2008.07.13 伝統文化を大切にした鎌倉武士
〔書評〕尾崎左永子著「鎌倉百人一首」を歩く』(集英社、¥1050)

雨宮由希夫 (書評家)


古都・鎌倉には、何時訪れても常に立ち去りがたい独特の時間が流れている。
ある年の早春のころ、北鎌倉の駅を降り、建長寺の方丈庭園の裏手の小道より、天園(てんえん)ハイキングコースに分け入ったことがあった。淡い緑の雑木林のしげみが突如開け、きらめく七里ガ浜の金波銀波と若宮大路が眺められたときの驚き、暮れなずむ空からちらほらと雪が舞い降りる中、山道をひとりさまよい、瑞泉寺の梅をみて、やっと人家が近いと安堵したことなどをつい昨日の出来事のように思い出す。
「花の季(とき)」。四季折々、風情豊なたたずまいを見せる「寺」と「花」。鎌倉は四季、花の街でもある。東京よりわずか1時間の地に、かくも手ごろな古都があり、いつでも小さな旅を愉しむことができるとは、われわれ東京人はなんと贅沢な幸せを享受していることか。
本書は、古代から現代まで、故人のものという基準の下に、古くから鎌倉を詠んで来た先人たちの短歌を、鎌倉に集った第2次「鎌倉ペンクラブ」や「鎌倉歌壇」の文化人や歌人たちが選んだ百首の内から、その選者の1人でもある歌人・尾崎左永子(さえこ)の「心にとくに響いてきた約五十首」についてのエッセイ集である。

2008.07.11 当事者能力欠如を露呈したG8サミット
原油高騰に無策とは
伊藤力司 (ジャーナリスト)

鳴り物入りで開かれた北海道洞爺湖サミットだが、終わってみれば何と空しい会議だったことか。トラック運転手、漁民、農民をはじめ世界中の勤労者にとって喫緊の問題である石油価格高騰に何ら具体的な解決策を示すことができなかった。穀物高騰をはじめとする食料危機についても具体策はなく、英各紙に「夫人を含む首脳たちが豪華ディナーを食べながら食料危機を語るのは偽善的」と批判されたのもむべなるかな。最大の焦点とされた地球温暖化対策でも、「2050年までに温室効果ガス排出量を半減する」という、歯切れの良い目標を宣言することができず、この目標を「すべての国が共有することを求める」という希望の表明で終わった。

サミット議長を務めた福田首相は総括記者会見で「多くの成果があった」と強調した。しかし具体的な内容については「時には厳しい口調を交えて幅広い議論が展開された」とか「新興国を含めてこれだけ多くの首脳の間で危機感を共有できた」と答えた程度である。確かに現在の世界が抱えている問題は複雑多岐にわたり、即効的な解決策を打ち出すことは容易ではない。しかし世界経済を引っ張る先進国、世界の民主主義をリードするG8のサミット(頂上)を自称するなら、世界中の人々が苦しんでいる石油・食料価格問題打開策の方向性くらいは示せないのか。日本政府はサミット開催に600億円の予算を組んだというが、巨額のの血税を使ってこの程度の成果ではわれわれ納税者は納得できない。
2008.07.09 公的年金運用の問題点は何か
―誤解を招く「運用損報道」を考える―
半澤健市 (元金融機関勤務)

《運用損報道の概要》
 政府運用の公的年金で大損が出たという報道がメディアを賑わせている。
公的年金は「掛け金」(入口)が集まらず、「支払い」(出口)では不祥事続出だから、「運用」(途中)でも「大損害」発生とくれば、疑惑と批判が集中するのは無理もない。しかし、企業在籍中に年金を含む資産運用経験をもつ私は、これらの報道は表面的過ぎると思うのでその理由を述べる。
まず報道の要点は次の通りである。(『朝日新聞』、08年7月4日の記事による)

・07年度の「厚生年金と国民年金」の運用損は5.8兆円(利回りマイナス6.4%)
 で過去最悪
・利回りは02年度のマイナス8.46%に次ぐ低水準であり損害金額は02年の2.6兆円を
大幅に上 回る
・01年から本格運用が始まったが、07年度の運用総額は約91.3兆円であった(積立金総額
は約150兆円)
・運用資産の金額内訳は
 国内債券 56.9兆円(以下同じ)
 国内株式 13.8
 外国債券  9.7
 外国株式 10.9 
・民間企業年金の利回りはマイナス9.7%、大手生保の団体年金はマイナス13%〜16%
(国の運用はそれよりは良いという意味であろう)
・運用実績不振の理由はサブプライム問題に発する世界同時株安の影響を受けたため
・累積収益は7.4兆円のプラスを維持しており01年以降の運用利回りは2.66%で目標1.1%
 を上回っている
2007.08.28  いよよ華やぐ 84歳のファッションモデル
田尻孝二 (生協役員)


 守田美津子さんは84歳、ある新聞社が主催したニューエルダーシチズン大賞で見事新聞社賞に輝きました。彼女は高齢者の文化サークル、「いよよ華やぐ倶楽部」で、モデルとして活躍しています。

 ピアノが奏でるジャズのスタンダードに合わせ、モデルはひとりひとりライトの中に歩んで行きます。ここは舞台の袖、だれもが真剣に目はじっと前の進行を追っています。出を待つ出演者に快い緊張が走る一瞬です。
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2007.07.09 視覚障害者にやさしい党はどこ?
田尻孝二 (生協役員)

政党ホームページで考えるユニバーサルデザイン

 ユニバーサルデザインとは、「みんなにやさしいデザイン」である。年齢や性別、障害の有無などと関わりなく、だれもが利用しやすい用具・建物・環境のデザインを意味している。今日では、ホームページのような情報、コミュニケーションの分野でも広く浸透している概念である。

 インターネットは、さまざまな環境の人々が利用している。先ず使用しているPCの相違がある。通信環境の格差も大きい。利用者も多様である。ユニバーサルデザインのホームページであるためには高齢者や障害者に対しての配慮が十分でなければならない。

 視覚障害者が利用するホームページ読み上げソフトがあり、広く使われている。数字キーの操作で画面上の文章を読み上げ容易に目的の情報にたどりつけるのである。このソフトが機能するためにはいくつかの要件がある。ページ内の文章の主従の関係が明らかであること。写真や図版などの視覚情報がテキストで代替されていることなどである。自治体等の公共性の高いホームページは、既にこれらを十分満たしている。

 折しも参院選が間近に迫っている。「政党ホームページではどうであろうか」というのが今回の試みである。どの政党も弱者の尊重は謳っているが、マニフェストを評価するのとは別の意味で政党の姿勢の実際はこんなところに表れると思うからである。国民の声に最も敏感な時期を狙ってこの記事を上げる。対応の遅れている政党の改善を切に願っている。評価ツールとしてIBM社の aDesigner(エーデザイナー)を使用した。

 さて気になる結果はどうかというと…。