2018.12.18 沖縄県民の意思を無視する政府を許さない
世界平和アピール七人委が訴え

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設をめぐり、政府が埋め立て用土砂を強行投入した問題で、世界平和アピール七人委員会は12月17日、「沖縄県民の意思を無視し、対話を拒否する政府を許容してはいけない」と題するアピールを発表した
七人委は同日、アピールを首相官邸と防衛省に送った。
 世界平和アピール七人委は、1955年、物理学者・湯川秀樹らにより、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人有志の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならないを原則に、日本国憲法の擁護、核兵器禁止、世界平和実現などについて内外に向けアピールを発表してきた。今回のアピールは131回目。
 現在の委員は、武者小路公秀(国際政治学者)、大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学、慶應義塾大学名誉教授)、池内了(宇宙論・宇宙物理学、総合研究大学院大学名誉教授)、池辺晋一郎(作曲家)、髙村薫(作家)、島薗進(宗教学、上智大学教授)の7氏。

アピールの全文は次の通り。

沖縄県民の意思を無視し、対話を拒否する政府を
許容してはいけない


 政府は、沖縄県民の意思を無視して、玉城デニー知事の度重なる対話要請に真摯に向き合わず、対話を拒否し、辺野古の恒久基地化をめざし、埋め立て計画区域への土砂投入強行を始めました。
 安倍政権の度重なる暴力的行動は、日本国憲法に書かれている「国政は、国民の厳粛な信託による」とする人類普遍の原理に違反し、平和のうちに生存する権利を否定するものです。政治には倫理とヒューマニティが必要です。
 世界平和アピール七人委員会は、19世紀に琉球王国を滅亡させ、20世紀に沖縄戦において県民に多大な犠牲を強いたことに続く、21世紀の琉球処分を認めるわけにいきません。私たちは 沖縄県民の側に立ちます。
 国民一人一人が他人事と思うことなく、現状を直視し、発言されることを求めます。

2018.11.26 「安倍内閣支持者に改憲阻止を働きかけよう」
       平和アピール七人委、高知市の講演会で訴え

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 内外に向けて反核平和を訴え続けている有識者グループの「世界平和アピール七人委員会」が11月17日(土)、高知市の県民文化ホールで講演会を開いた。自民党が開会中の臨時国会に改憲案を提示する動きを示していることから、講演会のテーマは「改憲をさせないために何ができるか」。5人の七人委員会メンバーが改憲をさせないための方策を訴えたが、その中に「改憲を進める安倍内閣を支持する人たちに『騙されてはならぬ』と働きかけよう」という訴えがあり、聴衆の関心を集めた。

 講演会が七人委員会と、地元護憲団体の、こうち九条の会、女性「九条の会」高知の共催となったことから、講演会には「憲法公布72周年県民のつどい」の名称がかぶせられた。会場は約400人の聴衆で埋まった。

 講演会では、池内了委員(宇宙論・宇宙物理学者、名古屋大学名誉教授)が七人委員会の歴史と活動を紹介。その後、大石芳野委員(写真家)が「踏みにじられる人々の思い」、髙村薫委員(作家)が「誰も騙されてはならぬ」、武者小路公秀委員(国際政治学者、元国連大学副学長)が「新冷戦 二つの積極的平和主義を否定するトランプ『アメリカ第一主義』」、小沼通二委員・事務局長(物理学者、慶應義塾大学名誉教授)が「過去に戻らず、未来を拓くために」との演題でそれぞれ講演した。

 日本の戦前回帰をアジアの人々が懸念
 大石委員は、戦地で負傷した子どもたちや難民の写真を紹介し、「戦争は人災ですから、本気で止めようと思えば止められるものです。戦火に見舞われた国々に、もし日本国憲法の第9条のようなものがあったならば、この子たちは親や愛しい人を失うとか、武器で怪我をするなどの心身の傷を受けずに済んだだろうに……との思いを繰り返しながら付き合ってきました」「ところが今や、憲法をめぐる論議に揺れています。これまで当たり前のようにあった、戦争をしない、人権を守るといった生きることに必要な最低限の保障が変えられようとしているのです」と、改憲の動きに強い危機感を表明した。
 さらに、「こうした日本の現状をアジア諸国の人々も強い関心を持って見守りつつも、また戦前のような状態になりはしないかと心配しています」と、アジアの人々の間に高まりつつある懸念を伝えた。

 自衛隊明記は子どもでも分かる矛盾
 髙村委員は、まず「現時点では、私たちの国はとうてい改憲を目指し、推し進める状況にない」との認識を示し、「にもかかわらず、国民の意思とは関係のない、政治家の個人的な妄執による改憲の動きが出てきていることが最大の問題点である」と断じた。
 その上で「改憲を阻止するにはどうしたらいいか」と問い、「それには、二通りの道がある。一つは安倍内閣を打倒すること、もう一つは改憲をめぐる国民投票で自民党の改憲案を否決すること。安倍内閣を倒すには、支持率を下落させればよい」と述べた。だが、髙村委員は「これは容易なことではない。安倍内閣がどんなにウソをついても、この内閣を支持する人がなお4割もいるからだ。多くの人がいまだに安倍内閣のウソと不実に気がつかないためだ」「改憲問題で、安倍首相は9条の2項(戦力不保持と交戦権否認)を残して自衛隊を明記するだけ、と言っている。しかし、これは、子どもでも分かる矛盾だ」として「安倍内閣を支持する人たちに、今こそ、安倍内閣に騙されぬな、と呼びかけなくては」と話した。

 新冷戦に抵抗しよう
 武者小路委員は「トランプ大統領のもとで米国が打ち出した戦略は、核兵器を実戦に適するようにするために、その小型化を進めて潜水艦に搭載することだ」と指摘し、これにより、太平洋・インド洋と地中海・大西洋で米対中ロの海洋核軍拡競争を中心とする「新しい冷戦」が始まるだろうとの見方を示した。そして「米国と西欧と日本の市民は、反核・反帝国主義のために協力する平和学の『積極的平和主義』の立場から、一致・協力して、地球上の生命を全滅させかねない新冷戦に抵抗すべき時がきている」と述べた。
 また、「『アメリカ第一主義』のもとで、世界各地域でのマイノリティや先住民族や、移住労働者や難民を差別主義や憎悪扇動の対象とする世界規模の新しいファシズムが台頭していることを確認しよう」と語った。

 防衛省を防災省に
 小沼委員・事務局長は、第1次世界大戦終結以来の戦争廃絶への流れとヒロシマ・ナガサキ以来の核兵器廃絶への流れを紹介した後、「今、われわれは何ができるか」と問い、「相手の立場に立って考える」「現政権のもとでの憲法改定への動きと憲法空洞化が日本を弱体化していることを直視する」「少子高齢化・慢性財政悪化・国土狭溢の日本の軍事化は現実性がないことを確かめる」「被占領国意識を脱却し、安保条約と行政協定の不合理を直視する」「世界の潮流を見据えて、他国が脅威を感じない国にするために抜本的な路線見直しを行う」「すべての変革は少数派が支持を広げた結果であり、あきらめることなく、自信を持って着実に進む」などの実践を呼びかけた。
 さらに、小沼委員・事務局長は、防衛省を防災省に、自衛隊を災害救助隊に改組することを提案した。

 休憩後、池内委員の司会で、大石、髙村、武者小路、小沼の4委員によるパネル討論が行われたが、冒頭、池内委員の発言があり、その中で、池内委員は、安倍政権になってから世界の趨勢に逆らって防衛予算(軍事費)が年々大幅に増えていること、防衛省と企業による軍事転用可能な共同研究が拡大しつつあることを指摘し、「こうした事実に警戒心を強め、反対の世論を盛り上げよう」と呼びかけた。





2018.11.10 ポピュリズムに傾斜する現代政治-将来社会に大きな禍根を残す
盛田常夫(在ブダペスト、経済学者)

ポピュリズムとは何か
 一昔前まで、ポピュリズムとは中南米の政治経済的に不安定な発展途上国で、民衆の即時的要求を政治スローガンに掲げ、権力を奪取する政治手法を特徴づける用語として利用されていた。しかし、これをより一般化して、「社会の中長期的発展を見据えた政策ではなく、国民の即時的要求に答える短期目標を政治スローガンに掲げる政治」と考えれば、現代のほとんどの政治はポピュリズムに侵されている。それは与党と野党とを問わず、右と左を問わない。世界を見渡しても、現代政治はどこも押し並べて、ポピュリズムに傾斜している。それには理由がある。
 一つは、社会の行く末について不透明さが増しているにもかかわらず、政治家の資質の低下が著しく、社会が進むべき道を明らかにする役割を果たせなくなっている。
 二つは、議会制民主主義が政治を短期的な視野に押し込めている。3~4年のタイムスパンで実行される選挙で当選しなければ政治家を続けることができない。だから、将来社会への道筋を指し示すより、すぐに目に見える結果が期待できる政策を掲げる。
 三つは、問題解決の道筋を解明するはずの社会科学の研究者が構想力を失っている。冷戦時代には、事の正否は別として、社会主義か資本主義かという長期的視野に立つ理念が存在した。そのイデオロギー的対立が消えた現代では、将来社会が目指す理念や思想が失われ、研究者の構想力も衰えている。
 四つは、現代経済社会のテンポの速い変化にたいして、企業も国民も、追いつき追い越せの適応を迫られ、とても遠い将来のことに関心を向けられない。今の生活を維持し、かつとりあえず向上させる政策があれば、それで良いという感情が支配的になっている。
 20世紀は良くも悪くも資本主義か社会主義かという社会構想をめぐるイデオロギー的対立が政治を主導していた。ところが、そのイデオロギー的対立がなくなった途端に、右も左も政治の中・長期的構想を失ってしまった。

人口減はAIや生産性向上で解決できる?
 日本社会が将来にわたって抱える問題ははっきりしている。人口の急速な減少と政府の累積債務である。日本社会が縮小する時代を迎える中で、巨額の政府債務を抱える日本社会はいったいどうなっていくのだろうか。多くの人々は当面の生活が脅かされない限り、将来社会が抱える問題に目を向けない。自らの生活に直接にかかわるまでは無関心でいるか、いずれ政府が解決してくれるものだと考えている。しかし、その肝心の政府は将来社会の問題に取り組むのではなく、目先の利益だけを追いかけ、国民もまた目先の利益に一喜一憂している。これでは原発や津波と同じように、二進も三進も行かなくなった時に後悔するだけだ。しかし、その時にあがいてももう手遅れなのだ。
 人口が減り、労働力が減れば、社会が生産し維持できるものが限られてくる。人口が2割3割減すれば、巨大な高速道路網や新幹線網の維持すらできなくなる。AIやロボットがトンネルや幹線道路・線路の維持管理の仕事をしてくれることはない。算術計算に毒された経済学者は、「人口が半減しても、労働生産性が2倍になれば、GDPは減ることはない」というが、これは頭で作り出したGDP概念(価値ノルム)の割り算と掛け算にすぎず、現実問題に何の回答も与えてくれない。30年後に人口が半減することが確実な秋田県の人々に、「大丈夫です。AIと労働生産性の向上で、問題は解決されます」と言っているのと同じだ。気休めにもならない、無責任な戯れ言だ。ほとんどの経済学者の構想力はこの程度のものでしかない。プリミティブなトイ(おもちゃ)モデルと現実を区別することもできないほどに知力や構想力が落ちている。

累積債務は誰が解決するのか 
 日本政府の累積債務額が財政収入の20年分近くに達しているにもかかわらず、2%程度の消費税引上げに政府が右往左往している。20年分の年収を前借しておいて、1%程度の返済増をためらうのと同じである。とても民度の高い国とはいえない。安倍晋三が2度にわたって消費増税を延期したのは、3分の2を占める議席が減り、憲法改正ができなくなるからにすぎない。安部晋三の頭には将来社会の問題などまったく念頭にない。安倍晋三の民度もこの程度である。
 政府は累積債務をどう解決していくのかを国民に示す義務がある。有権者の支持を得るために、短期的利益を掲げて政権を維持してきたことが、今日の巨額の累積債務となった。歴代自民党政府が積み上げてきた累積債務の解決は、自民党が後世の世代に負った義務であり解決する責任がある。他方、国民は国が与えるものをそのまま有難がるのではなく、その費用がどのように賄われるのかについて、明確な意識を持つことが必要だ。累積債務は、国民が負担なしで、公的サービスを受けてきたことの結果である。その負担は将来世代が払わなくてはならない負債である。「いずれ政府が解決できる」ような課題ではなく、現存世代が将来世代に先送りした「付け」である。公的サービスの受益と負担のあり方を政府に任せるのではなく、国民自身が自分の問題として考える意識を持たなければ、巨額の累積債務問題は解決するどころか、破滅を導くだけである。
 与党の政治家が増税に対する有権者の批判を避けるために、いろいろな手を使って増税の政治効果を打ち消そうとするのは、国民を馬鹿にしたポピュリスト政策である。「消費の冷え込みを防ぐため」というもっともらしい口実で、各種の複雑な税の還元政策を実行しようとしている。「施し政策」を組み合わせれば、増税による不人気効果を打ち消すことができると考えているからだろう。しかし、複雑な還元策はたんに税の一部を返すだけに終わらない。一定期間しか通用しない制度を作るために、さらに税が無駄につぎ込まれ、それを実行する業者にも負担を強いる。これでは何のための増税か分からない。
 累積債務問題の解決には、政治家の強い意思と国民の明確な意思の醸成が必要だが、そのどれもが現代の日本社会には欠如している。「政府は与え、国民は受け取るだけ」という関係性を変えなければ、永遠に累積債務問題は解決されない。

債務問題の解決法は限られている
 右も左も、政府の累積債務問題はいずれなんとか解決できるだろうという根拠のない楽観論に浸ったままで、問題解決を遅らせている。このコラムでたびたび扱ってきたように、もっとも性質の悪いアベノヨイショは、累積債務そのものが存在しないという論陣を張っている。これは「津波は絶対に来ない、原発は百%安全」というのと同類の俗論である。いつの時代にも、こうやって政権をヨイショする無責任な輩はいるが、こんな連中が大手を振って論陣を張ることができるのも、同じ穴の狢(政治家)が権力を握っているからだろう。
 他方、左派はどうだろうか。20世紀を通して、社会主義政権を担った共産党は、国民経済の構築に失敗してきた。その結末が社会主義経済社会の崩壊である。共産党が政権をとった諸国ではみな、経済問題は政治主導で解決されると考えていた。経済問題は政治問題であるという立場をとっていた。官邸主導の安倍内閣も良く似ているが、それは政治的独裁が陥る傲慢以外の何ものでもない。
 累積債務があるからといって、すぐに国家は崩壊しない。20世紀の社会主義ですら、40年から70年の歴史時間、国家体制を維持することができた。しかし、いずれ債務は何らかの形で処理されなければならない。いかなる政治体制を取っていようと、この経済的処理から逃れることはできない。
 膨大に膨れ上がった日本の戦時国債は敗戦によってチャラにされた。経済社会は過去に積み上がられた債務-債権問題を処理し、リセットしなければ、新しい体制を構築できない。戦時国債も社会主義の体制負債も同じである。戦争終結や体制崩壊が新たな体制構築のための出発点になる。巨額の政府債務がチャラになることで、新しい体制構築が始まる。こうやって、社会体制がリセットされる。
 いずれ日本の巨額債務も処理されるべき時が来る。徐々に削減されるか、それともドラスティックな措置によってチャラにされるか。
 日本が社会主義国で見られたような体制崩壊や、戦争勃発による戦時インフレや戦後処理という過程をたどることはないだろう。徐々に公共サービスの受益者負担を増やして、債務が増えないようにする政策を取らざるを得ないだろうが、日本に賢い政府が樹立されて、50年の長期の時間をかけて、国民負担を増やして債務処理に当たるというシナリオは考えられない。現代の政党も政治家もそのような長期的視野で仕事をするはずがない。
 とすれば、巨額の政府債務は将来の日本にどのような結末をもたらすのだろうか。それは日本社会が体制崩壊や敗戦に匹敵する事態を迎えた時に生じるだろう。大規模な自然災害や人災がそれである。津波や大地震のような自然災害の同時発生や、複数の原発事故が発生すれば、敗戦に類似した状況が生まれる。そうなれば、政府は巨額の再建資金を捻出するために、過去の累積債務から解放され、新たな資金を捻出する道を選ばざるを得ない。もっとも蓋然性の高いシナリオは、政府が非常事態を宣言し、債権-債務凍結政策を導入するものである。凍結政策の間に、物価が高騰し、凍結政策が解けた時点で、債権-債務が半分に減るか、三分の一に減る、あるいは完全にチャラになるかして、新たな社会再建の出発点が形成される。政府は債務から解放されるが、同時に国民は各種債権の多くを失う。
 国民が負担を回避した公共サービスを享受し続ければ、いずれまとめてそれを支払う時がくる。ポピュリスト政策で負担を先延ばしすればするほど、大きな事後的支払いが必要になる。この経済原理は政治主導でどうなるものでもない。左派は経済問題が政治で解決できると考え失敗したが、右派のポピュリズムは社会崩壊の危機まで、国民を騙し続けるだけである。

2018.11.05 国内外労働者をモノ扱いするな
―資本の論理を加速する安倍政権―

半澤健市 (元金融機関勤務)

《ゼロ成長と新自由主義の発動》
 1960年から30年間、「高度経済成長」を続けた結果、日本は一時世界第二の経済大国となった。それが1990年を境に高度成長は停滞期に入った。この30年間は、いくらかの誇張を加えれば、ゼロ成長が続いている。「明治維新150年」のシッポ20%の期間は経済成長が止まっているのである。「平成」は、成長が「平」らに「成」って終わる。その理由には諸説ある。日本の成長力自体の喪失。政府・民間の非効率な投資。再分配政策の欠如。などなどだ。

これらの状況に対して資本はどう対応しているか。
それは新自由主義政策の導入である。自由な市場に任せれば、経済資源―ヒト・モノ・カネ―の配分は全てうまく行く。これが、市場原理主義たる新自由主義の核心である。その目的は何か。企業力の全面展開による利潤獲得である。ヒトの扱いにおいては、人件費・社会福祉コストの削減が狙いとなる。これで収益が上がる。資本家である株主への還元―株価上昇と配当金増配―が増加する。

《労働力市場に起こったこと・起こること》
 労働力市場で、具体的には何が起こるのか。
昇給がないから実家から離れられず、結婚できるだけの貯金が出来ず、共働きでも託児所がなくて子供が産めず、といった若者・中年族が続出する。落ちこぼれると、最悪は孤独死に至る。理屈っぽく言うと「規制撤廃の促進」「自由放任の徹底」「公共性の消滅」の実現である。この冷酷な実態には「働き方改革」という美名が与えらている。

一体、労働力市場は売り手(求職側)と買い手(求人側)の力の差が大きい市場である。短期な好況期を除き買い手が圧倒的に強い。
産業資本主義の発展に先んじたイギリスで、労働運動が起こり労働組合が資本家に対抗した。健全な労働力の再生産は資本主義の持続的な発展にも必要である。国家も、対等な労使交渉による労働条件を目指した法制の整備につとめた。いずれにせよ労働者の権利は、長い闘争によって獲得された歴史と伝統をもつ社会の「公共財」として機能してきた。
それも新自由主義の浸透によって分断され弱体化さている。

《経団連の意のままに動く安倍政権にNOを》
 平成時代後半から顕著になった「非正規労働者の増加」、この数年で急速に進んだ「高度プロフェッショナル(残業代ゼロ)制度」、そして現在、政府が拙速・無原則に進めている「入管法の改正」。いずれも買い手側が優位で自由にふるまうシステムである。日本経団連などの大企業の強いニーズに対応した労働政策でありその理念は新自由主義である。興味ある読者は経団連のサイトをご覧になるとよい。外国人労働者をモノとしか見ていない資本の論理がハッキリわかる。それは日本人労働者の賃金抑圧にも寄与するだろう。

現在、世界中でポピュリズム政権、自国第一主義、貿易戦争の勃発が、政治経済を動揺の渦に巻き込んでいる。その最重要な原因の一つは、長年に亘る諸国の外国人移民受容である。不可逆的に定着する深刻な問題である。その環境下で、破綻をみせている新自由主義を、安倍政権は周回遅れで推進しようとしている。これは人間性に背く政策選択だ。

我々になにができるか。国会内外で市民と野党が結集して「アベ政治を許さない」を実現すること。これが困難ではあるが我々に希望を与える目標である。(2018/11/03・文化の日)


2018.10.09  宿望の「憲法改正」へ 新内閣発足  桜田義孝氏初入閣
          韓国通信NO573

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

千葉8区(柏・我孫子)選出の桜田義孝氏が初入閣を果たし、五輪担当相になった。
下記の結果からもわかるように桜田氏は前回の衆院選で二人の野党候補を圧倒した。桜田氏の勝因は選挙直前の希望の党による攪乱だった。民進党から立候補が予定されていた太田候補が希望の党から出馬したため、有権者は戸惑い桜田氏が「漁夫の利」を獲た。
当選 桜田義孝 自民前     100,115票   得票率48.8%  公明推薦
    太田和美 希望の党     71,468票       34.8%
    小野里定良 共産党     33,752票       16.4%
           当日有権者数:411,572人 最終投票率:51.68%
宿望の「憲法改正」へ 新内閣発足  桜田義孝氏初入閣
桜田氏(68)は衆議院当選7回。日本会議のメンバーとして知られ、安倍首相とは「オトモダチ」関係にある。その彼が2016年1月、「従軍慰安婦は売春婦」と持論を述べたため文科副大臣の席を棒に振った。
 正直で空気が読めない彼が更迭されたのは、前年12月、日韓両政府が従軍慰安婦問題で政治決着を図ろうとした直後だったからだ。日韓合意で、日本側は「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明」した。桜田発言にさすがの安倍首相も慌てたはずだ。桜田は発言を撤回し辞任に追い込まれた。
桜田氏(68)は衆議院当選7回。日本会議のメンバーとして知られ、安倍首相とは「オトモダチ」関係にある。その彼が2016年1月、「従軍慰安婦は売春婦」と持論を述べたため文科副大臣の席を棒に振った。
 正直で空気が読めない彼が更迭されたのは、前年12月、日韓両政府が従軍慰安婦問題で政治決着を図ろうとした直後だったからだ。
日韓合意で、日本側は「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明」した。桜田発言にさすがの安倍首相も慌てたはずだ。桜田は発言を撤回し辞任に追い込まれた。

<桜田氏は韓国では有名人>
사쿠라다 요시타가(桜田義孝のハングル表記)で検索すると桜田氏の関連記事がたくさん出てくる。韓国では安倍首相の歴史認識の代弁者のような有名人扱いだ。
 政府間合意直後の桜田発言で、日本側の「本音」が露呈したと韓国側から猛反発が起きたのは当然だった。誠実さを欠き、金銭で解決しようとする日本側の姿勢が浮き彫りになった。今回の入閣は桜田発言の追認である。安倍首相が日韓合意を自ら破棄したことにも等しい。
 「憲法改正」内閣などともてはやされ、早くも改憲ムードが漂い始めた。自衛隊を憲法に明記すれば海外派兵、戦争を買って出ることが可能だ。戦争ができる日本を取り戻すことになる。

新閣僚のお粗末さには驚かされる。政治資金疑惑で閣僚を辞任した人物、自民赤坂亭でご機嫌とりに走った女性議員。わが町選出の五輪担当相もそのひとりだ。安倍内閣の末期症状について期待を込めて語る人もいるが、「やぶれかぶれ」ほど恐ろしいものはない。桜田氏のポスターがうたう「国づくりは人づくり」は、国のための教育を主張した戦前のイデオロギーそのものだ。国家主義者桜田のポスターが溢れる町に住む息苦しさ。次回は落選させるしかない。

<桜田氏は韓国では有名人>
사쿠라다 요시타가(桜田義孝のハングル表記)で検索すると桜田氏の関連記事がたくさん出てくる。韓国では安倍首相の歴史認識の代弁者のような有名人扱いだ。
 政府間合意直後の桜田発言で、日本側の「本音」が露呈したと韓国側から猛反発が起きたのは当然だった。誠実さを欠き、金銭で解決しようとする日本側の姿勢が浮き彫りになった。今回の入閣は桜田発言の追認である。安倍首相が日韓合意を自ら破棄したことにも等しい。
 「憲法改正」内閣などともてはやされ、早くも改憲ムードが漂い始めた。自衛隊を憲法に明記すれば海外派兵、戦争を買って出ることが可能だ。戦争ができる日本を取り戻すことになる。

新閣僚のお粗末さには驚かされる。政治資金疑惑で閣僚を辞任した人物、自民赤坂亭でご機嫌とりに走った女性議員。わが町選出の五輪担当相もそのひとりだ。安倍内閣の末期症状について期待を込めて語る人もいるが、「やぶれかぶれ」ほど恐ろしいものはない。桜田氏のポスターがうたう「国づくりは人づくり」は、国のための教育を主張した戦前のイデオロギーそのものだ。国家主義者桜田のポスターが溢れる町に住む息苦しさ。次回は落選させるしかない。
2018.10.03  玉城デニーさんの当選を心から喜ぶ
          ある友への手紙

「リベラル21」にも何回か書いてくださったジャーナリスト、藤野雅之さんが、沖縄県知事選での玉城デニーさんの当選を祝って、Facebookに一文を投稿しました。藤野さんは共同通信記者として働く一方、40年間、沖縄与那国島に通って援農活動を続けてきた人です。藤野さんだから書いた、心のこもった喜びの一文なので、筆者の同意を得てその全文を転載します。(編集委員会・坂井定雄)

藤野雅之 (ジャーナリスト)

 玉城デニーさんの当選で、沖縄をめぐる今後の展開に希望を持つことができると、今朝は良い気分です。
 昨夜は、Facebookで那覇の玉城事務所から渡瀬夏彦さんが生中継してくれて、見入っていました。朝日新聞と沖縄タイムス、琉球朝日放送も合同でYoutubeで生中継し、これと交互に見ました。朝日は中継が始まった直後の20時1分に「玉城さん、当確」を打ちましたが、なかなかそれに続く2社目が出ず、どうなるのか、最初は気になりました。21時30分少し前に毎日新聞が、続いてNHKが当確を報じると、事務所はわっと歓声が上がって、カチャーシーに沸きました。
 
選挙戦終盤には、佐喜真候補側から玉城さんを中傷するデマ報道がネットやビラを使ってなされ、心配しましたが、佐喜真候補が辺野古基地問題に徹頭徹尾触れなかったことが決定的な敗因だったと思います。しかも「携帯料金を4割値下げする」などという国や県に権限のないことを公約に掲げたりして、そんなことは誰でもウソだとわかる発言でした。
 それに対して、玉城さんは自分の出自と沖縄への思い、さらにそれを県政にどう繋げるかをきちんと語り、その誠実な姿勢が女性をはじめ多くの無党派層の心を打ったと思います。那覇在住の友人の渡瀬さんが首里の近くで朝日を眺めに行く途中で出会う石焼き芋を売っているおばさんが「期日前投票に行ってきたよ。当然、玉城さんと書いたよ。ちゃんと候補者の話を聞けば、どっちが良いかは誰でもわかるよ」と言ってくれたのが嬉しかったと書いていました。
 
  渡瀬さんは援農隊の初期の参加者で、十数年前から那覇に住んで、フリーライターをしています。今回の選挙では、ボランティアで玉城さんの選挙運動に陰で協力してきました。毎日、車を運転しながら、状況をリポートして、愛聴者が多いようです。
昨日は県議会議員の補欠選挙もあり、玉城さんの立候補を裏で支えた山内未子さんが当選しましたが、渡瀬さんは彼女の選挙も支えていました。その山内さんが「いまの沖縄は、政府からの補助金や交付金に頼らないでも経済を維持していける。それだけの力をつけてきている。それなのにいまだに政府に頼ろうとする保守系の人たちはこの考えから抜け出せない。沖縄県民は自立することにもっと自信を持つべきだ」と言っていたというのです。この考えに私は大変感銘を受けました。私が40年間、与那国で援農隊活動をしてきたのも、与那国に自立してほしいと思ってきたからです。

 しかし、当時は与那国の人には、離島で産業もなく人材もなく自立などできないと考える人が多かったのです。ところが、尾辻吉兼町長が出てきて「与那国島自立ビジョン」の活動を始めました。私は彼の考えに共感して協力しましたが、その途上で尾辻町長が急死して、いまの外間守吉町長になりました。その後しばらくして島では自衛隊誘致運動が始まりました。尾辻さんの後継を称して当選した同級の外間町長は最初は自衛隊誘致反対でしたが、次第に彼らに取り込まれることになったのです。

  自衛隊に頼るということは、自立を諦めることにつながりかねないと思います。そして、基地を強制する国に頼ることで、補助金と引き換えに国の言いなりになり、自立心を失っていく。こうして次第に沖縄人としての自尊心をも失ってしまうことになりかねないのです。国の言いなりになって、どうして自尊心を維持できるでしょうか。人間は生きていくのに誇りが必要です。故郷を売り渡して国に頼るのではなく、自分たちの力で故郷を守り、自立することこそ自尊心を育てるのです。基地が沖縄経済に占めるのは5%以下です。沖縄は経済的に見てもすでに自立を始めています。
 
国は沖縄人に自尊心を捨てさせて、沖縄を本土に都合の良いように利用しようとしているのです。しかもそれを永続化しようとしています。そんな政策に自ら寄り添っていく保守派のやり方に、どうして賛成できるでしょうか。このことに沖縄県民が気付き始め、それが今回の玉城さん当選につながったのではないかと私は思っています。これをさらに伸ばしていって、本当の沖縄の自立につなげてほしいと願っています。
2018.09.26  9条改憲反対署名の締め切り迫る
  安倍発言で危機感高まり、署名達成呼びかけ
 
岩垂 弘(ジャーナリスト)

 護憲派の市民、団体が目指す「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」の第4次締め切りの9月30日が迫った。20日に行われた自民党総裁選で9条改憲を悲願とする安倍晋三首相(党総裁)が3選され、選出後の記者会見で「自民党の改憲案を国会に提出したい」と決意を述べたことから、署名関係者は一層危機感を高め、「なんとしても早急に目標の3000万筆を達成しよう」と呼びかけている。

 署名を呼びかけているのは「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」である。
 これは、昨年8月31日に、有馬頼底(臨済宗相国寺派管長)、内田樹(神戸女学院大学名誉教授)、梅原猛(哲学者)、落合恵子(作家)、鎌田慧(ルポライター)、鎌田實(諏訪中央病院名誉院長)、香山リカ(精神科医)、佐高信(ジャーナリスト)、澤地久枝(作家)、杉原泰雄(一橋大学名誉教授)、瀬戸内寂聴(作家)、田中優子(法政大学教授)、田原総一朗(ジャーナリスト)、暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)、なかにし礼(作家・作詞家)、浜矩子(同志社大学教授)、樋口陽一(東北大学・東京大学名誉教授)、益川敏英(京都大学名誉教授)、森村誠一(作家)の19氏を発起人として生まれた新しい護憲組織で、既存の護憲団体が大同団結したものだった。
 
 19氏や「九条の会」などの護憲団体に新しい護憲組織の結成をうながしたのは、安倍首の発言だ。すなわち、安倍首相は昨年5月3日の憲法記念日の読売新聞紙上で、憲法改定を実現し、2020年の施行を目指す方針を表明、その中で、戦争放棄などを定めた現行の9条の1項と2項を残し、自衛隊の存在を明記する意向を示した。このため、「安倍政権がいよいよ9条改憲に乗り出してきた」との危機感が護憲派の間に広がり、護憲派を「安倍政権の攻勢に対抗するためには運動の幅をもっと拡大しなくては」という方向に向かわせたのだった。
 
安倍9条改憲NO!全国市民アクションによれば、今年4月16日現在で、アクションの呼びかけ人・賛同人は855人、実行委員会・賛同団体・協賛団体は93にのぼるという。

 同アクションは昨年9月から「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」を始めたが、目標は3000万筆。これは、かなり高い目標だ。戦後の日本ではこれまでさまざまな署名運動が行われたが、3000万筆を超えたのは2つしかない。1950年代に行われた原水爆禁止署名(3200万筆)と、1980年代に行われた、国連に核兵器完全禁止と軍縮を要請する署名運動(8000万筆)だ。

 同アクションによれば、「全国統一署名」は、今年5月3日で1350万筆に達した。来る9月末に第4次集約が予定されており、そこで新しい到達署名数が発表される。
 さる17日に東京・代々木公園で開かれた「さようなら原発全国集会」で登壇した「戦争させない9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の福山真劫・共同代表は、会場を埋めた参加者に「安倍政権の暴走をストップさせるさせるために3000万全国統一署名に全力で取り組もう」と呼びかけた。

 安倍9条改憲NO!全国市民アクションの連絡先は次の通り。
東京都千代田区猿楽町1-2-3 錦華堂ビル4A
電話03-5280-7157
2018.09.25 私たちの未来は……辺野古隠しに騙されてはならない
宮里政充 (もと高校教員)

9月16日、安室奈美恵さんの25年間に及ぶ歌手活動は終わりを告げた。「ネバーエンド、ネバーエンド 私たちの未来は…」と口ずさむぐらいしかできない老人の私ではあるが、彼女のこれまでの生きざまや音楽活動に心から拍手を送りたい。ありがとう、お疲れさまでした。新しい未来へ向かって羽ばたいてください!

ところで、沖縄県知事選に目を向けてみると、先だっての名護市長選挙同様、辺野古移設問題を棚上げするイデオロギーが強く働いていることがわかる。だが、かりに佐喜真淳候補が知事となった場合、棚上げしていた辺野古移設の作業が一挙に本格化することは目に見えている。つまり渡具知武豊名護市長も佐喜真候補も、沖縄だけが米軍基地の過重な負担を半永久的に背負わされるという理不尽な状況に向き合おうとせず、選挙戦を有利に運ぶ手段として辺野古隠しを企んでいるのである。姑息なやり方だ。

日本政府はこれまで日米地位協定改定のために動いたためしがない。まして沖縄にある米軍基地を本土へ移すなど日本政府にとって思いもよらないことだ。なぜ沖縄に米軍基地が集中しなければならないかについて、当時民主党政権の防衛大臣であった森本敏氏は2012年12月25日の閣議後の記者会見で「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適の地域だ」と述べた。また自民党政権の久間章生元防衛大臣は「辺野古でも普天間でもそういう所に基地がいるのか、いらないのか」と必要性を疑問視した」(琉球新報2018.2・1)。そして、さらに最近では石破元防衛大臣が、自身の公式サイトで、沖縄に米軍基地が集中している理由について「(本土の)反基地闘争を恐れた日本とアメリカが、沖縄に多くの海兵隊を移したからだ」と説明した。

今年の2月20日、翁長知事は来県中の参院外交防衛委員会の委員らと県庁で意見交換した際、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設について委員会理事の塚田一郎氏(自民)が意義を強調したのに対して、「元閣僚らの発言を引用して『軍事的に必要だというより政治的に沖縄に置くしかないと話されている。こういった理由で沖縄に置くということをぜひもう一度見直してほしい』と再考を求め、さらに、「秋田県なら十和田湖を、宮城県なら松島を、滋賀県なら琵琶湖を埋めて抑止力のための基地を造ることが、地域の国会議員が日本の安全のためだとやり切れるのか疑問だ」と指摘した(2月21日琉球新報)。だが、これに対し委員からは、「辺野古移設が実現すれば航路が海上となり、安全性が確保、騒音も大幅に軽減される」という以上の回答は得られなかった。

沖縄に対する構造的差別とはこういうことを指すのである。沖縄県民の意思を無視し続け、一方的に米軍基地を押し付けてきた日本政府に対して、沖縄県民の長たる知事が「辺野古に新しい基地は作らせない」と主張することはごくごく当たり前のことではないか。
沖縄知事選挙は終盤戦に入っており、共同通信社の世論調査によれば、与野党が激しく競り合っているという。私は、沖縄県民が米軍基地頼みの、つまり「米軍基地ネバーエンド」の未来ではなく、ウチナーンチュとしてのアイデンティティーを大切にし、経済的にも「自立する沖縄」の未来を選択してほしいと心から願っている。(2018.09.24)
2018.08.15 猛暑続きでも秋風は着実に吹いてくる
安倍政権による酷暑(異常気象)は台風一過でやがて消滅するだろう

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

 京都は灼熱の地だ。一名、「釜地獄」ともいわれる。私が京都に来たのは1950年代の後半、いまから60年も前のことだ。だが、今年の夏ほど「暑い=熱い」と思った年はない。とにかく「死ぬほど暑い」と言いたいぐらいの連日の猛暑なのだ。どこかへ逃げ出して何とか難を逃れたいと思うものの、そんな条件がないので蟄居せざるを得ない。こんなじりじりした気持ちを抱えながらこの1カ月を過ごしてきた。

 安倍政権に対しても同様だ。だが、こちらの方はもっと長期に亘る「酷暑=異常気象」なので我慢がならない。もはや我慢の限界を超えているというべきだ。2012年暮れの第2次安倍内閣の発足以来、国民に対しては踏んだり蹴ったりの政治を続けながら、それでいて安倍1強体制に胡坐をかいて権力の座に居座っているのだから、心ある国民が怒り心頭状態にあることは間違いないのである。

 そんな最中、この9月には自民党総裁選挙が行われる。安倍首相に対決する政治路線を何一つ掲げられない有力者たち(腑抜けども)が次々と脱落し、文字通りの「安倍1強選挙」になった総裁選に対してはいまさら何の興味も湧かない。しかし、その背後で進行している国民の政治意識の変化には注目すべきものがある―と思う。その一端を垣間見てみよう。

 私が注目したのは、8月6日の毎日新聞の紙面だ、平成最悪の土砂災害と浸水被害をもたらした西日本豪雨は、最初の大雨当別警報が発表されてから8月6日で1カ月を迎えた。この日の毎日新聞の1面トップは、「1カ月 消えぬ爪痕、西日本豪雨 3600人避難続く」というもの。死者221人、行方不明者11人に達し、3600人が避難所生活を続ける一方、11府県でいまだ2万3000人に対して避難指示が続いているという。それでいていっこうに復旧復興が進まず、多くの被災者が明日が見えない不安に怯えている。同様のニュースがテレビでも連日報道されているところをみると、言いようのない不安感と閉塞感が国民の間に広がっていることがわかる。

 偶然かどうか知らないが、この日は月曜日とあって山田孝男氏(特別編集委員)のコラム『風知草』が2面に掲載されていた。タイトルは「誰と映りたい?」というもので、ポスト自民党総裁選の空気を分析したものだ。「竹下派が石破茂支持へ傾いて話題――とはいえ、安倍晋三自民党総裁3選の大勢は変わらない。だが、来夏の参院選の自民党候補は別の風景を見ているようだ。永田町では盤石の安倍首相だが、ちまたの反発は根強い」とある。

山田氏と言えば、同コラムで日本記者クラブ賞を受けた著名なジャーナリストだが、安倍首相の酒席にも招待される「安倍トモ」としてもよく知られている。事実、これまでの同氏のコラムには「安倍批判を批判する」内容が多く、とかく評価の分かれる人物なのである。日本記者クラブがどういう理由で賞を贈ったのか知らないが、そんな人物が自民党総裁選後の政治風景の変わり模様を描いたのだから、多少興味を引かれた―というわけだ。

コラムの主たる内容は、参院選を控えた自民党候補が安倍首相とのツーショット写真を撮りたくないというものである。インタビューに応じた自民党参院選候補の語る理由がまた面白い。「(地元では)安倍さんがいいっていう人は少数派。市議や町議から『安倍さん(支持)のままで行ったら、あんた、自分の選挙に負けるぞ』って言われる(笑い)」「やはり森友、加計。どうみてもウソの答弁。やり過ぎじゃないかっていう人が多い。外交への評価はあるんですけどね」。

山田氏はこの状況の背後を次のように分析する。
「内閣支持率は30~40%台で底堅い反面、多くの調査でそれを上回る不支持がある。この傾向は、今年3月、財務官僚による公文書改ざん問題が暴かれて以来,変わっていない」
「森友、加計をめぐる折々の首相答弁について『納得できぬ』『信用できぬ』と答えた人は、多くの調査で7割を超える」
「森友、加計は汚職でない。首相も役人もカネはもらっていない。だが、だから小事とは言えない。1年半にもわたって政治問題であり続けること自体が政治史上の事件に違いない。不満の底流が表出するか、なおくすぶるか」

「森友、加計問題はカネをもらっていないので汚職ではない」という部分は、政治責任を回避する首相答弁のそのままの引き写しだが、それでもモリカケ問題が「1年半にもわたって政治問題であり続けること自体が政治史上の事件に違いない」との山田氏の指摘は重要だろう。そこには、安倍トモですら指摘せざるを得ない安倍政権の本質(弱点)が暴露されているからだ。

「信なくば立たず」という言葉は、安倍首相がしばしば引用する座右の銘だ。安倍首相ならずとも政治家であれば、誰もがこの言葉の重みを知っている。モリカケ問題がまさにこの言葉の試金石であるからこそ、世論は真実を追求し、真相の解明を求めてきたのである。だが、森友問題に関しては肝心かなめの財務官僚は訴追されず、真相の解明は迷宮入りとなっている。加えて、加計問題については「あったことがなかった」「言ったことがウソだった」との当事者の出まかせ発言がまかり通る始末だ。これでは「信なくば立たず」どころの話ではない。まさに「無理が通れば道理が引っ込む」状況が大手を振って歩いているのである。

モリカケ問題に関しては、大方の国民は納得していないし、いつまで経っても忘れることはない。モリカケ問題は、安倍政権の喉元深く突き刺さった骨なのであり、この問題の真相が解明されない限り、永遠に安倍政権の宿痾(しゅくあ)としてあり続ける政治問題なのだ。そして、そのときどきの政権の不始末や不祥事がこの宿痾(モリカケ問題)と結びついて政権批判として浮上し、安倍政権の岩盤を掘り崩していくという政治情勢がこれから繰り返しあらわれることになるのである。

すでにいっこうに目途が立たない西日本豪雨対策への不満は、安倍政権そのものへの明確な批判として浮上している。それは「赤坂自民亭」といった些末な事態に端を発しているのではない。「信なくば立たず」という、安倍政権の本質にかかわる深刻な事態と結合して浮上しているのである。それは、被災地へのその時々の慰問など、安倍首相の小手先のパフォーマンスでごまかせるような問題ではないのである。

また、杉田議員の性的マイノリティ侮辱発言は、今後、若者世代が安倍政権への見方を変える大きな引き金となるだろう。麻生財務相は「新聞を読まない若者は(みんな)自民党支持だ」などと訳のわからないことを言ったが、私から言えば、この発言は若者全体に対する愚民発言そのものだ。しかし、今度の杉田発言に対する批判がインターネットを通して広まったことを思えば、新聞を読まない若者でも人格を傷つける発言に対しては敏感に反応することがわかる。事実、自民党本部に抗議するために集まった集団はほとんど若者たちだった。

5年余にわたる安倍政権支配は余りにも長い。安倍政権による国民生活への影響がこの間の「異常気象」ともいうべき酷暑となり、猛暑となって国民を苦しめてきた。その深刻な後遺症が次から次へと顕在化しているいま、国民世論は恐ろしい勢いで変化しつつあるのではないか。安倍政権への〝飽き〟と〝疲れ〟が国民世論の中に色濃く漂い始め、「アベチャンの顔を見たくない」人たちが急速に増えているのである。自民党が総裁選などコップの中の嵐にうつつを抜かしている暇があるのであれば、その背後に広がる国民世論の動向にもう少し怖れを抱くべきなのだ。

2018.08.13 翁長沖縄県知事の死去に伴う二つの問題
――辺野古埋め立ての承認撤回と知事選

宮里政充(もと高校教師)

埋め立て承認撤回――翁長知事の遺志は受け継がれる
8月8日午後6時43分、沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が膵癌のため、浦添市の病院で死去した。67歳だった。

翁長知事は、死去の直前の7月27日午前、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事が2013年12月に決めた「辺野古埋め立て承認」を撤回すると表明していた。
次は同日に発行された沖縄タイムスの号外「承認撤回表明」の記事である。

「名護市辺野古の新基地建設を巡り、翁長雄志知事は27日午前、前知事の埋め立て承認を撤回する意向を示し、事業者の沖縄防衛局の意見を聞き取る『聴聞』を終えれば、防衛局が8月17日を目安に予定する埋め立て土砂の投入の前に承認を撤回する見通し。
土砂の投入という重大局面に差し掛かる前に知事の最大権限である承認撤回に踏み切り、工事を停止させる。沖縄防衛局が撤回を無効化する法的な対抗策を打ち出してくるのは必至で、県と国の争いは再び法廷の場へと移る。
27日午前10時半から県庁で会見した翁長知事は『さまざまな観点から国の工事内容を確認し、沖縄防衛局の留意事項違反や処分要件の事後的不充足などが認められた。公有水面埋め立て承認の効力を存続させることは、公益に適合し得ない』と述べ、撤回に向けた聴聞開始の理由を説明。
撤回の理由について、承認の条件となった留意事項に盛り込まれた県と国の環境保全策などの事前協議が行われていないことや、大浦湾側の軟弱地盤や活断層の存在、新基地が米国防総省の航空機の制限に抵触していることなどを挙げた」

翁長知事の埋め立て承認「取り消し」は2016年12月、最高裁によって違法だと見なされ、県側の敗訴が確定した経緯がある。「撤回」は埋め立て承認を無効にする力を持っているから、国側は総力を挙げて対抗策を練ってくるだろう。案の定、防衛局は沖縄県が通知した8月9日の「聴聞」の期日を9月3日以降に変更するよう求めてきた(沖縄タイムス 8月4日電子版)。準備期間が短すぎるという理由であるが、仮に9月3日以降に延期した場合、防衛局が以前から計画している8月17日の土砂投入はすでに終わっていることになる。つまり、防衛局は何としても撤回前に土砂投入を済ませたいのである。

しかし、翁長知事死去に伴う職務代理者である謝花喜一郎副知事は8日夜、予定通り9日に聴聞を行う考えを明らかにし、沖縄県は9日午後2時から県庁内で「聴聞」を行った。
防衛局側は中嶋浩一郎局長らが出席し、予定されていた午後4時を20分ほど過ぎて聴聞が終了した。防衛局側は撤回通知に対する弁明を述べた上で、改めて弁明の機会を設けるよう求めたが、県辺野古対策課は報道陣に対し、「今日で聴聞が終了したと理解している」との考えを示した。職務代理者による撤回の決断がいつになるか、が次の焦点である。
読売新聞は政府に次のような意向があることを報じていて興味深い。「政府は、翁長氏の死去を受け、土砂投入の延期を検討している。死去に乗じて埋め立て工事を進めていると見られれば、『移設反対派の怒りを買い、静かな環境での選挙戦にならなくなる』(自民党幹部)ためだ」(8月8日朝刊)

知事選挙――争点ぼかしは通用するか?
「沖縄に新しい米軍基地を作らせない」という翁長知事の政策を支えてきた人たちは今、深い悲しみと動揺に包まれている。
翁長知事の死去により、11月18日に投開票が予定されていた知事選は9月に前倒しされることになるが、自民党は7月下旬に、現宜野湾市市長の佐喜真淳(さきま・あつし)氏を翁長知事の対立候補として立てたばかりだ。翁長市長を失った基地反対派は「オール沖縄」を軸に、急遽、翁長知事の後継者を絞らなければならない。翁長知事以外の候補者を想定していなかった「オール沖縄」は感傷に浸っている時間はないのである。
琉球新報は10日の朝刊で、現在候補者として噂に上っている人々の名前を挙げている。

○金秀グループの呉屋守将氏(69)、「オール沖縄」体制の構築にも貢献した
○現職の那覇市長、城間幹子氏(67)
○前名護市長、稲嶺進氏(73)
○参院議員、糸数慶子氏(70)
○参院議員、元宜野湾市長、伊波洋一氏(66)
○現副知事、謝花喜一郎氏(61)

ただ、本格的な検討は13日の知事告別式が終わってからということになる。「オール沖縄」としては、これまで市町村議会議員選挙で惨敗してきているので、候補者選びは慎重にならざるを得ない。特に、政党色・革新色の強い候補者は避けなければならないだろう。「イデオロギーよりアイデンティティー」で県民を束ねてきた翁長知事の路線をしっかり守ることが勝利の必須条件だろう。
今回の知事選については県政与党・野党に戸惑いがある。「翁長知事のかわりは翁長知事以外にはいない」という姿勢で知事選に臨んできた与党が候補者の人選に迷うのは無理からぬことである。野党としては名護市長選挙をはじめとして連勝を重ねてきたが、今回は翁長知事の「弔い合戦」になる可能性が十分にある。朝日新聞は自民党の戸惑いを次のように伝えている。

「知事選は移設計画反対の旗振りだった翁長氏の『弔い合戦』の色合いが濃くなる可能性があり、官邸幹部は『無党派層を含めて票の流れが読めない』とみる。普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で予定している土砂投入のタイミングを見直すかどうかを含めて、改めて検討するという」(8月8日朝刊)

基地問題を棚上げし、争点をぼかして何とか勝ってきたその場しのぎの手法が果たして今回も通用するだろうか? 特に、野党候補の佐喜真淳氏は普天間基地を抱えている宜野湾市の市長であり、その彼が普天間基地の移設先である辺野古をかかえる渡具知武豊(とぐち・たけとよ)名護市長と何ら連絡を取り合わずに選挙戦を闘えるであろうか。私はむしろ、佐喜真氏と渡具知氏が手を取り合って、戦後73年間の沖縄の現実に真正面から向き合って闘うことを心から願っている。
辺野古移設についての賛否を問う県民投票の準備も進められている。沖縄の現実に向き合わない生き方などありうるはずがないのだ。今度の選挙が、普天間基地返還・辺野古移設容認か否かを選択する歴史的な選挙とならなければならない。そのことは「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返す政府に対して、「本当にそうなのか? それで政府の責任は果たせているのか?」と問い続けることでもあるのだ。
最後に、佐藤優氏の次の文章に賛同の意を表したい。

「日本における沖縄に対する構造的差別は国家機構のすべてにいきわたっている。裁判所も日本の陸地面積の0.6%を占めるに過ぎない沖縄県に在日米軍専用施設の約70%が所在するという不平等な状況を是正しようとはしないであろう。それであっても、「あの人たち」すなわち日本によって設定されたゲームのルールのなかで、構造的差別の脱構築とともに東アジアで平和を求める流れに沖縄を組み込もうと翁長氏は必死になっている。健康状態を考えた場合、翁長氏は、沖縄のために文字通り命を差し出すつもりだ。筆者も東京に住む一人の沖縄人として、翁長氏のような指導者がいることを誇りに思う。」(東京新聞2018.8.3「本音のコラム」)
(2018.8.10記す)