2018.02.07  三匹の子ブタが駅前で出会った
          韓国通信NO547

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

 2月3日の「全国統一行動日」。千葉県・我孫子駅前で三人のオジサンが「スタンディングデモ」をした。最近名前を知り合った仲間だ。ふだんは別々に活動をしているが、たまたま先月に続いて三人が駅前でそろって「立ちんぼ」をした。
三人だと目立つようで話しかけてくる人が多い。地域の新聞で紹介したいので写真を撮らせてほしいと頼まれた。どんな団体なのか聞いてくる人もいた。三人ともまぎれもない「無所属」だ。
「一匹オオカミなのね」。オオカミと言われて咄嗟に、「三匹の子ブタです」とやりかえす。
 ジャージを着た中学生たちが「アベセイジヲユルサナイー」と大声で通りすぎていった。土曜日の午後、立春の前日にしては温かく、駅前は賑やかだった。

三匹の子ブタが駅前で出会った

<東海第二原発の廃炉を求めて>
前日の2日、雪が降った日の夕刻、我孫子市議会に提出する東海第二原発の廃炉を求める請願の打ち合わせをした。状況は楽観を許さないものの、県外では、既に茨城県内の17自治体が再稼働反対の決議を行ったし、栃木県益子町の婦人たちが1600人の署名を集め、町議会を「圧倒」、全会一致で決議が行われた。
千葉県では一番バッターを目指して我孫子市民が後に続く。原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)が提唱する国民運動や伊方原発の運転中止の動きに合わせた東海第二原発の包囲網がさらに広がれば、再稼働を阻止できる展望が十分見えてきた。

30キロ圏内に100万近い住民が住み、事故が起きたら首都圏壊滅は「想定内」である。40年過ぎた原発は廃炉と決まっているのに、特例でさらに20年も使うという「ムシのよい話」に怒らない人はいない。それも事故続きの危険な原発である。東海第二原発の廃炉を求める署名活動をしながら安倍政権が進める原発依存、再稼働路線に反対する人がこんなにも多いことを知った。ひとりで署名集めをしていたら、100名集めるだけでも大変なのに500名も集まった。地元の人や「通信」の読者からも署名が届いた。署名活動への期待は重い。
東海村から85キロにある我孫子市の議会が「NO」といえば、東海第二の再稼働路線に痛打になるはずだ。原発の是非は国会の与野党対立の構図のなかで理解されがちだが、市民の命と生活の安全に与党も野党もない。保守系議員が多い市議会で全会一致の採択を目指している。3月12日の環境委員会で請願者代表が5分スピーチを行うことになっている。今月25日が署名の締め切り日。皆さんの応援「弾」署名をお願いしたい。
2018.02.02  まずは事実を共有して――相次ぐ米軍機事故
宮里政充 (元高校教師)

またしても米軍機不時着
今年に入って1月6日にうるま市伊計島にUHIヘリが、8日には読谷村の廃棄処分場にAHIZ攻撃ヘリが不時着陸した。沖縄県議会の議員団は22日に在沖縄海兵隊政務外交部長のダリン・クラーク大佐に相次ぐ米軍機の事故などにたいして抗議。その時、大佐は「事故の数は減っているし、車だって故障はする。未然にチェックするのは難しい」などと述べていた。また、宜野湾市議会では23日の午前、抗議決議と意見書を全会一致で可決し、第3海兵遠征軍司令官と駐日米国大使に抗議決議文を、安倍首相、防衛省、沖縄防衛局長に意見書を送った。
まさにその日の午後8時ごろ、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属のAHIZ攻撃ヘリコプター1機が渡名喜島(渡名喜村)の急患搬送用ヘリポートに不時着したのである。新聞報道によれば、油圧系統の異常を知らせる警告灯が点灯し、着陸したものらしい。乗員2人にけがはないという。県には同日午後9時10分すぎに防衛省沖縄防衛局から「8時ごろ渡名喜村にAHIZヘリが予防着陸した」との連絡があった。渡名喜島における米軍ヘリの不時着は1999年以降今回で8回目である。

まずは事実を共有して――相次ぐ米軍機事故
以下、この事故に対する新聞報道を列記する。

翁長知事―「米軍全体がクレイジー」
沖縄県渡名喜村の村営ヘリポートに米軍普天間飛行場所属のAHIZ攻撃ヘリコプターが不時着陸したことを受けて、翁長雄志知事は24日、「まさしく、米軍全体がクレイジーだ」と憤った。翁長知事は、米軍機の事故やトラブルが相次いでいることに「米軍は管理、監督が全くできないようになっている。全く改善する兆しがない」と問題視。国の当事者能力のなさも批判した。その上で、「今の米軍のやり方はふに落ちない。どうにもならない感じなのでしっかりとやり方を考えてみたいと思う」と述べた(1.27沖縄タイムス+プラス ニュース)。

ネラー司令官―「不時着で良かった」
米海兵隊のネラー司令官は25日、ワシントンでのシンポジウムで、沖縄県で米軍ヘリコプターの不時着が相次いでいることを念頭に「海外で起きた不時着のニュースが流れているが、非常に率直に言って不時着で良かった」と述べた(1.26西日本新聞)。
ネラー氏は今後の対策として、部品不足を解消し、機体の整備体制を立て直して飛行可能な航空機数を増やし、飛行訓練の時間を増加させることでパイロットの技能向上を図り、即応体制の回復を目指すと説明し、訓練環境の改善に取り組む考えを示した。(中略)統合参謀本部のマッケンジー事務局長(中将)は同日、国防総省での記者会見で、渡名喜村での不時着について、「細心の注意を払うために取った行動だ」と述べ、「訓練が沖縄の人々の懸念を高めていたとしても、われわれが日米安全保障条約の義務を果たしていくならば、訓練を続ける必要がある」と訓練継続の必要性を強調した(1.28沖縄タイムス・プラス)。

小野寺防衛相―「あまりに多い」
小野寺五典防衛相は24日午前、防衛省内で記者団に対し、「(米軍ヘリの不時着が)繰り返されている。あまりに多い」と指摘したうえで「極めて遺憾」と述べた。不時着した機体と同型機のAHIZの飛行停止を米軍側に要請したことを明らかにした。防衛省は同日、状況などを把握するため、沖縄県警と防衛省の職員を陸上自衛隊のヘリで現地に派遣した。小野寺氏は「夜間に突然米軍ヘリが着陸し、住民は大変不安を持っていると思う」と述べた(1.24朝日新聞DIGITAL)。

RBC(琉球放送)ニュース(1.26 19:01)
渡名喜村議会では25日、事故に対する抗議決議を可決していて、26日、桃原村長と村議会の議員らが沖縄防衛局の中嶋局長に抗議しました。この中で村長らは普天間基地所属のすべての航空機の飛行と訓練を中止するよう求めました。「不時着したことにすごく不安を感じている中、その日の夕方にはフライトして、次の日にもフライトして、その辺が我々からすると理解ができないというか、まるで傷口に塩を塗り込まれたぐらいの、すごい、あらわしようのない気持ちですね」(渡名喜村・桃原優村長)。中嶋局長は「トラブルが続いていることは重く受け止めている。政府をあげて様々な取り組みを行っていく」と述べるにとどめました。

松本文明内閣府副大臣―「それで何人死んだんだ」-あっけない辞職
さて、米軍機によるトラブル(昨年の不時着・墜落炎上事故も含めて)について、25日の衆院本会議において共産党の志位委員長が代表質問をした際、「それで何人死んだんだ」とヤジった議員がいた。自民党の松本文明内閣府副大臣である。彼は26日夕方、安倍晋三首相と首相官邸で面会し、ヤジを飛ばした責任をとり、辞表を提出し、受理された。稲田元防衛大臣の度重なる重大な失言をかばい続けた安倍首相としてはあまりにもそっけなくアンバランスな対応である。
松本氏は首相との面会後、記者団に「不規則発言で、人が亡くならなければいいのかというような誤解を招いた。沖縄県民、国民の皆さんに迷惑をかけた」と謝罪した。首相からは「この国が大変な時期なので緊張感をもって対応してもらわないと困る」と注意されたという。名護市長選への影響を恐れた政権幹部は「背筋が凍った」。安倍晋三首相と菅官房長官は瞬時に更迭を決めたという(1.27朝日新聞DIGITAL)。
翁長知事は27日、名護市で記者団の質問に「あの一言でびっくりするようなものではない。沖縄担当の副大臣をされているときも、沖縄に対する認識は全くなかった」と強い不快感を示した(1.28沖縄タイムス)。

無事に不時着した。だから何?
軍用機が飛行続行困難という非常事態に陥った時に、墜落などの最悪事態を避けるためヘリポートあるいはそれ以外の場所へ緊急着陸するのは当然のことである。「不時着」と言おうが「予防着陸」と言おうが同じことだ。その際、飛行士は自分自身や地上にいる人に損害を与えないためのギリギリの努力と技術が要求される。今回の場合はたまたま死者もけが人も出なかった。それは不幸中の幸いであって、喜ぶべきことである。そして米軍関係者のコメントはそこでとどまっている。だから反省しないばかりか更に訓練を増加させようと考える。だが、「けが人も死人もなく無事に着陸したのだからいいじゃないか。何で大騒ぎするんだ」(インターネットはそういうコメントで満ち溢れている)という反応に笑顔でうなずくわけにはいかない。沖縄の人々は不時着や墜落事故が多発する状況を何とかしろ、と言っているのである。当然のことではないか。
と、ここまで書いて、我ながら恥ずかしくなる。「それで何人死んだんだ?」とヤジる人の思考経路には沖縄という島が70余年にわたって背負わされてきた軍事的な負担に対する想像力がまるで欠落している。翁長知事が不快感を示したのは当たり前のことである。松本氏のような人物が日本の政治をつかさどる中枢部に存在すること自体が恥ずかしい。しかも彼がかつて沖縄担当の副大臣であったという事実は語るもおぞましい。そういうネトウヨ顔負けの人物を内閣府の副大臣に任命したのは誰だ? 任命したにもかかわらず名護市長選に不利と見るや「瞬時に」クビを切った姑息な奴は誰だ?(2018.01.28)
2018.01.19  沖縄の現実に向き合うこと
宮里政充 (もと高校教員)

ここのところ沖縄米軍機のトラブルが絶えない。東京新聞1月9日付の記事と「沖縄タイムス+ニュース」などを参考にしながら、沖縄における最近の米軍機事故のあとをたどってみる。

2013年5月 28日、沖縄県国頭村沖に米軍嘉手納基地のF15戦闘機が墜落。30日、31日に
      は同型機が連続して緊急着陸(米軍は緊急着陸ではなく予防着陸であるとし
      た)。エンジン・トラブルとみられる。原因が明らかにならないまま訓練を再
      開した米軍に対し、沖縄市、嘉手納町、北谷(ちゃたん)町の各市町議会は
      同31日、相次いで抗議決議と意見書を可決。県議員団は6月6日、嘉手納基
      地第18航空団司令部と沖縄防衛局を訪れ、事故原因の徹底究明や原因が
      分かるまで飛行を中止するよう求めた。要請議員団によると、同司令部は
      事故原因の調査結果が30~90日でまとまるとの見通しを示した上で、「ちゃ
      んと公表できる分はやる」と説明したという。議員団はその後沖縄防衛局と
      外務省沖縄事務所にも同様に要請した。
   8月 5日、キャンプ・ハンセン(宜野座村など)でHH60救難ヘリ2機がキャンプ
      ・ハンセン内の山火事の消火活動中に墜落。乗員4人のうち3人が脱出、1人
      が死亡。
15年 8月 12日、うるま市沖で陸軍ヘリH60が米艦船の甲板に墜落。同乗の陸上自衛隊
      員2人を含む7人負傷。25日、県議会の代表が沖縄防衛局を訪れ、原因究明や
      再発防止などを求めた。県議員団はアメリカ総領事館などにも要請を行った。
16年12月 13日、名護市沖で輸送機オスプレイが夜間の空中給油訓練中に不時着し大破、
      2人負傷。同じ日に別の機体が米軍普天間飛行場(宜野湾市)で胴体着陸。稲
      田朋美防衛相は14日未明、マルチネス在日米軍司令官に対し原因究明や安全
      が確認されるまでの飛行停止について、電話で申し入れを行った。米政府は
      「困難な気象条件下でのパイロットの操縦ミスが原因」という最終報告書をま
      とめた。22日、この事故に抗議する大規模な緊急集会が名護市の屋内運動場
      で開かれ約4200人が参加。主催は翁長知事を支える「オール沖縄」。しか
      し、日本政府は6日後の米軍の飛行を容認。
17年 1月 20日、うるま市の伊計(いけい)島の農道にHI攻撃ヘリ不時着。米軍側は
      「警告灯が点灯したために予防着陸をした」と説明。現場は島南部の住宅街に
      近く、最も近い住宅までは約130メートル、農道までは約60メートルの距離
      だった。
    6月 6日、伊江村の米軍伊江島補助飛行場にオスプレイ緊急着陸。米軍は操縦席の
      警告灯が点灯したため「予防着陸」したと説明。米軍の乗員4人や地元住民に
      けがはなかった。県は沖縄防衛局と在沖米海兵隊に口頭で抗議し、原因究明
      までのオスプレイの飛行中止、再発防止策と安全管理の徹底を求めた。小野寺
      五典防衛相は30日、記者団に「しっかりとした安全の確保をした上で、飛行
      していただきたい」と述べた。なお、同型機は8月28日には岩国基地で白煙を
      上げて離陸不能に陥り、翌29日には大分空港でも緊急着陸し、エンジン付近
      から炎が上がったのが確認されている。
   10月 11日、東村の牧草地で普天間飛行場のCH53E大型輸送ヘリ不時着、炎上、
      大破。消防や米軍が消火に当たった。住民や乗組員にけがはなかった。同型
      のヘリは2004年8月に米軍普天間飛行場近くの沖縄国際大学に墜落する事故
      を起こしている。米海兵隊は「飛行中に火災が発生し、緊急着陸した」と発
      表。翁長知事は那覇市内で「昨年のオスプレイが大破した事故から1年も経
      たないうちに、再び県内で事故を起こしたことに強い憤りを感じる。基地があ
      るゆえの事故。事故原因の徹底的な究明と早急な公表、原因が究明される
      までの同型機の飛行中止を強く要請する」と記者団に語った。事故現場を訪
      れた東村の伊集盛久(いじゅせいきゅう)村長は「起きてはいけない事態。
      遺憾だ。関係機関に強く抗議したい」と話した。
 12月 7日、普天間飛行場近くの保育園で米軍ヘリ部品と同一の落下物見つかる。
      この報道に対し、幼稚園に「自作自演だろ」という電話があった。12日には
      東京MXテレビのネット番組「真相深入り!虎ノ門ニュース」に出演した作家
      百田尚樹氏が、米軍ヘリの部品が屋根に落下したとみられる緑が丘保育園
      の事故について「調べていくと全部うそだった」「誰かがどっかから取り出し
      てきて屋根の上に置いた可能性が高い」と述べた。同園には「でっちあげて、
      よくそんな暇あるな」などと連日、中傷の電話やメールが続いた。
 12月 13日、普天間飛行場に隣接する普天間第二小学校運動場にCH53E大型ヘリ
      の窓落下。米軍はその事実を認めたにもかかわらず、小学校に「やらせだろ」
      「基地のそばに造ったのはあんたたちじゃないか」などの誹謗・中傷の電話が
      相次ぎ、さらに教育委員会に対しては「学校を移転しろ」という電話があり、
      「土地がない」と答えると「住宅地をつぶせ」と返してきた。市教委の担当者
      は「やらせなどとんでもない話。移転や学校ができた経緯についても、事実
      関係をちゃんと調べてほしい。学校職員の精神的負担になっている」と話し
      た。 小学校と教育委員会に対する中傷は22日までに31件に及んだ。
18年 1月 6日、伊計島の砂浜にUHIヘリ不時着。河野外務大臣は、訪問先のモルディブ
      で記者団に対し、「被害の情報は入ってきていないが、さまざま情報の収集を
      しているところだ。安全運航は、沖縄県民の安全もそうだし、実際ヘリを飛ば
      してる米軍にとっても大事なことだ。しっかりと安全運航できるように心がけ
      てもらいたいし、申し入れはしていきたい」と述べた。また、沖縄県の謝花知
      事公室長は県庁で記者団に対し、「アメリカ軍の軍用機の整備に対し、県民
      は大きな不信感を持っている。アメリカはもっと真摯に考えるべきだ。連休明
      けに、外務省と沖縄防衛局の担当者を呼んで厳重に抗議する」と述べた。うる
      ま市は11日午前、臨時市議会を開き、普天間飛行場に所属する全機種の飛行
      停止と整備点検など安全管理の徹底を求める抗議決議と意見書の両案を全会
      一致で可決。同日午後に沖縄防衛局を訪れ、意見書を手渡した。このほか、
      全軍用機の住民居住地域上空での飛行の全面禁止、原因の徹底究明と再発防止
      策の実施、在沖米海兵隊の整理・縮小、日米地位協定の抜本的改定を要求し
      た。
   1月 8日、読谷村の廃棄物処分場にAHI攻撃ヘリ不時着。警告灯が点滅したため
      沖縄県は9日、6日に不時着したヘリとともに原因究明まで同型機の飛行中止
      を要請したが、9日にはUHI、AHIと同型機の飛行が確認されている。防
      衛省はマルティネス在日米軍司令官(空軍中将)に、在日米軍が運用する
      すべての航空機の整備、点検の徹底を要請した。翁長知事は県庁で記者会見
      し、「日本国民である沖縄県民がこのように日常的に危険にさらされても何も
      抗議もできない。当事者能力がないということについて恥ずかしさを感じて
      もらいたい」と政府を批判した。また小野寺五典防衛相は9日午前(日本時間
      10日午前)、米ハワイを訪問し、ハリス米太平洋軍司令官とキャンプ・スミ
      スで会談した。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属のヘリコプターが
      同県で相次いで不時着した事態を受け、小野寺氏は「住民の安心のため安全
      な航行をお願いしたい」と述べ、再発防止を徹底するよう求めた。ハリス氏は
      遺憾の意を伝えた。

さらに遡ると、復帰前の1959年に石川市(現うるま市)の宮森小学校に戦闘機が墜落し、児童11人を含む18人が死亡、210人が重軽傷を負った事故があり、2004年には沖縄国際大の本館建物にヘリが接触、墜落し、炎上した事故があった。沖縄県知事公室基地対策課の統計によれば、1972年5月15日の沖縄返還から2016年末までに県内で発生した米軍機関連の事故は709件で、墜落事故は47件である。

上記の度重なる事故に対する沖縄住民の反応は当然のことながら、恐怖・基地に対する反感・基地撤去の要求になり、沖縄県当局としても県民の安全な生活を保障することが中心となる。米軍にしてみれば、事故多発は軍に対する信頼を損なわせるばかりでなく、軍の任務遂行に著しい支障をきたす結果となる。特に傷害・死亡事故となれば、県民の反基地運動に火が付く。上記の事故に対する米軍側の対応をみてもその戸惑いぶりが伺える。特に2016年12月13日の名護市沖におけるオスプレイの不時着・炎上事故に関して、ニコルソン四軍調整官が「住民に被害がなかったのは感謝されるべきだ」と発言したという報道がなされ、一気に米軍批判がたかまった。ただ、調整官の真意が「誰も死ななかったんだからお前ら感謝しろ」というのではなく、「けが人も死亡者もなかったことを神に感謝している」というものだったと私は受け止めたい。さもなければ、ベトナムやイラン・イラクで戦死した何万もの兵士たち、ベトナム戦争のとき基地の町コザで毎晩飲んだくれて死の恐怖を振り切ろうとした兵士たち、キューバ危機の際、核兵器を積んで沖縄から飛び立つことになっていた兵士たち、そして戦争が終わって母国へ帰ってから自殺していった多くの兵士たち、それらの兵士たちの上に立つ軍人としてあまりにも理不尽ではないか。それとも、そう受け止める私が甘すぎるのか。
日本政府の対応はいずれも事務的・形式的にみえる。本気で取り組んでいるとは思えない。それは日米地位協定を含む日米の安全保障関係が主従関係にあり、日本としてはどうすることもできないからであろう。

上記に列挙した事故・事件あるいは基地反対運動に関する報道は日本本土では極めて不十分であるうえに、本土で生活する者にとって遠く離れた小島の「できごと」は生きていく上での課題とはなりにくい。その半面、沖縄の米軍基地問題に関する沖縄県民の反応や現地報道に対して中傷・誹謗する勢力があり、その勢力が広く沖縄問題を解決する上で大きな障害になっている。その勢力は地元マスメディアや基地反対運動を攻撃し、デマを拡散させ、多くの人に誤解や偏見を植え付ける。
その結果、仮に沖縄の人々が米軍基地に関連する問題に一切文句を言わず、地元新聞が潰れ、本土の保守的な新聞にとって代わられたとしたら、私はどういう日本をイメージすればいいのだろうか。私がうっすらと想像できるのは日本がもはや民主主義国家ではなく、ある特定の価値観・イデオロギーのもとに統制された管理的な国家主義国家になっているだろうということである。そして(あえて飛躍を恐れずに言えば)安倍総理大臣はひたすらそういう国家の実現を目指し、着実にそのための手を打ってきたしこれからも打ち続けるであろうということである。
そこでここはひとまず、沖縄の置かれている現実に向き合い、沖縄の人々の声に耳を傾けてほしい。米軍機が自分の庭や学校に墜落した時のことを想像するだけでもいい。日本にはそういう心の豊かさを尊ぶ伝統があるはずだ。(2018.1.11)
2018.01.12  9条改憲に強い懸念と危機感
  2018年の年賀状にみる国民意識

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 2018年になった。友人、知人から来た年賀状を読んでいてひときわ印象に残ったことがあった。安倍首相と自民党が推進する憲法改定、とりわけ「9条改憲」に対する強い懸念や危機感を表明した年賀状が目立ったことだった。

 私はこれまで毎年、多くの友人、知人と年賀状の交換をしてきたが、これまでの年賀状の文面といえば、「明けましておめでとうございます」とか「謹賀新年」とか「賀正」といった、いわば新年を言寿ぐ決まり文句や、自分や家族の消息や近況を伝える文面が大半であった。
 が、ここ数年、内外の政治・社会状況や世相への感想や主張を表明した年賀状が増えてきたように思う。以前は、年賀状では政治的なことへの発言は控えるというのが一般的な慣習だったが、年賀状でも政治的なことに意見をはっきり述べる人が増えてきたということだろう。

 今年は、日本国憲法に関する文面が目立った。例えば――

 「昨年は、非正規雇用者が人間扱いされない社会や、9条改憲の策動などに憤怒する日常でした」(埼玉県熊谷市・会社員)
 「昨年の衆院選で改憲勢力が3分の2以上を獲得したことで、安倍政権の暴走が止まりません」(神奈川県伊勢原市・元高校教員)
 「今年は年初よりトランプの朝鮮民主主義人民共和国への挑発と武力威嚇による核戦争の危機、それに追従する安倍の策動と改憲の動きの加速が予測されます」(長野県諏訪市・大工)
「いよいよ改憲が目前に迫り、安倍政権の横暴さを何とかしたいと思う年始めです」(東京都中野区・元生協職員)
 「平和憲法の危機 正念場の年です 『戦争をする国』に逆行させない 訴えつづけます」(東京都品川区・ジャーナリスト)
 「沖縄、原発、そして憲法改悪、腹の立つことばかりです。平和憲法を護る、9条を変えることを許さない!」(東京都品川区・元国会議員秘書)
 
  「安倍政権は、北朝鮮の脅威の名の下に長距離巡航ミサイル導入を検討、日本の防衛の基本方針である専守防衛を逸脱し、憲法を蔑ろにして軍国化が進められています。自衛隊を、憲法に基づいたものにするのではなく、軍隊と化した自衛隊に合わせて、憲法を変えようと本末転倒の流れを断ち切るために、今年も声をあげてまいります」(東京都立川市・女性)
  「寒さ厳しくとも、冬の花は彩りを増し、子どもたちの瞳は澄み、輝いています。日々にこそ、平和あり。戦争をさせない。自衛隊の人たちの命を危険にさらさせない。私たちは憲法を変えることに反対します」(東京都国分寺市・弁護士とその妻)
  「現政権は、自衛隊を明記して、専守防衛に徹するとかなんとか言って、平和憲法を装いながら、緊急事態条項を争点にしないように滑り込ませ、憲法を停止して、戦争を始めることができるような憲法にしたいのではと心配しています。緊急事態条項の無い今の憲法の方が、不備な点があったとしても、私たち国民にとって、はるかに安全であると思います」(東京都町田市・男性)
  「武力では、守りは出来ぬ 世の平和 9条こそが平和を守る」(長野県諏訪市・元会社役員)
 
 これも印象に残ったことだが、9条改憲に対する懸念、危機感は戦前生まれの人にひときわ強いようだ。
 横浜市在住の元新聞記者は「1947年に新しい教育制度が発足し、社会科という教科も誕生して、その教科書『あたらしい憲法のはなし』には、武力による威嚇で屈服を迫る国にはならないとありました。新制中学1期生は、夢に賭けます」と書いてきた。
 やはり元新聞記者(東京都東久留米市)から来た賀状には、こうあった。
 「私の父は名古屋の下町で医院を開業して間もなく召集され、中国大陸へ軍医として三年間派遣されました。除隊後、医院を再開……それも三年ほどで終わり、今度は沖縄に派遣されて戦死しました。四十歳になる直前でした。まだ生まれない末子を含めて六人の子と妻を置いて、どんな思いだったか、涙なしには語り得ません」「父をはじめ先の戦争で犠牲になった多くの命と引き換えに戦後日本が得た平和憲法が今、弊履のような扱いをされることに耐えかねる思いです。未来を生きる子供たちのためにも何とか九条改憲は止めたいものと願っています」

 では、どうしたらいいか。具体的な提案もあった。
 「憲法九条と平和を守るため 国会だけに任せず 世論と運動を広げましょう」(愛知県豊田市・平和運動家)
 「安倍極右政権は今年を『世界の至宝』たる平和憲法の改悪を具体化させる年にしようとしています。しかしどの世論調査でも、9条改憲に反対する声は常に過半数を超えています。『安倍9条改憲を阻止する3000万署名運動』を成功させ、孫子の代に平和憲法を引き継ぎましょう」(東京都練馬区・ジャーナリスト)
 『安倍9条改憲を阻止する3000万署名運動』とは、「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼びかけている「安倍9条改憲NO! 憲法を生かす全国統一署名」のことで、4月末に第2次集約、5月末に第3次集約を目指している。

 新年早々、改憲をめぐる注目すべき動きや報道があった。1つは、安倍首相が1月4日の年頭記者会見で「今年こそ新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示する」と述べ、自民党の憲法改正原案を早期に国会に提示することに強い意欲を示したことだ。これにより、安倍政権による改憲作業が一層加速することが予想される。
 一方、注目すべき報道とは、1月3日付の東京新聞の記事である。それは、同社加盟の日本世論調査会が12月9、10の両日に行った憲法に関する世論調査の結果で、それによると、戦争放棄や戦力不保持を定めた憲法9条の改定について「必要はない」が53%、「必要がある」は41%で、「必要がない」が過半数を占めた。安倍首相が加速を促す改憲の国会論議には、67%が「急ぐ必要はない」と答えたという。
 これが世論とするなら、9条擁護派にとって前途は「望みなきにしもあらず」ということか。
2018.01.11 「香害」の一因である消臭除菌スプレー、その除菌成分に新たな毒性が明らかに
  シリーズ「香害」第4回
          
岡田幹治(フリーライター)

「香害」とは、香りつき商品の成分で健康被害を受ける人たちが急増している、新しい公害のこと。被害を受けると、「化学物質過敏症(MCS)」「喘息」「香料アレルギー」を発症したり悪化させたりする可能性があります。
喘息は、気管支が狭くなって吸い込んだ空気が通りにくくなり、発作を繰り返す病気。原因物質(ダニ・ハウスダストなど)がはっきりしているアレルギー性喘息と、原因物質が特定できない非アレルギー性喘息があります。前者は小児に多く、悪化すると生命にかかわるアナフィラキシーショック起こすこともあります。後者は成人に多く、難治化することが多い。
香料アレルギーは、香料成分が原因物質になって、皮膚炎・咳・くしゃみなどのアレルギー症状を起こす病気です(MCSについては第1回で説明しました)。
シリーズ第4回は、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)ジャパンの「ファブリーズ」をはじめとする消臭除菌スプレーが香害の一因であること、その除菌成分に新たな毒性が次々に判明していることをお伝えします(注1)。

「香料」には喘息やアレルギーを起こす成分がある
ファブリーズは、何にでもスプレーすれば嫌なニオイが消えると宣伝している商品で、衣類・カーテン・ソファ・枕・布団などに使う「布用」や、玄関・靴箱・台所・洗面所・居間などに置く「置き型」、さらには車のエアコンに取りつける「車用」などがあります。
「瞬間お洗濯! 99.9%除菌・消臭」「嫌なニオイを徹底消臭&爽やかな香り」などと宣伝していますが、一体どんな仕組みで消臭・除菌しているのでしょうか。
同社のサイトを見ると、「ファブリーズの主な成分は?」という項目が立てられ、「成分」と「働き」が以下のように記載されています。

▽トウモロコシ由来消臭成分=トウモロコシ生まれの有効成分で、ニオイのもとの分子を取り込み、消臭します。
▽除菌成分(有機系)=Quat(クウォット)。特定の除菌成分の総称です。このタイプの除菌成分の安全性は広く認められており、化粧品や薬用石けんなどに広く使用されています。(中略)
▽香料=布からさわやかな香りを感じる。(以下略)

以上のうち、トウモロコシ由来の消臭成分は、「シクロデキストリン」という、でん粉の一種です。シクロデキストリンは空洞の多い構造をしていて、ニオイのもとの分子を取り込む効果はありますが、消臭力はあまり強くありません。
そこで、「香料」を配合し、消しきれないニオイをごまかしているのです。
香料は香りのもとになる物質で、ほとんどが天然の香りに似せて合成した化学物質です。世界には約3000の物資(成分)があり、これらは普通、複数(ときには数十種も)の物質をブレンドした混合物として商品に使用されます。ただ、具体的な物質名は企業秘密として公表されず、「香料」と表示されるだけです。
香料の安全性は、世界の主要香料企業が加盟する「国際香粧品香料協会(IFRA)」傘下の「香粧品香料原料安全性研究所(RIFM)」で審査されており、安全性が確認されたものだけが流通しているとIFRAは説明しています。しかし、安全性試験の内容はほとんどが未公開です。
アメリカのNGO「地球のための女性の声」がIFRA公開の約3000物質を調べたところ、1000以上が国際機関などの公式リストで「懸念ある化学物質」とされていました。190物質は国際機関で「危険」とされ、7物質は国際がん研究機関(IARC)が「人に対する発がん性が疑われる」(グループ2B)に分類していました(注2)。
また在野の研究者・渡部和男氏は、香料にはアレルゲン(アレルギーの原因物質)となる成分や喘息を誘発・悪化させる作用を持つ成分が少なくないことを明らかにしています(注3)。
しかも「香料」とまとめて表記されるものには、香り成分を強めたり長続きさせたりする物質も含まれており、そちらの害も大きい。「いい香り」は、部屋の空気を汚染する「揮発性の有機化合物(VOC)」でもあるのです。

繁殖力が落ち、先天性異常の出生が増加
次に、ニオイのもとになる雑菌を減らす「除菌成分」=Quatを取り上げます。
Quatとは、「第4級アンモニウム化合物」と呼ばれる化学物質グループのこと(注4)。ファブリーズは、それらのうち界面活性剤として商業利用されている「塩化ベンザルコニウム」など2種類を含むことが研究者によって明らかにされています。
第4級アンモニウムは細菌の細胞膜を不安定にして細胞を殺す性質をもっており、このため殺菌剤をはじめ抗菌剤・消毒薬、洗浄剤(洗剤やシャンプー)、食品保存剤などに広く使用されています。
ヒトの細胞膜も不安定にしますから、健康被害をもたらすことがあります。殺菌力が強い「逆性石けん(薬用石けん)」を多用する医療従事者は皮膚炎を起こし、喘息の原因にもなります(注5)。またアレルギーを起こしやすいため、医薬部外品に使うときは必ず表示しなければなりません。
この物質はコンタクトレンズ用品に防腐剤として含まれ、角膜障害を起こすことがあるし、麻酔時の筋弛緩剤として使われてアナフィラキシーショックの原因にもなっています。
中でも塩化ベンザルコニウムはヒトの眼・皮膚・気道への刺激性が非常に強く、国際化学物質安全性カード(IPCS)で「環境中に放出しないよう強く勧告する」とされています(注6)。
以上のような作用を持つQuatについて近年、新たな毒性が次々に明らかになっています。
たとえば国内では、ファブリーズの原液を希釈し、生まれたばかりの仔マウスに投与したところ、死亡率が高まったとの研究結果が公表されています(注7)。これはソファやぬいぐるみに残ったファブリーズの成分を乳幼児がなめる場合などを想定した研究です。
アメリカ・バージニア工科大学のテリー・フルベック教授らの研究はもっと衝撃的です。
教授によると、研究室の飼育かごの洗浄剤をQuat含有のものに変更したとたんにマウスの出産率が低下しました。驚いた教授らははまず生殖毒性について調べ、Quatに曝露したメスマウスは出産数が少ないことを2014年に発表。15年には、Quatに曝露したマウスでは、オスの精子が減少し、メスの排卵が少なくなるなど繁殖力が落ちることを報告しています。
続いて今年7月、Quatに曝露させたマウスから生まれた仔マウスは、二分脊椎症や無脳症といった「先天性異常(欠損)」(注8)が多いと発表しました(注9)。
教授らは、塩化ベンザルコニウムなど2種類のQuatを用い、それらを「餌に入れて食べさせる」「チューブを通じて服用させる」「それらを含む消毒薬を飼育室で使う」という三つの方法で曝露させた結果、次のことがわかりました――。
▽曝露されたオスとメスのマウスから生まれた仔は先天性異常の比率が高く、その現象は曝露をやめた後、2世代にわたって引き継がれた。▽オスだけに曝露させ、メスには曝露させなかった場合でも、仔の先天性異常の割合は高かった。▽Quat含有の消毒薬を飼育室で使った場合でも同じ現象が見られ、先天性異常の発生率は別の消毒薬では0.1%なのに、Quat含有の消毒薬では15%にもなった。
あくまでマウスを使った実験の段階ですが、教授は「動物実験はヒトへの影響を予測する確固とした基準」であると強調し、「次の研究ではQUATとヒトとの関連を検証する」と言っています。

ファブリーズはいらない!
以上をまとめると、ファブリーズのような消臭除菌スプレーは「香料でニオイをごまかし、次々に毒性が判明している危険な物資で除菌する商品」ということになります。
「瞬間お洗濯!」と宣伝していますが、実際には洗濯でなく除菌しているだけですから、汚れは落ちません。またすぐに菌は繁殖します。そこで毎日のようにスプレーをしなければならないのです。
こんなものを室内でスプレーしてよいわけはありません。とくに乳幼児や妊婦のいるところでは絶対に使わないようにしましょう。車のエアコンにつけて車内に成分を充満させるのも、とても危険です。
部屋がにおうようなら、まず部屋の空気を入れ替える。そしてニオイの発生源をなくすことです。腐ったものは捨て、湿った場所に貯まったごみは掃除します。カーテン類はときどき洗濯し、ソファやカーペットは掃除機をかけ、布団類は外に干して日光に当てます。
化学物質を使いたいのであれば、「重曹」と「クエン酸」が清掃用に使える比較的安全な化学物質だと渡部和男氏は言っています(注5)。布か紙の袋に入れた重曹を靴の中に入れておくと、重曹がニオイを吸着します。またアンモニア臭や魚臭を消すためには、1~2%のクエン酸液を発生源にスプレーするとよいそうです。

注1 消臭除菌スプレーはP&Gジャパンのほか花王・ライオンも発売しており、2社は「除菌成分」について次のように説明している。
▽花王「リセッシュ 除菌EX 消臭ストロング」
「成分」という項目に「両面界面活性剤、緑茶エキス、除菌剤、香料、エタノール」と記しているだけ。除菌剤の物質名は全くわからない(塩化ベンザルコニウムなどだと推定されている)。
▽ライオン「HYGIA衣類・布製品の除菌・消臭スプレー」
「成分情報」に「界面活性剤・除菌剤」という項目を立て、「ジアルキルジメチルアンモニウム塩」と明記。これは第4級アンモニウムの一つで、毒性は塩化ベンザルコニウムより低いとされている(殺菌力も弱い)。
各社の表示があいまいなのは、消臭除菌スプレーが「家庭用品品質表示法」の対象になっていないからだ。同法の対象を大幅に増やす必要がある。
注2 ブライアン・ジョセフ「“香り”は我々を病気にしているのか」(安間武・訳が化学物質問題市民研究会のサイトに掲載)
注3 渡部和男「香料の健康影響」(同氏のサイト)。香料の成分には発がん性を持つ物質やホルモン攪乱作用(環境ホルモン作用)を持つ物質もある。
注4 英語ではquaternary ammonium compounds。窒素原子(N)に水素原子(H)が四つついた「アンモニウムイオン」の水素が他の有機物質に置き代わった化学物質。「陽イオン界面活性剤」でもある。
注5 渡部和男「消臭剤―第4級アンモニウムの恐ろしさ」(化学物質過敏症支援センター『CS支援』89号)
注6 国際化学物質安全性カード(ICSC)は、化学物質の健康や安全に関する重要な情報の概要をまとめたもの。欧州委員会や各国の協力で作成されている。
注7 藤谷知子ら「市販家庭用消臭除菌剤に配合される4級アンモニウム化合物のマウス新生仔および成獣における一般毒性指標に及ぼす影響」(『東京都健康安全研究センター年報』61号・2010年)
注8 二分脊椎症は、脊椎の骨が脊髄の神経組織を覆っていない症状。神経組織が正常に働かず、下肢の運動障害などが起きる。無脳症は、脳が十分に形成されず、多くは流産や死産となる。いずれも神経管(脊髄や脳など中枢神経系のもと)の閉鎖障害によって起きる先天性異常。
注9 論文はhttp://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/bdr2.1064/abstract。ブライアン・ビエンコウスキーによる解説「清潔への代償 消毒薬・第4級アンモニウム化合物はマウスの仔に先天性欠損を引き起こす」の安間武・訳が化学物質問題市民研究会のサイトに掲載されている。

◆岡田の1、2月の講演予定
▽広がる「香害」~柔軟剤や消臭スプレーはこんなに怖い!~
  1月28日(日)午後1時30分~3時30分
  千葉県印西市コミュニティセンター サザンプラザ 2階多目的室
  問い合わせ:印西 水と暮らしを守る会 竹内(090-3907-8355)
▽香害、あなたならどうする!
  2月6日(火)午前10時30分~12時30分
  大田区立消費者生活センター 2階講座室(JR蒲田駅東口5分)
  問い合わせ:23区南生活クラブ生協(℡03-3426-9914)


2018.01.04  やっぱり原発はイラナイ
   韓国通信NO543

小原 紘 (個人新聞「韓国通信」発行人)

原発がなくても電気は足りた。この厳粛な事実にもかかわらず、いまだに原発は必要だという人がいる。福島の事故は無かったことにする「事実の改ざん」も腹立たしい。
あれからからもうすぐ7年。事故は決して「風化」していない。風化させようとする原子力ムラとマスコミの悪あがきにもかかわらず、原発に反対する声は着実に広がっている。原子力規制委員会を隠れ蓑にして原発を推進する仕組みも明かになった。

 <地震の多い日本に住んで>
地震が起きるたびに日本に暮らす宿命のようなものを感じる。日本列島はまるごと火山みたいなもの。プレートは複雑に絡み合い、ゆがみ、ぶつかる。原発ごっこはまるで「油のなかの火遊び」のようなもの。私のイメージでは伊方原発3号機(愛媛)をストップさせた広島高裁判決は当然すぎるくらい当然だ。いつ起きるかわからない地震だから原発を止める必要はないという人の気が知れない。
 
 <世界を席巻する脱炭素の潮流>
関西電力の大飯原発1、2号機が廃炉に追い込まれた。採算があわないからだ。安全のためにはお金がかかるというのだからあきれる。福島事故から得た教訓は安全な原発は採算がとれないということ。原発をベースロード電源とする政府のエネルギー政策は破綻した。
今、世界では石化燃料と原発依存から自然エネルギーへと雪崩のような大転換が始まっている。地球の生き残りをかけた「脱炭素革命」「安全」「経済性」を求める巨大マネーが環境ビジネスへ怒涛のように向かっている。自国の利益を優先させ、パリ協定離脱を宣言したトランプ大統領は世界の趨勢から孤立している。トランプに寄り添う安倍首相も原発に執着して世界の潮流から立ち遅れたことに気づかない。中国の「エコ文明」宣言、韓国の「脱原発」も自然エネルギーへのシフトを鮮明にした。

 <東海第二原発の再稼働の衝撃>
 2018年11月に運転期限を迎える東海第二原発が20年の延長の申請を行った。原発の先駆け、日本原電が保有する原発は全部で4基。東海第一は廃炉解体中、敦賀1号機も廃炉決定、2号機は活断層の上にあるため再稼働は難しい。残る唯一の原発を動かすことに社運を賭ける。老朽原発を稼働させるのを聞きつけた人たちが2017年8月に東海村に集まり抗議した。事故が多いことで知られ、経営基盤の弱い日本原電に原発を動かす資格はない。参加者は「即時廃炉」を求めた。
避難区域30キロ圏には水戸市を含む約100万人が住む。首都圏に最も近い原発だ。原発事故「国会事故調報告書」は3.11地震による外部電源の喪失にもかかわらず大事故にならなかったのは「幸運」以外の何物でもなかったと指摘した。
 東海第二の再稼働は悪夢のようなもの。原子力規制委員会が認めれば2018年から稼働する。
 我孫子市は東海第二原発から85キロにある。チェルノブイリ原発事故をあてはめるなら関東・東北は死の町になるはずだ。
落ちるはずのない北朝鮮のミサイルにJアラートで住民を避難させた政府が、原発には何故こうも甘いのか、地震に対して楽観的なのかわからない。
30キロ圏内の住民たちの避難計画は困難といわれているが、避難計画ができれば稼働してもいいという話ではない。福島第一原発から120キロの我孫子は福島県白河市並みの放射能に見舞われ一時期パニック状態になった。
 爆発事故の翌日の北風に乗って降り注いだ放射能で柏、我孫子、松戸地区では避難する人もいた。狭山の茶も葛飾区の金町の浄水場も汚染された。東海第二が事故を起こせば、東風なら栃木県全域、北風なら首都圏、山梨に、南風なら東北全域に被害は及ぶ。茨城県内の多くの市町村が反対の声をあげ、栃木県(益子町町議会は住民の声に動かされ反対声明)でも再稼働を危ぶむ声が広がっている。
我孫子市でも東海第二原発の廃炉をもとめる決議を市議会にもとめる運動が始まった。2018年3月の定例議会で採択されると、政府、規制委員会、茨城県に「意見書」が提出される。署名は市外の住民、未成年者、外国人も可能だ。通信の読者にも署名をお願いしたい。署名用紙は「通信」の「初荷」としてお送りしたい。我孫子市の廃炉要求は東海村周辺で進められている脱原発の運動に大きな励みになるはずだ。
東海第二原発再稼働反対の運動は絶対に負けられない。

 <野垂れ死にを覚悟して>
8月に体の異常を医者から指摘され、人生の「手じまい」を強く意識した。健康が唯一取り柄の人間が毎朝8種類の薬を飲む羽目になった。人間は死ぬはずなのに今回ばかりはさすがに落ち込んだ。落ち込むのが早ければ立ち上がるのも早いのは愚かな「天性」なのかもしれない。
「長生きして、自分たちをこんな目に遭わせたものにリベンジする」と語り続けた医師肥田舜太郎の言葉に打たれた。肥田氏は100歳まで核廃絶の執念を燃やし続け2017年3月に亡くなった。このままでは死ねないという私の思いと肥田の「リベンジ」という言葉と重なった。
88才の俳優坂本長利は千回を超すひとり舞台を続けている。自分自身の成長と宮本常一の「土佐源氏」の完成まで100才まで芝居を続けるという。老いてなお燃やし続ける執念に圧倒された。才能もなく努力もしないで安易に「手じまい」を急いだ愚かさに気づかされた。凡人なりにやれることはまだたくさんある。
「戦争により命を落とされた方々の尊い犠牲の上に、今私たちが享受する平和と繁栄がある」。2017年の戦没者慰霊祭で安倍首相が語った言葉だ。この嘘を放置したまま死ねないと思った。
彼は政治を玩具にして、平和を語りながら戦争を肯定して戦死者たちを貶めた。その偽りが見破られないことに我慢ができない。「手じまい」どころではない。野垂れ死にを覚悟で抗うのが、私にはふさわしいのかも知れない。「古人も多く旅に死せるあり」<奥の細道 芭蕉>
「行き行きて倒れ伏すとも萩の原」<曾良>
2017.12.27 「非核ネットワーク通信」が終刊
非核自治体運動の推進役を果たす

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 日本における非核自治体運動の推進役を果たしてきた「非核ネットワーク通信」が、10月末に発行された第200号で終刊となった。同誌の創刊は1988年だから、29年続いてきたことになる。この間、同誌が非核自治体運動で果たしてきた役割が大きいだけに、終刊を惜しむ声が強い。

 非核自治体運動とは、地域住民と自治体か協力して非核運動を展開し、核のない世界を実現しようという運動だ。1950年代半ばから日本で始まった原水爆禁止運動は主として平和団体や労組など組織が中心だが、非核自治体運動は地域の市民と自治体が中心だ。
 
 非核自治体運動はまず、1980年代に英国で盛んになり、他の国にも波及して84年4月にはマンチェスターで第1回非核自治体国際会議が開かれた。
 日本にもこの運動が生まれ、87年7月には、東京の法政大学などを会場に第1回非核自治体全国草の根交流会が開かれ、参加者は延べ250人にのぼった。
 こうした盛り上がりを背景に、88年3月、「非核自治体全草の根ネットワーク」(略称「非核ネットワーク」)が結成された。設立の狙いは「究極的には核兵器の廃絶、差しあたっては東北アジアの非核平和地帯の形成を目指すとともに、チェルノブイリ大原発事故を受けて『脱原発』をも掲げ、『超党派』(あらゆる党派から独立し、あらゆる党派に働きかける)・『対等・平等』(あらゆる組織やグループの間に上下の関係を作らない)・『草の根』(地球の運命を考えながら、地域で行動する、あるいは地域から行動を起こす)の3原則の下に、市民の立場から日本における非核自治体運動を推進すること」にあったという(「非核ネットワーク通信」第200号)。

 非核ネットワーク世話人会は、運動を市民の間に広げるための情報誌として、88年5月に季刊「非核自治体インフォーメーション」を法政大学西田勝研究室と共同で創刊する。。これが、93年6月から、凖月刊の「非核ネットワーク通信」に衣替えする。B5判。以来、これを全面的に支えてきたのが「西田勝・平和研究室」だった。西田勝氏が法政大教授を定年退職したのにともなって設立した研究室である。  

 非核ネットワーク結成から29年。この間、日本の非核自治体運動は着実に発展してきたと言っていいだろう。
 非核ネットワークによれば、2017年9月末現在、非核宣言自治体は1630道府県市町村に及び、全国自治体数の91・2%に達する。日本非核宣言自治体協議会の加盟自治体はいまや328を数える。核兵器廃絶を求めて誕生した広島・長崎両市長を会長とする「平和首長会議」(1982年創立)も、2017年10月1日現在、加盟自治体が162カ国の7453に達している。さらに、東電福島第1原発の事故後、「脱原発をめざす首長会議」が2012年に誕生し、参加者は100人(うち元職58人)を数える。
 
 こうした非核自治体運動の発展に「非核ネットワーク通信」が大きな役割を果たしてきたのはいうまでもない。終刊に際して、田上富久・長崎市長が、次のようなメッセージを非核ネットワークに寄せていることからも明らかだろう。
 「貴団体におかれましては、29年もの長きにわたり、核兵器の廃絶、東北アジアの非核地帯の形成等を目指すために、市民の立場から日本における非核自治体運動を展開されたばかりでなく、『非核ネットワーク通信』を通じて様々な情報を発信していただきました。長きにわたる活動に敬意を表します」

 第200号には、「紙上終刊記念パーティ」欄が設けられ、会員や寄稿者からの手紙が多数掲載されている。それを読むと、同誌の存在が非核自治体運動関係者に力を与え続けてきたかがうかがえる。
 「『非核ネットワーク通信』。それは時代に鋭く切り込む上質な専門家の論説であり、一方で名もない市民の汗のにじんだ小文ありで、その調和が何とも親しみやすく、しかし妥協することなく、あるべき市民運動の方向を指し示してくれる信頼のおける羅針盤そのものでした」(水戸喜世子・「子ども脱被ばく裁判)を支える会共同代表)
 「『通信』は、私にとって世界的視野に立って物事を考える数少ない出版物の1つでした」(山本良子・元佐倉市議会議員)
 「永い期間に一貫して権力側が知らしめないもの、若しくは私たちが知らないことを数多く教えていただきました」(下関市・小野寿夫氏)
 「購読を続けるうち、反原発はもとより、反戦、反権力、侵略の歴史などの内容に、だんだん手放せない『通信』となりました。そして、いたるところに人民の側からの真っ当な志を持った方々が居られるのだということが嬉しく、そこに自分の心がつながっていくのを感じました」(下関市・沢村和世さん)
 「世の中、反核・反戦・反原発のニュースは多々ありますが、『通信』ほど内容のすぐれたものはありません。いつも、いつもその努力に感謝感激してきました」(飛鳥井佳子・京都府日向市議会議員)

 まさに、「非核ネットワーク通信」は非核自治体運動にとって羅針盤のような、あるいは灯台のような存在だったということだろう。
 
 これらの手紙とともにこの欄にあふれるのは、この『通信』の編集・発行を主として担ってきた西田勝氏と、谷本澄子さんへの感謝とねぎらいの言葉である。歴史家の色川大吉氏は、こう書く。「いまや全国各地の市役所、町役場に『非核自治体宣言都市』の看板が立てられるようになりました。私が住む山梨県北杜市の役場のまえにも堂々たる看板が立っています。それを見るたびに貴兄の顔が思い浮かびます」

 「九条の会発起人9名の内物故者が6人を数え、また戦前戦中の暗黒日本を知る多くの人が消えんとし、安倍、小池、前原など戦時日本さえも賛美する輩が大手を振るい、この国の先行きが懸念される今日、本誌が200号を以て幕を引く由、残念!」
 「紙上終刊記念パーティ」欄 に載っている村上達也氏(元東海村村長・脱原発をめざす首長会議世話人)の言葉だ。
 なのに、終刊である。第200号に掲載された「終刊の辞」は「私たちのネットワークも、日本をおおう少子高齢化の大波を避けることができず、残念ながら縮小を続けています。そのような現実に立ち、近い将来、より創造的で、より強力な草の根ネットワークの出現を期待して、ここに幕を閉じるに至りました」と述べている。会員ばかりか、編集・発行スタッフの高齢化が原因ということなのだろう。
 近い将来、「より創造的で、より強力な」非核ネットワーク通信は出現するだろうか。ここは、若い人たちの奮起に期待するほかない。

2017.12.18 戦争中の庶民のしたたかな姿
メール通信「昔あったづもな」第71号

小澤俊夫(小澤昔ばなし研究所所長)

 安倍首相による締め付けがきつくなりつつある。だが、われわれ庶民はそう簡単に負けはしない。あの過酷な戦争中にも、したたかなおじさんやおばさんがいたのだ。そのリアルな姿の一端を、昔ばなし大学の仲間の口からお伝えする。(2017.12.12)

聞き書き 親たちの戦争
伊藤康子(京都昔ばなし大学再話研究会)

――父の場合  戦争が嫌で逃げまわっていた
わたしが思春期に入った頃だろうか。休日ののんびりした昼下がり、他の家族が出かけて、父とわたしがふたりきりでいるとき、父が「わしは、徴兵が嫌で逃げまわっていたが、終戦の年の5月に、とうとう上海で徴兵された。そして終戦まで、上官の馬を引っ張っとった」と話してくれた。
 それまで、父が戦争の話をすることはなかったので、そのときは正直驚いた。それとともに「わたしの父は人を殺していなかったのだ」と、心底ほっとしたのを覚えている。
 そののち、その話を自分の中で反芻しながら、当時の父の気持ちが分かってくるように思えた。
 戦争当時の日本では、徴兵を避けて逃げまわるような男は「腰抜け」「非国民」と周りの人から非難されるような存在だったのではないか。父は確かに臆病者だったのかもしれない。父は「徴兵は嫌だ」と大声で叫ぶことはしなかった。しかし、周りの目よりも自分の思いを大切にしたから、逃げたのではないか。戦いがこわかったのか。人を殺すのが嫌だったのか。それ以上の父の気持ちは、分からない(そこまでは、私も聞くことはしなかった)。
 しかし、父は逃げた。戦時中の大勢に背を向け、周りの目よりも自分の思いを大切にし、父は逃げ出した。それは誹られる行為だったはずだとわかっていたはずだ。父の行為は堂々とした意見ではなかった。大声で持論を述べたのではなかった。しかし、弱者として、ちゃんと自分の思いを通したのだ。
 保守的でプライドの高い父が、わたしに「徴兵から逃げた」ことを話してくれたのは、そのことを恥ずかしいことと思っていないから話してくれたのだ。自分の正しい選択だと思ったから話してくれたのだと思う。そう思う。

――義母の場合  赤ん坊は泣くもんじゃ!
 一方、義母は巴(ともえ)という名が表すとおり、きっぱりした性格だった。あるとき、空襲警報が発令され、義母はまだ赤ん坊の娘を背負って、近所の人たちと川の土手の防空壕に逃げ込んだ。息を潜めてじっとしていると、背中の赤ん坊がぎゃあぎゃあ泣き出した。そのとき、一緒に逃げ込んだ兵士(近所の人?)が「だまらせろ!」と威嚇した。それに対し、母は言い返したのだ。「赤ん坊は泣くもんじゃ!」相手がどういう反応をしたのかは聞いていない。
 アメリカの戦闘機がゴーゴーと飛ぶ中で、赤ん坊の泣き声が敵兵に聞こえるとも思えない。しかし、日本の多くの防空壕の中の同じような場面で、たくさんの母親が辛い悲しい思いをした。兵士にたとえ「それなら防空壕から出ろ」といわれても、義母はきっと赤ん坊を守るために抵抗したと思う。堂々と臆することなく、防空壕から出なかったと思う。義母は、周りに屈することなく自分の正しいと思う意見を通したのだ。

わたしの父と義母は、他と異なることをおそれなかった。自分の思いを通した。自分を守り、子を守った。自分が正しいと思う選択をし、異を唱えた。父は行動で、義母は叫ぶことにより...。
 最近、自分の本心を言いにくい雰囲気、周りと違う意見を言うことを恐れる風潮の世の中になっている。「空気を読む」という言葉が横行し、周りに合わせることが良しとされている。そのうえ、相互に監視させるような法律ができ、更に自分の意見を言えないような雰囲気になっている。まさに戦争中に似た空気が流れているように思う。周りの目・評価・常識を常に気にして、自分の思いを述べにくい、遂げにくい環境になっている。
 世論が統制されていた戦争中でも、正しい選択を行った普通の人たちもいた。父と義母の場合は、そういう場合のひとつではないか、と思う。
 だがさらに考えると、自分の意見を勇気を持って言うことは確かに非常に大事なことだが、もっと大事なのは、この日本の社会が、勇気を出さなくとも自分の思いや意見を自由に言えるような社会であることではないだろうか。最近の安保法制からテロ防止を名目にした共謀罪まで、戦争中と似た言論統制がわかりにくい形で行われようとしている。人々に罠を仕掛けるような法律が次々に成立させられていると言えないだろうか。
 誰かがしてくれるというのではない。わたしなんて、何もできないということはない。
小さな行為の一歩から。自分の意見を大きな声で言うことがためらわれても、選挙という場で、自分の意見を言うことができる。
 それに加えて、何が正しい選択か見極める教育も大事だ。「これが正しい!正義だ!」と断じる人に、周りの人と一緒についていくことは楽だし、簡単だ。しかしその前に立ち止まり、自分の頭で考えるような教育が必要だと思う。
自分の思いや、正しいと思うことを、周りの空気に飲まれることなく表現することができること。そうすることが当たり前のようにできる世界を造ることが、今の私たちにとって大切なのではないだろうか。父や義母の取った行動や言葉が、特別なものでなくなるように...。

2017.12.01 検査データ改ざんをリアルに考える
―大企業の現場は劣化したのか―

半澤健市 (元金融機関勤務)

《企業の検査スキャンダルが続発》
 日産自動車、神戸製鋼所、三菱マテリアル、東レと大企業の製品検査の不備やデータ改ざんの報道が続いている。メディアはここぞとばかり企業叩きに走っている。
私はこれらの企業を無条件で弁護はしない。
しかし、報道にいくらかの違和感をもつので三点ほど率直に書く。

第一 これらの情報がどうして露見したのか
第二 これらの行為のリスクはそんなに大きいのか
第三 大企業の体質はいつから変わったのか

先ず露見の経緯が一向にわからず、報道もこの点に殆ど触れていない。四割の非正規雇用者が、薄れた「忠誠心」によって現場から情報を漏洩した。これが私の推定である。
私の実務家時代、企業内のスキャンダルを社内一致団結して隠蔽するのは常識であった。今も原則はそうであろう。企業ガバナンスや社会的責任の強化は、隠蔽洗練化の変形である。スキャンダルがそういう新制度で劇的に暴露された事例を私は聞いたことがない。しかし「隠蔽ファースト」の常識は、ゆっくりと崩壊を始めているのではないか。その崩壊は、おそらく「正義」「義憤」でなく「怨念」「復讐」の心情に起因しているのであろう。

《スキャンダルか「商習慣」か》
 次に、誤解を恐れずにいえば、変則検査は日常的な「商慣習」ではないのか。そして「リスク」は小さいのではないのか。「特採」(特別採用)は「法的には問題ない」とする企業側の発言は、愉快ではないが、それを示している。本当に重要なリスクなら、買い手企業にも重大な責任がある。リスクが現実となれば、買い手も売り手も、手が後ろにまわるのである。そこまで行かないのを、取引する企業は承知していると私は考える。

そして、私のいうこの「商慣習」が実在してきたのであれば、それはいつからなのか。
戦後高度成長期を通して、ずっとそうであったのではないのか。ただし、である。
上記企業の検査不備の一部は30年から40年前から起きていたという報道があった。それは大いに気になるところである。検査不備は「グローバリゼーション」の日本侵入と時を同じくしている。「過剰性能」で世界に進出した日本製品は「日本的経営」に依存していた。年功序列・終身雇用・企業内組合である。「グローバリゼーション」はそれを徐々に、または急速に、崩壊させた。国際競争が激化し、その対応のために「特別採用」と「情報漏洩」が増大したのである。

《愛憎半ばするというのは大袈裟か》
 私の中に、日本企業を今も信頼したい気持ちと、日本企業の「劣化」を懸念する気持ちが共存する。そんな愛憎半ばする気分でここまで書いてきた。私が金融企業の現場を離れて四半世紀になる。企業のリアリズムは私の想像を超えているかも知れない。OBと現役からの反応が聞ければ有り難い。最近は何でも「劣化」一語で割り切る論議が多い。それは何も言っていないに等しい。内容に即した実質的な論議に発展することが望ましいと思う。(2017/11/29)

2017.11.10 NHKの「クローズアップ現代+」に「香害」被害者たちが憤っています
        シリーズ「香害」 第3回
                      
岡田幹治 (フリーライター)

10月25日に放送されたNHK「クローズアップ現代+(プラス)」の「気にしすぎ!? 相次ぐにおいトラブル」に対し、「香害」被害者たち(香りつき商品の成分で様々な健康被害を受けた人たち)から「ひどい内容だ。番組のせいで私たちはさらに肩身が狭くなり、健康被害を受けても我慢を強いられてしまう」など、憤りの声が上がっています。
なぜなのでしょうか。番組にはどんな問題があるのでしょうか。

◆体臭に過敏になった日本社会
25分間の番組は次のような内容でした。
まず、日本人が最近、体臭に過敏になっており、それを覆い隠すために消臭スプレーの噴霧などが日常的に行われている、異常とも思える実態を、いくつかのエピソードで伝えます。
そして、坂井信之・東北大学脳科学センター教授が、においを嗅いで心地よくなるか不快になるかは、におい発生源の見た目や人間関係などによって左右されることを明らかにします。体臭を気にして専門クリニックを訪れる人が増えているが、その7割は体臭がとくに強いわけではないとも指摘されます。
続いて番組は、ニオイ対策用の香りつき商品(消臭スプレーや柔軟剤)をめぐる様々なトラブルに焦点を移し、その一つとして、商品に含まれている化学物質がもたらす体調不良を取り上げます。
香りつき商品が原因で「化学物質過敏症(MCS)」になった女性が登場し、ここ数年で症状が悪化し、ニオイを嗅ぐとめまいがしてずっと寝ているようになって、今年6月に10年務めた仕事を辞めざるを得なかったと訴えます。
番組のまとめ部分では、坂井教授とともに、坂部貢・東海大学医学部教授(医師)が出演し、「MCS患者の約8割はニオイにも過敏に反応するが、空気中の化学物質は無数にあるので、なぜ症状が出るのかというメカニズムは分かっていないところが多い。環境省と厚生労働省が研究班などをつくって研究しているが、問題が複雑で、アウトカム(成果)まで達していない」と述べます。
どう対応したらよいか、というキャスターの問いに対し、坂部教授は「ニオイに対して感受性が高くて症状が出る方もいることにわれわれは配慮すること、そしてメーカーは消費者に注意を喚起することが必要」と述べ、坂井教授は「体臭に寛容になるためには、人間関係も寛容になる必要がある」と述べます。

◆まるで消臭スプレーのCMこの番組の第一の問題点は、消臭スプレーなどを販売する業界の立場に立っていることです。
たとえば、人々の意識や行動を探るためのアンケートです。番組は、化粧品会社マンダムが実施した「職場のニオイに関する意識調査2017②」を取り上げ、「職場で『嫌だ』と感じるニオイ」は1位が体臭、2位が口臭、3位がタバコのニオイだとしています(注1)。
しかし、別のアンケートもあります。シャボン玉石けんのアンケートでは、回答者の8割が「香りつき商品を日常的に使用」しており、79%が「他人のニオイ(香水・柔軟剤・シャンプーなど)で不快に感じたことがあり」、51%が「人工的な香りを嗅いで、頭痛・めまい・吐き気などの体調不良になったことがある」と回答しているのですが(注2)、こちらは取り上げられませんでした。
最近の体臭過敏の風潮には、テレビCMなどを通じた業界のあおりによってつくられた面がありますが、それは報じられません。
ニオイ対策にしても、体は入浴やシャワーで清潔にする、衣類は洗濯し、スーツ類は風に当てるといった、当たり前の方法は全く示されません。消臭スプレーや汗拭きシートの使用しか方法はないかのようです。
番組には消臭スプレーを体に噴霧する場面が何度も登場し、まるで「体臭を気にする人は消臭スプレーを使いましょう」というCMを見ているようです(注3)。残念なことに、スプレーが有害な成分を周りにまき散らし、周辺の空気質を悪化させていることは語られません。

◆香害被害者の悲鳴や怒り
番組の最大の問題点は、「ニオイの感じ方という快・不快の問題」と「香り商品に含まれる成分がもたらす健康被害の問題」が、きちんと区別されずに議論されていることです。
これらは「香り(ニオイ)に関する認知・心理的な問題」と「香りつき商品の成分がもたらす身体的生理的影響の問題」であり、両者は全く異なるものです。ところが、番組のまとめの場面では二人の識者がそれぞれ自説を述べるので、よほど注意深く聴かないと正確に理解できない。
なにより結びが問題です。坂井教授が「体臭に寛容になるためには、人間関係も寛容になる必要がある」と述べたのを受けて、キャスターが「なかなか難しい問題ですが、互いに配慮しあうことから始めるしかなさそうです」と締めくくるため、香害の被害者は「精神的に軟弱で、寛容度が低い人間」であるように受け取られてしまいます(注4)。
被害者たちから悲鳴や怒りが噴出するのは当然でしょう――。
「体調を崩しても、体臭予防の香りには寛容になれ、と周囲から言われかねない」、「人間関係が悪い人物と認識される可能性があるので、病名を打ち明けにくくなる」、「体調が悪化しても我慢を強いられ、社会復帰が遠ざかる」「香り商品の影響で喘息などが起きても『気のせいだ』と言われるのであれば、どう生きていけばいいのか」などなど。
「香害被害者たちは愚弄された」という声も聞かれました。

◆使用量の問題ではない!
番組では、以下のような日本石鹸洗剤工業会の見解が示されました。
「香りに関する問題について、因果関係は不明ですが、困っている人のいることを真摯にとらえ、対応をはかっています。実態調査の結果、2割の人が2倍の量の柔軟剤を使っていることがわかったので、目安通りの使用と周囲への配慮を呼びかけています」
この見解は番組での坂部教授の発言内容とほぼ同じです(注5)。坂部教授は環境省の「環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究」の総括研究者や、厚生労働省の「シックハウス問題に関する検討会」の中心的メンバーを長らく務めていますから、政府の考えでもあるのでしょう。
この見解は重大な問題を含んでいます。一つは、香り商品は目安通りに使用したからといって無害になるわけではないのに、目安通りに使用すれば健康に悪影響はないという誤解を与えることです。
もう一つの問題は、現段階で政府や業界が対策を取らないのは当然だという認識が広がることです。多数の被害者が出ている以上、メカニズムや因果関係が明確でなくとも、最新の知見に基づいて、被害を広げないように政府・業界は手を打つべきだと私は考えます。
水俣病をはじめとする過去の公害事件では、被害者が多数出て、その原因が絞られてくると、決まって「因果関係がはっきりしない」と国・業界・御用学者が言い出し、有効な対策が実行されませんでした。因果関係が明らかになって対策が取られるときには、被害の規模が途方もなく膨らんでいるのが常でした。
一種の「公害」になった「香害」についてもまた、同じ道を歩みつつあることが、工業会の見解や坂部教授の発言からうかがえます。
今回のクローズアップ現代+は、そうした動きを後押しする番組だったと思います。

注1 マンダムの意識調査は今年5月、東京・大阪の25~49歳の働く男女1028人を対象にインターネットで実施された。
注2 シャボン玉石けんのアンケートは今年7月、20~50歳代の男女598人を対象にインターネットで実施された。
注3 NHKでは10月18日放送のガッテン「なぜ出るホコリ! 原因はソコだった!?」でも、柔軟剤をしみ込ませた「除電ぞうきん」で床・壁・棚などを拭く方法を推奨している。
注4 番組には気になる場面が数多くあった。たとえば、埼玉県熊谷市が市役所の入り口にミントの香りを漂わせる機器を設置したところ、香りが苦手という意見が相次ぎ、撤去を余儀なくされたが、担当職員は「よかれと思ってやったのに、不快に思われた方がいたことは大変残念」と述べていた。なぜ香りはすべての人に心地よいと判断したのだろうか。
あるいは、体臭を気にして頻繁にスプレーする夫と止めてほしい妻の間でケンカが続く夫婦。夫が帰宅すると、妻が「舌がしびれる」ほど健康に影響が出ているのに、なぜ夫は使用を止めないのだろうか。
注5 坂部教授は番組で「メカニズムが明らかでない」ことを強調していた。このため一部の香害被害者からは「味方と思っていたMCSの専門医に、後ろから撃たれた思いだ」との声が出た。

◆岡田の11月の講演予定
▽香害~そのニオイが体をむしばむ?!
  11月21日(火)午後6時30分~8時30分
  札幌エルプラザ 大研修室4F(札幌市北区北8条西3丁目)
  問い合わせ:生活クラブ・多田(011-665-1717)
▽香害~そのニオイが体をむしばむ?!
  11月22日(水)午前10時~12時
  札幌市教育文化会館 講堂4F(札幌市中央区北1条西13丁目)
  問い合わせ:生活クラブ・多田(011-665-1717)
▽広がる香害~あなたは大丈夫?
  11月29日(水)午前10時30分~12時30分
  生活クラブ館(小田急線経堂駅 徒歩3分)
  問い合わせ:コミュニティスクール・まちデザイン(03-5426-5212)