に91億ドルを支出すると、市民有志が「湾岸戦争国費支出違憲訴訟」を起こしたが、この時、池田さんは弁護団の団長格としてこれを支えた。

 1970年代後半からは、原爆被爆者との交流が始まる。百里基地訴訟の控訴審がきっかけだった。池田さんは、医療関係団体の機関紙上で語っている。「私が被爆者と出会ったのは1977年の百里基地訴訟一審判決がきっかけでした。その判決は『自衛のために防衛措置をとることを憲法は禁止していない』という最悪のものでした。『これは裁判官が“政府の行為によって再び戦争の惨禍をくりかえさない”という憲法の立場で9条を解釈していないからだ』と私たちは考えました。そこで 控訴審では『戦争の惨禍』を裁判官の頭に叩き込もう、と法廷での証人を被爆者にお願いしたのです。人類初の核兵器に苦しむ、戦争の最大の犠牲者ですから」。その時、証言台に立ったのは、この3月に亡くなった被爆医師・肥田舜太郎さんだった。

 被爆者たちは、1970年代初めから、国家補償に基づく被爆者援護法の制定を政府に求め続けた。これに対し、厚生大臣(今の厚生労働大臣)の諮問機関の原爆被爆者対策基本問題懇談会が、1980年に「原爆も戦争被害であるから受忍すべきだ」とする援護法制定の必要性を否定する報告書をまとめた。怒った日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)と市民団体が「核兵器の非人道性を告発する国民法廷」を全国で展開すると、池田さんは他の弁護士と共にこれを全面的に支援した。

 その後、池田さんの活動は国際的な団体との連帯を深めてゆく。なかでも、池田さんが大きな役割を果たしたのは「世界法廷運動」だ。
 1992年のことだ。国際平和ビューロー(IPB)、核戦争防止国際医師の会(IPPNW)、反核国際法律家協会(IALANA)、世界保健機関(WHO)といった国連専門機関が、世界法廷運動を提唱する。国際司法裁判所(IJC、オランダ・ハーグ)に「核兵器の使用は国際法違反」との決定を出させようという運動だった。
 日本にその情報をもたらしたのは池田さんだった。なぜなら、池田さんは1989年にハーグで開かれたIALANAの設立総会に参加していたからである。

 この提唱に日本の原水爆禁止関係団体は積極的な反応を示さなかったが、池田さんの呼びかけに応えた日本被団協や日本生活協同組合連合会を中心とする市民団体が、IJCへの要請署名に取り組み、集めた310万筆の署名をIJCに提出した。
 1996年7月、IJCは「核兵器の使用・威嚇は一般的には国際法、人道法の原則に反する」とした国連への勧告的意見を発表、核軍縮史上の画期的な出来事として世界的な反響を呼び起こす。今回の国連会議における核兵器禁止条約の採択も、この世界法廷運動の延長線上にあると言ってよい。条約には「ヒバクシャおよび核実験の被害者にもたらされた容認しがたい苦難と損害に留意し」と書き込まれた。

 この運動を進める中で、池田さんは日本反核法律家協会(JALANA)の創設に主導的役割を果たし、1994年の協会設立時には事務局長に就任。2004年から2010年まで会長を務めた。

 晩年における最大の功績は、原爆症認定集団訴訟の弁護団長を務めたことだろう。
 被爆者は、原爆による放射線が原因の病気やけがについて全額国の負担で医療の給付が受けられるが、そのためには、病気やけがが原爆の障害作用によるもので、現に治療を要するという厚労相の認定を受けなければならない。しかし、国は2003年当時、被爆者27万人のうち約2200人(0.81%)しか原爆症と認定せず、多くの認定申請を却下してきた。このため、2003年から全国各地で原爆症認定集団訴訟が起こされ、裁判は17の地方裁判所に及んだ。各裁判所は国の認定行政を批判し、原告・被爆者側の「連戦連勝」に終わった。2009年には、麻生太郎首相・自民党総裁と日本被団協との間で「一審判決を尊重する」などとする、集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書が調印された。

 2011年に被爆者の体験記、証言集、被爆者運動の資料などを収集して後世に残そうという「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」が発足すると、池田さんは副会長を引き受けた。

 「眞規さんは被爆者にしっかり寄り添っての生涯を全うされた。感謝の気持ちで一杯だ」。前日本被団協事務局長の田中熙巳さんは、『反核法律家』の特別企画「池田眞規前会長を偲んで」に寄せた追悼文でそう書いている。  
 池田さんは、被爆者との交流を深める中で、原爆被害の悲惨さを知り、被爆者の声に耳を傾けなければならない、何としても核兵器はなくさなければならない、との思いを強めていったのではないか。晩年には、よく「被爆者は神様だ」と話していたという。おそらく、それは「被爆者こそ、人類が核時代を生きるための道標を示す預言者のような存在」という意味だったろうと私は思う。

 私の記憶の中の池田さんは、いつも万年青年と思える黒々した髪をしていて、声は弾み、大きな目をしていた。人なつっこく、しかも他人に対し面倒見がよかった。
 ただ、その長話、長電話に悩まされた人もいたようで、特別企画でも、2人が長話、長電話をめぐるエピソードを語っている。私が池田さんを取材したのは「世界法廷運動」が始まったころのことだが、その時も、深夜、よく自宅に電話がかかってきた。それは、とうとうと自説を述べ、それへの賛同を求める長電話だった。

 特別企画は、池田さんと親交があった反核国際法律家協会関係者からのお悔やみメッセージ」で締められている。冒頭にあるのは、C・G・ウィーラマントリー判事(スリランカの最高裁判事を務めた後、1991年から2000年まで国際司法裁判所の裁判官を務め、副所長も歴任。2017年1月、死去)からのものだ。
 そこには「池田先生は、核兵器が全類にとっての脅威となって増大していることを、世界の民衆に知らしめる偉大な役割を果たしました」とある。
 池田さんは世界的に注目されていた人物だったのだ。
2017.07.15 チャージとケンブリッジを考える
              小山の教育通信 [2017.7月-2]         
 
小山和智 (グローバル化社会の教育研究会事務局長)

日本の学校は、夏休みに入っていきます。社会人にとっても、夏休みは大事な“充電 (charge)”の機会ですね。「charge」の語源はラテン語の「carrus (荷馬車)」で、“荷物を積む (load), 込める (fill)”のイメージが基礎にあります。電子工学の“負荷をかける”という訳語も、同じ発想から生まれました。

他方、「charge」は、相手に対価や貢献を要求したり 襲ったりする意思の表現でもあり、軍隊なら“突撃”です。「Charge bayonets!」(着剣!=歩兵銃に銃剣を装着) も実質的な“突撃用意”。山岳部の用語でも、リーダーが言う「用意しとけよ!」は出発の号令……それがわかるまで、新参者は出遅れ慌てることになります。また、サッカーでチャージは、身体で敵を押しのけて攻め込んだり守ったりすることです。

英語圏への留学・研修などを考える時、「Cambridge」がついた用語の多いことに驚かれるでしょう。
ギリシア神話の「アマゾン族 (Amazones)」は、黒海沿岸に住む女の狩猟部族(huntresses) です。古代ローマ建国に活躍した女傑カミーラもアマゾン族で、ローマ人がブリテン島のグランタ川を占領した際、彼女にちなんで「カム (Cam)」と名づけました。カム川が瘤<こぶ>のように蛇行する高台に 砦(+橋) を設けた場所は、「Cam-bridge」と呼ばれます。13世紀初め、オクスフォードの地元住民と学生との紛争があり、そこから逃れた学者たちがここに住み着き、研究・教育活動を始めたことが、ケンブリッジ大学の起源です。

アメリカでは1638年に、清教徒派のJ・ハーバード牧師が、マサチューセッツ州ボストン郊外の「新町 (Newtowne)」にあった広大な土地と膨大な蔵書を遺贈し、大学が設立されました。ハーバードも初代校長も、当時の在ボストン総督も皆、英国のケンブリッジ大学OBでしたので、町の名前は「ケンブリッジ」に改名されました。現在では、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)をはじめとする60以上の大学が集まり、全米一の研究学園都市となっています。
ちなみに、ケンブリッジを中国語で「剣橋 」と書くのは、オクスフォード(牛津)と同様、日本語からの借用です。

それでは、例によって他のニュースも。
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ASIA-NET 第5回クロス・ナレッジセミナー

日 時  7月20日(木) 午後7時~8時半
場 所  南部労政会館 (東京都品川区大崎1-11-1 ゲートシティ大崎)
テーマ  『主張のテクニック・反論のテクニック』 講師:吉村 章 ((株)クロスコスモス代表)
※ 議論の主導権をとるテクニック、ビジネス折衝のシナリオの作り方など“現場力”を鍛えます。
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日本能率協会 第一回 教育施設リニューアル展

日 時  7月19日(水)~21日(金) 午前10時~午後5時
場 所  東京ビッグサイト(東京都江東区有明3-11-1)
※ アクティブラーニング推進による教育プログラムの質向上と学習者の能力開発の支援により、新たな地域空間を。
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サッカーではルール上、チャージの際に肘を上げてはいけません。しかし、脇を締めるどころか、相手のユニフォームをつかんで引っ張ることが、国際試合で横行しています。紳士のスポーツ という気はないのでしょう。

アメリカ独立戦争当時(18世紀)の米ケンブリッジは、浅瀬を歩いて上陸しなければならなかったため、英国軍の士気は下がったそうです。アヘン戦争当時の上海の黄浦江も同じでしたが、直ぐに「外灘 (The Bund)」(築堤・埠頭) が整備されます。

今回、九州北部を襲った集中豪雨では、大きな被害が出ています。被災者の皆様には 心よりお見舞い申し上げます。海面温度の上昇が 異常気象の原因とされますが、さらに上昇中…… 私たちは今、何ができるかを考えましょう。

七夕の7日、核兵器禁止条約が国連で採択されました。核兵器の非保有国 122ヶ国の賛成ですが、日本政府は反対表明。被爆国として核廃絶の先頭に立っていたはずですけど、どうなっているのでしょう?

海外研修や留学だけでなく、国内の林間学校やキャンプなどに出かける人も多いでしょう。準備の最終点検を…… とくに海外では 「THC」(大麻) の表示に注意するよう 再確認を怠りなく。
どこにも出かけない人も、熱中症にはご用心を。ごきげんよう。

小山 和智 ( OYAMA, Kazutomo)

 http://www.toshima.ne.jp/~kyoiku/
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(過去のニュースは 下記をご覧ください。)
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2017.07.12 青年の教養が向上しない本当の理由について       
    ――八ヶ岳山麓から(226)――
              
阿部治平 (もと高校教師)


すでに2ケ月余り前になるが、文部科学省が小中学校の教員の勤務実態調査を公表した。10年前と比較して勤務時間が4時間から5時間余り長くなり、中学では週63時間18分だ。いわゆる「過労死ライン」に達する計算となる週60時間以上の勤務は、小学校で3人に1人、中学では6割近くにのぼる(毎日2017・04・29)。
この統計の中身には、部活動指導時間が無視できない位置を占めている。以下これについて述べる。

中学高校の教師になると、だれでも部活動「顧問」をやらされる。むりやり顧問にさせられた結果どうなるか。経験のないスポーツ部をあてがわれ、生徒にばかにされたことのある教師はごまんといるだろう。最近の悲劇的な例は、栃木県高校山岳部の合同冬山訓練で雪崩によって亡くなった若い教師である。彼は登山経験がなく、積雪斜面のもつ危険が全然わからないまま生徒を「引率」して、ともに死に至ったのである。私は「山屋」としてことばがない。
スポーツ科学を含めて、その指導法をまともに修得した教師がどのくらいいるだろうか。有名指導者(監督)でも、たいていは練習内容は自分の経験から一歩も出るものでなく、「千本ノック」などの反復練習と「根性教育」が主流にならざるをえない。過度の練習は、生理上も技能向上のうえでも不合理であることは定説になっている。高校大学時代練習に明け暮れた体育教師は、30過ぎるとたいてい自己の身体にそれを感じているはずである。

小中高の教育は「ゆとり」すなわち「ひま」が十分になければならぬ。「昨日の授業はまずかった」とか「今日あの子はふさいでいたがなぜか」と反省し、明日の準備を十分にやって、はじめて生徒に学ぶ楽しさを体験させることができるというものである。
ところが、教員勤務評定では部活動指導が「指導熱心」と評価される。教師の中には功名心をくすぐられて勝つことのみを生きがいにし、なかには1年365日全然休まなかったことを「誇り」にするノーテンキが出る。体は丈夫だが、脳みそはオカラ状態だ。授業はいいかげん、生活観察もおろそかになる。
ひと昔まえ「ゆとり教育」が試みられた。これは近頃テレビへの露出著しい京都造形芸術大学芸術学部マンガ学科教授の寺脇研氏が文部官僚時代に主唱したものである。だが「ゆとりの時間」はたちまち塾通いに変じ、現場からも不満たらたらで数年でとりやめになった。もし大学入試制度の改革と教師の「ゆとりの時間」がこれにともなっていたら、寺脇氏は改革者として称賛されたであろうに。

近年は学校外のスポーツクラブから有力選手が輩出するようになったが、いまでも、かなりの程度スポーツ選手の養成を学校が負担している。問題はその他大勢が参加するスポーツ系部活動のありかたである。
中学では、高校入試で部活動が重視されるからという理由で、70~80%くらいの生徒を加入させる。親も生徒も部活動を義務だと思い込んでいる。私の勤務した高校のひとつに全員参加という学校があった。理由は、放課後ワルどもが何をするかわからない。そこで教師の勤務時間が終わる5時までは学校に閉じ込めておくという趣旨であった。だが全員参加したらどの部もパンクする。高校を少年刑務所と錯覚した発想だった。

スポーツ系とは限らないが、たいてい練習は放課後4~5時間、さらに授業が始まる前の「朝練」がある。生徒は疲れて授業時間に居眠りする。予復習も宿題もできない。私は退職前の数年間進学高校にいたが、そこでも野球部など名の知れた運動部に参加している生徒は、授業中公然と寝ていた。私の授業では運動部の生徒はいなかったが、それに付随した応援団とかブラスバンドのメンバーがいた。彼らもまた苛酷な練習に疲れはてていた。
毎年春の全国高校野球大会のころから梅雨まで、授業期間の平日にスポーツ系の地区や県の大会があった。各種の大会が二、三重なると、教室に生徒がそろわないから授業を進めることができない。生徒からすれば、いったん勝ちすすめば負けるまでの期間、授業をほとんど受けられない。そのうえ県大会出場ともなると、関係のない生徒でも応援にかりだされる。県教委はこれに対して、授業時間を確保せよというが、そのために具体策を示したことはない。もちろん大会開催は土日だけという地方もあった。だが休日がなくなるからこれも好し悪しである。

さらに野球とかサッカーとか、人気があって注目度の高い部活動は特権が許される。運動部顧問(監督)の中には、高校をプロ選手の養成所と心得ている者がいて、私学はもとより公立高校でも中学まわりをして優秀な生徒を入学させようとする。
 野球部の予算は学校やPTAの会計の中で最大である。それだけでは不足だから、後援会をつくって経費をまかなう。甲子園大会ともなれば、地区大会から特別仕立てのバスで選手を運ぶ。内外から不満の声が起きるが、校長もPTA会長もこれを無視して大勢に従う。異議申し立ては玄関払い。共謀罪が通過した国会のようなものである。

メディアはスポーツ系の部活動で好成績を上げると「文武両道」などと持ち上げる。ところが部活動には、しばしば生徒間の暴行・恐喝・喫煙・飲酒などの非行がつきまとう。だが、発覚してもたいていは隠蔽される。大会出場が危うくなるし、程度によっては部が閉鎖されるからである。
指導教師の暴力はかなり普遍的現象である。近頃は、被害生徒の自殺といった悲劇によって、ようやくその一部が明るみに出るようになった。だが私の知るかぎり、かなりの学校がいまだ公務員法に反して教師の非行も隠蔽している。
いうまでもなく、スポーツ関連の部活動問題を日本社会全体として考えるためには、マスメディアの役割は決定的に重要だ。だがメディアはヒーローを作り出すのには熱心だが、部活動の学校教育における問題に迫ろうという気はない。
たとえば「毎日」や「朝日」も、野球部活動の現場をリアルに記事にしたり、スキャンダルを明らかにすることはきわめて少ない。両新聞社はそれぞれ日本高校野球連盟とともに春と夏の全国高校野球大会の主催者だからであろう。
この稿が皆さんの目に触れるころは、どの県でも夏の甲子園の地区大会・県大会のトーナメントがすでに始まっているだろう。地元の情報サイトやテレビ局が県大会から実況放送をする。そこでは例年の如く、視聴率のためか、商業主義のためか、美談をつくり目立つプレーヤーを称賛しヒーロー扱いするだろう。
高校生の若さでちやほやされれば、たいていはスポイルされるが、それをメディアが問題視することはない。だが、たまには「甲子園」の問題点を分析、反省してみてはどうかね?あらためて「文武両道」などちゃんちゃらおかしいことが確かめられるだろう。

中学高校の部活動は、学習指導要領で「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と定められている。 つまり法制上は自主活動とされ、体育を含めた教科教育は必須だが、部活動はあってもよし、なくてもよしの存在である。
学校がわが国民の文化水準の維持向上に果たす役割は決定的である。学校教育は教科教育を主として成り立っている。現状は部活動と教科教育の優先順位が逆転しているために、選挙権をもった市民というにはいささか知識不足の青年をかなり大量に社会に送り出す結果となっている。これを学校教育制度の「溶解」といわずしてなんといおうか。(2017・07・06記)
2017.07.07 公文書について考える
        小山の教育通信 [2017.7月-1]        

小山和智 (グローバル化社会の教育研究会事務局長)

 7月1日で「公文書等の管理に関する法律」(平成21年法律第66号)の公布から満8年です。
この法律は、行政機関の諸活動や歴史的事実の記録が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、国民が主体的に利用し得るようにするものです。「将来の国民に説明する責務が全うされるように」と冒頭に掲げられています。

動詞の「book」は“記帳・登録する, 予約・契約する”といった意味です。元はドイツ語の「buch」で、紙のない時代に「ブナ (Beech)」の樹皮や薄板 (注:製材すると白い) に文字を刻んだことに因みます。マレー語の「buku」は“節・関節”ですが、昔は 竹簡 (buku buluh。注:節と節の間) に記録していたので、“本・ノート・経典”の意味にもなりました。

「White book, liber alubus (白書 )」は 表紙が白色の装丁の公式報告書のことですけど、たとえ白い表紙でも、慣習として別の色で呼ぶ公文書があります。
例えば、「Blue book」は 英国では“議会 or 枢密院の報告書”、米国では“政府職員/紳士録”。英国外交委員会の報告書が青表紙だったことに因み、日本でも「外交青書」と呼ぶ慣習になっています。「Red book」は スペインの公式報告書で、英国では“貴族名簿”です。「Yellow book」は フランスの公式報告書。「Green book」はイタリアと英領インドの公式報告書。そして、「Black book」は“閻魔帳, 成績記録簿”です (表紙など付けず密かに保管されるはずですけど…)。

なお、日本の江戸時代の「人別帳」では、犯罪を犯しそうな乱暴者に 付箋 (book-mark) を付けていました。いわゆる「札付き」です。他方、商品に掛値なしの価格を表示する札は「正札」ですが、「正札附き」は(値段に見合った)品質の証明の意味でした。後に“本当のワル”の意味にも使われて、なんともはや……。

6月30日(金)、第60回グローバル化社会の教育研究会(EGS)が、いつもの聖学院中学・高校(東京都北区) で開かれ、同校の伊藤豊 高等部長に『21世紀型教育の現状--- 思考力を育てる取り組み』のテーマで、話題提供をしてもらいました。
学校改革の出発点は「生徒達の持っている力の中に 従来 評価されてこなかった部分があるのでは? 例えば、自分で知識を獲得していく力や仲間の能力を引き出す力など」という問題意識だったとのこと。「21世紀型教育」の柱であるアクティブラーニング(双方向授業)も 課題解決型学習(PBL)も、その評価の元となる「ルーブリック (Rubric)」(学習到達度を示す評価基準の観点を縦軸、尺度<(到達度>を横軸にとった評価表)を策定することが鍵となったようです。

ともすると日本の生徒は自己肯定感が低いといわれ、学年が上がるほど下がっていくといわれますが、それは社会と関わる意識の度合い、接する機会の頻度に関係してもいるそうです。聖学院の教師陣が生徒評価のあり方を見直し、生徒に到達目標を明確に理解させることで、生徒たちの自己評価も大きく改善されていった様子がよく分かりました。
なお、児浦良裕先生の 高3数学の授業も、見学させてもらいましたが、数学があまり得意ではなさそうな生徒も楽しそうに取り組んでいる姿が印象的でした。

それでは、例によって他のニュースも。
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日本旅行医学会 登山医学セミナー 2017年

日 時  7月 8日(土) 午前10時20分~午後4時
場 所  東医健保会館 (東京都新宿区南元町 4)
テーマ  『雪崩の科学--- その実態と現状対策』『アウトドア活動・高齢者における低体温症』 ほか
※ 栃木県の高校生ら8名が死亡する雪崩事故---自然災害ながら正しい知識は必須です。米スタンフォー大の P.S.Auerbach教授の講演は貴重な機会です。翌9日(日)、大阪医科大学(高槻市)でも開催されます。
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国際文化フォーラム 30周年記念事業「学校のソトでうでだめし」第1回

日 時  9月 9日(土)・10日(日)・30日(土)・10/1日(日)の4日間。午前10時~午後5時(10/1は6時半)
場 所  TJF国際文化フォーラム(東京都文京区音羽1-17-14)
テーマ  『ことばの世界を服で表現してみたら?』ナビゲーター:川口 知美(舞台衣装家)
※ 服づくりの経験は不要。詩を味わいながら 高校生同士で“舞台衣装”を作ります。「ことばをモノで表現する ⇔モノで表現したことをことばにしてみる」の試みです。申込み受付:7月12日(水)まで。
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情報公開法の施行 (2001年4月) の前に、大量の行政文書が廃棄されました。当時の日本には、公文書管理法がなく、文書公開請求は「存在する文書」のみが対象だったので、将来に禍根を残さないようにと……。10年後、公文書管理法が施行されましたが、「遅くても、ないよりはまし」です。

『新・海外子女教育マニュアル(改訂版)』が発行されました。渡航前から帰国にいたるまでの教育のあり方について羅針盤の役割を果たしてきた基本書です。
初版(1985年) の制作中に、書名を巡って議論したことを思い出します。「マニュアル」は“品がない”と、財団上層部に極めて不評だったのですが、結局、駐在員家族の皆さんに好評ということで決まりました。

『くまのパディントン』(英1958年)のマイケル・ボンドさん(満91歳)が6月27日に亡くなりました。BBCのカメラマンながら、多くの短編を書かれ、異文化の狭間で揺れる子どもたちを 励ましてくださいました。

幼い頃の夏の思い出と重なる花「ネジバナ(Spiranthes)」……桃色の小さな花が 茎の周りに螺旋状 (spiral)に並ぶので「ねじれ草」と呼んでいました。最近は 滅多に目にしませんね。
「絶滅危惧種」と聞くたびに、いずれなくなるだろう職業のことが気になります。羅宇屋、指物屋、道具屋、荒物屋…… 落語でも滅多に聞かなくなっています。印刷屋、レコード針屋も、風前の灯ですね。

それでは皆さん、ごきげんよう。

小山 和智 ( OYAMA, Kazutomo)

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2017.06.25  「デリック」と聖職者
          小山の教育通信 [2017.6月-2]

小山和智 (グローバル化社会の教育研究会事務局長)

6~7月の英国は過ごし易く、花々も咲いて、ビールも美味しい季節です。この時期に英国にいられる人が、羨ましいですね。

ロンドンのオクスフォード街の西端に 「Marble Arch」という凱旋門があります。その裏手からハイドパークの角にかけては、昔の「タイバーン処刑場」(=土壇場) だったところで、死刑囚が 最後のスピーチを許された場所 (⇒ Speaker's Corner) でもあります。いわば「言論人の聖地」です。
ここで T・デリックという死刑執行人(17世紀初め) が、斜めに取り付けた腕木(jib) を支えにして 受刑者を吊り上げる処刑 を行っていたことから、後に考案される“ジブ起重機 (jib-crane)”は 「derrick」と呼ばれます。

しかし、クレーン関係者以外が 「derrick」を耳にするのは、野球の試合ぐらいでしょう。選手交代が、吊り上げ処刑に喩えられるのです。なお、選手交代は 「lift」(引き揚げる)、「send ~ to the showers」(~を着替えさせる) ともいいます。

大昔から、教鞭を執るのは 聖職者(Clergy) の仕事の一部でした。キリスト教の「Missionary」は、「牧師 (Pastor)/司祭 (Priest)」と「伝道師 (Evangelist)」とに分けられます。ただし、「使徒継承」を受けて牧師の資格を得ても、教会を担当せずに 街頭に立ったりして 宣教活動をする場合は、伝道師と呼ぶようです。
聖職者が身に着ける“立ち襟”は「ローマ襟 (Roman/clerical collar)」ですが、首の後ろで留めるので「犬の襟 (dog collar)」とも呼びます。人間は 怒りでカッカする時、首の付け根辺りが 熱くなるのだそうで、「get hot under the collar」の熟語もあります。聖職者たる者は、怒りを現わにしてはならない という戒めなのでしょう。

「学校の事務職員は聖職者ではない」という誤解は、日本の教師の独善から生じたものです。事務職でも、生徒の個人情報管理から精神的な支援まで、教育現場の重要な部分を担っていますから、グローバル社会では「clerical (聖職)」とされます。

なお、「Evangelist」には、元々学識経験者という意味もありました。最近は“自社製品を熱心に勧める担当”という職名としても使われます。反対語は、やはり「俗人たち (laity, laymen)」(=専門外の人, 素人) ですね。 近代民主主義の社会においては、専門家は 素人に対して「compliance (法令遵守&説明責任)」があります。 もし「忖度したか?」と疑われたら、吊るし上げられる前に説明責任を果たすべきです。

それでは、例によって他のニュースも。
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第60回グローバル化社会の教育研究会(EGS)

日 時  6月30日(金)午後2時~4時半
場 所  聖学院中学校・高等学校 (東京都北区中里3-12-1)
テーマ  『聖学院の21世紀型教育の現状--- 思考力を育てる取り組み』
      話題提供:伊藤 豊 (聖学院中・高 高等部長。国語科)
※ 基礎教科でのアクティブ・ラーニングの指導法改革でも 先進的な学校です。児浦良裕先生の数学の授業も参観させてもらいます。
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映画『原発なくても大丈夫(日本と再生)』と講演の集い

日 時  6月29日(木) 午後6時半~8時半
場 所  立教大学 7号館 (東京都豊島区西池袋3-34-1)
内 容  映画上映上映、河合弘之監督の講演
※ 監督の河合弘之氏は 脱原発の訴訟に関わる弁護士。『日本と原発』(2014年)、『日本と原発 4年後(2017年)も製作・監督されています。
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英国には、カトリック教徒を大量に処刑してきた 暗い歴史があります。土壇場で最後のスピ―チを許すのは、処刑者の中に聖職者も多くいたため、暴動の引き金になるのを避ける計算もあったのでしょう。

中国語の「五色経済」は、黒 (汚職/腐敗の権威交易)、灰 (偽物の製造/販売)、白 (麻薬取引)、黄 (風俗産業)、青 (密輸)の五色……「バレなければ 立派な副業」の感覚です。もちろん 潔癖な人もいないわけではありませんが、中国語の「合規」に“説明責任”は含まれません。

6月6日(火)、茨城県の日本原子力研究開発機構の施設で、被ばく事故が起こりました。徒らに怖がったり目をそらしたりしないで、原発が核のゴミを出し続けていることを 真剣に考えましょう。

早くも真夏の陽気となっています。皆様、お身体を大切に。
ごきげんよう。

小山 和智 ( OYAMA, Kazutomo)
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(過去のニュースは 下記をご覧ください。)
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2017.06.07  “六”について考える
    小山の教育通信 [2017.6月-1]

小山和智  (グローバル化社会の教育研究会事務局長)
       

「六月無礼」(クールビズ) の季節です。今年も暑そうですね。

中国では、“六”は “陸”のイメージと重ねて、十分・正常・安定の数 と考えられてきました。「六法」「六国」「六朝」「六歌仙」など無数の用語があります。「六義」は 『詩経』にある漢詩の分類法で、紀貫之は これを借用して和歌の六種の風体を整理しました。「兼六」は、洛陽の「湖園」が「宏大・幽邃・人力・蒼古・水泉・眺望の 六つを兼ね備える」と 謳われた縁起です。いずれも 日本を代表する庭園の名前になっています。

欧州・中東で“6”は、「“7”が象徴する完全さに達しない」のイメージです。「666」と重なれば 聖書の「number of the beast (獣の数字)」になり、「evil omen (凶兆=縁起悪い)」と忌み嫌われます。
なお、「ろくな~ない (nothing good comes of ~)」を「六な…」と書くことはできません (「陸な…」または「碌な…」にするか、ひらがなで書きます)。また「deep six」は “水葬, 廃棄, 拒否”の意味になります。

さて、もう半世紀以上前のことですが、棚橋絢子先生(東京女子学園 初代校長) の言葉に「ただ書を読み知識を得るだけでは学問とはいえない。学んだ知識を 実際に社会で応用し、物事の道理を悟って はじめて学問と言えるのである。各自がしっかりと自立し 各自の務めを果たすこと、これが社会に貢献することにもなる」があります。教育学者B・S・ブルームの『教育目標の分類体系 (TAXONOMY of Educational Objectives)』(米1956年。分析・分解の一方で 統合・編集の作業を行い、教育全体の構造を把握して 実践に役立てようとする試論) の影響が 色濃く現われています。

帰国生の受け入れと指導に真面目に取り組む学校を除いて、『教育目標の分類体系』は長い間、無視・放置されてきました。しかし最近は、多くの学校が、グローバル化の荒波の中で「自分の頭で考え、自分の意見を持ち、それを人に伝え共有できる力」の意識的な育成の意義を見直す“ツール”とし始めているようです。
「グローバル人材」という用語を、どう捉えるかは様々な意見があるでしょうが、要は「どんな背景や価値観を持つ人間ともチームを組んで働き、より好い結果を出せること」が基本でしょう。あらゆる職場において そのことが要求される時代ですし、多分 AI(人工知能) との付き合い方の真髄も、そこら辺りにあるのだろうと思います。

6月30日(金)の第60回グローバル化社会の教育研究会(EGS)では、この「21世紀型教育の実践」を正面から取り上げます。会場は いつもの聖学院中学・高校(東京都北区) ですので、同校の先生方から“最先端授業”の話題提供をしていただきます。また今回は、高校3年数学の授業も特別に見学させていただけるそうです。「生徒一人ひとりが深く考え、仲間と協働して問題を発見し解決していく」条件を整える際のコツや留意事項についても、話し合いたいと思います。

それでは、例によって他のニュースも。
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嘉悦大学の特別講演会

日 時  6月10日(土) 午後2時~3時半
場 所  嘉悦大学カエツホール (東京都小平市花小金井南町2-8-4)
テーマ  『日本語は世界の人々をつなげる』
      講師:鈴木 孝夫 (慶應大学名誉教授)
※ イリノイ大学、イエール大学、ケンブリッジ大学など 各国の客員教授/研究員の経験のある鈴木先生に、言語生態学的文明論を伺います。
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異文化間教育学会 第38回大会

日 時  6月17日(土)・18日(日) 午前9時~午後5時
場 所  東北大学 川内キャンパス (仙台市青葉区川内27-1)
内 容  [特別課題研究]『異文化間能力を生かす--- 実践に向けて』
     [公開シンポ] 『国際共修:留学生と国内学生の学びあいをデザインする』
※ 異質な文化の接触によって生ずる様々な教育の問題を 学問対象として取り上げ、その研究を推進しています。
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東京六大学野球 春季リーグ戦は、立教大学が15戦を闘い9勝(勝点4)を得て 見事優勝! 18年振り13回目です。卒業生は 待ってました……(感涙)。
また、佐藤琢磨さんも「インディ500」で見事優勝されました。世界最速サーキットを平均時速250kmで完走し、牛乳を浴びる姿は格好いい! あの牛乳は、一口は飲まないと 賞金が減るんだそうですね。

南スーダンに派遣されていた自衛隊PKO部隊が、無事に帰還してきました。規律の取れた優れた集団として 各国の部隊から 高く評価されたことも嬉しいです。しかし、朝のラジオ体操の時間まで潰して、北朝鮮の脅威を煽る政府のやり方は、ナチス・ドイツに似ていて 不愉快です。

夏休みを利用した海外研修や留学のオリエンテーションが行われる時期ですね。海外の高等教育では 今、“チームの総力を最大化する実践力”が重視されていることを理解させておかないと、現地で「何故、こんなことを?」と 面食らったり悩んだりすることが多くなります。
また、医療制度の違いについて正確に理解させておくことも、サバイバル面で大事です。引率者がいない海外研修や留学生を送り出す学校側の指導責任は、とても重いといえます。

それでは皆様、ごきげんよう。

小山 和智 ( OYAMA, Kazutomo)
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2017.05.25  「相棒」について考える
   小山の教育通信 [2017.5月-3]

小山和智(グローバル化社会の教育研究会事務局長)

5月21日から 双子座(Gemini) に入ります。カストール&ポルックスの仲の良い双子は、世界各地で「コミュニケーション能力と知謀・知略」の象徴になっています。

「相棒・相肩 (partner)」という言葉は、一つの駕籠や荷物を一緒に担ぐ相手のことだったのですが、“ペアになって仕事をこなす際の相手 (associate)”を指すようにもなります。これが、「片棒」から「共犯」へと進むと、人数も怪しさも増していきます。

相棒・相肩は 普通は一人ですから、「mate」が“対”の感じがしてピッタリ。商船の「First/Chief Mate (一等航海士)」は、船長(Captain) の“女房役”です。嫌な仕事や汚れ役、臨時の警察官の役も 負わされます(当然 拳銃を携帯)。その点、運転技師である「Engineer (機関士)」は、気が楽なようです。
なお、大型客船の場合、船長の補佐役は「Staff Captain (副船長)」と呼ばれます。主には、乗客の安全確保に関する職務をこなしますので、普通は 拳銃等を携行しません(注:船長室などに保管)。

因みに、古代の日本語では、配偶者(spouse) のことを「ツマ」(反対側の端)と呼び、男女の区別はありませんでした。漢字が輸入されて“夫・妻”の字が当てられるようになり、やがて女性のみに使われるようになりました。英語の「better half (妻)」も元は“親友”の意味で、男女は関係なかったそうです。

阿部泰尚さん(TIU総合探偵社) が、マンションやアパートの郵便受けに入る「NTT Flet's 光」のチラシについて 報告されています (5/12)。結論からいうと「NTTを騙る悪質な営業行為」でして、NTT自身は「Flet's 光」を戸別訪問や電話勧誘 (⇒迷惑電話) 等で 直接営業はしません。ただし、こうした“販売代理店”がまとめてきた顧客に対して“サービス提供は厭わない”姿勢です。

困るのは、訳のわからない機器やサービスを 契約させられ、(知らない内に) 高額な料金を払い続ける嵌めになることと、解約したい場合は消費生活センターか 弁護士に頼むしか 方法がないことです。引っ越した直後や、一人暮らしを始めたばかりの学生などが、まんまと騙されるのですが、学校・大学側の注意勧告も「NTT販売代理店」の“印籠”の前では 色褪せてしまいます。
この調査、10年前にやって欲しかったですね。無数の犠牲者を出して、一体 誰が儲けているのでしょう?

それでは、例によって他のニュースも。
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関西 かけはしセミナー2017

日 時  5月27日(土) 午前10時半~12時半
場 所  イオンコンパス大阪駅前会議室 (大阪駅前第2ビル 15F)
テーマ  『英語教育改革の現状と今後の展望』
      講師:藤田 保(上智大学言語教育研究センター教授)
※ 「入試が変われば…」といわれてきた日本の英語教育は 2020年の大学入試改革に向けて どう変わっていくのでしょう?
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関西「帰国子女教育を考える会」第76回研究例会

日 時  6月 3日(土) 午後2時~5時 (例会後、懇親会)
場 所  立命館中学・高校  (京都府長岡京市調子1-1-1)
テーマ  『SGH(スーパーグローバルハイスクール) 実践4年目を迎えて』
      発題:神戸市立葺合高校、大阪府立三国丘高校、立命館高校
※ 文科省SGH(昨年度までに 123校指定)で試みられた 様々な実践やカリキュラム等は、帰国生にとって どういう意味を持つのでしょう?
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「Captain」は 船長・艦長ですが、海軍大佐 という階級も意味します。陸軍では“大尉”、警察では“警部”となるし、各国で微妙に異なるので 困惑することもあります。なお、陸軍大佐は「Colonel」です。

『Strong in the Rain (雨ニモマケズ)』が 日本語で読めます (えにし書房刊)。悲惨な原発事故を経験しながら、未だに 同じエネルギー戦略の下で 原発再稼働を進める愚かさ、津波対策も 巨大防潮堤の建設という“土建需要”にすり替える狡さを、外国人記者が看破しています。

「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が 5月19日(金)、衆議院法務委員会で可決されました。「国会議員定数を半分に減らす」と国民を欺き、大多数の議席を確保したら、その約束は 放置して、特定秘密保護法制定、自衛隊法等改正を強行した上に、とうとうこの暴挙です。
共同通信は、国連人権理事会から任命された特別報告者 (U.N.Special Rapporteur) のジョセフ・ケナタッチ氏が安倍首相に緊急書簡を送って、警告を行ったことを配信しました。法案の「計画」や「準備行為」の文言が抽象的で、恣意的な適用のおそれがあること、対象となる犯罪の中に テロリズムや組織犯罪と無関係のものを含んでいる危険を指摘しています。

5月25日(木)、ASIA-NETクロスナレッジ「伝える技術を鍛える勉強会」南部労政会館(東京都品川区)で開かれます。今回は「モンローの説得話」をテーマに取り上げ、現場で使える実践スキルの習得を目指します。

次のグローバル化社会の教育研究会(EGS)は6月30日(金)、聖学院中学・高校 (東京都北区)--- 同校の「21世紀型教育の実践」をテーマに話し合わせてもらおうと 準備中です。詳しくは、別便にてご案内します。

それでは皆様、ごきげんよう。

小山 和智 ( OYAMA, Kazutomo)
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2017.05.16 「五」について考える
  小山の教育通信 [2017.5月-2]

小山和智(グローバル化社会の教育研究会事務局長)

五月病シーズンのピークですが、皆様 お加減は如何でしょう?

五原則や五元素など“五”を一組とする感覚は、仏教・ヒンズー教圏の特徴です。起源は 手の「五指」なのでしょうが、親指を「finger」と考えない欧米では、“五”を完全数と感じないだけでなく、「fifth」には“裏切り, スパイ, 破壊…”のイメージもあります。「Olympic symbols」を“五輪”と呼ぶのは 日本だけ。五輪が象徴する“五大陸 (Continents)”の色 (左から青・黄・黒・緑・赤)の、どの色が どの大陸を指すのかの詮索は、無意味です。

「Oceans」は 日本では“五大洋”と訳しますが、太平洋と大西洋を 更に南北に分けて「Seven Seas」と呼ぶ方が、グローバルには一般的です。ただし、10~15世紀、世界文明の頂点にいたアラビア商人(+海賊)にとっての「七つの海」は、南シナ海・ベンガル湾・アラビア海・ペルシア湾・紅海・地中海・大西洋でしたけど…。因みに、北米の「Great Lakes」を “五大湖”と訳すと、ニピゴン湖・セントクレア湖などは 無視されることになります。

大阪夏の陣(1915年) は 旧暦4月26日開戦 (~5月8日) でした。現在の暦で5月下旬から6月上旬です。真田幸村の伝説的な活躍は、今でも子ども達に人気……沢田博史さんの『冥銭のドラグーン』は、もう読まれましたか?
「流鏑馬 <やぶさめ>」は 疾走する馬上から的を射る技術・儀式のことですが、弓矢の代わりに 小銃(rifle)を持つ騎兵を「竜騎兵 (dragoon,cavalry)」といいます。ただし、馬上からの射撃は 照準が難しいので、実戦では、下馬して “伏せ撃ち”するのが普通でした。日露戦争の「騎兵第1旅団」(秋山隊)も竜騎兵です。軽砲や機関砲まで装備していても、文字通りの“機動性 (cavalry)”が命でした。


この時期、新しい定期券を手にしている人が 多いでしょう。定期券は、券面に表示された経路通りにしか 乗れませんし、本人しか使えません。旅行ライターで漫画家の恵 知仁さんによると、2007年 他人名義の定期券を10ヶ月使った生徒に、JRは123万円を請求。複数の学生が不正な定期券を使用していたことが発覚した日本大学では、642万円の支払いに応じたそうです。「知らなかった」では済まされません。

満員電車での迷惑行為のトップは、痴漢ではなくて (注:痴漢は犯罪)、「リュックを背負って乗車」(マナー:リュックは前に) と「ドア地蔵」(マナー:入口付近に立たない) だそうです。前者は「スマホを見たい」という身勝手から、後者は「慣れない通勤・通学路で、降りられなくなるのが怖い」という心理から、と分析されています。いわゆる「新入りラッシュ」(=遅延) の元凶ですが、何度も注意されて、6月頃には 改まるのが普通です。

それでは、例によって他のニュースも。
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東京私立中学合同相談会

日 時  5月21日(日) 午前10時~午後4時
場 所  東京国際フォーラム (東京都千代田区丸の内3-5-1)
内 容  各校の個別ブース、東京大学やJAXA(宇宙航空研究開発機構)による体験講講座、「私立中高一貫教育の価値と魅力」 を知るセミナー、ほか
参加費  無 料(予約不要)

※ 東京の私立中学校173校が集結し 中高一貫校の優れた教育を紹介。

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中国の五行思想は、万物は 木・火・土・金・水 の5種類の元素からなるという説。各々に 青(緑⇒ 春、東)・赤(朱⇒ 夏、南)・黄(⇒ 土用、中央)・白(⇒ 秋、西)・黒(玄⇒ 冬、北) の色がついています。

音楽で使う五線紙は「staff」、楽譜/五線譜は「(staff) score」です。また、ギター教本では 親指を除いた4指を 1~4で示します。「親指も指だよ」と言うと、「toe (足指)と混同するな」と諭されるでしょう。

「冥銭」は 死者を葬る時に棺に入れる硬貨(=三途の川の渡し賃) のこと。中国では、本物のお金はあの世に持って行けないので、薄紙に紙幣のような印刷を施した「冥鈔 (ming2chao1)」を燃やして供養します。

5月17日(水)から、東京ビッグサイトで「教育ITソリューションEXPO」が開幕。21世紀型教育の実践を目指して、32もの特別セミナーもあります。体が一つでは とても足りませんね。

『海峡 27号』(社会評論社刊)に 桑ヶ谷森男先生の論文「新渡戸稲造と柏木義円の朝鮮認識を問う」が、掲載されています。新渡戸稲造に対する印象が大きく覆される一方、柏木義円という論客にも感激しました。二人とも クリスチャンながら、真反対の論調には驚きます。

『月刊 海外子女教育』5月号の特集は「アイデンティティをめぐる帰国生物語」「古典に親しむ」。後者は、国際バカロレア(IB)の「日本語科」が どういうものかを知る 格好の解説です。

日本は、一気に夏になってしまったような陽気です。毛穴が十分に開いていないと、熱中症の危険もあります。皆さま お身体を大切に。ごきげんよう。

小山和智( OYAMA, Kazutomo)
 
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<小山和智氏の略歴>
1952年生まれ。海外子女教育振興財団に13年半勤務したほか、ジャカルタ日本人学校 事務長、クアラルンプール日本人学校 国際交流ディレクター、啓明学園 国際教育センター所長、順心広尾学園 校長補佐、上海日本人学校学校 事業計画室長を歴任。現在、グローバル化社会の教育研究会事務局長。国際教育相談員。
著書に『インドネシア・マレイシア駐在員マニュアル』(旺史社)、『海外赴任のためのリロケーションガイド』(NNA他)のほか、ビデオ教材『中国人の交渉術と価値観』(ジオモンド社)など。
2017.04.28 今こそ日本国憲法を守り生かそう
施行70年を記念して統一集会へ

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 日本国憲法が施行されたのは1947年5月3日である。それから70年にあたる5月3日(水=祝日)、東京・江東区有明の東京臨海広域防災公園で、大規模な集会が開かれる。「施行70年 いいね!日本国憲法」「平和といのちと人権を!」をメーンスローガンに掲げる「5・3憲法集会」だ。憲法記念日に行われる、護憲派の統一集会は一昨年、昨年に次いで3回目だが、今年は安倍政権が改憲に向けた攻勢を強めつつある中での開催なので、緊張感ただよう集会となりそうである。

 集会を主催するのは「5・3憲法集会実行委員会」。それを構成するのは、戦争をさせない1000人委員会、解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会、戦争する国づくりストップ!憲法をまもり・いかす共同センターの3団体である。これらには、旧総評系、共産党系の団体のほか、中立の市民団体も加わっており、いわば、護憲を目指すほとんど全ての潮流による統一集会といってよい。

 最初の統一集会は、一昨年の5月3日、横浜市のみなとみらい地区の臨港パークで開かれ、参加者は3万5000人(主催者発表)。昨年の統一集会は、やはり5月3日に東京・江東区の有明臨海広域防災公園で開かれ、参加者は5万人(同)だった。今年は、これを上回ることができるかどうか。

 今年の集会の特徴は、以下の8項目にわたる「私たちがめざすこと」を掲げていることだ。

私たちは、日本国憲法を守り生かし、不戦と民主主義の心豊かな社会をめざします。
私たちは、二度と戦争の惨禍を繰り返さないという誓いを胸に、戦争法の廃止をめざします。
私たちは、沖縄県民と思いを共にし、辺野古新基地建設の撤回を求めます。
私たちは、被災者の思いに寄りそい、原発のない社会をめざします。
私たちは、人間の平等を基本に、貧困のない社会をめざします。
私たちは、人間の尊厳をかかけ、差別のない社会をめざします。
私たちは、思想信条の自由を侵し、監視社会を強化するいわゆる「共謀罪」に反対します。
私たちは、これらを実現するために行動し、安倍政権の暴走にストップをかけます。

 集会参加者は、憲法施行から70年という節目で、改めて日本国憲法を守り、活かすことを誓い、今、世界と日本で解決が求められている諸課題に取り組む決意を新たにしよう、ということだろう。

 集会開始は11時30分。13時から各界の人によるスピーチや野党代表のあいさつがある。各界の人によるスピーチでは、名古屋大名誉教授・池内了、弁護士・伊藤真、作家・落合恵子、ファッション評論家・ピーコ、法政大学教授・山口二郎の各氏らの登壇が予定されている。集会後、パレードを行う。

 会場の東京臨海広域防災公園へは、りんかい線「国際展示場駅」から徒歩4分、ゆりかもめ「有明駅」から徒歩2分。

2017.04.26 BANK
韓国通信NO522

小原 紘 (個人新聞「韓国通信」発行人)

<銀行の政治献金再開>
バブルの崩壊によって、ほとんどの銀行が山のように積み上げられた不良債権の処理に追われ悪戦苦闘した。大手都市銀行も公的資金の導入によって救済された。拓銀のように破綻し消滅した銀行もあれば、長銀、日債銀、足利銀行のように国有化された銀行もある。銀行の救済のために投じられた国費は数十兆円にのぼり、多くの銀行が合併によって姿を消した。
私企業とはいえ軒並み税金で救済された以上、銀行経営には目先の利益を追わず社会的公正さが強く求められるのは当然だ。政治と行政との悪しき癒着関係も厳しく断罪された。国民の負託は大きく重い。
その期待を裏切るかのように、銀行のトップ、三大メガバンク三菱UFJ、みずほ、三井住友が、一昨年から自民党に政治献金を再開した。雌伏十年。反省どころか権力者の顔色をうかがい政治に利益を期待する本性がちらつく。
18年ぶりに再開した政治献金について、毎日新聞は社説で「銀行の献金復活 数々の疑問がつきない」として「メガバンク三グループがそれぞれ約2000万円を自民党の政治資金団体『国民政治協会』に提供した。『企業の社会貢献の一環』と説明しているが、特定政党への寄付が社会全体に役立つという考えは理解しがたい」と批判した(2016/1/26)。
金利実質ゼロ政策のなかでメガバンクは莫大な経常利益(2016年)をあげた。
1位 三菱UFJフィナンシャル・グループ・5兆7144億円
2位 三井住友フィナンシャル・グループ・4兆7721億円
3位 みずほフィナンシャル・グループ・3兆2152億円
中小零細企業に対する「貸し渋り」の解消。高い振り込み手数料やATM利用手数料の引き下げなど真っ先にやるべきことがたくさんある。
政治献金(賄賂)の再開は「再生」した銀行にもとるものだ。銀行ほど多数の派遣社員を採用している職場はない。リストラ・出向は思いのまま。長時間労働と残業代の不払い。有給休暇もロクに取れない。これ程の利益を上げながら銀行は「職場の劣等生」であることは今も昔と変わらない。各銀行が掲げる「社会貢献」「コンプライアンス(法令順守)」が泣く。「お飾り」に過ぎないのか。

かつて所属していた銀行の労働組合は、1970年代に政治献金の廃止を求めて労使交渉を行なうとともに他の金融組合とともに全銀協へ申し入れをした。故市川房枝さんとともに有楽町駅頭で「廃止」のビラまきをしたこともある。「賄賂政治」は許さないという彼女の主張に共感したからだ。政治献金が1998年から中止されたのは当然だが(公的資金をもらって政治献金するのは「まずい」と考えたようだ)、またもや銀行の「賄賂」が復活した。「気は確かか」「恥ずかしくないのか」。
 

 <怒り・悲しみ・疑問に思うことが多すぎる>
韓国語の慣用句に눈코 뜰 새 없단 というのがある。「目と鼻をあける暇がない」。日本語の「目がグルグル回るほど忙しい」に相当する。目だけでなく鼻まで入っているのが面白い。
シリア、アフガニスタンの戦争に加え緊迫する朝鮮半島の情勢。節操もなく米国トランプ政権に追随する日本政府の危うさにくわえ、「共謀罪」の成立を急ぐ政府与党。原発再稼働を認める裁判所の「忖度」判決。高濃度の放射能の地へ帰郷を促す政府。帰らないのは「自己責任」と言い放つ復興大臣。甲状腺ガン患者が何人発見されても因果関係はわからないと云い張る行政。沖縄県民の意思を踏みつける中央政府。国有財産の払い下げをめぐる疑惑。政府に都合の悪い資料隠し。教育勅語を教えろという閣議決定。呆れ果てて「目も鼻も」開ける暇がない。血圧の高い人でなくても血圧があがりそうだ。一気呵成に憲法「改正」に突き進む勢いを見せても国民の支持は相変わらず高い。体がいくつあっても足らないもどかしさ。
問題山積の時期に銀行の話題は少し「のんき」すぎるかも知れない。銀行に勤めていたせいか、政治献金再開から見える最近の巨大銀行の動きは見逃せない。
銀行が脱原発に反対しているのは有名な話だ。だから自民党に政治献金と疑われても仕方がないない。電力会社が原発施設を廃棄すれば不良債権化する。倒産したのも同然の東京電力を潰すことにも銀行は反対している。

<国境を越えるメガバンク>
国際的ニュース配信会社「新月通信社」(社長マイケル・ペン)がわが国の三大メガバンクが融資するアメリカ、ノースダコダ州のパイプライン建設事業について報じている(HPと『週刊金曜日』3/10号)。原住民スー族に認められた土地を無断で使用する石油パイプライン建設に反対運動がわき起こり全米で注目されている。原住民の権利侵害と環境保全が争点である。融資に日本の銀行が深くかかわり、トランプ大統領も出資者であることが知られている。大統領に就任後、警察は抗議行動を鎮圧した。
スー族の代表が来日、日本のアイヌ人権擁護団体の活動家たちとともに融資各行に融資の取りやめを要請した(2/17)。各行とも署名と要請書は受け取ったが、今のところ要請に応じる意思は無いようだ。抗議者たちは各銀行が内部規定に「人権保護」をポリシーとして掲げていることに期待し、融資規定に反する融資の中止を求めている。
日本ではメガバンクの融資が現地の人権侵害を引き起こしていることはほとんど知られていない。銀行は「法律」「国際人権規約」を遵守すべきだ。ただ儲かればいいというバブル期に教訓を得た反社会的な融資は止めるべきだ。法律順守も社会貢献も、人権保護も単なる「お飾り」であってはならない。

<共謀罪反対>
警察が、「何か企んでいるだろう」と疑うだけで捜査ができる「共謀罪」。無関係と思っている人にもやがて累が及ぶ悪法だ。民主主義を窒息させないために廃案にすべきだ。以下、陶芸美術館「朝露館」からの訴えを紹介します。

テロ対策とオリンピック対策を隠れ蓑に、「共謀罪」(テロ等準備罪)法案が、閣議決定され、国会に上程されました。そして、法律学者や弁護士会はじめ多くの人びとから明確な反対の声が上がっているにも関わらず、なんとゴ―ルデンウイーク前に成立させたいと自公政権は公言しています。
そもそも、社会に有害な結果を生じさせた行為がなければ処罰されることはないのが、フランス人権宣言以来の近代刑法です。「共謀罪」は、行為以前、準備だけで、死刑をもふくむ罪にされます。テロ等準備とある<等>も、曲者です。国家権力の恣意的判断によって、<等>に該当する、と決めつけやすいからです。
すでに政府自身、「正当な活動を行っていた団体についても、目的が犯罪を実行することに一変したと認められる場合は、組織的犯罪集団にあたる」と統一見解を出しています。
国会前のデモをテロと言ってのけ、教育勅語を<道徳>で取り扱ってもよいなど、戦前回帰の自公政権。都合の悪いことは、「他国への侵略」を「積極的平和主義」、あるいは「武器の輸出」を「防衛装備の移動」と言い変えたりもして。
現憲法が記している前文が、憲法第九条・戦争の放棄が、思想・良心の自由が、邪魔で邪魔で仕方がないのでしょう。
かつて治安維持法によって、どれだけ罪のない人びとが、捕らわれ、いたぶられ、殺されもし、そしてその親族までが深い傷を負ったことか。まだ、その復権もなされていない現在ではありませんか。
政権側が考えていることは、明明白白です。人びとを互いに疑心暗鬼にさせ、委縮させ、自分たちにだけ、親分の米軍産複合体にだけ、都合のよい政治をしよう、憲法改悪をしようとの魂胆でありましょう。
そんなことを許すなよ、騙されるなよ、かつての侵略戦争による彼我の犠牲者の声が聞こえてくる気がいたします。
「共謀罪」に反対します。
2017年  4月 16 日
朝露館館主    関谷興仁
       朝露館につどう会 代表 石川逸子
       東京琉球館    島袋マカト陽子
朝露館につどう会 吉川 光  水戸洋子  青山晴江  山田やす子  大道万里子
和田悌二  星野栄子  小原 紘  吉岡志朗  川見一仁 鈴木文子  根津公子  廣瀬克美小島久之  田澤義誠 薄田和子  磯部 浩  若林直樹  二村淑子  宍倉良江