2023.09.29
今こそ賀川豊彦に学び、連帯・互助・協同を強めよう
協同組合、労働組合、賀川関係団体が実行委
9月1日は関東大震災から100年にあたる日だったが、その前日の8月31日、東京で、「関東大震災100年事業 賀川豊彦とボランティア」という事業がスタートし、そのための実行委員会が結成された。関東大震災で献身的な被災者支援をおこなった賀川豊彦(1888年~1960年)の理念と実践に学び、互いに協力しあって現在進行中の地球規模の危機的状況に対処しようという狙いで、実行委には、賀川豊彦関係団体や協同組合、労働組合など37団体が加わった。

「関東大震災100年事業 賀川豊彦とボランティア」のロゴ=日本生活協同組合連合会のHPから
実行委によると、関東大震災の時、神戸のスラムに身を投じて貧しい人々の救済に専念していた牧師の賀川豊彦は、関東大震災の知らせを聞くと、ただちに東京へ向かい、本所地区に拠点を構え、被災者の救援を始めた。さらに、関西、四国、九州にまで出かけて義援金や布団、材木を集めて東京へ送った。
移り住んだ本所では、若い人たちと共にセツルメント活動を始めた。賀川は、若い人たちを「ボランチヤー(志願兵)」と呼んだ。これが、後に生まれた新語「ボランティア」の起源という。
その後、賀川の活動分野は社会事業全般に広がり、消費組合(後の生活協同組合)、医療組合(後の医療生活協同組合)、信用組合、労働組合などの設立で大きな足跡を残す。農民運動、無産政党樹立運動にも関わった。とりわけ、生協運動での業績はよく知られており、今では「生協の父」と言われる。戦後は、世界連邦運動など平和運動に取り組んだ。
実行委は「幅広い賀川の活動を貫いたのは隣人愛に基づく、助け合いの精神と行動でした」としている。
ところで、こうした賀川の生き方から学ぼうという実行委になぜ37もの全国的な規模の団体が参加したのだろうか。実行委が発表した「多様につながり合う社会をめざして」「賀川豊彦から受け継ぐ、連帯、互助、協同」の結び直しへ向けて」と題する趣意書には、こう書かれている。
「現在、世界は新型コロナ感染症の蔓延、世界的経済の停滞、気候変動、そしてロシアによるウクライナ侵攻という深刻な地球規模の危機的状況を迎えている。これは、かつて賀川とその仲間たちが直面した時代のものとは、規模も質も大幅に異なるものであろう。しかし、この危機的状況だからこそ、かつて賀川と仲間たちが果敢に挑んだように、市民同志あるいは組織同志がつながりあい、同じ目標に向けて行動を共にすることが求められている。
賀川豊彦と仲間たちから改めて学び、それを新たな実践に結びつけたい。そのための契機として、本事業を行うものとする。賀川が神戸や本所で仲間と共に紡いだ糸でさらに多くの人たちと結んだ繋がりはその後多くの組織と活動へと結実した。今新たな諸問題に直面して、我々はこの糸を結び直し、さらに大きく多様なつながりでこの困難に立ち向かう必要がある。多くの方々にご賛同とご参加を願う次第である」
実行委は今後、以下の事業を行うという。
①「賀川豊彦と関東大震災~ボランティアのはじまり~」パネル展
②みんなで山手線一周ポールdeウォーク大会(10月15日予定)
③「マンガでわかる 賀川豊彦と考えるボランティア」の出版(12月20日予定)
なお、実行委37団体には以下のような団体が名を連ねている。
社会福祉法人 イエス団賀川記念館、一般社団法人 家の光協会、
学校法人 雲柱社、社会福祉法人 雲柱社、公益財団法人 賀川事業団雲柱社、
認定特定非営利活動法人 賀川豊彦記念・鳴門友愛会、
公益社団法人 教育文化協会、共栄火災海上保険 株式会社、
株式会社 キリスト新聞社、一般社団法人 国際平和協会、
生活協同組合 コーブみらい、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、
世界連邦運動協会、世界連邦日本国会委員会、全国共済農業協同組合連合会、
全国厚生農業協同組合連合会、全国農業協同組合中央会、
一般社団法人 全国労働金庫協会、全国労働者共済生活協同組合連合会、
東京基督教大学共立基督教研究所、東京都生活協同組合連合会、
東都生活協同組合、中ノ郷信用組合、一般社団法人 日本協同組合連携機構、
日本基督教団松沢教会、日本コープ共済生活協同組合連合会、
一般社団法人 日本社会連帯機構、日本生活協同組合連合会、
日本労働組合総連合会、日本労働組合総連合会東京都連合会、
日本労働者協同組合連合会、公益財団法人 日本 YMCA 同盟、
パルシステム生活協同組合連合会、一般財団法人 本所賀川記念館、
学校法人 明治学院、労働者福祉中央協議会
実行委の事務局は公益財団法人 賀川事業団雲柱社(03-3302-2855)に置かれている。.
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
9月1日は関東大震災から100年にあたる日だったが、その前日の8月31日、東京で、「関東大震災100年事業 賀川豊彦とボランティア」という事業がスタートし、そのための実行委員会が結成された。関東大震災で献身的な被災者支援をおこなった賀川豊彦(1888年~1960年)の理念と実践に学び、互いに協力しあって現在進行中の地球規模の危機的状況に対処しようという狙いで、実行委には、賀川豊彦関係団体や協同組合、労働組合など37団体が加わった。

「関東大震災100年事業 賀川豊彦とボランティア」のロゴ=日本生活協同組合連合会のHPから
実行委によると、関東大震災の時、神戸のスラムに身を投じて貧しい人々の救済に専念していた牧師の賀川豊彦は、関東大震災の知らせを聞くと、ただちに東京へ向かい、本所地区に拠点を構え、被災者の救援を始めた。さらに、関西、四国、九州にまで出かけて義援金や布団、材木を集めて東京へ送った。
移り住んだ本所では、若い人たちと共にセツルメント活動を始めた。賀川は、若い人たちを「ボランチヤー(志願兵)」と呼んだ。これが、後に生まれた新語「ボランティア」の起源という。
その後、賀川の活動分野は社会事業全般に広がり、消費組合(後の生活協同組合)、医療組合(後の医療生活協同組合)、信用組合、労働組合などの設立で大きな足跡を残す。農民運動、無産政党樹立運動にも関わった。とりわけ、生協運動での業績はよく知られており、今では「生協の父」と言われる。戦後は、世界連邦運動など平和運動に取り組んだ。
実行委は「幅広い賀川の活動を貫いたのは隣人愛に基づく、助け合いの精神と行動でした」としている。
ところで、こうした賀川の生き方から学ぼうという実行委になぜ37もの全国的な規模の団体が参加したのだろうか。実行委が発表した「多様につながり合う社会をめざして」「賀川豊彦から受け継ぐ、連帯、互助、協同」の結び直しへ向けて」と題する趣意書には、こう書かれている。
「現在、世界は新型コロナ感染症の蔓延、世界的経済の停滞、気候変動、そしてロシアによるウクライナ侵攻という深刻な地球規模の危機的状況を迎えている。これは、かつて賀川とその仲間たちが直面した時代のものとは、規模も質も大幅に異なるものであろう。しかし、この危機的状況だからこそ、かつて賀川と仲間たちが果敢に挑んだように、市民同志あるいは組織同志がつながりあい、同じ目標に向けて行動を共にすることが求められている。
賀川豊彦と仲間たちから改めて学び、それを新たな実践に結びつけたい。そのための契機として、本事業を行うものとする。賀川が神戸や本所で仲間と共に紡いだ糸でさらに多くの人たちと結んだ繋がりはその後多くの組織と活動へと結実した。今新たな諸問題に直面して、我々はこの糸を結び直し、さらに大きく多様なつながりでこの困難に立ち向かう必要がある。多くの方々にご賛同とご参加を願う次第である」
実行委は今後、以下の事業を行うという。
①「賀川豊彦と関東大震災~ボランティアのはじまり~」パネル展
②みんなで山手線一周ポールdeウォーク大会(10月15日予定)
③「マンガでわかる 賀川豊彦と考えるボランティア」の出版(12月20日予定)
なお、実行委37団体には以下のような団体が名を連ねている。
社会福祉法人 イエス団賀川記念館、一般社団法人 家の光協会、
学校法人 雲柱社、社会福祉法人 雲柱社、公益財団法人 賀川事業団雲柱社、
認定特定非営利活動法人 賀川豊彦記念・鳴門友愛会、
公益社団法人 教育文化協会、共栄火災海上保険 株式会社、
株式会社 キリスト新聞社、一般社団法人 国際平和協会、
生活協同組合 コーブみらい、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、
世界連邦運動協会、世界連邦日本国会委員会、全国共済農業協同組合連合会、
全国厚生農業協同組合連合会、全国農業協同組合中央会、
一般社団法人 全国労働金庫協会、全国労働者共済生活協同組合連合会、
東京基督教大学共立基督教研究所、東京都生活協同組合連合会、
東都生活協同組合、中ノ郷信用組合、一般社団法人 日本協同組合連携機構、
日本基督教団松沢教会、日本コープ共済生活協同組合連合会、
一般社団法人 日本社会連帯機構、日本生活協同組合連合会、
日本労働組合総連合会、日本労働組合総連合会東京都連合会、
日本労働者協同組合連合会、公益財団法人 日本 YMCA 同盟、
パルシステム生活協同組合連合会、一般財団法人 本所賀川記念館、
学校法人 明治学院、労働者福祉中央協議会
実行委の事務局は公益財団法人 賀川事業団雲柱社(03-3302-2855)に置かれている。.
2023.09.25
続・「脱原発運動」と「気候変動運動」が共同行動
それぞれの思いをブラカードに込めて
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
9月18日(月・祝日)、東京・代々木公園B地区を中心に「ワタシのミライ イベント&パレード‼」が行われたが、参加者は全国各地からやってきた人たちも含めて約8000人(主催者発表)にのぼった。この催しが、これまで主として「脱原発」の運動を進めてきた「さようなら原発1000万人アクション」と、「気候変動打開」などを目指して運動を行ってきた「ワタシのミライ」「Frideys For Future Tokyo」の2団体との初のコラボレーション(共同行動)であっただけに、会場には地球環境保護につながる多様・多彩な訴えが目立った。

それをまず強く印象づけられたのは、会場入り口で配られていたプログラムである。そこには「地球は一つしかない」「EARTH IS FIRE!(地球は燃えている)」「We ❤ our planet(私たちは、私たちの惑星を愛す)」「NO NUKES(原子力反対)」「NO FOSSILS(化石燃料反対)」「再エネ100%‼」などの文字が氾濫していた。
そればかりでない。参加者、とりわけ一般市民や若い人が、思い思いの、手作りのブラカード、横断幕、のぼりなどを掲げていたのが目に付いた。そこには、いずれも、地球環境に関する切実な訴えや主張が盛り込まれていた。それらのいくつかを紹介する。

これは、東京電力福島第1原発の汚染水の海洋放出反対を訴える横断幕だ。政府は8月24日に海洋放出に踏み切ったが、「ワタシのミライ イベント&パレード‼」のテーマトークでは、何人もの人が「原発の汚染水が無害になることはない。海洋放出は世界の人々を危険に陥れる」と訴えた。

これは、原子力規制委員会の動きを市民の立場から監視しようという呼びかけである。

これは、会場の柵にくくりつけられていたブラカード。「気候正義!」「脱炭素社会を!」の文字が目を引く。他のスローガンからして、作者は完全菜食主義者なのだろうか?

地球温暖化に警告する横断幕である。「地球には冬が必要だ」。もっともだ、と思った。

会場の一角にソーラー(太陽光発電)パネルを張り付けたツリーが飾られていた。再生可能エネルギーの推進を唱えるなら、自ら実践せよ、と言われているように思えた。
2023.09.20
少年ホスト会社を育てたジャニー喜多川
- ジャニーズが清算されなければならない理由
欧州にいると日本の大衆文化の小児(幼児)性が気になる。良い悪いは別にして、欧州では大人の文化が主役で、子供の芸能が占める割合は無視できるほど小さい。ところが、今の日本では男女を問わず、アイドル文化が大衆文化の大きな位置を占め、ジャニーズやAKB48に代表される少年少女芸能がテレビを席巻している。 いつの間にか日本の大衆文化の世界で子供の学芸会が主役になり、テレビ会社が中心になって少年少女芸能をプロダクションから高値で買い、スポンサーは小児性文化を利用して会社の商品やサーヴィスを売っている。大衆芸能のインフレ現象である。
ジャニー喜多川が年端も行かない少年たちを芸能者に育てた才覚には感心するが、そのベースが事実上の少年ホストという特異集団の育成にあり、喜多川本人が商品としての少年ホストを自らの幼児性愛の対象にしていたという事実には驚くしかない。しかも、60年近くの長期にわたって、数百あるいは千を超える少年を対象にしていたから、関係者のほとんどはジャニー喜多川が所属タレントを小児性愛の対象にしていた事実を知っていた。彼らも皆、小児性愛犯罪の共犯者である。
お手付き少年ホストを商品として販売することを手助けしたのはプロダクションだけではない。それを知りながら、テレビ局は若年層の大衆文化として少年ホストの芸能を高値で買い、番組スポンサーはその資金を提供してきた。そして、一般視聴者はスポンサー料だけ高くなった商品を買って少年ホストの芸能を楽しみ、少年はジャニーズに少女はアイドルにあこがれるという小児(幼児)性文化が肥大化するという循環を生み出した。
このように考えると、ジャニーズ帝国を肥大化させたのはプロダクションだけでなく、テレビ局やスポンサー企業にとどまらず、それを好んで消費してきた一般視聴者(消費者)だということが分かる。そして今、はっきりしたことは、少なくともスポンサー企業はジャニー喜多川の小児性愛(虐待)を重大犯罪として認識し始めたが、テレビ局や一般視聴者にはその認識が依然として希薄なことだ。明らかに日本社会の小児性や特異性がこの問題の背景にあることが分かる。
最近の事例では、2018年、アメリカ体操選手団の専属医師が少女選手への性的虐待の罪で、40年から175年の不定期禁固刑を言い渡された。欧米では小児性愛犯罪は重罪である。ジャニー喜多川の少年への性的虐待の罪はこの医師の比ではない。日本のテレビ局にも日本の一般視聴者にも、そのような認識が欠けている。当事者である東山紀之にも藤島ジェリー景子にもその認識がない。だから、社名を変えずに、会社を続けることができると考えているのだろう。いくら言葉で厳しい表現を使っても、ジャニーの名前を残して活動できると考えるのは、犯罪認識がないからだろう。
欧米の先進国でこのような事件が発覚した場合、社名を変えた程度で事は済まない。会社は賠償金を支払った後に清算されるだろう。個々のタレントはその実力に応じて、独立するか、別の事務所へ移籍する。
確かにいろいろな意味で東山紀之は加害者でもあり被害者でもある。合宿所という閉じられた少年ホスト集団社会では少年相互が小児性愛へ同化せざるをえなかっただろう。それはきわめて不幸で悲しいことだ。だから、ジャニー喜多川の犯罪をきちんと断罪しなければならない。大岡越前を演ずるがごとく言葉で断罪するのではなく、犯罪者が創設した会社を清算することでしか、ジャニー喜多川を断罪することはできない。性犯罪をベースに築き上げた会社資産は、すべて、被害者救済と社会福祉事業に充てるべきだ。そうすることでしか、故人の犯罪を償うことができない。小手先の弥縫策で乗り切れる問題ではない。東山や藤島ジェリーがそれを決断できる器量を持っているとは思われないが、いずれ現実の厳しさが会社清算を迫る時が来るだろう。
これを機に、日本の大衆文化が少しでも小児性を脱却することを期待したいが、それは無理だろう。
盛田常夫 (在ブダペスト、経済学者)
欧州にいると日本の大衆文化の小児(幼児)性が気になる。良い悪いは別にして、欧州では大人の文化が主役で、子供の芸能が占める割合は無視できるほど小さい。ところが、今の日本では男女を問わず、アイドル文化が大衆文化の大きな位置を占め、ジャニーズやAKB48に代表される少年少女芸能がテレビを席巻している。 いつの間にか日本の大衆文化の世界で子供の学芸会が主役になり、テレビ会社が中心になって少年少女芸能をプロダクションから高値で買い、スポンサーは小児性文化を利用して会社の商品やサーヴィスを売っている。大衆芸能のインフレ現象である。
ジャニー喜多川が年端も行かない少年たちを芸能者に育てた才覚には感心するが、そのベースが事実上の少年ホストという特異集団の育成にあり、喜多川本人が商品としての少年ホストを自らの幼児性愛の対象にしていたという事実には驚くしかない。しかも、60年近くの長期にわたって、数百あるいは千を超える少年を対象にしていたから、関係者のほとんどはジャニー喜多川が所属タレントを小児性愛の対象にしていた事実を知っていた。彼らも皆、小児性愛犯罪の共犯者である。
お手付き少年ホストを商品として販売することを手助けしたのはプロダクションだけではない。それを知りながら、テレビ局は若年層の大衆文化として少年ホストの芸能を高値で買い、番組スポンサーはその資金を提供してきた。そして、一般視聴者はスポンサー料だけ高くなった商品を買って少年ホストの芸能を楽しみ、少年はジャニーズに少女はアイドルにあこがれるという小児(幼児)性文化が肥大化するという循環を生み出した。
このように考えると、ジャニーズ帝国を肥大化させたのはプロダクションだけでなく、テレビ局やスポンサー企業にとどまらず、それを好んで消費してきた一般視聴者(消費者)だということが分かる。そして今、はっきりしたことは、少なくともスポンサー企業はジャニー喜多川の小児性愛(虐待)を重大犯罪として認識し始めたが、テレビ局や一般視聴者にはその認識が依然として希薄なことだ。明らかに日本社会の小児性や特異性がこの問題の背景にあることが分かる。
最近の事例では、2018年、アメリカ体操選手団の専属医師が少女選手への性的虐待の罪で、40年から175年の不定期禁固刑を言い渡された。欧米では小児性愛犯罪は重罪である。ジャニー喜多川の少年への性的虐待の罪はこの医師の比ではない。日本のテレビ局にも日本の一般視聴者にも、そのような認識が欠けている。当事者である東山紀之にも藤島ジェリー景子にもその認識がない。だから、社名を変えずに、会社を続けることができると考えているのだろう。いくら言葉で厳しい表現を使っても、ジャニーの名前を残して活動できると考えるのは、犯罪認識がないからだろう。
欧米の先進国でこのような事件が発覚した場合、社名を変えた程度で事は済まない。会社は賠償金を支払った後に清算されるだろう。個々のタレントはその実力に応じて、独立するか、別の事務所へ移籍する。
確かにいろいろな意味で東山紀之は加害者でもあり被害者でもある。合宿所という閉じられた少年ホスト集団社会では少年相互が小児性愛へ同化せざるをえなかっただろう。それはきわめて不幸で悲しいことだ。だから、ジャニー喜多川の犯罪をきちんと断罪しなければならない。大岡越前を演ずるがごとく言葉で断罪するのではなく、犯罪者が創設した会社を清算することでしか、ジャニー喜多川を断罪することはできない。性犯罪をベースに築き上げた会社資産は、すべて、被害者救済と社会福祉事業に充てるべきだ。そうすることでしか、故人の犯罪を償うことができない。小手先の弥縫策で乗り切れる問題ではない。東山や藤島ジェリーがそれを決断できる器量を持っているとは思われないが、いずれ現実の厳しさが会社清算を迫る時が来るだろう。
これを機に、日本の大衆文化が少しでも小児性を脱却することを期待したいが、それは無理だろう。
2023.09.19
「脱原発運動」と「気候変動運動」が共同行動
新しい潮流、東京・代々木公園に8000人
社会運動に新しい潮流が生まれた。9月18日(月・祝日)、炎天下の東京・代々木公園B地区で行われた「ワタシのミライ イベント&パレード!!」である。その実体は、脱原発を目指す運動と地球環境保護を目指す気候変動運動のコラボレーション(共同行動)であったが、この2つの潮流のコラボは初めてであり、この運動がこれから先どう展開されるか注目される。
「ワタシのミライ イベント&パレード!!」を主催したのは、「さようなら原発1000万人アクション」「ワタシのミライ」「Frideys For Future Tokyo」の3団体である。
さようなら原発1000万人アクションは、2011年3月に東京電力福島第1原発の事故が起きた直後に、評論家・内橋克人、作家・大江健三郎、同・落合恵子、ルポライター・鎌田慧、作曲家・坂本龍一、ノンフィクション作家・澤地久枝、作家・瀬戸内寂聴、詩人・辻井喬、評論家・鶴見俊輔の9氏の呼びかけで発足した団体で、これまで毎年、3月と9月に東京で脱原発を目指す全国集会を開くなど、脱原発運動をリードしてきた存在だ。

福島原発事故の汚染水海洋放出反対を訴えるプラカード

きれいな地球に住みたいと訴える参加者
ワタシのミライは、気候変動、人権、生物多様性などさまざまな社会問題に取り組む団体が協力するムーブメント。Frideys For Future Tokyoは、2019年から気候変動問題解決に向けた活動をしている。
これまでは、これらの団体が一堂に集まって一緒に行動をすることはなかった。まず、運動の課題が違うということがあった。それに、運動の主体が違う点も影響していた。「さようなら原発」の運動を担ってきたのは主として旧総評系の労組員で、しかも若い人が少ない。一方、「ワタシのミライ」と「Frideys For Future Tokyo」の課題は気候変動問題などで、運動の主体はどちらも若い人たちだ。
関係者によると、「さようなら原発」側は以前から「脱原発の運動の幅をもっと広げたい。とりわけ若い人の参加を増やしたい」と考えていたそうで、そうした思いから2団体にコラボを呼びかけたという。その背景には「地球環境の保護は脱原発運動が掲げる目標の1つであり、2つの団体と共通の基盤に立てる」という考えがあったようだ。
一方、「Frideys For Future Tokyo」の関係者の1人は「わたしたちは、これまで脱原発の運動をしてこなかったが、ぜひやりたいと思ってきた。そんな時、さようなら原発からお誘いがあったので受け入れた」と語った。
会場で配られたプログラムには「脱原発」「NO NUKES」「NO FOSSILS」「EARTH IS ON FIRE!」「再エネ100%!」「地球は1つしかない」「緑をふやそう」などの文字が氾濫していた。この催しが何を目標としているか、一目瞭然だった。
この催しがこれまでと違うなという印象を与えた1つは、催しの最後に決議や宣言を採択しなかったことにも現れていた。
その代わり、ステージでは4回にわたる「テ―マトーク」が行われ、延べ21人が舞台に上がって座り、各回ともまるで座談会のような形式でテーマを巡って各人が自由に発言した。
発言は実に多岐にわたったが、「脱原発にしても再生可能エネルギー問題にしても、はたまた気候変動問題にしても、私たち一人ひとりが考え、行動しなければ解決しない」といった発言が多かった。

電力会社に注文する市民団体も
この種の催しでは、主催者や各団体の代表らが登壇して演説したり、報告をし、最後に決議を採択するというのが通例である。だから、とても新鮮な印象を与えた。
いつもの「さようなら原発」の集会よりも若い人や一般市民の姿が目立ち、これも新鮮な感じを与えた。
参加者(主催者発表は8000人)は午後3時過ぎ、渋谷コースと原宿コースに分かれてパレードに出発した。
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
社会運動に新しい潮流が生まれた。9月18日(月・祝日)、炎天下の東京・代々木公園B地区で行われた「ワタシのミライ イベント&パレード!!」である。その実体は、脱原発を目指す運動と地球環境保護を目指す気候変動運動のコラボレーション(共同行動)であったが、この2つの潮流のコラボは初めてであり、この運動がこれから先どう展開されるか注目される。
「ワタシのミライ イベント&パレード!!」を主催したのは、「さようなら原発1000万人アクション」「ワタシのミライ」「Frideys For Future Tokyo」の3団体である。
さようなら原発1000万人アクションは、2011年3月に東京電力福島第1原発の事故が起きた直後に、評論家・内橋克人、作家・大江健三郎、同・落合恵子、ルポライター・鎌田慧、作曲家・坂本龍一、ノンフィクション作家・澤地久枝、作家・瀬戸内寂聴、詩人・辻井喬、評論家・鶴見俊輔の9氏の呼びかけで発足した団体で、これまで毎年、3月と9月に東京で脱原発を目指す全国集会を開くなど、脱原発運動をリードしてきた存在だ。

福島原発事故の汚染水海洋放出反対を訴えるプラカード

きれいな地球に住みたいと訴える参加者
ワタシのミライは、気候変動、人権、生物多様性などさまざまな社会問題に取り組む団体が協力するムーブメント。Frideys For Future Tokyoは、2019年から気候変動問題解決に向けた活動をしている。
これまでは、これらの団体が一堂に集まって一緒に行動をすることはなかった。まず、運動の課題が違うということがあった。それに、運動の主体が違う点も影響していた。「さようなら原発」の運動を担ってきたのは主として旧総評系の労組員で、しかも若い人が少ない。一方、「ワタシのミライ」と「Frideys For Future Tokyo」の課題は気候変動問題などで、運動の主体はどちらも若い人たちだ。
関係者によると、「さようなら原発」側は以前から「脱原発の運動の幅をもっと広げたい。とりわけ若い人の参加を増やしたい」と考えていたそうで、そうした思いから2団体にコラボを呼びかけたという。その背景には「地球環境の保護は脱原発運動が掲げる目標の1つであり、2つの団体と共通の基盤に立てる」という考えがあったようだ。
一方、「Frideys For Future Tokyo」の関係者の1人は「わたしたちは、これまで脱原発の運動をしてこなかったが、ぜひやりたいと思ってきた。そんな時、さようなら原発からお誘いがあったので受け入れた」と語った。
会場で配られたプログラムには「脱原発」「NO NUKES」「NO FOSSILS」「EARTH IS ON FIRE!」「再エネ100%!」「地球は1つしかない」「緑をふやそう」などの文字が氾濫していた。この催しが何を目標としているか、一目瞭然だった。
この催しがこれまでと違うなという印象を与えた1つは、催しの最後に決議や宣言を採択しなかったことにも現れていた。
その代わり、ステージでは4回にわたる「テ―マトーク」が行われ、延べ21人が舞台に上がって座り、各回ともまるで座談会のような形式でテーマを巡って各人が自由に発言した。
発言は実に多岐にわたったが、「脱原発にしても再生可能エネルギー問題にしても、はたまた気候変動問題にしても、私たち一人ひとりが考え、行動しなければ解決しない」といった発言が多かった。

電力会社に注文する市民団体も
この種の催しでは、主催者や各団体の代表らが登壇して演説したり、報告をし、最後に決議を採択するというのが通例である。だから、とても新鮮な印象を与えた。
いつもの「さようなら原発」の集会よりも若い人や一般市民の姿が目立ち、これも新鮮な感じを与えた。
参加者(主催者発表は8000人)は午後3時過ぎ、渋谷コースと原宿コースに分かれてパレードに出発した。
2023.09.06
大阪維新府政の教育破壊
私立高校授業料無償化の意味するもの
安倍政権以来、政治家が、すぐに嘘とわかる嘘を平気で口にする姿は、すっかり見慣れた景色となっている。トランプ前大統領は在任中もその後も嘘を吐き続けているが、強固な支持者を失ってない。嘘をついても、あるいは嘘をつくことによって、政治家が支持されるという状況を、どう理解すればいいのか。ここでは日本維新の会が2,3年前から繰り返していた「大阪における私立高校授業料完全無償化の実現」なる嘘を取り上げたい。
維新の会の嘘
2021年衆議院総選挙、22年の参議院選挙の際、日本維新の会の共同代表である吉村大阪府知事、同代表の馬場衆議院議員らは、「私立高校の授業料の完全な無償化を実現しているのは大阪だけ」という主張を繰り返した。しかし実際は、大阪府でも他の府県と同様、子どもを私立高校に通わせれば、一定以上の所得のある世帯には授業料負担がある。
他党やメディアなどから、その主張の虚偽性を指摘されると、彼らは、しれっと「選挙中だったので、(盛った)」とか、「(授業料負担のある)該当者には理解できている」(カッコ内は、筆者)など、嘘をつくことに疚しさを全く感じていない姿を見せた。
民主党政権の高校無償化法と私立高校授業料の軽減
民主党政権下の2010年、公立高校の授業料を不徴収とする法が成立した。その際、私立高校にも公立高校授業料に準じた額の補助金を提供し、保護者の負担軽減も実施された。政権に復帰した自公政権は、保護者の所得水準に応じた授業料徴収を復活させたが、その後、国と地方自治体からの助成によって、いずれの府県でも一定の所得制限はあるものの公立・私立を問わず、授業料負担は大幅に軽減されてきた。
筆者の住む埼玉県では、子ども二人の世帯年収が720万円以下であれば、私立高校の平均的な年額授業料である40万円が、国と県の支援金として保護者に支給され、実質的に無償となっている。大阪府の場合、私立高校の平均授業料は約60万円で、世帯年収が590万円以下であれば、その全額が同様の仕組みから支給される。しかし収入がそれ以上であれば、10万円から最大で60万円(年収910万円以上の世帯)の授業料負担がある。他の府県と比べても特に負担が軽減されていたわけではない。にもかかわらず、維新の代表たちは、「完全無償化を大阪だけが実現している」という嘘を繰り返していたのである。
私立高校の「身を切る改革」
大阪府はこの5月、来年度からの段階的な「授業料の完全無償化(案)」を発表した。変更点は「所得制限の撤廃」である。従来、授業料負担を求められていた所得の多い者ほど恩恵を被る「改革」である。しかし吉村知事によれば、これで大阪の子どもたちは公立・私立を問わず、行きたい学校に行けるようになり、選択肢が増えるのだと主張する。
さらに驚くことに、授業料が60万円を超える学校は、超える分を私立学校が負担するとするものだった。しかもこの案は、事前に私立学校側に相談も連絡さえもなく、一方的に発表されたという。さすがに私学側からの反発を受け、基準額を63万円に引き上げることによって、私学側の最終的な了解を得て落ち着いた。
大阪府の私立高校96校のうち授業料が63万円を超える高校は25校あり、私立学校側の負担は総額約7.9億円となるという(読売新聞、2023/08/10)。日本維新の会は常々「身を切る改革」という標語を好んで使うが、これでは、「他人(私立学校)の身を切って」、自分たちが府民に「いい顔をする」ということになる。
私立高校への生徒誘導-公立高校の相次ぐ閉校
私立側に断りもせずに負担を求める案に対し、反発はあまり強くないだろうと府側が考えていた背景がある。少子化の進む中、大阪府市は多くの公立高校を廃止し、その結果、私立高校への進学者数の減少幅が抑えられてきたのである。大阪府は、2012年に「府立学校条例」に以下のような項目を設定し、府立高校を半ば機械的に減らしていく策をとっている。
入学を志願する者の数が三年連続して定員に満たない高等学校で、その後も改善する見込みがないと認められるものは、再編整備の対象とする。
この条例に基づいて、公立高校は16校がすでに閉校または閉校予定となっている。今後さらに9校の閉校が見込まれている。この結果、公立から私立への生徒移動が進んでいるのだ。13年度の大阪府内の高校入学者は80,695人(公立46,893人、私立33,353人)だったが、22年度は67,821人(公立36,800人、私立30,583人)となっている。公立高校が約1万人減らす一方で私立は3,000人程度の減少となっている。

少子化の進行は今後も避けられない。上図は22年の府内の児童・生徒数である。中3約74,000人から、小1の67,500人まで、今後9年間でさらに6,500人の減少が確実である。標準的な規模の高校がさらに20校ほど消える計算である。私立高校の経営者にとっては、頭の痛い状況であるが、もっぱら公立高校の閉校が続いてくれるのであれば、不安は多少とも和らぐ。今回の府側の一方的な負担要求に強く反対できない訳である。
「改革」の意味
吉村知事らは、今回の改革を、「所得など関係なく自らの可能性を追求できる社会を実現する」ものと位置付けているが、ここまでの話からも明らかなように、事実は逆である。
この政策による最大の受益者は高額所得者である。彼らは3年間で最大200万円前後の授業料負担を免れることになる。また彼らの多くは都市中心部の高層住宅や良好な環境の住宅地に住んでいるだろうから、通学の便もよく、子どもたちの学校選択の幅は確実に、より広がるだろう。
一方、地価も比較的安い郊外周縁部に住む、所得水準も相対的に低い家庭の子どもたちの通う公立高校は廃止され、学校選択の幅が狭められる。例えば大阪府南部の阪南市では、市長や市議会の要請にもかかわらず、唯一の公立高校である泉鳥取高校が25年度に廃止されることが決まっている。自転車などで通える地元の公立高校がなくなるのである。
また私立高校は授業料以外の費用が大きい。例えば大阪の公立高校の入学金は5,650円だが、多くの私立高校は20万円である。埼玉県では私立高校進学者に、所得制限があるものの10万円の入学金補助が支給される。それでも一人親家庭などでは、公的資金の借り入れが必要となるケースもある。大阪府では入学金の助成はない。入学金以外の諸会費等、各自主行事費、制服代・その他制定品費などの項目も、一般的に私立の方が高額となるから、所得水準の低い家庭にとって私立高校進学は経済的負担が大きいことに変わりはないのである。
「すべての子どもたちが自分の可能性を追求できる」と、誰も批判できないスローガンのもと、維新府政が導入した政策は、少子化が進む中で私立高校の経営を支え、高額所得世帯の教育費負担を軽減する一方で、経済的に恵まれない家庭の子どもの教育機会を狭めるものなのである。
維新府政は、市立病院の廃止、地下鉄・バスの公営交通機関の民営化、そして公立高校の閉校と、市民生活を支える公共インフラを潰し続けている。その一方で万博やカジノの誘致など、その収益性にも疑問が投げかれられている事業推進に邁進している。まともな行政の体をなしているとは思えない。
小川 洋 (教育研究者)
安倍政権以来、政治家が、すぐに嘘とわかる嘘を平気で口にする姿は、すっかり見慣れた景色となっている。トランプ前大統領は在任中もその後も嘘を吐き続けているが、強固な支持者を失ってない。嘘をついても、あるいは嘘をつくことによって、政治家が支持されるという状況を、どう理解すればいいのか。ここでは日本維新の会が2,3年前から繰り返していた「大阪における私立高校授業料完全無償化の実現」なる嘘を取り上げたい。
維新の会の嘘
2021年衆議院総選挙、22年の参議院選挙の際、日本維新の会の共同代表である吉村大阪府知事、同代表の馬場衆議院議員らは、「私立高校の授業料の完全な無償化を実現しているのは大阪だけ」という主張を繰り返した。しかし実際は、大阪府でも他の府県と同様、子どもを私立高校に通わせれば、一定以上の所得のある世帯には授業料負担がある。
他党やメディアなどから、その主張の虚偽性を指摘されると、彼らは、しれっと「選挙中だったので、(盛った)」とか、「(授業料負担のある)該当者には理解できている」(カッコ内は、筆者)など、嘘をつくことに疚しさを全く感じていない姿を見せた。
民主党政権の高校無償化法と私立高校授業料の軽減
民主党政権下の2010年、公立高校の授業料を不徴収とする法が成立した。その際、私立高校にも公立高校授業料に準じた額の補助金を提供し、保護者の負担軽減も実施された。政権に復帰した自公政権は、保護者の所得水準に応じた授業料徴収を復活させたが、その後、国と地方自治体からの助成によって、いずれの府県でも一定の所得制限はあるものの公立・私立を問わず、授業料負担は大幅に軽減されてきた。
筆者の住む埼玉県では、子ども二人の世帯年収が720万円以下であれば、私立高校の平均的な年額授業料である40万円が、国と県の支援金として保護者に支給され、実質的に無償となっている。大阪府の場合、私立高校の平均授業料は約60万円で、世帯年収が590万円以下であれば、その全額が同様の仕組みから支給される。しかし収入がそれ以上であれば、10万円から最大で60万円(年収910万円以上の世帯)の授業料負担がある。他の府県と比べても特に負担が軽減されていたわけではない。にもかかわらず、維新の代表たちは、「完全無償化を大阪だけが実現している」という嘘を繰り返していたのである。
私立高校の「身を切る改革」
大阪府はこの5月、来年度からの段階的な「授業料の完全無償化(案)」を発表した。変更点は「所得制限の撤廃」である。従来、授業料負担を求められていた所得の多い者ほど恩恵を被る「改革」である。しかし吉村知事によれば、これで大阪の子どもたちは公立・私立を問わず、行きたい学校に行けるようになり、選択肢が増えるのだと主張する。
さらに驚くことに、授業料が60万円を超える学校は、超える分を私立学校が負担するとするものだった。しかもこの案は、事前に私立学校側に相談も連絡さえもなく、一方的に発表されたという。さすがに私学側からの反発を受け、基準額を63万円に引き上げることによって、私学側の最終的な了解を得て落ち着いた。
大阪府の私立高校96校のうち授業料が63万円を超える高校は25校あり、私立学校側の負担は総額約7.9億円となるという(読売新聞、2023/08/10)。日本維新の会は常々「身を切る改革」という標語を好んで使うが、これでは、「他人(私立学校)の身を切って」、自分たちが府民に「いい顔をする」ということになる。
私立高校への生徒誘導-公立高校の相次ぐ閉校
私立側に断りもせずに負担を求める案に対し、反発はあまり強くないだろうと府側が考えていた背景がある。少子化の進む中、大阪府市は多くの公立高校を廃止し、その結果、私立高校への進学者数の減少幅が抑えられてきたのである。大阪府は、2012年に「府立学校条例」に以下のような項目を設定し、府立高校を半ば機械的に減らしていく策をとっている。
入学を志願する者の数が三年連続して定員に満たない高等学校で、その後も改善する見込みがないと認められるものは、再編整備の対象とする。
この条例に基づいて、公立高校は16校がすでに閉校または閉校予定となっている。今後さらに9校の閉校が見込まれている。この結果、公立から私立への生徒移動が進んでいるのだ。13年度の大阪府内の高校入学者は80,695人(公立46,893人、私立33,353人)だったが、22年度は67,821人(公立36,800人、私立30,583人)となっている。公立高校が約1万人減らす一方で私立は3,000人程度の減少となっている。

少子化の進行は今後も避けられない。上図は22年の府内の児童・生徒数である。中3約74,000人から、小1の67,500人まで、今後9年間でさらに6,500人の減少が確実である。標準的な規模の高校がさらに20校ほど消える計算である。私立高校の経営者にとっては、頭の痛い状況であるが、もっぱら公立高校の閉校が続いてくれるのであれば、不安は多少とも和らぐ。今回の府側の一方的な負担要求に強く反対できない訳である。
「改革」の意味
吉村知事らは、今回の改革を、「所得など関係なく自らの可能性を追求できる社会を実現する」ものと位置付けているが、ここまでの話からも明らかなように、事実は逆である。
この政策による最大の受益者は高額所得者である。彼らは3年間で最大200万円前後の授業料負担を免れることになる。また彼らの多くは都市中心部の高層住宅や良好な環境の住宅地に住んでいるだろうから、通学の便もよく、子どもたちの学校選択の幅は確実に、より広がるだろう。
一方、地価も比較的安い郊外周縁部に住む、所得水準も相対的に低い家庭の子どもたちの通う公立高校は廃止され、学校選択の幅が狭められる。例えば大阪府南部の阪南市では、市長や市議会の要請にもかかわらず、唯一の公立高校である泉鳥取高校が25年度に廃止されることが決まっている。自転車などで通える地元の公立高校がなくなるのである。
また私立高校は授業料以外の費用が大きい。例えば大阪の公立高校の入学金は5,650円だが、多くの私立高校は20万円である。埼玉県では私立高校進学者に、所得制限があるものの10万円の入学金補助が支給される。それでも一人親家庭などでは、公的資金の借り入れが必要となるケースもある。大阪府では入学金の助成はない。入学金以外の諸会費等、各自主行事費、制服代・その他制定品費などの項目も、一般的に私立の方が高額となるから、所得水準の低い家庭にとって私立高校進学は経済的負担が大きいことに変わりはないのである。
「すべての子どもたちが自分の可能性を追求できる」と、誰も批判できないスローガンのもと、維新府政が導入した政策は、少子化が進む中で私立高校の経営を支え、高額所得世帯の教育費負担を軽減する一方で、経済的に恵まれない家庭の子どもの教育機会を狭めるものなのである。
維新府政は、市立病院の廃止、地下鉄・バスの公営交通機関の民営化、そして公立高校の閉校と、市民生活を支える公共インフラを潰し続けている。その一方で万博やカジノの誘致など、その収益性にも疑問が投げかれられている事業推進に邁進している。まともな行政の体をなしているとは思えない。
2023.09.05
「さようなら原発」から「ワタシのミライ No Nukes & No Fossilsへ」
9・18に東京で集会とパレード
「9・18ワタシのミライ No Nukes & No Fossils 再生エネ100%と公正な社会を目指して」と題する集会とパレードが、9月18日(月・祝日)午前11時から、東京・代々木公園B地区を中心に行われる。毎年、この時期にはこの地区で「さようなら原発」の全国集会が開かれてきたが、今年は気候危機や再生可能エネルギー問題がクローズアップされているところから、集会のテーマを「脱原発」だけにしぼらず、気候問題や再生可能エネルギー問題にまで広げ、世界が直面している危機的な状況を広く市民に訴えようということになった。
集会とパレードは、「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」「ワタシのミライ」「Frideys For Future Tokvo」の共催。
さようなら原発1000万人アクション実行委員会は、2011年3月に東京電力福島第1原発の事故が起きた直後に、内橋克人、大江健三郎、落合恵子、鎌田慧、坂本龍一、澤地久枝、瀬戸内寂聴、辻井喬、鶴見俊輔の9氏の呼びかけで発足した団体で、これまで毎年、3月と9月に東京で脱原発を目指す全国集会を開くなど脱原発運動をリードしてきた存在である。
「ワタシのミライは」は「気候危機、原発、人権、生物多様性などさまざまな社会問題に取り組む団体が協力するムーブメント」という。
「Frideys For Future Tokvo」は、2019年から気候変動問題解決に向けた活動をしている。
脱原発団体と気候危機問題や再生可能エネルギー問題に取り組んでいる市民グループとのコラボレーションは極めて稀だ。この新しい運動が今後、どんな展開をみせるか注目される。
集会後のバレードは午後3時30分出発。渋谷コースと原宿コースが予定されている。
◆問い合わせ=「ワタシのミライ」事務局 info@watashinomirai.org
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
「9・18ワタシのミライ No Nukes & No Fossils 再生エネ100%と公正な社会を目指して」と題する集会とパレードが、9月18日(月・祝日)午前11時から、東京・代々木公園B地区を中心に行われる。毎年、この時期にはこの地区で「さようなら原発」の全国集会が開かれてきたが、今年は気候危機や再生可能エネルギー問題がクローズアップされているところから、集会のテーマを「脱原発」だけにしぼらず、気候問題や再生可能エネルギー問題にまで広げ、世界が直面している危機的な状況を広く市民に訴えようということになった。
集会とパレードは、「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」「ワタシのミライ」「Frideys For Future Tokvo」の共催。
さようなら原発1000万人アクション実行委員会は、2011年3月に東京電力福島第1原発の事故が起きた直後に、内橋克人、大江健三郎、落合恵子、鎌田慧、坂本龍一、澤地久枝、瀬戸内寂聴、辻井喬、鶴見俊輔の9氏の呼びかけで発足した団体で、これまで毎年、3月と9月に東京で脱原発を目指す全国集会を開くなど脱原発運動をリードしてきた存在である。
「ワタシのミライは」は「気候危機、原発、人権、生物多様性などさまざまな社会問題に取り組む団体が協力するムーブメント」という。
「Frideys For Future Tokvo」は、2019年から気候変動問題解決に向けた活動をしている。
脱原発団体と気候危機問題や再生可能エネルギー問題に取り組んでいる市民グループとのコラボレーションは極めて稀だ。この新しい運動が今後、どんな展開をみせるか注目される。
集会後のバレードは午後3時30分出発。渋谷コースと原宿コースが予定されている。
◆問い合わせ=「ワタシのミライ」事務局 info@watashinomirai.org
2023.09.01
朝鮮人虐殺の場面を描いた絵巻物を公開中
東京・新宿の高麗博物館で
きょう9月1日は、関東大震災から100年である。それを機に東京・新宿の認定NPO法人・高麗博物館で、関東大震災で在日朝鮮人が虐殺されたとされる場面を描いた絵巻物が展示されている。展示は12月24日(日)まで。政府は、関東大震災での朝鮮人虐殺を「記録がない」として今なお否定しているが、絵巻物の生々しい描写を見ると、それが事実であったことがうかがえる。同博物館は「いわれなく殺された人々を追悼すると同時に、ご来場の皆さんと一緒に考える時間と空間を提供したいと考えます」としている。

朝鮮人虐殺の場面を描いた絵巻物の一部(筆者撮影)
隠蔽された虐殺の事実
ウイキペディアによると、1921年9月1日に起きた関東大震災では死者と行方不明者が合わせて10万5000に達した。そうした混乱の中で、「朝鮮人が暴徒化した」とか「朝鮮人が井戸に毒を入れた」といった流言飛語が広がり、自警団や警察官による朝鮮人虐殺が生じたという。その数については諸説があるとウィキペディアは言い、2613人という説もあれば6601人という説もあるとしている。
『関東大震災100年 隠蔽された朝鮮人虐殺』と題された高麗博物館の今度の企画展に展示されているのは『関東大震災絵巻一、二 肉筆 淇谷』という絵巻物である。作者の淇谷(きこく)は福島県西郷村の小学校で教員をしていた大原弥市という人物とみられている。絵巻物の完成は1926年。
この絵巻物を“発見”したのは専修大学元教授で高麗博物館前館長の新井勝紘さんだ。専門は日本近代史・自由民権運動だが、自由民権期の私擬憲法草案のうち民主的な規定をもつ私擬憲法草案の一つ、「五日市憲法」の共同発見者の1人として知られる。
国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)に助教授として勤務していた時、関東大震災にかかわって以来、大震災での朝鮮人虐殺を描いた絵画の収集と研究を続ける。
専修大退職後も、ネットオークションで古い資料を探す日々。2021年2月25日、パソコンを開くと『関東大震災絵巻一、二 肉筆 淇谷』という絵巻物が出品されているのに目を惹かれた。オークションに参加し、9万7000円で競り落とした。送られてきた絵巻物は2巻。縦は双方とも36センチ、横は1巻が14メートル、2巻が18メートル。
まさに奇跡的な出合い
絵巻をひもとき、眺め始めた新井さんは驚いた。その時のことを新井さんは自著にこう書いている。
「私にとっては河目悌二、菅原白河に続いて、三回目の衝撃的出合いを経験した」「震災の状況を描いた作品は、販売目的のものも含めてかなり多くの画家たちが残しているが、絵巻物となると例は少ない。震災後一世紀ほどの年月を経て、いまここに出現してきたことに私は大きな衝撃を受けた。それもなんとオークションの場である。そもそもこのような作品がオークションに出品されることなど、何回もこのオークションで歴史資料を購入した経験がある私でさえ、想像もできなかっのが正直な気持ちである。最終的に私が入手する権利を得たが、軌跡的ともいえるだろう」(『関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く』新日本出版社刊)。
新井さんはなぜ驚いたか。そこに、朝鮮人虐殺がリアルに描かれていたからである。
殺害現場の描写
朝鮮人虐殺が描かれているのは巻一である。そして、それらは4つの場面に分かれている。『関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く』によると――
第1の場面は、手に手に刀や棒などを持った20数人の警察官や軍人、自警団らに追い込まれて、ついに仰向けにて倒れてしまった青色の着衣で、それも履物を履いていない人物が、竹槍をもった白い制服の警察官らしき人物に足蹴りにされている。
第2の場面は、学生帽のような帽子をかぶった青年が、それぞれが刀を手にした5、6人の軍人たちに囲まれていて、すでに刀が振り下ろされたのであろうか、青年の肩から腕にかけては大量の血が流れている。両手はうしろで縛られているのだろうか、もう前かがみになっており、今にも倒れそうである。
第3の場面は、刀や竹槍などを持った軍人や自警団が追いかけている先を、1人の警官が「そこだ、そこだ」と指さしている。その先にはすでに青色の服装をした3人が血を流して犠牲になっている。
一番手前の地面に倒れている人物の背中には、竹槍が突き刺さったままになっていて、鮮血が流れ出している。そのわきの仰向けで倒れている人物は、3人がかりで押さえこまれ、馬乗りにようになっている人物は手に刀を持ち、それをいまにも振り下ろそうとしている。被害者はすでに肩口から大量の血が流れ出し、目はすでに白目になっている。3人のうち最後の人物には、いまにも刀を降り下ろそうとしている2人が襲い掛かり、被害者はは頭を後ろ向けて倒れかかっている。頭部から鮮血が地面に向かって滝のように流れ落ちている。
第4の場面は、殺害現場の先で、6、7人の犠牲者が折り重ねられていた。何本かの樹木を挟んだ虐殺現場に隣接する場所には、ゴザのような敷物のようの上に犠牲者が次々と運び込まれ、まるで物でも置くように何段にも積み重ねられている。
私たちに問われていることは何か
自著の「はじめに」で、新井さんはこうつづっている。
「歴史を学ぶことが、一世紀経ってもまだできていないことに恥を感じざるをえない。短い期間であったが、認定NPO法人・高麗博物館の理事や館長をつとめた経験者として、私たちは今なにをしなければならないかを、改めて問われているのだと思う。それはまた、私たちが背負う責任の重さのでもある」
<高麗博物館>
東京都新宿区新大久保1-12-1 第2韓国広場ビル7階
最寄りの駅は、JR山手線の「新大久保駅」、あるいは地下鉄副都心線・大江戸線の「東新宿駅」
電話03-5272-3510
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
きょう9月1日は、関東大震災から100年である。それを機に東京・新宿の認定NPO法人・高麗博物館で、関東大震災で在日朝鮮人が虐殺されたとされる場面を描いた絵巻物が展示されている。展示は12月24日(日)まで。政府は、関東大震災での朝鮮人虐殺を「記録がない」として今なお否定しているが、絵巻物の生々しい描写を見ると、それが事実であったことがうかがえる。同博物館は「いわれなく殺された人々を追悼すると同時に、ご来場の皆さんと一緒に考える時間と空間を提供したいと考えます」としている。

朝鮮人虐殺の場面を描いた絵巻物の一部(筆者撮影)
隠蔽された虐殺の事実
ウイキペディアによると、1921年9月1日に起きた関東大震災では死者と行方不明者が合わせて10万5000に達した。そうした混乱の中で、「朝鮮人が暴徒化した」とか「朝鮮人が井戸に毒を入れた」といった流言飛語が広がり、自警団や警察官による朝鮮人虐殺が生じたという。その数については諸説があるとウィキペディアは言い、2613人という説もあれば6601人という説もあるとしている。
『関東大震災100年 隠蔽された朝鮮人虐殺』と題された高麗博物館の今度の企画展に展示されているのは『関東大震災絵巻一、二 肉筆 淇谷』という絵巻物である。作者の淇谷(きこく)は福島県西郷村の小学校で教員をしていた大原弥市という人物とみられている。絵巻物の完成は1926年。
この絵巻物を“発見”したのは専修大学元教授で高麗博物館前館長の新井勝紘さんだ。専門は日本近代史・自由民権運動だが、自由民権期の私擬憲法草案のうち民主的な規定をもつ私擬憲法草案の一つ、「五日市憲法」の共同発見者の1人として知られる。
国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)に助教授として勤務していた時、関東大震災にかかわって以来、大震災での朝鮮人虐殺を描いた絵画の収集と研究を続ける。
専修大退職後も、ネットオークションで古い資料を探す日々。2021年2月25日、パソコンを開くと『関東大震災絵巻一、二 肉筆 淇谷』という絵巻物が出品されているのに目を惹かれた。オークションに参加し、9万7000円で競り落とした。送られてきた絵巻物は2巻。縦は双方とも36センチ、横は1巻が14メートル、2巻が18メートル。
まさに奇跡的な出合い
絵巻をひもとき、眺め始めた新井さんは驚いた。その時のことを新井さんは自著にこう書いている。
「私にとっては河目悌二、菅原白河に続いて、三回目の衝撃的出合いを経験した」「震災の状況を描いた作品は、販売目的のものも含めてかなり多くの画家たちが残しているが、絵巻物となると例は少ない。震災後一世紀ほどの年月を経て、いまここに出現してきたことに私は大きな衝撃を受けた。それもなんとオークションの場である。そもそもこのような作品がオークションに出品されることなど、何回もこのオークションで歴史資料を購入した経験がある私でさえ、想像もできなかっのが正直な気持ちである。最終的に私が入手する権利を得たが、軌跡的ともいえるだろう」(『関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く』新日本出版社刊)。
新井さんはなぜ驚いたか。そこに、朝鮮人虐殺がリアルに描かれていたからである。
殺害現場の描写
朝鮮人虐殺が描かれているのは巻一である。そして、それらは4つの場面に分かれている。『関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く』によると――
第1の場面は、手に手に刀や棒などを持った20数人の警察官や軍人、自警団らに追い込まれて、ついに仰向けにて倒れてしまった青色の着衣で、それも履物を履いていない人物が、竹槍をもった白い制服の警察官らしき人物に足蹴りにされている。
第2の場面は、学生帽のような帽子をかぶった青年が、それぞれが刀を手にした5、6人の軍人たちに囲まれていて、すでに刀が振り下ろされたのであろうか、青年の肩から腕にかけては大量の血が流れている。両手はうしろで縛られているのだろうか、もう前かがみになっており、今にも倒れそうである。
第3の場面は、刀や竹槍などを持った軍人や自警団が追いかけている先を、1人の警官が「そこだ、そこだ」と指さしている。その先にはすでに青色の服装をした3人が血を流して犠牲になっている。
一番手前の地面に倒れている人物の背中には、竹槍が突き刺さったままになっていて、鮮血が流れ出している。そのわきの仰向けで倒れている人物は、3人がかりで押さえこまれ、馬乗りにようになっている人物は手に刀を持ち、それをいまにも振り下ろそうとしている。被害者はすでに肩口から大量の血が流れ出し、目はすでに白目になっている。3人のうち最後の人物には、いまにも刀を降り下ろそうとしている2人が襲い掛かり、被害者はは頭を後ろ向けて倒れかかっている。頭部から鮮血が地面に向かって滝のように流れ落ちている。
第4の場面は、殺害現場の先で、6、7人の犠牲者が折り重ねられていた。何本かの樹木を挟んだ虐殺現場に隣接する場所には、ゴザのような敷物のようの上に犠牲者が次々と運び込まれ、まるで物でも置くように何段にも積み重ねられている。
私たちに問われていることは何か
自著の「はじめに」で、新井さんはこうつづっている。
「歴史を学ぶことが、一世紀経ってもまだできていないことに恥を感じざるをえない。短い期間であったが、認定NPO法人・高麗博物館の理事や館長をつとめた経験者として、私たちは今なにをしなければならないかを、改めて問われているのだと思う。それはまた、私たちが背負う責任の重さのでもある」
<高麗博物館>
東京都新宿区新大久保1-12-1 第2韓国広場ビル7階
最寄りの駅は、JR山手線の「新大久保駅」、あるいは地下鉄副都心線・大江戸線の「東新宿駅」
電話03-5272-3510
2023.08.24
原爆展を「オンラインミュージアム」で
被爆者団体がその費用を募金で調達中
原爆被爆者の全国組織である日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は、「核兵器は死者を人間とは思えない姿に焼き尽くし、生き延びた人々を病気や貧困、差別に追い込みました。核兵器は、人間とは共存できない兵器です。核兵器がもたらしたものと、被爆者の歩みを世界の人たち知って欲しい」(日本被団協発行のチラシから)という思いから、2005年から4回にわたってニューヨークの国連で原爆展を開催してきた。
ところが、ロシアによるウクライナ侵攻を機に、核兵器が使われるのではとの不安が世界的に高まり、日本被団協は「世界は今、広島・長崎後、核兵器使用のリスクが最も高い状況にある」とみている。その理由として、米国の原子力科学者会報の「世界終末時計」が今年1月24日に「人類の終末まで『残り90秒』」になったことを挙げている。これまでで最も終末に近づいた数字だという。
そこで、日本被団協としては、「広島・長崎での被害の実態は、私たちが思っている以上に世界に伝わっていないのです。広島・長崎の被爆体験について世界の人たちが知らないのは無理ありません。触れられる機会が少ないし、78年前の出来事を自分ごととしてとらえるのは簡単なことではありません。しかし、伝えるきっかけさえ作れれば、核兵器に対するイメージはきっと変わるはずです」として、「広島・長崎の被爆者の思いを世界へ届けるオンラインミュージアム『NO MORE HIROSHIMA&NAGASAKI MUSEUM』をつくろう」ということになった。
具体的には、2022年に国連本部で開催した原爆展『広島・長崎から75年を超えてヒバクシャ――核兵器廃絶に取り組む勇気ある人々』のパネルをインターネット上に公開する。これだと、誰でも世界中から簡単にアクセスできる。
これに対し、中満泉・国連軍縮担当上級代表も「日本被団協が『原爆展』のオンライン公開を決定したことを嬉しく思います。このウエブサイトを通じて、世界中のあらゆる人々が、核兵器の惨禍を乗り越えられた被爆者の方々の力強さに触れることができるのです」とのメッセージを寄せている。
オンラインミュージアムの製作費は350万円。写真の使用料、パネルのweb用デザイン費、ホームページ作成費、ホームページ翻訳費などがかかるからだ。このため、日本被団協としては、この費用をクラウドファンデイング(募金)でまかなうことにしている。これには、NPO法人ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会も協力している。期間は9月17日まで。
8月23日現在、93人から114万2000円が寄せられている。
パソコンやスマホでクラウドファンディングを参加するには、
NO MORE HIROSHIMA&NAGASAKI MUSEUMへ。
銀行振込みの場合は以下へ連絡を。
電話03-3438-1897 FAX03-3431-2113
メール:hidankyo1945@gmail.com
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
原爆被爆者の全国組織である日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は、「核兵器は死者を人間とは思えない姿に焼き尽くし、生き延びた人々を病気や貧困、差別に追い込みました。核兵器は、人間とは共存できない兵器です。核兵器がもたらしたものと、被爆者の歩みを世界の人たち知って欲しい」(日本被団協発行のチラシから)という思いから、2005年から4回にわたってニューヨークの国連で原爆展を開催してきた。
ところが、ロシアによるウクライナ侵攻を機に、核兵器が使われるのではとの不安が世界的に高まり、日本被団協は「世界は今、広島・長崎後、核兵器使用のリスクが最も高い状況にある」とみている。その理由として、米国の原子力科学者会報の「世界終末時計」が今年1月24日に「人類の終末まで『残り90秒』」になったことを挙げている。これまでで最も終末に近づいた数字だという。
そこで、日本被団協としては、「広島・長崎での被害の実態は、私たちが思っている以上に世界に伝わっていないのです。広島・長崎の被爆体験について世界の人たちが知らないのは無理ありません。触れられる機会が少ないし、78年前の出来事を自分ごととしてとらえるのは簡単なことではありません。しかし、伝えるきっかけさえ作れれば、核兵器に対するイメージはきっと変わるはずです」として、「広島・長崎の被爆者の思いを世界へ届けるオンラインミュージアム『NO MORE HIROSHIMA&NAGASAKI MUSEUM』をつくろう」ということになった。
具体的には、2022年に国連本部で開催した原爆展『広島・長崎から75年を超えてヒバクシャ――核兵器廃絶に取り組む勇気ある人々』のパネルをインターネット上に公開する。これだと、誰でも世界中から簡単にアクセスできる。
これに対し、中満泉・国連軍縮担当上級代表も「日本被団協が『原爆展』のオンライン公開を決定したことを嬉しく思います。このウエブサイトを通じて、世界中のあらゆる人々が、核兵器の惨禍を乗り越えられた被爆者の方々の力強さに触れることができるのです」とのメッセージを寄せている。
オンラインミュージアムの製作費は350万円。写真の使用料、パネルのweb用デザイン費、ホームページ作成費、ホームページ翻訳費などがかかるからだ。このため、日本被団協としては、この費用をクラウドファンデイング(募金)でまかなうことにしている。これには、NPO法人ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会も協力している。期間は9月17日まで。
8月23日現在、93人から114万2000円が寄せられている。
パソコンやスマホでクラウドファンディングを参加するには、
NO MORE HIROSHIMA&NAGASAKI MUSEUMへ。
銀行振込みの場合は以下へ連絡を。
電話03-3438-1897 FAX03-3431-2113
メール:hidankyo1945@gmail.com
2023.08.23
世間は「withコロナ」から「アフターコロナ」へ
日本生協連の調査で明らかに
2020年から世界的な新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)にほんろうされてきた日本だが、その日本も最近、ようやく平常に戻りつつあるようだ。新型コロナが絶滅したわけではないが、ひところの急激な感染拡大に伴う恐怖と混乱は遠のき、市民の生活もようやく平常を取り戻しつつあるからだ。日本生活協同組合連合会(組合員3054万人)が行った調査でも、組合員の生活が「withコロナ」から「アフターコロナ」に移行しつつあることが明らかになった。
日本生協連は新型コロナの感染拡大時期であった2020年11月から定期的に組組合員を対象にアンケート調査を行ってきた。今回は新型コロナが「2類感染症」から「5類感染症」に移行して1カ月たった今年6月にアンケート調査を行った。有効回答数は6406。
「控えていることはない」がトップ
第1の質問は「現在あなたが感染症予防のために継続して控えていることを教えてください」(答えはいくつでも)だった。これに対する回答は――「控えていることはない」がトップで41.2%、以下、「3密(密閉・密集・密接)の場所に行く」38.6%、「不要・不急の外出」22.6%と続く。
「控えていることはない」は前回調査(2022年11月)では11.8%だった。なんと29.4%もアップしたことになる。このことから、日本生協連は「組合員の生活がコロナ以前の生活に近づいていることがうかがえる結果となった」としている。
「外出時のマスク着用は5割」
第2の質問は「外出時の感染症対策としてのマスク着用について、現在のご自身にあてはまることを教えてください」(答えはひとつ)である。
その回答は「常に・ほとんど着用している」52.8%、「場所やシーンによって着用したり、しなかったりする」42.0%、「全く・ほとんど着用していない」4.6%、その他0.3%、無回答0.3%。
日本生協連は「『全く・ほとんど着用していない』は全体では5%未満だか、若年層(20代~30代)では10%前後で、年代別に意識の差が大きい結果となった」としている。
感染症対策のベストスリーは手洗い、マスク着用、手指の消毒
第3の質問は「現在あなたが感染症対策・予防のために継続して行っていることを教えてください」(答えはいくつでも)である。
回答は「手洗い」94.6%、「マスクの着用」86.9%、「手指の消毒」70.6%、「うがい」59.6%、「部屋の換気」49.3%……といったところだった。
「すべての項目で実施率が減少した。『手洗い』『うがい』などの基本の対策は引き続き継続率が高いが、『手指の消毒』『身の回りの物の消毒』『体温測定』『オンライン通話・電話の活用』については大きく減少した。『マスクの着用』は前回調査より10%ほど低下したが、依然として多くの方が継続していることが分かった」というのが、日本生協連の分析結果だ。
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
2020年から世界的な新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)にほんろうされてきた日本だが、その日本も最近、ようやく平常に戻りつつあるようだ。新型コロナが絶滅したわけではないが、ひところの急激な感染拡大に伴う恐怖と混乱は遠のき、市民の生活もようやく平常を取り戻しつつあるからだ。日本生活協同組合連合会(組合員3054万人)が行った調査でも、組合員の生活が「withコロナ」から「アフターコロナ」に移行しつつあることが明らかになった。
日本生協連は新型コロナの感染拡大時期であった2020年11月から定期的に組組合員を対象にアンケート調査を行ってきた。今回は新型コロナが「2類感染症」から「5類感染症」に移行して1カ月たった今年6月にアンケート調査を行った。有効回答数は6406。
「控えていることはない」がトップ
第1の質問は「現在あなたが感染症予防のために継続して控えていることを教えてください」(答えはいくつでも)だった。これに対する回答は――「控えていることはない」がトップで41.2%、以下、「3密(密閉・密集・密接)の場所に行く」38.6%、「不要・不急の外出」22.6%と続く。
「控えていることはない」は前回調査(2022年11月)では11.8%だった。なんと29.4%もアップしたことになる。このことから、日本生協連は「組合員の生活がコロナ以前の生活に近づいていることがうかがえる結果となった」としている。
「外出時のマスク着用は5割」
第2の質問は「外出時の感染症対策としてのマスク着用について、現在のご自身にあてはまることを教えてください」(答えはひとつ)である。
その回答は「常に・ほとんど着用している」52.8%、「場所やシーンによって着用したり、しなかったりする」42.0%、「全く・ほとんど着用していない」4.6%、その他0.3%、無回答0.3%。
日本生協連は「『全く・ほとんど着用していない』は全体では5%未満だか、若年層(20代~30代)では10%前後で、年代別に意識の差が大きい結果となった」としている。
感染症対策のベストスリーは手洗い、マスク着用、手指の消毒
第3の質問は「現在あなたが感染症対策・予防のために継続して行っていることを教えてください」(答えはいくつでも)である。
回答は「手洗い」94.6%、「マスクの着用」86.9%、「手指の消毒」70.6%、「うがい」59.6%、「部屋の換気」49.3%……といったところだった。
「すべての項目で実施率が減少した。『手洗い』『うがい』などの基本の対策は引き続き継続率が高いが、『手指の消毒』『身の回りの物の消毒』『体温測定』『オンライン通話・電話の活用』については大きく減少した。『マスクの着用』は前回調査より10%ほど低下したが、依然として多くの方が継続していることが分かった」というのが、日本生協連の分析結果だ。
2023.08.04
物価高騰下、節約に走る生協組合員
日本生協連の調査で明らかに
2022年から本格化した物価高騰が、市民の家計に大きな影響を及ぼしていることが、日本生活協同組合連合会(組合員3054万人)の「節約と値上げの意識についてのアンケート調査」で明らかになった。それによると、相次ぐ物価高騰に組合員は、ふだんの食事や外食で節約を余儀なくされており、日常生活は厳しくなる一方だ。
アンケート調査は、今年の5月9日~14日におこなった。調査はWEBを通じてのアンケートで、有効回答数は3278。昨年11月も同様の調査を実施している。
95%が値上げによる家計の負担を実感
アンケートの第1問は「食品・飲料の値上がりによる家計への負担を実感することがありますか?」(答えは一つ)である。
これに対する回答は、「とても感じる」65.1%、「やや感じる」30.0%、「どちらでもない」3.1%、「あまり感じない」1.6%。「とても感じる」と「やや感じる」を合わせると、なんと95.1%である。
日本生協連によると、昨年の調査結果は「とても感じる」53.8%、「やや感じる」37.6%で、合わせて91.4%だったから、今年の調査結果は昨年を3.7%上回った。日本生協連は「1年以上続く物価高騰に終わりがみえないことから、組合員には以前よりも値上げを実感している傾向が見られた」としている。
商品の値上がりにより購入頻度や量が減ったのは「デザート・スイーツ・アイス」「卵」「菓子・おやつ」
第2問は「食品・飲料・日用品で、値上がりにより、より安い商品に切り替えたもの、購入頻度や量が減ったものがあれば教えてください」(答えはいくつでも)である。
これに対する回答はどうだったか。「より安い商品に切り替えたもの」は、「パン」「紙製品」「牛乳・乳製品(チーズ・ヨーグルートなど)」「肉(冷凍含む)」「菓子・おやつ」がトップ5。「購入頻度や量が減ったもの」は「デザート・スイーツ」「卵」「菓子・おやつ」だったという。
日本生協連は「全体として、安い商品に切り替えるというより、購入頻度や量が減ったと回答した人が多かった」としている。
全体の93.3%が日頃から節約を意識
第3問は「あなたは、日頃、節約を意識していますか」(答えは一つ)。
結果は「強く意識している」23.1.%、「ある程度意識している」70.2%、「あまり意識していない」6.3%、[全く意識していない」0.4%。日頃から節約を「強く意識している」と「ある程度意識している」を合わせると、93.3%だ。
とくに、20代で、「あまり意識していない」人が昨年より13.0%減少しているのに対し、「ある程度意識している」人が14.4%増加していることから、日本生協連は「とくに若年層で節約の意識が高くなっている」とみている。
家庭での節約で最も多いのが「ふだんの食事」
第4問は「あなたのご家庭では、ここ3カ月で、どのような項目の節約を行いましたか」(答えはいくつでも)である。
回答は多岐にわたったが、一番多かったのは「ふだんの食事(食料品・菓子・飲料・テイクアウトなど)」だった。昨年の調査では、回答者の42.1%が「ふだんの食事」を挙げたが、今年の調査では60.9%の回答者が「ふだんの食事」を挙げた。昨年からなんと18.8%も増加したわけである。
次いで多かった節約は「外食」。昨年の調査ではトップだったが、今年は第2位に。この次に多かったのが「水道光熱費」。これは、電気料金の値上げが影響しているものと思われる。
購入時に価格が気になるティッシュペーパー
第5問は「日用消耗品に対して、購入時に価格の安さを重視するものを教えてください」(答えはいくつもでも)である。
これへの回答は――第1位ティッシュペーパー、第2位トイレットペーパー、第3位衣料用洗剤、第4位台所用洗剤、第5位トイレ用洗剤であった。
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
2022年から本格化した物価高騰が、市民の家計に大きな影響を及ぼしていることが、日本生活協同組合連合会(組合員3054万人)の「節約と値上げの意識についてのアンケート調査」で明らかになった。それによると、相次ぐ物価高騰に組合員は、ふだんの食事や外食で節約を余儀なくされており、日常生活は厳しくなる一方だ。
アンケート調査は、今年の5月9日~14日におこなった。調査はWEBを通じてのアンケートで、有効回答数は3278。昨年11月も同様の調査を実施している。
95%が値上げによる家計の負担を実感
アンケートの第1問は「食品・飲料の値上がりによる家計への負担を実感することがありますか?」(答えは一つ)である。
これに対する回答は、「とても感じる」65.1%、「やや感じる」30.0%、「どちらでもない」3.1%、「あまり感じない」1.6%。「とても感じる」と「やや感じる」を合わせると、なんと95.1%である。
日本生協連によると、昨年の調査結果は「とても感じる」53.8%、「やや感じる」37.6%で、合わせて91.4%だったから、今年の調査結果は昨年を3.7%上回った。日本生協連は「1年以上続く物価高騰に終わりがみえないことから、組合員には以前よりも値上げを実感している傾向が見られた」としている。
商品の値上がりにより購入頻度や量が減ったのは「デザート・スイーツ・アイス」「卵」「菓子・おやつ」
第2問は「食品・飲料・日用品で、値上がりにより、より安い商品に切り替えたもの、購入頻度や量が減ったものがあれば教えてください」(答えはいくつでも)である。
これに対する回答はどうだったか。「より安い商品に切り替えたもの」は、「パン」「紙製品」「牛乳・乳製品(チーズ・ヨーグルートなど)」「肉(冷凍含む)」「菓子・おやつ」がトップ5。「購入頻度や量が減ったもの」は「デザート・スイーツ」「卵」「菓子・おやつ」だったという。
日本生協連は「全体として、安い商品に切り替えるというより、購入頻度や量が減ったと回答した人が多かった」としている。
全体の93.3%が日頃から節約を意識
第3問は「あなたは、日頃、節約を意識していますか」(答えは一つ)。
結果は「強く意識している」23.1.%、「ある程度意識している」70.2%、「あまり意識していない」6.3%、[全く意識していない」0.4%。日頃から節約を「強く意識している」と「ある程度意識している」を合わせると、93.3%だ。
とくに、20代で、「あまり意識していない」人が昨年より13.0%減少しているのに対し、「ある程度意識している」人が14.4%増加していることから、日本生協連は「とくに若年層で節約の意識が高くなっている」とみている。
家庭での節約で最も多いのが「ふだんの食事」
第4問は「あなたのご家庭では、ここ3カ月で、どのような項目の節約を行いましたか」(答えはいくつでも)である。
回答は多岐にわたったが、一番多かったのは「ふだんの食事(食料品・菓子・飲料・テイクアウトなど)」だった。昨年の調査では、回答者の42.1%が「ふだんの食事」を挙げたが、今年の調査では60.9%の回答者が「ふだんの食事」を挙げた。昨年からなんと18.8%も増加したわけである。
次いで多かった節約は「外食」。昨年の調査ではトップだったが、今年は第2位に。この次に多かったのが「水道光熱費」。これは、電気料金の値上げが影響しているものと思われる。
購入時に価格が気になるティッシュペーパー
第5問は「日用消耗品に対して、購入時に価格の安さを重視するものを教えてください」(答えはいくつもでも)である。
これへの回答は――第1位ティッシュペーパー、第2位トイレットペーパー、第3位衣料用洗剤、第4位台所用洗剤、第5位トイレ用洗剤であった。