2018.09.21 部分否定
部分否定は、全体や頻度を否定することで生成される

松野町夫 (翻訳家)

「すべてが~ではない」とか「常に~とはかぎらない」のように、文全体ではなく一部を否定することを部分否定(partial negation)という。これに対して、全体を否定することを全体否定(total negation)、または全部否定、全否定という。部分否定や全体否定は、おそらく世界どの言語にもあると思う。

日本語の場合、部分否定には助詞「は」が欠かせない。「は」は一般に、その直前の語を他と区別して確定したものとして問題化するという機能がある。具体的には、「は」は主題、対比、限度、焦点を示す。この四大機能のうち、焦点(focus)は、「は」が文のどの部分(語句)に焦点を当てるのかを示す。部分否定では、この焦点機能が否定の焦点を示し重要な役割を演ずる。

部分否定は一般に、以下のような語を否定することで生ずる場合が多い:

全体を意味する語: すべて、全部、全体、全員、完全、両方
頻度を意味する語: たまに、ときどき、頻繁に、いつも、常に、毎日
必然を意味する語: 必ず(必ずしも~ない)、かぎる(~とはかぎらない)

全員が行かない。 → 全体否定 (誰も行かない)
全員行かない。 → 部分否定 (多くは行くが、一部は行かない)

両方ともいらない。 → 全体否定 (ふたつとも不要だ)
両方いらない。 → 部分否定 (片方だけほしい)

太郎は、毎日休まなかった。 → 全体否定 (全然、休まなかった)
太郎は、毎日休まなかった。 → 部分否定 (休みが多かったが、たまには行った)

金持が幸せとかぎらない。→ 部分否定
優秀な選手が必ずしも名コーチになるとかぎらない。 → 部分否定
事態は必ずしも楽観できない。 → 部分否定 (見通しは明るいが、油断は禁物)

英語の場合も同様に、部分否定は以下のような語を否定することで生ずる場合が多い:
all (すべての), every (すべての), everybody (みんな), everything (すべてのもの), always (いつも), necessarily (必ず), both (両方) などの類。

以下の英文およびその訳文は、いずれも部分否定である(ただし会話体の疑問文は除く)。

Not all men are wise. すべての人が賢いとはかぎらない。
Not all children like apples. すべての子供がリンゴが好きだとはかぎらない。
Not all policemen are brave. 警察官だからといってみな勇敢だとはかぎらない。
Not all people are as kind as you are. 誰もがあなたのように親切なわけではない。

Not every man can be a hero. 誰もがみな英雄になれるわけではない。
Not every teenager likes pop music. ティーンエイジャーがみなポップスを好きとはかぎらない。
Not every rare book is a valuable book. すべての希少本が価値があるというわけではない。
A: Do you buy lottery tickets every week?  宝くじ券は毎週買うの?
B: Not every week. 毎週ではないよ。

Not everybody can do it. 誰にでもできるわけではない。
Not everybody can be a hero. 誰もが英雄になれるわけではない。
Not everybody can act so bravely. 誰もがそんなに勇敢に行動できるわけではない。
But everybody can’t go to Harvard. でも、誰もがハーバードへ行けるわけではない。

Money isn’t everything. 金がすべてではない。
Beauty is not everything. 美がすべてではない。
You cannot have everything. 何でもみな手に入るわけではない。

You're not always right. 君がいつも正しいとはかぎらない。
We’re not always this busy! いつもこんなに忙しいわけではない。
The rich are not always happy. 金持が常に幸福とはかぎらない。
I'm not always free on Sundays. 日曜日がいつも暇であるとはかぎらない。
Things won't always go as planned. 物事がいつも計画通りに行くとはかぎらない。

That is not necessarily true. それが必ずしも真実とはかぎらない。
Bigger is not necessarily better. 大きければいいというものではない。
You don't necessarily have to attend. 君は必ずしも出席しなくともよい。
The rich are not necessarily happy. 金持が必ずしも幸福とはかぎらない。
That conclusion doesn't necessarily follow. その結論は必ずしも出てこない。

Biggest doesn’t necessarily mean best. 最大が必ずしも最善とはかぎらない。
Seats in the front row are not necessarily the best. 前列の座席がベストとはかぎらない。
The more expensive items are not necessarily better. 高ければ高いほど良品とはかぎらない。
A: Is it always so difficult? いつもこんなに難しいの?
B: Not necessarily. そうとはかぎらない。

I don't know both. 両方は知らない(片方だけ知っている)。
I don't want both books. 2冊両方はいらない。(1冊でいい)

► both の否定は部分否定を表わし、全体否定を表すことは滅多にない。
全体否定には、both の代わりに、either や neither を使うのが普通。たとえば、

2冊両方ともいらない。 → 全体否定
I don't want either book. → 全体否定
= I want neither book. → 全体否定

2018.09.04 二重否定(標準語体)
英語の二重否定には俗語体と標準語体がある

松野町夫 (翻訳家)

英語の二重否定には俗語体と標準語体がある。俗語体の二重否定は否定を表し、標準語体の二重否定は肯定を表す。ここでは、俗語体の二重否定を double negative(ダブル・ネガティブ)、標準語体の二重否定を double negation(ダブル・ニゲーション) と区別して呼ぶことにする。

二重否定
俗語体 【否定を表す】: I don't know nothing. → double negative
標準語体 【肯定を表す】: It is not uncommon. → double negation

研究社の英和中辞典やリーダーズ英和辞典では double negative を広義に解釈して、俗語体も標準語体も double negative に含めて定義している。しかし各種の英英辞典(メリアム・ウェブスター英英辞典、OALD7、LAAD2、MED2)や国内最大の英和辞典・ランダムハウス英語辞典では、double negative を狭義に解釈して、俗語体の二重否定だけを double negative と定義している。

ここでは、俗語体の二重否定を double negative、標準語体の二重否定を double negation と区別して呼ぶことにする。このような使い分けは、後述するケンブリッジ英文法にもある。
前回は俗語体の二重否定について述べた。今回は標準語体の二重否定について検討する。

標準語体の二重否定とは、否定したものをもう一度否定して肯定を表すこと。たとえば、「好きでないわけではない」は「(いくらか)好きである」という婉曲な肯定を表す。これは日本人にはおなじみの表現である。こうした二重否定は日本語でも英語でも標準的な表現となる。

その仕事が好きでないわけではない。 → 日本語の二重否定(標準的な表現)
=その仕事が嫌いなわけではない。
It's not that I don't like the work. → 英語の二重否定(標準的な表現)
= It's not that I dislike the work.

食べるものがないという人はいなかった。→ 日本語の二重否定(標準的な表現)
=誰もが食べるものを持っていた。
Nobody had nothing to eat. → 英語の二重否定(標準的な表現)
= Everyone had something to eat.

標準語体の二重否定(double negation)
標準語体の二重否定は、否定語 not と否定接辞の付いた語から構成される場合が多い。標準語体の二重否定は肯定を表すが、もとの肯定とまったく同じではなく、ややためらう気持ちが入っている。

It's not uncommon to see snakes here.
この地でヘビを見るのは珍しいことではない(普通でないことはない)。

It's not unusual for him to get home late.
彼が遅く帰宅するのは珍しいことではない(普通でないことはない)。

The universe is constantly expanding, it's not limitless.
宇宙は絶えず膨張しており、果てがないわけではない

最後に、標準語体の二重否定について、ケンブリッジ英文法 CGE (Cambridge Grammar of English) の解説と四つの例文に筆者の訳を添えて、以下に引用する。

Double negation involving not plus a negative-affixed word commonly occurs in more formal styles of English such as academic writing. It enables speakers and writers to express ideas cautiously:
標準語体の二重否定は、否定語 not と否定接辞の付いた語から構成され、学術文書のような堅い英語の文体によく見られる。二重否定を用いることで、話し手や書き手は慎重な表現が可能となる。

The government is not blameless as regards the recent rise in unemployment.
最近の失業率の上昇について、政府に責任がないとはいえない

This is a not uninteresting essay.
これはおもしろくないエッセーではない

Unfortunately, it is not impossible that at least one third of Shakespeare’s sonnets were written by Sidney.
残念なことに、シェークスピアのソネット(14行詩)の少なくとも三分の一は英国の宮廷詩人シドニーが書いたというのはありえないことではない

It is not unusual for people to see the film three or four times.
人が同じ映画を三回または四回見ることは珍しいことではない(普通でないことはない)。

2018.08.23 二重否定(俗語体)
二重否定は日本語では肯定を表すが、英語では否定を表す

松野町夫 (翻訳家)

二重否定は否定したものをもう一度否定すること。日本語の場合、否定の否定は肯定なので、「興味がないではない」は「(いくらか)興味がある」という婉曲な肯定を表す。

二重否定は英語で double negative という。 しかし、日本語の二重否定と英語のダブル・ネガティブは根本的に異なる。日本語の二重否定は肯定を表し標準語体だが、英語のダブル・ネガティブは否定を表し俗語体ということ(以下参照)。

二重否定
否定したものをもう一度否定して、肯定を表すこと。「楽しくなくはない」など。double negative
【日本語大辞典】

double negative
二重否定: 俗語体で1つの節の中に2つの否定語を用いて1つの否定の意味を表す構文;
例 I didn't hear nothing. (= I didn't hear anything.)
► 英語の初期の時代には標準的な強調形と認められていたが、今日では教育のない人の非標準的な語法とされている。【ランダムハウス英語辞典】

double negative: noun
(grammar) a negative statement containing two negative words. ‘I didn’t say nothing’ is a double negative because it contains two negative words, ‘n’t’ and ‘nothing’. This use is not considered correct in standard English. 【OALD7英英辞典】
筆者訳► 二重否定: 名詞
(文法) 否定語が(ひとつで充分なのに)ふたつある否定文のこと。 “I didn’t say nothing.” は二重否定である。なぜならこの否定文には n’t と nothing という2つの否定語が使われているから。こうした用法は非標準的な表現とされる。【OALD7英英辞典】

古期英語(OE)や中期英語(ME)の否定文では、否定形をとりうる単語はすべて否定形にして、二重、三重に否定を繰り返すことが普通であった(否定呼応)。英語はもともと、否定呼応を用いる言語だった。

しかし否定を表すのに、複数の否定語を呼応させる方式よりも、否定語一つで否定を表す方式が単純で効率がよい。こうして現代英語は否定呼応を廃止し、二重否定や三重否定など いわゆる多重否定(multiple negatives)を非標準的な表現として退けた。ところが二重否定や三重否定は現代でも、口語英語で普通に使われている。

夕食はいらない。
I want no dinner. → 標準的な表現
I don’t want no dinner. → 二重否定(非標準的な表現)

私は何も知らない。
I know nothing. / I don’t know anything. → 標準的な表現
I don’t know nothing. → 二重否定(非標準的な表現)

彼は決して危険なことはやらない。
He never takes risks. → 標準的な表現
He don’t never take risks. → 二重否定(非標準的な表現)

私は誰にも危害を加えたことなんかなかった。
I never did any harm to anybody. → 標準的な表現
I never did no harm to nobody. → 三重否定(非標準的な表現)

誰にも何も言ったことはない。
I never said anything to anybody. → 標準的な表現
I never said nothing to nobody. → 三重否定(非標準的な表現)

俗語体の二重否定について、ケンブリッジ英文法 CGE (Cambridge Grammar of English) の解説・例文を以下に引用する。ただし筆者訳や矢印文言の補充、打消線の削除など、多少編集した。

Double negatives and usage 
二重否定と用法


Words such as never, nobody, no one, nothing, nowhere have a negative meaning and do not require a negative verb form:
筆者訳: never, nobody, no one, nothing, nowhere のような単語には否定の意味があるので動詞の否定形は必要ない:

私が公園についたとき、そこには誰もいなかった。
When I got there, there was nobody in the park. → 標準的な表現
(When I got there, there wasn’t nobody in the park.) → 二重否定(非標準的な表現)

どこにも誰も見ていない。
I saw nobody anywhere. → 標準的な表現
I didn’t see nobody nowhere. → 三重否定(非標準的な表現)

Double and multiple negatives are used, especially in spoken English, in order to create emphasis. Traditional grammar books prohibit them, and the use of double negatives with words such as never, nobody, nothing and nowhere is a very sensitive issue. Learners of English are advised not to use them.
二重否定や多重否定は、否定を強調するために、とくに口語英語に使用される。伝統的な文法書ではこれらを禁止している。 never, nobody, nothing, nowhere のような単語に、二重否定を用いることは非常にデリケートな問題を提起する。英語学習者は二重否定を使用しないのが望ましい。

2018.08.10 否定を表す接辞
in-, un-, dis-, non-, -less

松野町夫 (翻訳家)

英語の否定は一般に not, no などの否定語を用いる。しかし否定は、否定を表す接辞でも表現できる。たとえば、「私は幸福でない」という否定表現は、I am not happy. だが I am unhappy. でも表現できる。ここでは否定を表す接頭辞と接尾辞について検討する。

否定を表す接頭辞(in-, un-, dis-, non-)
接頭辞(in-, un-, dis-, non-)は否定を表わす。つまり in-, un-, dis-, non- はいずれも not を意味し、日本語の「不」「非」「~ない」に相当する。このうち in- は、後続する語の頭文字に応じて、im-, il-, ir- にそれぞれ変化するが、これは単に発音上のことで意味は変わらない(in- = im-, il-, ir-)。

たとえば、in- は p, b, m の前では im- に変化するが、その理由を発音のメカニズムから説明する。

in- + patient(我慢強い)→ in-patient → im-patient → impatient(我慢できない)

[n] は口を少し開けて発音するが、[p], [b], [m] はいずれも唇を閉じて発音するので、in-patient をすばやく発音すると自然に im-patient となるという次第。これは日本語の「心配」「新聞」「新米」でも、shin-pai, shin-bun, shin-mai が実際には、shin はすべて shim になるのと同じことである。

in- : in(不) + accurate(正確な) = inaccurate(不正確な)
inadequate(不十分な), incapable(できない), inefficient(非能率的な)

The book is both inaccurate and exaggerated. その本は不正確かつ誇張されている。
The food supplies are still inadequate. 食糧の供給はまだ不十分だ。
He was incapable of realizing the situation. 彼は事態を認識することができなかった。
The delivery system was very inefficient. その配送システムはとても非能率的だった。

im- : in- は b, m, p の前では im- に変化する。
im- : imbalance(不均衡), immature(未熟の), impossible(不可能な)

Citizens are impatient with the slow pace of reform.
市民は改革がなかなか進まないことにいらいらしている。
the trade imbalance 貿易不均衡
The fruit was still immature. そのフルーツはまだ熟していなかった。
It's impossible to predict the future. 将来を予測することは不可能だ。

il- : in- は l の前では il- に変化する。
il- : illegal(不法の), illogical(不合理な), illiterate(読み書きのできない)

It's illegal to sell alcohol to children. 子供に酒類を売るのは違法である。
She has an illogical fear of insects. 彼女は昆虫に不合理な恐れを抱いている。
His parents were illiterate. 彼の両親は読み書きができない。

ir- : in- は r の前では ir- に変化する。
ir- : irregular(不規則な), irrational(不合理な), irreversible(不可逆的な)

She has been working irregular hours. 彼女の勤務時間は不規則です。
He had an irrational fear of cats. 彼は猫にばかげた恐れを抱いていた。
CVID: complete, verifiable and irreversible denuclearization
CVID: 完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄

un- : un(不) + healthy(健康な) = unhealthy(不健康な)
unstable(不安定な), unfair(不公平な), unreasonable(不合理な)

They looked poor and unhealthy. 彼らは貧しくて不健康に見えた。
The economy is still unstable. 経済はまだ不安定である。
Life seems so unfair sometimes. 人生はたまに、とても不公平に思えるときがある。
Don't be unreasonable. むちゃを言うなよ。

dis- : dis(不) + honest(正直な) = dishonest(不正直な)
disagree(合意しない), distrust(信用しない), dislike(好きでない)

She gave dishonest answers to our questions. 彼女は私たちの質問に正直に答えなかった。
The conclusions disagree with the facts. その結論は事実と一致しない。
He generally distrusts doctors. 彼はたいてい医者を信用していない。
I dislike big cities. 大都会は好きでない。

non- : non(非) + cooperation(協力) = noncooperation(非協力)
nondestructive(非破壊の), nonessential(非本質的な), nongovernmental(非政府の)

a policy of nonviolent noncooperation 非暴力・非協力の政策
We are giving a nondestructive test soon. わが社では近日中に非破壊検査を実施します。
Let’s keep nonessential purchases to a minimum. 不要不急の買い物は極力控えましょう。
a nongovernmental organization 非政府組織(略 NGO)

否定を表す接尾辞(-less)
接尾辞(-less)は「ない」という意味を表す。

-less : care(注意) + -less(ない) = careless(注意が足りない)

sugar 砂糖 → sugarless 砂糖の入っていない
stain さび → stainless さびない(ステンレス・スチール製の)
end 終わり → endless 終わりのない
home 住む家 → homeless 住む家のない
hope 希望 → hopeless 絶望的な(望みのない)

Don't be careless in crossing the street. 道路を横切るときはよく注意しなさい。
= Be careful when crossing the street.
I like sugarless gum. 私はシュガーレスガムが好きです。
It is made of stainless steel. それはステンレス製です。
I have an endless curiosity about the world. 世間に対して飽くなき好奇心がある。
I think that’s a homeless dog. あれは野良犬だと思う。
The situation seems hopeless of improvement. 事態は好転の見込みがなさそうだ。

2018.08.02 英語の否定表現
完全否定と準否定

松野町夫 (翻訳家)

否定は肯定と対立する。肯定は何かを認めること、否定はそれを打ち消すことである。日本語では、普通、述語に否定語「ない」をつけて否定を表す。たとえば、「行く」「行かない」、「静かだ」「静かでない」、「広い」「広くない」など。

自然言語は一般に、否定語を用いて否定を表す。英語ではnot, no などの否定語を用いて否定を表現する。中国語では否定を表す副詞「不」「没(有)」を述語の前に用いて否定を表し、韓国語では 안~ や ~지 않다 で否定を表す。

肯定文 → 私は行く。 I go. 我去。 나는 간다.
否定文 → 私は行かない。 I don’t go. 我不去。 나는 가지 않는다.

英語の否定語には完全に否定するものと、完全には否定しないが否定的意味合いの強いものがある。前者を否定語(negative)、後者を準否定語(semi-negative)または弱い否定語(weak negative)とよぶのが一般的である。しかしここでは両者の対立を明示するため便宜上、前者を完全否定語(full negative)、後者を準否定語(semi-negative)と呼ぶことにする。

完全否定語(full negatives)
完全否定語は、not, no およびその派生語のように、完全に否定する単語を指す。注目すべきは、各単語がすべて n で始まっていることである。

副 詞: not, never, nowhere, neither など
形容詞: no, neither など
代名詞: none, nothing, no one, nobody, neither など
接続詞: nor など

I have no money [time, car, friends]. 金(暇、車、友人)がない。
= I don’t have any money [time, car, friends].
I've never been to Hawaii. ハワイには行ったことがない。
We went nowhere last weekend. 先週の週末にはどこへも行かなかった。
He neither drinks nor smokes. 彼は酒も飲まなければたばこも吸わない。

There's nothing in this box. この箱には何もない。
None of the members is going. 会員は誰も行かない。
Nobody could answer my question. 誰も私の質問に答えられなかった。
Neither John nor Betty is at home. ジョンもベティも家にいない。

準否定語(semi-negatives)
準否定語は以下に示すように、hardly, scarcely, seldom, rarelyなどを指す。準否定語は完全には否定しないが否定的意味合いが強い。

副 詞: hardly, scarcely, seldom, rarely
形容詞: few, little

hardly / scarcely (ほとんど~ない)
Hardly anybody came. ほとんど誰も来なかった。
We hardly know each other. 私たちはお互いほとんど知らない。
She hardly ever calls me. 彼女は私にほとんど電話しない。
I scarcely know him. 彼をほとんど知らない。
I can scarcely hear him. 彼の言うことがほとんど聞こえない。

seldom / rarely (めったに~ない)
She seldom eats fish. 彼女はめったに魚を食べない。
We seldom go to the movies. 私たちはめったに映画を見に行かない。
We rarely see him nowadays. このごろはめったに彼を見かけない。
I'm rarely late for appointments. 私はめったに約束の時間に遅れない。
A dog seldom bites unless attacked. 犬は攻撃されないかぎり、めったにかむことはない。

few と little の用法
few や little も準否定語。ただし、a がついて a few, a little となると肯定語となる。
He has few friends. 彼には友だちはほとんどいない。 → 否定文
He has a few friends. 彼には友だちが少しいる。 → 肯定文
I have little money left. 金はもうほとんど残っていない。 → 否定文
I have a little money left. 金はまだ少し残っている。 → 肯定文

few = not many (ほとんどない) → few は可算名詞に使う。
He has few friends. 彼には友だちはほとんどいない。
Few people came. ほとんど誰も来なかった。
= Hardly anybody came.
Few tourists stop here. 当地に立ち寄る観光客はほとんどいない。
Few artists live luxuriously. ぜいたくに暮らす芸術家はほとんどいない。
Few dogs bite unless attacked. 犬は攻撃されないかぎり、かむことはほとんどない。

little = not much (ほとんどない) → little は不可算名詞に使う。
I have little money left. 金はもうほとんど残っていない。
Little property, little care. 【ことわざ】 財少なければ憂い少なし。
There is little hope of her recovery. 彼女が回復する望みはまずない。
= There is not much hope of her recovery.
There is little danger of an earthquake. 地震の心配はほとんどない。
We need little butter to make this cake. このケーキを作るのにバターはほとんどいらない。
Little or no human keying is needed.人がキー入力する必要はほとんどないか、まったくない。

2018.07.16 疑似関係代名詞
as, than, but

松野町夫 (翻訳家)

as, than, but は本来接続詞であるが、たまに関係代名詞になることもある。その場合、英文法ではそれらを疑似関係代名詞とよぶ。疑似関係代名詞が成立するには、先行詞とそれを修飾する節(as 節, than 節, but 節)が必要だ。

「疑似」とは、本物に近い偽物を意味する。しかし疑似関係代名詞のうち、as だけは本物の関係代名詞という感じが強い。実際、ランダムハウス英語辞典、リーダーズ英和辞典、ジーニアス英和大辞典などでも、こうした場合における as を関係代名詞として定義している。

君と同じ時計を持っている。
I have the same watch as you have.
= I have the same watch that you have.

ここで便宜上”the same watch” を先行詞、as を関係代名詞、”as you have” を as 節(as + S + V)とよぶことにする。この場合、as は that に置換できるので関係代名詞 that と同様の働きをしていることがわかる(as = that)。また以下に示すように、as = who, as = whom, as = which, as = where となる場合もある。

as
制限用法: as は such, the same, as ... などを含む先行詞と相関的に用いる。
また as は as 節中において、主語や目的語、または補語として機能する。


Choose such friends as will benefit you. → as は(as 節中において)主語
= Choose those friends who will benefit you.
君のためになるような友達を選びなさい。

Such girls as he knew were teachers.  → as は(as 節中において)目的語
= Those girls whom he knew were teachers.
彼が知っているような女の子は先生だった。

Such experience as I have is useless in this situation. → as は目的語
私がしたような経験は、この状況では役に立たない。

I’m not such a fool as you are.  → as は補語
私はあなたのようなばかではない。

I have the same trouble as you have.  → as は目的語
= I have the same trouble that you have.
私もあなたと同じような悩みをかかえている。

I gave him as much money as I had with me.  → as は目的語
= I gave him all the money that I had with me.
私は持っているだけのお金を彼ににあげた。

He is as great a scientist as ever lived.  → as は主語
= He is the greatest scientist that ever lived.
彼は今までにない偉大な科学者である。

as
非制限用法: 文(主節)が先行詞となる。以下、下線部は先行詞を示す。


She did her job well, as can be proved by the records.
= She did her job well, which can be proved by the records.
彼女は自分の仕事を立派にやった。これは記録を見ればわかる。

He was late for school that day, as is often the case with him.
= He was late for school that day, which is often the case with him.
その日、彼は学校に遅刻したが、これは彼にはよくあることだ。

As was expected, he did not turn up.
= He did not turn up, which was expected.
予想どおり、彼は姿を見せなかった。

As is usual with hybrids, the plants were sterile.
= The plants were sterile, which is usual with hybrids.
雑種の場合よくあることだが、その植物も実がならなかった。

as が関係副詞(where, when)に:
as は関係副詞(where, when)として機能することもある。この場合、as は where に置き換えることができるので、関係副詞 where と同様の働きをしていることがわかる(as = where)。ただしこの例文では、as 節の主語や動詞は省略できるが、where 節の主語や動詞は省略できない。

私たちは前と同じ場所で会った。
We met at the same place as before.
= We met at the same place as (we had met) before.
= We met at the same place where we had met before.

than
比較級を含む先行詞と相関的に用いる。


We have more oranges than we could eat in a week.
うちには一週間では食べきれないほどのオレンジがある。

He's a better man than you'll ever be.
彼は君なんかにはとてもなれそうもないくらいのいい人物なんだ。

Fewer students than we had expected were present there.
そこに出席していた学生は私たちの予想よりも少数だった。

but
先行詞が否定語の場合、but は(that ... not)の意味を表す。文語調。
主節は there is の構文で始まることが多い。


There is nobody but has their faults.
欠点のない人は一人もいない。

There is no rule but has some exceptions.
例外のない規則はない。

2018.06.19  関係詞の省略
    関係代名詞や関係副詞は省略できる場合がある

松野町夫 (翻訳家)

関係代名詞(who, which, that)は、次のような場合に省略できる。ただし、省略できるのは制限用法の場合のみ。以下、カッコ内の関係代名詞はすべて省略可能。

関係代名詞が他動詞の目的語のとき(whom, which, that)
The man (whom) I met yesterday is a teacher. きのう会った方は先生です。
The man (whom) she married is an American. 彼女の結婚した相手はアメリカ人です。
This is the book (which) I have chosen. これが私の選んだ本です。
This is the book (which) I bought yesterday. これはきのう私が買った本です。
This is the only pencil (that) I can find. この鉛筆しか見当たらない。
That's all (that) he wanted to know. 彼が知りたかったのはそれだけだ。
It was Tom (that) we saw. 私たちが見たのはトムでした。
You should open the wine (that) our guests brought.
ゲストの皆さんからいただいたワインを開けるのがいいわね。
It was beer (that) you drank, not water. 君が飲んだのはビールで、水ではなかった。
It’s the best novel (that) I’ve ever read. これまで読んだなかで、それが最高の小説です。
Here is the book (that) you wanted. ほらここにあなたがほしがっていた本があります。

関係代名詞が前置詞の目的語のとき(whom, which, that)
The woman (whom) I talked to is an interpreter. 私と話した女性は通訳です。
That is the man (whom) I had lunch with. あちらの方が私が昼食を一緒に食べた男性です。
The pen (which) you're looking for is in this drawer. 捜しているペンはこの引き出しの中です。
It's only you (that) I can rely on. 私が頼りにできるのはあなただけだ。
Is this the house (that) they live in? これが彼らの住んでいる家ですか。
Did you find the book (that) you were looking for? 探していた本は見つかりましたか。
The people (that) I spoke to were very helpful. 私が話した人々はとても力になってくれた。

先行詞が人の地位・職業・性格などで関係代名詞が補語のとき(that)
この場合は that を使う。 (who, whom は使えない)
Bob is not the man (that) he used to be. ボブは昔の彼とは違う。
He isn't the hero (that) he used to be. 彼は昔のような英雄ではない。
He is not the coward (that) he used to be. 彼は昔のような臆病者ではない。
I’m not the fool (that) you thought me. 私は君が思っていたような馬鹿ではない。
I am no longer the handsome young man (that) I once was. もう私は紅顔の美少年ではない。
That actor is no longer the central figure (that) he once was.
もうあの俳優は以前のような中心的人物ではなくなっている。

関係代名詞が主語のとき(who, which, that)
<There is ...>,<Here is ..> の構文で:
There is a person (who) is waiting to see you. ご面会の方が見えています。
= There is a person (that) wants to see you.
= There is someone (who) wants to see you.
There's no one here (that) cares about it. そのことを気にする人はここにいない。
There’s no one (who) works harder than you. あなたのような勉強家はいません。
There is nothing (that) you can do about it now. 今、それについて君ができることは何もない。
There's a shop across the street (that) sells shoes. 道の向い側には靴を売っている店がある。
Here is someone (who) wants to go with you. 君に同行したいという人がここにいます。

関係代名詞が主語のとき(who, that)
<It is ...>, <That is ...> の強調構文で:
It was Tom (who) lost his watch. 時計をなくしたのはトムだった。
That was John (who) just went out. 今、出て行ったのはジョンだ。
It was James (who) met Tom in the park yesterday. きのう公園でトムに会ったのはジェームズだ。
It was Taylor (that) met Roy. ロイに会ったのはテイラーでした。
It was I (that) broke the window. 窓ガラスを割ったのは私だ。
It was Jim (that) revealed the secret to me.その秘密を私に明かしたのはジムだった。
It was Mr. Smith (that) gave Joe this ticket. この切符をジョーにやったのはスミスさんでした。

関係代名詞の後にbe動詞が続くとき(who is, which is, that is)
ただしこの場合、関係代名詞とbe動詞の両方を一緒に省略する。
The boy (who is) walking over there is Ken. あそこを歩いている男の子はケンです。
He was a victim (who was) killed in the accident. 彼はその事故で死亡した被害者だった。
The party (which was) held yesterday was a success. 昨日開かれたパーティーは盛会だった。

The high jump is an athletic event in which a person runs and jumps as high as possible over a bar (that is) set between two upright poles.
走り高跳びは競技種目の一つ。助走して、支柱に架けたバーを跳び越し、その高さを競うもの。

関係副詞の省略
制限用法の関係副詞も省略できる。ただし、where は省略できないが、when は会話だけでなく書き言葉でもしばしば省略される。また、where, when, why, how の代りに that が用いられることがあり、この that はしばしば省略される。以下、カッコ内の関係詞は省略可能。

これが私たちの住んでいる家です。
= This is the house where we live. → where は省略不可
= This is the house in which we live. → in which は省略不可
= This is the house (that) we live in. → that は省略可能。ただし、in を補充する。

Monday is a day (when) I have a lot of work to do. 月曜日は私には多くの仕事がある日だ。
I will never forget the time (when) we first met. 私たちが初めて会った時のことを決して忘れません。
You were born the same year (that) I was. 君は僕と同じ年の生まれだね。
The day (that) we arrived was a holiday. 私たちが着いた日は休日だった。
You were in a hurry the last time (that) I met you. この前会った時君は急いでいたね。

There's no reason (why) I should believe it. 私がそれを信じる理由は何もない。
Let me tell you the reason (why) I disagree. 私が反対する理由を言わせてください。
Do you know the reason (why) he refused to go? 彼が行くのを断った理由を知っていますか。
The reason (that) I came here is to meet you. 私がここへ来たのは君に会うためだ。

I don't like the way (that) he speaks. 彼の話し方が嫌いだ。
注記: the way how という言い方は現代ではしない。way か how のいずれかを使う。
This is the way (that) I did it. = This is how I did it. 私はそれをこうしてやりましたよ。
Do you know the way (that) he cooks it? 彼がそれをどう料理するか知っていますか。
= Do you know how he cooks it?

2018.05.29 関係詞雑感
先行詞は被修飾語に相当し、関係詞節は修飾語に相当する

松野町夫 (翻訳家)

英語には関係代名詞(who, which, that)や、関係副詞(where, when, why, how)などの関係詞があるが、日本語に関係詞はいっさいない。しかし関係詞を含む英文(=関係詞節)を和訳したり、逆に、和文を関係詞を含む英文に英訳したりすることができる。これはつまり、日本語には関係詞はないが、先行詞や関係詞節に相当するものは存在するということを示している。

ここで、the boy who broke the window 「窓ガラスを割った少年」を例にとる。
英文法的には、boy が先行詞で、who が関係代名詞、who broke the window が関係詞節である。これに対して国文法的には、「少年」は被修飾語で、「窓ガラスを割った」は修飾語、もっと正確にいうと、文章形式の連体修飾語である。

先行詞 ”boy” = 被修飾語「少年」
関係詞 ”who” = なし
関係詞節 ”who broke the window” = 修飾語「窓ガラスを割った」

先行詞は被修飾語に相当し、関係詞節は修飾語に相当する。修飾語の配置について、日本語では修飾語は常に被修飾語の前に置かれるのに対して、英語では関係詞節は常に被修飾語(=先行詞)の後に置かれる。つまり、日本語の修飾語は常に前置修飾語であるのに対して、英語の関係詞節は常に後置修飾語である。

窓ガラスを割った」少年 → 日本語の修飾語は常に前置修飾語
the boy “who broke the window” → 英語の関係詞節は常に後置修飾語

ちなみに、日本語の修飾語は前置修飾語の一種類しかないが、英語の修飾語は前置修飾語(premodifier)と後置修飾語(postmodifier)の二種類がある。たとえば
セレブとは有名人のことです。
A celebrity is a famous person. → 英語の形容詞は、通常、前置修飾語
A celebrity is a person who is famous.  → 英語の関係詞節は常に後置修飾語

以下は、英語の「ストレッチャー」と日本語の「担架」を英英辞典と国語辞典でそれぞれ定義したものである。英語は先行詞(device, frame, bed)の後に関係詞節、日本語は被修飾語(道具、用具、器具)の前に修飾語が配置されているのが一目瞭然だ。日本語はふたつの文で定義したものもあるが、英文はすべてひとつ。一般に英語は関係詞のおかげで、長文に対しても言語的に安定した構造を持つ。

stretcher
· a device that is made of a long piece of thick cloth stretched between two poles and that is used for carrying an injured or dead person. [メリアム・ウェブスター英英辞典]
· a covered frame for carrying someone who is too injured or sick to walk. [LAAD2]
· a type of bed used for carrying someone who is injured, ill, or dead. [MED2]
· a long piece of strong cloth with a pole on each side, used for carrying sb who is sick or injured and who cannot walk. [OALD7]
· a long piece of canvas with a pole along each side, which is used to carry an injured or sick person. [COBUILD English Dictionary]

担架
· けが人や病人をのせてはこぶ道具。【学研 小学漢字辞典】
· 傷病者をのせ、手でになって運ぶ道具。【岩波国語辞典】
· けが人・病人などをのせて、人が手で運ぶ用具。stretcher.【日本語大辞典】
· 病人・負傷者などを乗せて運ぶ道具。普通、二本の長い棒の間に布を張ったもの。【大辞林】
· 病人、けが人を人の力で持ち上げて運ぶ運搬用具で、脚、車輪はない。【日本大百科全書】
· 病人や負傷者を搬送するため枠に麻布などを張った持ち手部分をもつ器具。【ウィキペディア】

関係詞を含む英文(=関係詞節)の翻訳はやっかいだ。短文はともかく長文となると苦労する。これは、日本語に関係詞がないことや、関係詞節が常に日本語と反対の語順、後置修飾語となることに由来する。関係詞節(とくに制限用法)は、頭から訳していくことができない場合が多い。

以下に、ニューヨークタイムズの2018年5月4日のニュース速報を引用する。見出しは 2つの英文から成る。二番目の文に関係詞が出てくる。”The academy that picks a winner” の academy が先行詞で、that が関係代名詞(制限用法)である。

The Nobel Prize in Literature will not be awarded this year. The academy that picks a winner has been engulfed in a sex abuse scandal.

ノーベル文学賞、今年の受賞者発表を見送る。文学賞を選考するアカデミーは現在、性的虐待スキャンダルの渦中にある。(参考訳)

上記はいずれも短文なので翻訳に問題はない。問題となるのは、以下の本文である。この英文はひとつの文なのにかなり長く、しかも関係詞がふたつ(when, that)出てくる。ちなみに、when は関係副詞(非制限用法)で、that は関係代名詞(制限用法)ではあるが、making this のthis を先行詞として関係副詞的に用いてある。

The Swedish Academy said it would postpone the 2018 award until next year, when it will name two winners, making this the first year since World War II that the panel has decided not to bestow one of the world’s most revered cultural honors.

この英文をひとつの和文にまとめるのは至難の業だ。無理してひとつにまとめたとしても、日本語として読みづらい文章になるおそれがある。こうした関係詞を含む長文の英和翻訳の場合、意味のまとまりごとに、いくつかの文に分割してから訳していくのが一番簡単な方法だ。ここでは、たとえば、みっつに分割する:

The Swedish Academy said it would postpone the 2018 award until next year.
スウェーデン・アカデミーは2018年文学賞の発表を来年に先送りすると発表した。
Next year it will name two winners.
来年、受賞者を発表する際に今年の受賞者も合わせて公表する。
It will be the first year since World War II that the panel has decided not to bestow one of the world’s most revered cultural honors.
世界で最も栄誉ある賞のひとつを今年は授与しないとなると、これは第二次世界大戦以来初めての事態となる。

このように分割してから訳し、最後に分割した訳文をつなぎ合わせてまとめる。

スウェーデン・アカデミーは2018年文学賞の発表を来年に先送りすると発表した。来年、受賞者を発表する際に今年の受賞者も合わせて公表する。世界で最も栄誉ある賞のひとつを今年は授与しないとなると、これは第二次世界大戦以来初めての事態となる。(参考訳)

2018.04.28 関係詞の用法
制限用法と非制限用法との相違点

松野町夫 (翻訳家)

関係代名詞(who, which, that)や、関係副詞(where, when, why, how)などをまとめて関係詞とよぶ。関係詞は一般に、名詞(=先行詞)の直後に置かれ、その名詞を修飾する節(=関係節)を作る。

たとえば、the boy who broke the window 「窓ガラスを割った少年」の場合、
boy が先行詞で、who が関係代名詞、who broke the window が関係節である。
単に「少年」だけでは誰のことを指しているのかわからないが、「窓ガラスを割った」という修飾語(関係節)を付けることで、その少年を限定できる。このように関係節は、先行詞を限定または特定する働きがあり、こうした用法を制限用法と呼ぶ。

He is the boy who broke the window. 〔制限用法〕
彼が窓ガラスを割った少年です。

これに対して以下の例文では、先行詞と関係詞との間にコンマが挿入されたことにより、関係節はもはや先行詞を限定しておらず、単に補足的な説明を加えているにすぎない。このように関係節が先行詞を限定しない用法を「非制限用法」と呼ぶ。

I went to see the doctor, who told me to rest for a few days. 〔非制限用法〕
= I went to see the doctor, and he told me to rest for a few days.
医者に行ってみてもらったところ、数日間休息するように言われた。

以下のふたつの例文では、daughter が先行詞で、who が関係代名詞である。前者は先行詞と関係詞との間にコンマがないので制限用法、後者はコンマがあるので非制限用法となる。非制限用法のコンマは、通例 and の意になるが、文脈により but, because, though, if などの意になることもある。

They have a daughter who is married to an American. 〔制限用法〕
彼らにはアメリカ人と結婚している娘が一人いる。
They have a daughter, who is married to an American. 〔非制限用法〕
= They have a daughter, and she is married to an American.
彼らには娘が一人いて、その娘はアメリカ人と結婚している。

制限用法と非制限用法との違いは、単にコンマの有無にすぎない。しかし意味は微妙に異なる。制限用法では、娘の意味(範囲)を「アメリカ人と結婚している」と制限した上で、そのような娘が一人いると述べている(つまり彼らには複数の娘がいる可能性がある)。これに対して非制限用法では、娘が一人いることを述べた上で、追加情報として、その娘がアメリカ人と結婚していることを付け加えている(彼らには娘は一人しかいない)。

制限用法の who は that に書き換え可能だが, 非制限用法では that は使えない。同様に、制限用法の which は that に書き換え可能だが, 非制限用法では that は使えない。

They only employ people who already have computer skills. 〔制限用法〕
= They only employ people that already have computer skills. 〔制限用法〕
その会社はコンピューターを使える人だけを雇っています。
Ron, who usually doesn't drink alcohol, had two beers. 〔非制限用法〕
ロンは通常酒をやらないが、(その日は)ビールを2杯飲んだ。
(Ron, that usually ... はダメ。非制限用法では that は使えない)

非制限用法の which は、事物(名詞)だけではなく、先行する文全体を指すこともある。たとえば、
He said he saw me there, which was a lie. 〔非制限用法〕
彼はそこで私を見たと言ったが、それはうそでした。

一般に制限用法か、非制限用法かは、文脈や先行詞との関係で決まる場合が多い。先行詞がすでに特定されていれば非制限用法、そうでなければ制限用法(または非制限用法)にする。
固有名詞は特定の人や物の名前を表すので特定されている場合が多い。先行詞が特定されていれば、わざわざその意味を制限したり限定したりする必要がない。つまり、先行詞が固有名詞で特定されている場合、コンマを付けて非制限用法にする必要がある。

I visited the Tokyo Tower, which was constructed in 1958. 〔非制限用法〕
私は東京タワーを訪れたが、これは1958年に建設された。

上記の英文からコンマを削除して、I visited the Tokyo Tower which was constructed in 1958. のような制限用法にすると、「私は、1958年に建設された東京タワーを訪れた」となり、東京タワーが複数存在するような印象を与える。しかし実際には東京タワーは世界にひとつしかなく、特定されているので非制限用法にする必要がある。ただし、普通名詞の「タワー」であれば、文脈に応じて制限用法にも非制限用法にも、どちらにでもすることができる。

I visited the tower which was constructed in 1958. 〔制限用法〕
私は、1958年に建設されたタワーを訪れた。
I visited the tower, which was constructed in 1958. 〔非制限用法〕
私はそのタワーを訪れたが、それは1958年に建設されたものであった。

関係副詞(where, when)についても同様だ。「パリ」は固有名詞なので非制限用法となるが、「都市」は普通名詞なので制限用法(または非制限用法)とする。ちなみに、why, how には非制限用法はない。

This is Paris, where we lived for six years. 〔非制限用法〕
ここはパリで、私たちはここに6年間暮らしました。
This is the city where we lived for six years. 〔制限用法〕
ここが私たちが 6年間暮らした都市です。

Wait till night, when he will be back. 〔非制限用法〕
夜まで待ちなさい、その時分には彼も帰ってきますから。
He killed himself on the night when he heard the news. 〔制限用法〕
彼はそのニュースを聞いた夜、自殺した。

For years, a joke among Trump Tower employees was that the boss was like Manhattan’s First Avenue, where the traffic goes only one way. 〔非制限用法〕
この数年間、トランプタワーの従業員たちの間でささやかれているジョークに、ボスはマンハッタンの一番街と同じだというのがある。一番街も一方通行だからである。

2018.04.06 関係副詞
関係副詞には where, when, why, how がある

松野町夫 (翻訳家)

関係副詞は、関係代名詞と同様に、名詞(=先行詞)の後に置かれ、その名詞を修飾する節(=関係節)を作る。たとえば、the house where I live 「私が住んでいる家」の場合、house が先行詞で、where が関係副詞、where I live が関係節である。

関係副詞には where, when, why, how の 4 種類がある。先行詞が場所の場合は where, 日時の場合は when, 理由の場合は why, 方法の場合は how というように使い分ける。本来、where は「どこに」、when は「いつ」、why は「なぜ」、how 「どのように」を意味する疑問副詞だが、これらの単語がいったん関係副詞として使われると、もとの意味は消失し、まったく異なる用法や機能を持つようになる。

関係副詞を含む構文は「先行詞」+「関係節」という語順となる。関係節は関係詞で始まる。以下の例文の下線部は関係節(relative clause)を表す。関係副詞は(前置詞+which)に置き換えることができる。

where (= in which, to which) 先行詞が場所の場合

This is the house where I live. ここが私の住んでいる家です。
= This is the house in which I live.
That is the country where I went last year. そこが私が去年行った国です。
= That is the country to which I went last year.
This is the place where the accident happened. ここが事故が起きた現場です。
Is there a shop near here where I can buy postcards? この辺に葉書を買える店がありますか。

when (= in which, at which, on which) 先行詞が日時の場合

1950 is the year when I was born. 1950年は私の生れた年です。
= 1950 is the year in which I was born.
It was a time when motorcars were rare. その頃は自動車の珍しい時代だった。
Sunday is the only day when I can relax. 日曜日は私がリラックスできる唯一の日です。
The time will come when you will regret it. これは後で後悔することになりますよ。

why (= for which) 先行詞が理由(reason)の場合

This is the reason why I am leaving. 私が辞めるのはそういうわけです。
= This is the reason for which I am leaving.
The reason why he came so early is unknown. 彼がそんなに早く来た理由は不明です。
Let me tell you the reason why I disagree. 私が反対する理由を言わせてください。
Tell me the reason why you are quitting your job. 仕事をやめる理由を話してください。

how (= the way in which)  先行詞が方法の場合(ただし how は先行詞を含む)
the way + how … となることは現在ではまれで、how か the way のどちらか 1 つでよい。

That is how they do business. それが彼らのビジネスのやり方だ。
= That is the way they do business.
= That is the way in which they do business.
Be careful how you act. 立ち居振る舞いに気をつけなさい。
Just tell me how the story ends. ストリーはどのように終わるのか教えてくれ。
We asked how we could help. 私たちはどのような形でお手伝いできるのか尋ねた。
Do you have any idea how he broke his leg? 彼がどのように骨折したのか知っていますか。