2018.02.19  名護とオリンピックと憲法
     韓国通信NO548

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

護へ 私は「ふるさと納税」
 ふるさと納税は過疎と税収不足にあえぐ「ふるさと」を応援する目的から始まった(2008年4月~)。寄付のお礼に各自治体から地元特産品などがもらえるので話題になった。
2千円を自己負担すれば実質的な負担がないのでふるさと納税をする人が多い。寄付をして儲ける「せこい」発想も見える。
 名護市へふるさと納税をしてから4年になる。毎回送られてくるのは礼状と領収書だけ。それでも名護へ寄付をする人は多いようで、「2015年度の寄付(16年3月7日現在)は約2億5778万円(1188件)で14年度より金額が約12倍、件数も約2倍に増えた(2016/3/1付 琉球新報)」。名護市のホームページには寄付した人の名前と金額が「応援メッセージ」とともに掲載される。

<ふるさと納税に希望を託す>
 稲嶺氏の敗北を待っていたとばかりに、これまでストップしていた巨額の「基地再編交付金」が政府から交付される。安倍首相は「本当に良かった。名護市民に感謝し、責任を持って応援する」と稲嶺落選に喜びを隠さない。腹立たしい限りだ。確定申告を書きながら空しさがつのる。
 それでも、「ふるさと納税」を続けるつもりだ。少し複雑な気持ちだが、寄付はもともと市長個人のためではなく辺野古基地に反対する名護市民への応援だった。今年の応援メッセージに「基地に反対する名護市民ガンバレ!」と書くつもりだ。
法を変える
 憲法改悪が年内にも国会で発議され、国民投票が行われそうな気配が濃厚だ。何を変えようとしているのかはっきりしないが、焦点として自衛隊と憲法9条の問題が大きく浮上してきた。自民党の最終目標が2012年の「憲法草案」だというのはいうまでもないが、戦争法(安保法制)との整合性を持たせるための9条改廃が焦眉となった。
何故9条を変えることが現実味を帯びだしたのか。
 「アメリカは北朝鮮の核とミサイルから日本を守ってくれる。アメリカと一緒に日本が戦うのは当然だ。国を守る自衛隊が憲法違反なのはおかしい」という雰囲気の中で議論をしたら世論は9条変更に傾きそうな気配だ。既にマスコミの論調はその方向で進んでいる。モヤモヤした気分で北朝鮮の「脅威」に踊らされたら9条も危うい。
 平昌オリンピックをきっかけに南北対話が進もうとしている。対話には過去幾度となく裏切られてきた韓国だが少しでも希望があれば期待するのは当然だ。「文在寅大統領は北に乗せられている」と韓国の右翼が騒いでいる。日本政府も対話の「自制」を求めるなど極めて冷ややかである。わが国のマスコミも同じ論調に見える。朝鮮半島の分断の歴史と統一への思いを知らなすぎる。まさか南北が仲良くなっては不都合というわけでもないだろうに。
 戦争をするなら9条は変えたほうがいい。平和を望むなら9条を変えるべきではない。オリンピックのテーマは「平和」。政治家たちの思惑とは別にアジアの「火薬庫」に世界の平和の目が注がれ、トランプも安倍も「ちょっかい」を出しにくくなった。これまで自衛のための戦力は合憲と主張してきた自民党が今頃になって自衛隊は「憲法違反」だから憲法を変えるというのは「へ理屈」だ。

2018.02.17  中国とどう向きあうか――護憲勢力の落し穴
          ――八ヶ岳山麓から(250)――

阿部治平 (もと高校教師)

日本はこのままでは改憲に進む。
世論調査のたび、安倍政権のもとでの改憲に反対というひとは多数を占めるが、護憲世論は決して安定した多数ではない。先の総選挙では集団的自衛権に反対する衆議院議員は5分の1になったし、名護市長選では負けるし……。
改憲の焦点は、対外戦争を予定した自衛隊を憲法に明記するか否かだから、東アジアに緊張状態があるかないかで世論の動向はガラリと変わる。緊張の焦点は金正恩氏とトランプ氏だが、これは誰もがわかっていることだから、ひとまずおいておく。
以下中国の東アジアにおける軍事的プレゼンスについて、既述の内容も含めて私の見方を述べる。

中国はかつて新安保法制が審議されているさなか、尖閣で軍事挑発を続けた。これが安倍政権への熱い支援になったことは間違いない。北朝鮮の核・ミサイル問題があるから、今日明日だというのではないが、今後改憲論争のさなかに尖閣で大きな軍事行動に出る可能性は否定できない。
1月には中国潜水艦が尖閣諸島の接続水域を潜没航行するという事件があった。これへの日本政府の抗議には、中国の領海を中国の潜水艦が航行して何が悪いかと返答した(この航行は、習政権の日本接近が中国側の弱腰と受止められぬようにとの、習近平主席じきじきの指示だったという観測がある)。
ところが同じ1月23日環球時報は、日中両国が良きパートナーになるためには尖閣諸島での軍事的緊張を回避すべしとの社説を掲げた。言行不一致などまったく気にしないのである。
環球時報社説はつづけて、「今日、中国のGDPはすでに日本の3倍近くになり、両国間の実力比は歴史的に逆転した。日本は中国の台頭を真剣に受け入れるべきであり、中国は19世紀以来、長らく日本に圧迫され侮辱されてきた民族感情を調整する必要がある」という。日本は二流国家に転落した現実を認識して、中国に逆らうな、ということである。
これが中国がいう「中華民族の復興」である。これでは日本護憲派の「核心的利益」など歯牙にもかけないことは確実だ。

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2018.02.15  名護市長選挙―「選挙結果がすべて」ではない

宮里政充 (元高校教師)

政権与党によるあからさまな利益誘導型の選挙だった
2月4日に行われた沖縄県名護市長選挙は、事実上、辺野古への米軍普天間飛行場移設を推進する安倍政権とそれに反対する翁長雄志沖縄県知事による代理戦争であった。だから菅義偉官房長官を中心として政権与党はなりふりかまわぬ選挙戦に出たのである。
昨年12月には菅官房長官自らが沖縄入りして渡具知武豊候補とその支持者らと会い、総事業費1000億円の「名護東道路」(8.4キロメートル)の未完成区間(2.6キロメートル)を前倒しして1年半で完成させることを約束、さらに道路の延伸調査を関係省庁に指示したことを明らかにした。
また、全国土地改良事業体連合会の会長である二階俊博幹事長は今年の2月4日に沖縄入りし、土地改良事業の関係者にわたりをつけた。1000票以上の票が渡具知候補に流れると踏んだのである。

このような利益誘導は4年前の同市長選挙の際、当時の石破茂幹事長が500億円の地元振興基金構想をぶち上げ、地元有権者の反発を買って、稲嶺氏に約4000票の差をつけられた。今回菅官房長官も二階幹事長も、その失敗を繰り返さないように注意を払いながら、ぎりぎりの手法を用いたものと思われる。
この2人のほかに、100人にも及ぶ与党国会議員を沖縄入りさせ、建設、運送、自動車整備などそれぞれが得意とする業界を回って渡具知支持を呼び掛けたという情報もある。
それとは別に、小泉進次郎、三原じゅん子、小渕優子ら人気のある国会議員を現地に送って応援させたのも功を奏した。彼らは盛んに期日前投票を訴えたが、その作戦が選挙民を渡具知支持へ傾斜させていったようである。
これらの結果、2期にわたって移設反対を守り通してきた現職稲嶺進氏は移設賛成の新人候補渡具知武豊氏に破れることとなった。渡具知氏20389票、稲嶺氏16931票の得票で、その差は3458票だった。投票率は76.92%。

稲嶺氏退任式
2月7日、市役所で稲嶺氏の退任式が行われた。市役所には2期8年の最後を見届けようと400人を超える市民が駆け付けた。琉球新報によれば、稲嶺氏は「20年にわたり、国策の下で市民は翻弄されてきた。なぜ、こんなに小さな町で国策の判断を市民が求められるのか。いつまで続くんだろうと思うと心が痛い」と時折、言葉を詰まらせながら苦悩の日々を語った。市民は涙で目を真っ赤にし、稲嶺さんに「ありがとう。ごくろうさま」と声を掛けた。花道の最後には市民による胴上げも行われ、稲嶺さんは4度、高らかに空を舞い、笑顔で市役所を後にした。

渡具知新市長初登庁
渡具知武豊新市長は8日に初登庁し、記者団の質問に対し、「『ずっと尾を引いてる。どういった努力をすれば(移設容認派と反対派の)分断がなくなるのか私の考えを丁寧に説明していくことが必要だと思う』とだけ述べた」(2.8琉球新報)

さて、新しい市長となって、辺野古新基地建設反対運動は下火になったのか。もちろん否である。9日午前、キャンプ・シュワブの護岸ではクレーンが砕石を投入する作業が行われたが、ゲート前やカヌーによる抗議行動は続いている。

移設容認派の勝因―票の流れ
今回の選挙では菅官房長官のテコ入れはすさまじかった。前回選挙と違って今回は公明党の全面的な協力を取り付け、さらに維新の下地幹郎衆議院議員をうまく抱き込んで万全の態勢を敷いた。公明票が2000から2500、下地氏の票が約1500とされているから、得票差の3458票とも計算が合う。

もう一つの勝因は、立憲民主党が「推薦」ではなく「支持」にまわったことである。かつて民主党政権の時鳩山由紀夫総理大臣が「最低でも県外」と宣言して名護市民や沖縄県民を大いに喜ばせておきながら挫折したトラウマは大きく、民主党が野に下った後も代表の岡田克也氏は「米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設について、沖縄県のみなさんが反対するのはわかる。我々としては、対案がない状況で無責任に『辺野古反対』とは言えない。与党時代に国内で様々な案を検討したが、移設先は見つからなかった。対案を見つけるとしたら、政府しかできない」(2015.10.23朝日新聞)と語っていた。これは自分たちの政権で実現できなかったものを現政権に求めるという、極めて無責任な発言であるが、現在野党第一党である立憲民主党も同じようなスタンスをとっているのであろう。辺野古移設の問題に深入りしたくないということか。たとえば、枝野代表が名護市へ何度も足を運び、稲嶺候補を応援していたら、稲嶺氏の得票にかなりいい影響を与えたはずだと私は考える。そして名護市長選への積極的なかかわりが立憲民主党を活性化させるきっかけになったのではあるまいか。辻元清美国対委員長が2月3日に名護入りしたが、同じ日に自民党の小泉進次郎氏は2度目の名護入りをし、2000人もの市民を熱狂させたのである。とても太刀打ちできるものではない。

3つ目の勝因は、渡具知候補が辺野古移設の「争点ぼかし」を徹底させたことである。この作戦はもちろん、基本的には平和主義の立場から辺野古移設反対の姿勢を保っている地元公明党をおもんぱかってのことであろうと思うが、この「争点ぼかし」は「反対」や「分断」に疲れている名護市民に、一つの可能性に向けての選択肢を与えることになったと思われる。事実、選挙期間中も埋め立て作業は行われていたし、市長や知事がいくら頑張っても移設を止めることはできない現実が目の前にある。2010年以来稲嶺市長が拒否してきた国からの「再編交付金」を受け取って市を活性化させた方がいいのではないかと市民が思い始めても不思議ではない。経済政策優先を掲げた渡具知候補の方により説得力があったということだ。

国は札束で頬をたたく
政府は金をばらまいた。たとえば、抗議船に立ち向かう警戒船の日当5万円がそうだ。もうひとつは、政府による交付金。2015年10月、インフラ整備や住民補償を条件に辺野古移設を容認している辺野古・豊原・久志の3区には名護市長の頭越しに地元振興費(1区当たり1300万円、計3900万円)を直接交付している。三つ目。2014年5月、沖縄防衛局は海域の埋め立てに伴う漁業補償金として名護漁業協同組合に約36億円(組合員1人当たり約2000万円)を支払う契約を結んだ。辺野古移設に反対しなければ金が手に入るというわけだ。

最後にもう一つ。これは金に絡むことではないが、市長選の前に、米軍機の相次ぐトラブルがあり、松本文明内閣副大臣が国会審議中に「それで何人死んだんだ」とヤジを飛ばして問題になった。菅官房長官も安倍総理も名護市長選への影響を考え、翌日には松本氏を辞職させた。この有無を言わせぬ素早い対応がなければ、渡具知候補の勝利はあり得なかったに違いない。名護市長選に臨む政府の緊張感は尋常ではなかったのである。

確かに選挙には勝ったが
このようにして辺野古移設容認派は選挙に勝利した。政府は渡具知氏が勝利した名護市政に対して2010年以来実施してこなかった「再編交付金」を2017年度から再開する方針である。「再編交付金」は米軍再編に伴って新たに基地を受け入れる自治体に交付されるものである。(稲嶺市政で拒否してきた交付金の総額は約135億円に上る)その結果、名護市は財政的に潤い、渡具知氏が公約した経済政策は進展していくだろう。
2月8日の記者会見で「名護市長選の結果は辺野古移設容認ではないのではないか」という記者の質問に対して菅官房長官は「選挙の結果がすべてだ」と答えた。だが、移設問題、ひいては沖縄の米軍基地問題はそうはいかない。名護市も沖縄県も政府が「選挙の結果」ですべてを仕切ろうとすれば、今度は別の「選挙結果」を招くことになるのである。渡具知新市長は選挙期間中徹底して辺野古移設問題を避けた。「白紙委任状ではない」と東京新聞(2018.2.5夕)は指摘したが、そのとおりだ。今後、渡具知新市長の政策運営によっては公明党との間に齟齬をきたすこともありうる。米軍機のトラブルは選挙後も発生している。

過去5度の名護市長選挙結果は辺野古移設容認派が3勝、反対派が2勝と拮抗している。辺野古移設問題に限らず、戦後70年もの間沖縄に米軍基地の負担を押し付け、今後もその状況が変わらない限り、名護市民も沖縄県民も米軍基地反対の姿勢を崩すことはあり得ないのである。
本当に辺野古移設が「唯一の解決策」なのかという基本的な問題や、9月に行われる知事選への影響については別稿に譲りたい。(2018.02.12)
2018.02.14  河野外相談話を撤回し、核兵器持ち込み拒否の再確認を(下)

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

このような全面核戦争から局地的な核使用まで、核攻撃を選べる核戦略は50年代から70年代まで盛んだった。冷戦下、ソ連を核攻撃できる戦略核兵器と、朝鮮半島や中国はじめ、世界どこででも使用できる、射程が短く,核弾頭規模が小さい戦術核兵器の区別があった。米国は沖縄に中国を核攻撃するためのメースBミサイルなどを配備し、嘉手納基地の巨大な弾薬庫などに1,300発もの核弾頭、核爆弾を貯蔵していた。グアムからB52戦略爆撃機が飛来し、中国、ソ連方面への戦略パトロール飛行も行っていた疑いが濃かった。沖縄への核兵器持ち込みは、沖縄返還協定で否定されたが、有事持ち込みの密約が残った。
今回の『核態勢の見直し』では、規模の小さい核兵器の生産・保有・配置の方針が明記された。ロシアと中国を仮想的として、両国の核戦力増強を強調した。中国を限定核攻撃する攻撃機、潜水艦と水上艦艇が沖縄の米軍基地を拠点とし、沖縄に貯蔵する核弾頭を装着する態勢づくりが、『核態勢の見直し』の背後ですでに着手されているかもしれない。
今回の『核態勢の見直し』から、沖縄に限らず、原子力潜水艦が配備されている横須賀米海軍基地、核攻撃が可能な新戦闘攻撃機が配置された岩国米空軍基地など本土の米軍基地も、いつでも核攻撃に使用できる態勢に強化される危険があると考えるべきだ、と改めて思う。
安倍政権が「核態勢の見直し」を高く評価するなどとんでもないことだ。沖縄にふたたび核兵器を持ち込まないよう、トランプ政権に求めることこそ、『核態勢の見直し』に対して安倍政権が確認すべきことではないのか。

▼証言で沖縄の核を立証したNHK
すでにご覧になった方も多いと思うが、NHKは昨2017年9月10日、米国と沖縄で取材を積み重ね、米国防総省が「沖縄の核兵器を配備していた事実」を初めて認め、機密を解除した一連の取材をまとめ、放送した。NHKスぺシアル「スクープドキュメント・沖縄と核」。12月17日に、NHKドキュメンタリー「沖縄と核」で再放送した。
戦後でも最重要なスクープ、テレビ・ドキュメンタリーの一つだとおもう。多くの視聴者が見たと思うが、わたしは3度見てメモを作った。NHKオンデマンドを契約すれば、単品でも、月契約でも、簡単に見ることができる。(了)
2018.02.13  河野外相談話を撤回し、核兵器持ち込み拒否の再確認を(上)

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

「世界平和アピール七人委員会」が、2月7日に発表したアピール「米国の『核態勢の見直し』と河野外相談話の撤回を求める」を支持します。
日本政府がトランプ政権の「核態勢の見直し」を急いで支持表明した河野談話は、安倍首相の指示あるいは同意のうえで発表したに違いないのだから、首相に抗議し、撤回を要求する。まさか、米政府の最も重要な政策の見直しについての評価を、首相の指示もなしに外相が勝手に発表することができるはずはない、首相談話でなく外相談話にしたのは、国民と世界に対して、少し遠慮したのだろうか。
各国の中で、この「核態勢の見直し」にわざわざ支持を表明したのは、唯一の戦争被爆国日本だけではないか。恥ずかしい限りだ、トランプ政権の正式発足前に、いち早くゴマすりに訪米した安倍首相。「核態勢の見直し」に対する世界の非難、批判を予想もできずに支持表明した河野外相。外務省はブレーキをかけなかったのだろうか。
この『核態勢の見直し』では、現在の大陸間弾道ミサイル(ICBM),潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM))、核爆弾や巡航ミサイル搭載の戦略爆撃機を3本柱とする米国の巨大な核攻撃態勢を更新・強化するのに加え、核破壊力を小規模にして限定的な攻撃を可能にする、艦艇や航空機に積載する小型核兵器を世界各地域の米軍基地と艦艇に配備する計画だ。
データの正確さと中立的な立場で最も信頼されているストックホルム平和研究所(SIPRI)年鑑によると、2017年1月現在、世界の核兵器保有国が保有する核弾頭数はロシア7,000、米国6800、フランス300、英国215、パキスタン130~140、インド120~130、イスラエル80。北朝鮮は(10~20)だが「不確か」。このうちロシア1950.米国1800、フランス280、英国120の計4か国4150の核弾頭は、即応体制で部隊に配置されている。
しかし、広島・長崎の原爆は20キロトン(1キロトンはTNT火薬1000トン)級であれだけの被害が出たのに、米ソの現有核弾頭はそれよりもはるかに爆発力が巨大な弾頭がほとんどで、被害が大きすぎて、戦術的な攻撃に使いにくい。都市攻撃に使えば数十万人あるいはそれ以上の住民が1発で死亡してしまう。いくらトランプが北朝鮮を憎んでも、こんな兵器は使えない。そこで、広島、長崎よりも小さいTNT換算5~6キロトンの”使える“新型核弾頭を生産、配備するというのだ。
小型核弾頭を装着する兵器は、潜水艦や水上艦艇の巡航ミサイル、空母と陸上基地から飛び立つ攻撃機からの爆弾など。目標は陸上の都市、軍事基地、艦艇など、攻撃したい都市や軍事基地を、計画通りの規模で攻撃できる。こうして、小さな目標から大国全体まで、好みの規模で核攻撃できるようにしようとするのが、トランプ好みの核態勢なのだ。(続く)
2018.02.08  米国の「核態勢の見直し」と河野外相談話を撤回せよ
          世界平和七人委がアピール

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 世界平和アピール七人委員会は2月7日、「米国の『核態勢の見直し』と河野外相談話の撤回を求める」と題するアピールを発表した。
  世界平和アピール七人委は、1955年、世界連邦建設同盟理事長で平凡社社長だった下中弥三郎の提唱により、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人有志の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならないを原則に、日本国憲法の擁護、核兵器禁止、世界平和実現などについて内外に向けアピールを発表してきた。今回のアピールは128回目。
 現在の委員は、武者小路公秀(国際政治学者、元国連大学副学長)、大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者、慶應義塾大学名誉教授)、池内了(宇宙論・宇宙物理学者、総合研究大学院大学名誉教授)、池辺晋一郎(作曲家、東京音楽大学客員教授)、髙村薫(作家)、島薗進(上智大学教授、宗教学)の7氏。

 アピールは、米国のトランプ政権が発表した「核態勢の見直し(NPR)」と、それに対する日本政府の対応について論評したもので、NPRについては「小型核兵器を開発し、通常兵器など核兵器以外による攻撃に対しても核兵器使用がありうるとしたのは、世界の核軍拡を加速させ、相手の核攻撃も誘発させるものである」と断じ、米政府に撤回を求めるとともに、NPRを「高く評価する」とした河野外相談話についても「安倍首相のこれまでの発言と矛盾する」として撤回を求めている。
 アピールの全文は次の通り。

米国の「核態勢の見直し」と河野外相談話の撤回を求める
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

 米国のトランプ政権は、昨年から検討を進めてきた「核態勢の見直し(NPR)」を2月2日(日本時間3日)に公表した。その内容は2010年のオバマ政権の「核態勢の見直し」を否定し、歴史の流れを逆行させるものである。特に、小型核兵器を開発し、通常兵器など核兵器以外による攻撃に対しても核兵器使用がありうるとしたのは、世界の核軍拡を加速させ、相手の核攻撃も誘発させるものである。これでは他国の核兵器の放棄を実現させようとの政策と整合性がない。
 この度の政策は、昨年成立した核兵器禁止条約に真っ向から挑戦するものであり、米国も加盟している核兵器不拡散条約の、核軍備競争の早期停止と核軍縮についての誠実な交渉の約束にも明らかに違反するものである。
 核兵器による放射能被害は小型化しても全世界に及ぶものであって、核戦争により安定した平和をもたらすことはできない。どのような条件の下でも、すべての核兵器は使用も威嚇もしてはいけないのである。
 ところが河野太郎外相は、直ちに「高く評価する」との談話を発表した。これは、広島と長崎の被爆以来、被爆者を中心にして日本国民が一貫して追求してきた核兵器廃絶を目指す努力を否定するものである。さらに毎年8月に行われて来た広島と長崎における式典時やオバマ大統領の広島訪問時の、安倍晋三首相自身の発言とも明らかに矛盾する。
 私たち世界平和アピール七人委員会は、トランプ政権と安倍政権に抗議し、「核態勢見直し」と河野外相談話の撤回を求める。
2018.02.05  無理が通っても道理は引っ込まない、国会審議の中で次々と暴露される森友疑惑の真実
広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)

 おそらく国会審議が始まるまでは多寡を括っていたのだろう。森友・加計疑惑の追及は野党共闘の分断でこのまま沈静化する、もうこれ以上の新しい材料は出てこない、従来通りの答弁を繰り返していればそのうちに時間が過ぎていく、内閣支持率も上向いているなどなど、楽観的観測が安倍政権を覆っていた。

 NHKの国会討論会でも、野党の発言は立憲民主党、希望の党、民進党、共産党と分散し、これまでの自公与党と野党の対決構図は一変した。与党側の発言が自公+維新となって一段と強化されたのに対して、野党側は発言内容も力点の置き方もバラバラで著しく精彩を欠け、司会者の機械的な仕切りも相まって討論会とは言えない有様だ。これでは、安倍政権が思うがままに事態は改憲一直線へと進むのではないか―、と懸念していた。

 だが、国会前半の生ぬるい与野党攻防の空気が一変したのは、2月1日参院予算委員会での辰巳議員(共産)の鋭い追及だった。佐川前理財局長が一貫して否定してきた森友学園との交渉関連文書が財務省に存在することを太田現理財局長が一転して認め、会計検査院には文書の発見が遅れたので検査中に提出しなかったと答弁した。それまでは交渉記録の存在に「気付かず」、会計検査院報告書が出される直前(1日前)に「発見」して提出したというのである。

 しかも太田理財局長は、これらの関連文書の存在に早く気付いていれば、財務省の主張はもっと早く理解されたはず、「発見が遅れたのは誠に残念でならない」とまくし立てた。そして、その舌の根も乾かないうちに公表されていない関連文書が新たに存在することを認めるのだから、これは三百代言どころの話ではない。これからまだまだ「新しい気付きと発見」が続き、そして相変わらず「発見が遅れて残念だ」と言うのだろう。

 私はこのやりとりを国会中継で見ていて、役人とはかくも平然とウソをつくものかと心の底から憤慨した。これまで数多くの国会中継を見てきたが、これほど酷い答弁に接したのは初めてだからだ。太田局長当人は何一つ良心の呵責を感じていないのだろうが、しかし答弁席に並んでいた関係省庁の役人たちの表情は険しかった。心の中ではきっと財務省の答弁を苦々しく思い、上は財務相から下は理財局長まで腐っていると心底思っていたに違いない。

 加えて、森友学園の籠池前理事長夫妻が近畿財務局の役人たちと国有地払い下げについて協議した新たな音声データも発見された。その中には、安倍首相夫人の昭恵氏が籠池前理事長に財務省で担当室長と面会した直後に電話をかけ、「どうなりました? 頑張ってください」との応援メッセージが録音されていた。ところが、安倍首相はこの音声データの発言内容について問われると、籠池発言は信用できないとしてこれも逃げの答弁ばかり。昭恵夫人のことについてはすべて自分が答えるとした前言を翻して、いっこうに説明しようとしない。辰巳議員に追い詰められて漸く昭恵夫人に聞くと答えたが、額に汗が滲んでの苦し紛れの答弁だった。

 どれだけの人が国会中継を見ていたかはわからないが、この情景を目前にすれば、首相が「黒を白」と強弁していることはもはや明々白々だろう。安倍首相が事実を以て反論できず、すり替えとごまかしを重ねて逃げる以外、もう道がないところまで追い詰められている様子がよく分かるのだ。そんなこともあってか、最近は報道機関に対する安倍首相の感情的な誹謗中傷も度を増してきている。とりわけ朝日新聞は「目の敵」らしく、事あるたびに裏付けを取らないで記事を書いていると非難している。

 どうやら、安倍首相はトランプ大統領にますます似てきたようだ。トランプ大統領は、自分に不都合な記事を書かれると「フェイクニュース」だと決めつけて関係報道機関を非難する。挙句の果ては記者会見の席上でも関係記者の質問を拒否し、答弁すらしない。トランプ大統領と「100%共にある」安倍首相も、これに倣って気にいらない報道機関を早晩締め出すかもしれない。また国会審議でも、辰巳議員のような追及に対しては「フェイク質問だ」と決めつけて答弁を拒否するかもしれない。

 安倍首相の信条には、「無理が通れば道理が引っ込む」という言葉が固く刻み込まれているのだろう。安倍首相の国会答弁も国会運営も全てこのことを裏書きしている。だが、世論を見くびってはいけない。「無理が通っても道理は引っ込まない」こともあるのである。安倍首相は追い詰められてきている。「無理が道理に屈する」日はそれほど遠くないところまで来ている。

2018.01.31  安倍内閣の支持率はなぜ高いのか(11)
 ―知性なき坊やという批判は一面的である

半澤健市 (元金融機関勤務)

《バカにして終わる批判は利敵行為》
 安倍内閣の支持率は依然として高い。
正面から攻める役割を担うべき、情報量の豊かな筈の、国会議員やマスメディアの攻撃
は一向に突破力がない。そこで低水準の反発が始まる。
同憂の知己・友人と話しても、安倍のキャリア―すなわち学歴、留学体験、企業経験―
を取り上げて、個人的な能力のなさを嘲笑して終わる。字が読めない(「云々」を「でん
でん」と読んだ)、字が書けない(「成蹊」の「成」が書けない)、憲法の原理を知らない
(私は「立法府の長です」と言った)という話があり、安倍を教えた成蹊大学の加藤節
氏らによる低い評価(青木理による『AERA』記事など)の話題がある。
このように安倍の属性をバカにして終わる自己満足は政権を延命させているのではない
か。一面的に過ぎるのではないか。安倍内閣のファシズム化は彼個人の思いつきなどで
進んでいるのではない。

 過去20年間に、日本経団連は主要な「総合ビジョン」を3回発表した。「総合ビジョン」とは、財界からみた「将来の日本はどうあるべきか」の見取り図である。
1996年の「日本創造プログラム2010」、2007年の「希望の国、日本」、2015年の「〈豊かで活力ある日本〉の再生」、がその三つである。

《10年前の「御手洗ビジョン」に書いてある》
 07年の「希望の国、日本」は「御手洗ビジョン」とも呼ばれる。当時の経団連会長
御手洗冨士夫(キャノン会長)の名をとった。三つのうち、御手洗ビジョンだけが、日
米同盟、防衛政策、愛国心について、かつてない踏み込んだ記述を掲げた。以下は私な
りにその「踏み込んだ部分」を要約したものである。

安全保障政策に関する意見
■日米同盟の堅持、二国間や多国間の共同演習を含む安全保障対話の推進
■MD(ミサイル防衛)能力の向上
■自衛隊の国際協調活動を憲法上に明示する必要性
■安全保障会議を強化した日本版NSC(国家安全保障会議)の機能化

憲法改正に関する意見
■2010年代初頭までに憲法改正の実現を目指す。
■改正内容は、9条第1項の平和主義の基本理念は堅持しつつ、戦力不保持をうたった
 同条第2項を見直し、憲法上、自衛隊の保持を明確化する。
■自衛隊による国際貢献の明示し国益・国際平和のため集団的自衛権行使を容認する。

愛国心に関する意見
■愛国心を持つ国民は、愛情と責任感と気概をもって、国を支え守る。
■悠久の歴史が織り成してきた美しい日本の文化と伝統を子どもたちに引き継ぎ、活力
 と魅力にあふれた「希望の国」を実現することは可能でありわれわれの責務である。

《悪い奴はどこかにいるのだ》
 以上が御手洗ビジョンの書いた「防衛と改憲と愛国心」の大要である。念のためにい
うと、これらの記事は、字数だけで見れば全体のごく一部に過ぎない。全体は、経済・
財政金融・社会保障・地方分権・国際関係などを述べていて―その基調はグローバリズ
ムの日本的実現である―注意深く読まねばならない。

読者はこれを何と読むか。
私は、安倍政権は「御手洗ビジョン」を忠実にかつ粛々と実現してきたと読んだ。
安倍政策の立案、構造、実現は「知性なき坊や」の独走などではない。
舞台裏に悪い奴がいるのであろう。軍産複合体・原子力村、グローバル資本主義者、無
責任体制の官僚機構。これらが内外にいる。安倍一強は、彼らのシナリオに従ってで踊
る人形である。これが私の推定だ。その当否は一つ一つ事実を露わにしていくしかない。

9条2項に続く「自衛隊」項目挿入は、2017年5月に、右翼集会でのテレビ画面に現れた
安倍発言に始まった。これを前提とするのが現在のメディア状況である。御手洗ビジョ
ンを考えたり書いた者たちは、昨今の改憲論議を「非知性的」だと思っているに違いな
い。(2018/01/26)
2018.01.25 国民に説明できない野党再々編の破綻、大義なき民進・希望の統一会派協議が明らかにしたもの
         
広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)
                
 民進、希望両党は1月17日、双方の執行部間で進めていた統一会派結成を断念した(というよりは、白紙撤回に追い込まれた)。民進は両議員総会で異論が続出して了承が得られず、これを受けて希望も協議の打ち切りを決定した。民進・希望両党を軸とする野党第1党会派結成の策動はこれでいったん中止に追い込まれ、1月22日召集の通常国会は、立憲民主が野党第1党としてイニシャティブを握ることになった。

 この間の民進・希望両党による統一会派結成、延いては新党結成を視野に入れた一連の策動は、政党理念や基本政策を棚上げにした「大義なき野党再々編」の動きとして国民に深い失望を与え、政治不信を一層増幅させた。その仕掛け人となった大塚民進代表の言い分を聞いてみよう。大塚氏は、その意図を次のように語っている(毎日新聞「どうする3野党」2018年1月17日)。
「衆院小選挙区制の下では野党が塊になって選挙に臨むことが必要だ。国会運営上も会派として大きな塊になる方がいろいろな面でプラスになる。国会で与野党が拮抗した議論を行うことは国民にとってプラスになる。3党の統一会派、さらには他の野党も巻き込んだより大きな統一会派結成を目指したい」。

 この主張を普通の人が言うのであれば、当たり前のことで何の不思議もない。「その通りだ」との声が返ってくるだろう。だが、発言の主は民進党国会議員(参院)であり、僅か3カ月前に前原前代表の民進解体・希望合流の提案を「満場一致」で了承した当該者の一人なのだ。2016年参院選1人区での野党統一候補の擁立など、それまで積み重ねられてきた野党共闘の努力を一挙にご破算にする策動に直接手を貸した一人なのである。

 国民を馬鹿にするのもいい加減にしろと言いたい。3カ月前に全国を震撼させた民進解体劇を棚に上げ、その当人がまるで何事もなかったかのように口を拭って当たり前のことを言うのである。こんな人物を代表にいただく政党を信用する有権者がいったいどこにいるのか、胸に手を当ててよく考えてほしい。

 加えて不思議に思うのは、希望との統一会派結成に向けての実務者協議に当たった民進側の責任者が、増子幹事長(参院)と平野国会対策委員長(衆院)だったことだ。増子氏は、2016年参院選で福島選挙区から野党統一候補として当選したことをよもや忘れてはいまい。平野氏は、昨年総選挙で大阪11区から市民と野党の共闘で当選したばかりだ。両氏の当選は辛勝そのものであり、野党共闘の力を借りなければ絶対に当選できなかった。そのご当人が自分たちを「排除」した相手側と手を組むことに何の痛みも感じない。両氏を推した市民や野党各党はいまどんな気持ちでいるか、両氏は一度でも考えたことがあるのだろうか。

 市民と野党共闘は必ずしも「スペードのエース」とは限らない。議席確保だけが目的で野党共闘はその手段でしかないと考える「ジョーカー」のような人物は山ほどいるのである。そんな人物を統一候補に擁立した選挙区の有権者は不幸そのものだ。大阪11区の地元・枚方市在住の私の友人などは、平野氏を「見る目がなかった」と悔やみ、夜も眠れないほどの怒りに襲われると話している。民進の希望への接近は二重三重の有権者への裏切りとなって政治不信を増幅させ、野党共闘への道をさらに険しいものにしている。

 しかし、もう一人、さらにその上をいく人物がいる。知る人ぞ知る、神津連合会長その人である。神津氏は民進解体劇のシナリオライターであり、かつ立ち合い執行人の一人だった。連合は民進の支持母体として絶大な権力を行使し、神津氏は労働団体を牛耳ることで財界から保守二大政党制を確立する使命を託されたキーパーソンだ。神津氏はその使命を果たすべく、前原・小池両氏と結託して民進解体に踏み切ったのである。

ところが、小池氏の「勇み足」で保守第2党結成の策動が失敗に終わると、その後は何事もなかったかのような言動に終始しているのだから驚く(呆れる)。民進内で希望との統一会派結成をめぐって議論が紛糾していたそのときも、神津氏は一貫して執行部案を後押ししている。

1月16日夜、都内で開かれた「無所属の会」(岡田克也代表)で希望との会派結成に否定的な声が相次ぐにもかかわらず、神津氏は「昨年は私どもにとって不本意なことばかりだった。(統一会派は)不本意なことを本意なことにひっくり返していく営みの一つだ」と評価したというのである。これを受けて民進執行部の一人は、「こぼれるのは織り込み済み。もう引返せない」と述べ、反対・慎重論を押し切る構えを見せた(朝日新聞、2018年1月17日)。

 朝日新聞は、翌日の朝刊でもその内部事情を次のように解説している(2018年1月18日)。
 「昨年の衆院選で立憲民主党と希望とに3分裂した民進が、両党に統一会派結成を呼びかけたのは12月。(略)来夏の参院選で組織内候補を擁立する連合の意向に沿った対応だった。連合幹部からは『民進の名前では戦えない。遅くとも1年前には明確な新党にしてほしい』と伝えられていた。党の支持率も1%程度でジリ貧。希望との連携を先行し、衆院で野党第1党会派を奪い、国会での主導権を握る――のがねらいだった」

 いつまでも「連合の傘」の中から抜け出せない民進には未来がない。それは希望も立民も同じことだ。野党再々編の行方は連合と手を切るかどうかに懸かっている。
2018.01.15  『ねっとわーく京都』の新春特集は「視界不良で明けた2018年」で始まった、立憲民主を軸とした新野党共闘は成立するか

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

 京都の月刊誌『ねっとわーく京都』編集部の依頼で、新春特集の一環としてのインタビューに応じた。新春にふさわしいテーマを語りたいと思ったが、とてもそんな気持ちにはなれない。時代状況があまりにも暗すぎるからだ。そんなことで、テーマは「視界不良で明けた2018年~平成時代は不透明のままで終わるのか~」になった。

 安倍首相は、年明けから一貫して「改憲発議」への前のめり発言を続けている。衆院で改憲勢力が3分の2どころか4分の3に達したとのことでこの上なく勢いづいているのだろうが、はしゃぎ過ぎだ。なにしろ従来からの改憲勢力の自民・公明に加えて維新がすり寄り(昨年暮れには橋下・松井両氏がまたもや首相の私宴に招かれた)、希望の党も足並みを揃えることになるのだから、安倍首相が元気づくのも無理はない。

 これに対して野党側の動きは一向にさえない。民進党の解体でいったん摘み取られた野党共闘の芽がふたたび芽吹くことは極めて困難な情勢にある...と言わなければならない。民進党の大塚代表が立憲民主党と希望の党に統一会派構想を呼びかけているが、もともと希望の党に排除されたグループが立憲民主党をつくったのだから応じるわけがない。枝野代表が1月7日のNHK番組で「希望の党丸ごとと組むのは自己否定につながる。とても考えられない」(日経新聞、2018年1月8日)と明言しているのはけだし当然だろう。

 だが、この発言は意味深長だ。枝野代表は希望の党「丸ごと」との連携は拒否しているが、希望の党「有志」との連携は否定していない。希望の党代表選で玉木氏側に付かなかった(リベラル)勢力に対して立憲民主党への参加を暗に呼びかけ、勢力拡大を意図しているのだろう。その裏には、希望の党と維新が合流すれば「野党第一党」の座を奪われかねないことへの警戒心があるからだと言われる。

しかし、こんな政党間の駆け引きに明け暮れ、このままダラダラと事態が経過すれば、野党側のマイナスイメージはますます大きくなる一方だ。延いては立憲民主党に対しても期待が薄れ、国民の批判がブーメランのように撥ね返ってくる可能性があるからだ。立憲民主党に求められるのは、そろそろ曖昧な態度を改め、「いまがピーク」と言われないようにすることだろう。

 立憲民主党の曖昧さは、共産党との関係では一層際立っている。志位委員長は1月7日のNHK番組で「立憲、社民党、自由党、民進党に真剣な政策対話と候補者調整のための協議を呼び掛けたい」と改めて表明し、各党に対して月内に正式に申し入れる意向を示した。だが、立憲民主党は「共闘」という言葉は決して口にしない。「時間がないようであるので、慎重に検討していきたい」。立憲の枝野幸男代表は1月4日の記者会見で、参院選へ共産党が新たに掲げた野党各党との「速やかな政策対話」について、急がずに対応する考えを示した。スピード感を求める共産党とは対照的な姿勢だ(時事通信、2018年1月8日)。

 立憲民主党が来夏の参院選に向けた共産党の申し入れに対して曖昧な姿勢を崩さないのは、昨年総選挙直前の民進党の解体によって野党共闘が瓦解し、有権者の大きな失望を招いたことが背景にあるからだ。今年になってからの世論調査はまだ実施されていないが、昨年11月段階での野党連携のあり方に関する世論調査はいずれも消極的な結果に止まり、野党共闘に対する国民の期待が急速に薄れたことを示している。

 共同通信の世論調査(2017年11月1,2日実施)では、「あなたは、今後の野党の在り方についてどう思いますか」との問いに対して、「できるだけ多くの野党が一緒になり、政権交代を目指す政党をつくる」19.3%、「野党はそれぞれの党を維持した上で、協力して与党に対抗する」37.8%、「野党は、政策課題ごとに与党に是々非々で対応する」34.9%と、野党共闘に対する国民の関心は必ずしも高くなかった。また、同日に実施された読売新聞世論調査においても、自民党に対抗する野党連携のあり方に関しては、「共産党を除く野党が連携した方がよい」32%、「共産党を含む野党が連携した方がよい」30%、「野党が連携する必要はない」28%と意見が大きく分かれた。

 こんな世論動向からして、立憲民主党は来年の参院選の行方を左右する1人選挙区での共産党との候補一本化や政策一致の必要性を一定認めるものの、明確な共闘関係を構築すれば共産党嫌いの保守票や無党派票が逃げる恐れがあるので、いつまでも曖昧な態度を続けているわけだ。だが、昨年総選挙で「トンビ(立憲民主党)に油揚げ(浮動票)をさらわれた」共産党が、今度はおいそれと一方的協力をするとは思えない。志位委員長も小池書記局長もそのことを繰り返し言明しているのだから、立憲民主党は共産党が自主的に候補を取り下げるようなことを期待しない方がいい。

 まさに2018年の新春はこのように「視界不良」というほかないが、私は次回以降の世論調査の動向で事態は大きく変わると楽観している。結論を先に言えば、立憲民主党への政党支持率が低下するにしたがってこのまま曖昧な態度を続けることが許されなくなり、何らかの決断を迫られる時が迫っていると言うことだ。希望の党が急速に支持を失った反動で立憲民主党への支持が急上昇したが、いつまでもこの支持率が続くとは思えない。政党としての真実味を示さなければ、希望の党と同じく「泡」の如く消えていくことも否定できない。さて、新春に立ち込めていた深い霧がやがて晴れるとき、そこに現れてくる次の局面はいったいどんな光景なのか。今年も目を凝らしてウォッチングを続けたい。