2018.10.09  宿望の「憲法改正」へ 新内閣発足  桜田義孝氏初入閣
          韓国通信NO573

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

千葉8区(柏・我孫子)選出の桜田義孝氏が初入閣を果たし、五輪担当相になった。
下記の結果からもわかるように桜田氏は前回の衆院選で二人の野党候補を圧倒した。桜田氏の勝因は選挙直前の希望の党による攪乱だった。民進党から立候補が予定されていた太田候補が希望の党から出馬したため、有権者は戸惑い桜田氏が「漁夫の利」を獲た。
当選 桜田義孝 自民前     100,115票   得票率48.8%  公明推薦
    太田和美 希望の党     71,468票       34.8%
    小野里定良 共産党     33,752票       16.4%
           当日有権者数:411,572人 最終投票率:51.68%
宿望の「憲法改正」へ 新内閣発足  桜田義孝氏初入閣
桜田氏(68)は衆議院当選7回。日本会議のメンバーとして知られ、安倍首相とは「オトモダチ」関係にある。その彼が2016年1月、「従軍慰安婦は売春婦」と持論を述べたため文科副大臣の席を棒に振った。
 正直で空気が読めない彼が更迭されたのは、前年12月、日韓両政府が従軍慰安婦問題で政治決着を図ろうとした直後だったからだ。日韓合意で、日本側は「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明」した。桜田発言にさすがの安倍首相も慌てたはずだ。桜田は発言を撤回し辞任に追い込まれた。
桜田氏(68)は衆議院当選7回。日本会議のメンバーとして知られ、安倍首相とは「オトモダチ」関係にある。その彼が2016年1月、「従軍慰安婦は売春婦」と持論を述べたため文科副大臣の席を棒に振った。
 正直で空気が読めない彼が更迭されたのは、前年12月、日韓両政府が従軍慰安婦問題で政治決着を図ろうとした直後だったからだ。
日韓合意で、日本側は「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明」した。桜田発言にさすがの安倍首相も慌てたはずだ。桜田は発言を撤回し辞任に追い込まれた。

<桜田氏は韓国では有名人>
사쿠라다 요시타가(桜田義孝のハングル表記)で検索すると桜田氏の関連記事がたくさん出てくる。韓国では安倍首相の歴史認識の代弁者のような有名人扱いだ。
 政府間合意直後の桜田発言で、日本側の「本音」が露呈したと韓国側から猛反発が起きたのは当然だった。誠実さを欠き、金銭で解決しようとする日本側の姿勢が浮き彫りになった。今回の入閣は桜田発言の追認である。安倍首相が日韓合意を自ら破棄したことにも等しい。
 「憲法改正」内閣などともてはやされ、早くも改憲ムードが漂い始めた。自衛隊を憲法に明記すれば海外派兵、戦争を買って出ることが可能だ。戦争ができる日本を取り戻すことになる。

新閣僚のお粗末さには驚かされる。政治資金疑惑で閣僚を辞任した人物、自民赤坂亭でご機嫌とりに走った女性議員。わが町選出の五輪担当相もそのひとりだ。安倍内閣の末期症状について期待を込めて語る人もいるが、「やぶれかぶれ」ほど恐ろしいものはない。桜田氏のポスターがうたう「国づくりは人づくり」は、国のための教育を主張した戦前のイデオロギーそのものだ。国家主義者桜田のポスターが溢れる町に住む息苦しさ。次回は落選させるしかない。

<桜田氏は韓国では有名人>
사쿠라다 요시타가(桜田義孝のハングル表記)で検索すると桜田氏の関連記事がたくさん出てくる。韓国では安倍首相の歴史認識の代弁者のような有名人扱いだ。
 政府間合意直後の桜田発言で、日本側の「本音」が露呈したと韓国側から猛反発が起きたのは当然だった。誠実さを欠き、金銭で解決しようとする日本側の姿勢が浮き彫りになった。今回の入閣は桜田発言の追認である。安倍首相が日韓合意を自ら破棄したことにも等しい。
 「憲法改正」内閣などともてはやされ、早くも改憲ムードが漂い始めた。自衛隊を憲法に明記すれば海外派兵、戦争を買って出ることが可能だ。戦争ができる日本を取り戻すことになる。

新閣僚のお粗末さには驚かされる。政治資金疑惑で閣僚を辞任した人物、自民赤坂亭でご機嫌とりに走った女性議員。わが町選出の五輪担当相もそのひとりだ。安倍内閣の末期症状について期待を込めて語る人もいるが、「やぶれかぶれ」ほど恐ろしいものはない。桜田氏のポスターがうたう「国づくりは人づくり」は、国のための教育を主張した戦前のイデオロギーそのものだ。国家主義者桜田のポスターが溢れる町に住む息苦しさ。次回は落選させるしかない。
2018.10.03  玉城デニーさんの当選を心から喜ぶ
          ある友への手紙

「リベラル21」にも何回か書いてくださったジャーナリスト、藤野雅之さんが、沖縄県知事選での玉城デニーさんの当選を祝って、Facebookに一文を投稿しました。藤野さんは共同通信記者として働く一方、40年間、沖縄与那国島に通って援農活動を続けてきた人です。藤野さんだから書いた、心のこもった喜びの一文なので、筆者の同意を得てその全文を転載します。(編集委員会・坂井定雄)

藤野雅之 (ジャーナリスト)

 玉城デニーさんの当選で、沖縄をめぐる今後の展開に希望を持つことができると、今朝は良い気分です。
 昨夜は、Facebookで那覇の玉城事務所から渡瀬夏彦さんが生中継してくれて、見入っていました。朝日新聞と沖縄タイムス、琉球朝日放送も合同でYoutubeで生中継し、これと交互に見ました。朝日は中継が始まった直後の20時1分に「玉城さん、当確」を打ちましたが、なかなかそれに続く2社目が出ず、どうなるのか、最初は気になりました。21時30分少し前に毎日新聞が、続いてNHKが当確を報じると、事務所はわっと歓声が上がって、カチャーシーに沸きました。
 
選挙戦終盤には、佐喜真候補側から玉城さんを中傷するデマ報道がネットやビラを使ってなされ、心配しましたが、佐喜真候補が辺野古基地問題に徹頭徹尾触れなかったことが決定的な敗因だったと思います。しかも「携帯料金を4割値下げする」などという国や県に権限のないことを公約に掲げたりして、そんなことは誰でもウソだとわかる発言でした。
 それに対して、玉城さんは自分の出自と沖縄への思い、さらにそれを県政にどう繋げるかをきちんと語り、その誠実な姿勢が女性をはじめ多くの無党派層の心を打ったと思います。那覇在住の友人の渡瀬さんが首里の近くで朝日を眺めに行く途中で出会う石焼き芋を売っているおばさんが「期日前投票に行ってきたよ。当然、玉城さんと書いたよ。ちゃんと候補者の話を聞けば、どっちが良いかは誰でもわかるよ」と言ってくれたのが嬉しかったと書いていました。
 
  渡瀬さんは援農隊の初期の参加者で、十数年前から那覇に住んで、フリーライターをしています。今回の選挙では、ボランティアで玉城さんの選挙運動に陰で協力してきました。毎日、車を運転しながら、状況をリポートして、愛聴者が多いようです。
昨日は県議会議員の補欠選挙もあり、玉城さんの立候補を裏で支えた山内未子さんが当選しましたが、渡瀬さんは彼女の選挙も支えていました。その山内さんが「いまの沖縄は、政府からの補助金や交付金に頼らないでも経済を維持していける。それだけの力をつけてきている。それなのにいまだに政府に頼ろうとする保守系の人たちはこの考えから抜け出せない。沖縄県民は自立することにもっと自信を持つべきだ」と言っていたというのです。この考えに私は大変感銘を受けました。私が40年間、与那国で援農隊活動をしてきたのも、与那国に自立してほしいと思ってきたからです。

 しかし、当時は与那国の人には、離島で産業もなく人材もなく自立などできないと考える人が多かったのです。ところが、尾辻吉兼町長が出てきて「与那国島自立ビジョン」の活動を始めました。私は彼の考えに共感して協力しましたが、その途上で尾辻町長が急死して、いまの外間守吉町長になりました。その後しばらくして島では自衛隊誘致運動が始まりました。尾辻さんの後継を称して当選した同級の外間町長は最初は自衛隊誘致反対でしたが、次第に彼らに取り込まれることになったのです。

  自衛隊に頼るということは、自立を諦めることにつながりかねないと思います。そして、基地を強制する国に頼ることで、補助金と引き換えに国の言いなりになり、自立心を失っていく。こうして次第に沖縄人としての自尊心をも失ってしまうことになりかねないのです。国の言いなりになって、どうして自尊心を維持できるでしょうか。人間は生きていくのに誇りが必要です。故郷を売り渡して国に頼るのではなく、自分たちの力で故郷を守り、自立することこそ自尊心を育てるのです。基地が沖縄経済に占めるのは5%以下です。沖縄は経済的に見てもすでに自立を始めています。
 
国は沖縄人に自尊心を捨てさせて、沖縄を本土に都合の良いように利用しようとしているのです。しかもそれを永続化しようとしています。そんな政策に自ら寄り添っていく保守派のやり方に、どうして賛成できるでしょうか。このことに沖縄県民が気付き始め、それが今回の玉城さん当選につながったのではないかと私は思っています。これをさらに伸ばしていって、本当の沖縄の自立につなげてほしいと願っています。
2018.09.26  9条改憲反対署名の締め切り迫る
  安倍発言で危機感高まり、署名達成呼びかけ
 
岩垂 弘(ジャーナリスト)

 護憲派の市民、団体が目指す「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」の第4次締め切りの9月30日が迫った。20日に行われた自民党総裁選で9条改憲を悲願とする安倍晋三首相(党総裁)が3選され、選出後の記者会見で「自民党の改憲案を国会に提出したい」と決意を述べたことから、署名関係者は一層危機感を高め、「なんとしても早急に目標の3000万筆を達成しよう」と呼びかけている。

 署名を呼びかけているのは「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」である。
 これは、昨年8月31日に、有馬頼底(臨済宗相国寺派管長)、内田樹(神戸女学院大学名誉教授)、梅原猛(哲学者)、落合恵子(作家)、鎌田慧(ルポライター)、鎌田實(諏訪中央病院名誉院長)、香山リカ(精神科医)、佐高信(ジャーナリスト)、澤地久枝(作家)、杉原泰雄(一橋大学名誉教授)、瀬戸内寂聴(作家)、田中優子(法政大学教授)、田原総一朗(ジャーナリスト)、暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)、なかにし礼(作家・作詞家)、浜矩子(同志社大学教授)、樋口陽一(東北大学・東京大学名誉教授)、益川敏英(京都大学名誉教授)、森村誠一(作家)の19氏を発起人として生まれた新しい護憲組織で、既存の護憲団体が大同団結したものだった。
 
 19氏や「九条の会」などの護憲団体に新しい護憲組織の結成をうながしたのは、安倍首の発言だ。すなわち、安倍首相は昨年5月3日の憲法記念日の読売新聞紙上で、憲法改定を実現し、2020年の施行を目指す方針を表明、その中で、戦争放棄などを定めた現行の9条の1項と2項を残し、自衛隊の存在を明記する意向を示した。このため、「安倍政権がいよいよ9条改憲に乗り出してきた」との危機感が護憲派の間に広がり、護憲派を「安倍政権の攻勢に対抗するためには運動の幅をもっと拡大しなくては」という方向に向かわせたのだった。
 
安倍9条改憲NO!全国市民アクションによれば、今年4月16日現在で、アクションの呼びかけ人・賛同人は855人、実行委員会・賛同団体・協賛団体は93にのぼるという。

 同アクションは昨年9月から「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」を始めたが、目標は3000万筆。これは、かなり高い目標だ。戦後の日本ではこれまでさまざまな署名運動が行われたが、3000万筆を超えたのは2つしかない。1950年代に行われた原水爆禁止署名(3200万筆)と、1980年代に行われた、国連に核兵器完全禁止と軍縮を要請する署名運動(8000万筆)だ。

 同アクションによれば、「全国統一署名」は、今年5月3日で1350万筆に達した。来る9月末に第4次集約が予定されており、そこで新しい到達署名数が発表される。
 さる17日に東京・代々木公園で開かれた「さようなら原発全国集会」で登壇した「戦争させない9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の福山真劫・共同代表は、会場を埋めた参加者に「安倍政権の暴走をストップさせるさせるために3000万全国統一署名に全力で取り組もう」と呼びかけた。

 安倍9条改憲NO!全国市民アクションの連絡先は次の通り。
東京都千代田区猿楽町1-2-3 錦華堂ビル4A
電話03-5280-7157
2018.09.25 私たちの未来は……辺野古隠しに騙されてはならない
宮里政充 (もと高校教員)

9月16日、安室奈美恵さんの25年間に及ぶ歌手活動は終わりを告げた。「ネバーエンド、ネバーエンド 私たちの未来は…」と口ずさむぐらいしかできない老人の私ではあるが、彼女のこれまでの生きざまや音楽活動に心から拍手を送りたい。ありがとう、お疲れさまでした。新しい未来へ向かって羽ばたいてください!

ところで、沖縄県知事選に目を向けてみると、先だっての名護市長選挙同様、辺野古移設問題を棚上げするイデオロギーが強く働いていることがわかる。だが、かりに佐喜真淳候補が知事となった場合、棚上げしていた辺野古移設の作業が一挙に本格化することは目に見えている。つまり渡具知武豊名護市長も佐喜真候補も、沖縄だけが米軍基地の過重な負担を半永久的に背負わされるという理不尽な状況に向き合おうとせず、選挙戦を有利に運ぶ手段として辺野古隠しを企んでいるのである。姑息なやり方だ。

日本政府はこれまで日米地位協定改定のために動いたためしがない。まして沖縄にある米軍基地を本土へ移すなど日本政府にとって思いもよらないことだ。なぜ沖縄に米軍基地が集中しなければならないかについて、当時民主党政権の防衛大臣であった森本敏氏は2012年12月25日の閣議後の記者会見で「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適の地域だ」と述べた。また自民党政権の久間章生元防衛大臣は「辺野古でも普天間でもそういう所に基地がいるのか、いらないのか」と必要性を疑問視した」(琉球新報2018.2・1)。そして、さらに最近では石破元防衛大臣が、自身の公式サイトで、沖縄に米軍基地が集中している理由について「(本土の)反基地闘争を恐れた日本とアメリカが、沖縄に多くの海兵隊を移したからだ」と説明した。

今年の2月20日、翁長知事は来県中の参院外交防衛委員会の委員らと県庁で意見交換した際、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設について委員会理事の塚田一郎氏(自民)が意義を強調したのに対して、「元閣僚らの発言を引用して『軍事的に必要だというより政治的に沖縄に置くしかないと話されている。こういった理由で沖縄に置くということをぜひもう一度見直してほしい』と再考を求め、さらに、「秋田県なら十和田湖を、宮城県なら松島を、滋賀県なら琵琶湖を埋めて抑止力のための基地を造ることが、地域の国会議員が日本の安全のためだとやり切れるのか疑問だ」と指摘した(2月21日琉球新報)。だが、これに対し委員からは、「辺野古移設が実現すれば航路が海上となり、安全性が確保、騒音も大幅に軽減される」という以上の回答は得られなかった。

沖縄に対する構造的差別とはこういうことを指すのである。沖縄県民の意思を無視し続け、一方的に米軍基地を押し付けてきた日本政府に対して、沖縄県民の長たる知事が「辺野古に新しい基地は作らせない」と主張することはごくごく当たり前のことではないか。
沖縄知事選挙は終盤戦に入っており、共同通信社の世論調査によれば、与野党が激しく競り合っているという。私は、沖縄県民が米軍基地頼みの、つまり「米軍基地ネバーエンド」の未来ではなく、ウチナーンチュとしてのアイデンティティーを大切にし、経済的にも「自立する沖縄」の未来を選択してほしいと心から願っている。(2018.09.24)
2018.08.15 猛暑続きでも秋風は着実に吹いてくる
安倍政権による酷暑(異常気象)は台風一過でやがて消滅するだろう

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

 京都は灼熱の地だ。一名、「釜地獄」ともいわれる。私が京都に来たのは1950年代の後半、いまから60年も前のことだ。だが、今年の夏ほど「暑い=熱い」と思った年はない。とにかく「死ぬほど暑い」と言いたいぐらいの連日の猛暑なのだ。どこかへ逃げ出して何とか難を逃れたいと思うものの、そんな条件がないので蟄居せざるを得ない。こんなじりじりした気持ちを抱えながらこの1カ月を過ごしてきた。

 安倍政権に対しても同様だ。だが、こちらの方はもっと長期に亘る「酷暑=異常気象」なので我慢がならない。もはや我慢の限界を超えているというべきだ。2012年暮れの第2次安倍内閣の発足以来、国民に対しては踏んだり蹴ったりの政治を続けながら、それでいて安倍1強体制に胡坐をかいて権力の座に居座っているのだから、心ある国民が怒り心頭状態にあることは間違いないのである。

 そんな最中、この9月には自民党総裁選挙が行われる。安倍首相に対決する政治路線を何一つ掲げられない有力者たち(腑抜けども)が次々と脱落し、文字通りの「安倍1強選挙」になった総裁選に対してはいまさら何の興味も湧かない。しかし、その背後で進行している国民の政治意識の変化には注目すべきものがある―と思う。その一端を垣間見てみよう。

 私が注目したのは、8月6日の毎日新聞の紙面だ、平成最悪の土砂災害と浸水被害をもたらした西日本豪雨は、最初の大雨当別警報が発表されてから8月6日で1カ月を迎えた。この日の毎日新聞の1面トップは、「1カ月 消えぬ爪痕、西日本豪雨 3600人避難続く」というもの。死者221人、行方不明者11人に達し、3600人が避難所生活を続ける一方、11府県でいまだ2万3000人に対して避難指示が続いているという。それでいていっこうに復旧復興が進まず、多くの被災者が明日が見えない不安に怯えている。同様のニュースがテレビでも連日報道されているところをみると、言いようのない不安感と閉塞感が国民の間に広がっていることがわかる。

 偶然かどうか知らないが、この日は月曜日とあって山田孝男氏(特別編集委員)のコラム『風知草』が2面に掲載されていた。タイトルは「誰と映りたい?」というもので、ポスト自民党総裁選の空気を分析したものだ。「竹下派が石破茂支持へ傾いて話題――とはいえ、安倍晋三自民党総裁3選の大勢は変わらない。だが、来夏の参院選の自民党候補は別の風景を見ているようだ。永田町では盤石の安倍首相だが、ちまたの反発は根強い」とある。

山田氏と言えば、同コラムで日本記者クラブ賞を受けた著名なジャーナリストだが、安倍首相の酒席にも招待される「安倍トモ」としてもよく知られている。事実、これまでの同氏のコラムには「安倍批判を批判する」内容が多く、とかく評価の分かれる人物なのである。日本記者クラブがどういう理由で賞を贈ったのか知らないが、そんな人物が自民党総裁選後の政治風景の変わり模様を描いたのだから、多少興味を引かれた―というわけだ。

コラムの主たる内容は、参院選を控えた自民党候補が安倍首相とのツーショット写真を撮りたくないというものである。インタビューに応じた自民党参院選候補の語る理由がまた面白い。「(地元では)安倍さんがいいっていう人は少数派。市議や町議から『安倍さん(支持)のままで行ったら、あんた、自分の選挙に負けるぞ』って言われる(笑い)」「やはり森友、加計。どうみてもウソの答弁。やり過ぎじゃないかっていう人が多い。外交への評価はあるんですけどね」。

山田氏はこの状況の背後を次のように分析する。
「内閣支持率は30~40%台で底堅い反面、多くの調査でそれを上回る不支持がある。この傾向は、今年3月、財務官僚による公文書改ざん問題が暴かれて以来,変わっていない」
「森友、加計をめぐる折々の首相答弁について『納得できぬ』『信用できぬ』と答えた人は、多くの調査で7割を超える」
「森友、加計は汚職でない。首相も役人もカネはもらっていない。だが、だから小事とは言えない。1年半にもわたって政治問題であり続けること自体が政治史上の事件に違いない。不満の底流が表出するか、なおくすぶるか」

「森友、加計問題はカネをもらっていないので汚職ではない」という部分は、政治責任を回避する首相答弁のそのままの引き写しだが、それでもモリカケ問題が「1年半にもわたって政治問題であり続けること自体が政治史上の事件に違いない」との山田氏の指摘は重要だろう。そこには、安倍トモですら指摘せざるを得ない安倍政権の本質(弱点)が暴露されているからだ。

「信なくば立たず」という言葉は、安倍首相がしばしば引用する座右の銘だ。安倍首相ならずとも政治家であれば、誰もがこの言葉の重みを知っている。モリカケ問題がまさにこの言葉の試金石であるからこそ、世論は真実を追求し、真相の解明を求めてきたのである。だが、森友問題に関しては肝心かなめの財務官僚は訴追されず、真相の解明は迷宮入りとなっている。加えて、加計問題については「あったことがなかった」「言ったことがウソだった」との当事者の出まかせ発言がまかり通る始末だ。これでは「信なくば立たず」どころの話ではない。まさに「無理が通れば道理が引っ込む」状況が大手を振って歩いているのである。

モリカケ問題に関しては、大方の国民は納得していないし、いつまで経っても忘れることはない。モリカケ問題は、安倍政権の喉元深く突き刺さった骨なのであり、この問題の真相が解明されない限り、永遠に安倍政権の宿痾(しゅくあ)としてあり続ける政治問題なのだ。そして、そのときどきの政権の不始末や不祥事がこの宿痾(モリカケ問題)と結びついて政権批判として浮上し、安倍政権の岩盤を掘り崩していくという政治情勢がこれから繰り返しあらわれることになるのである。

すでにいっこうに目途が立たない西日本豪雨対策への不満は、安倍政権そのものへの明確な批判として浮上している。それは「赤坂自民亭」といった些末な事態に端を発しているのではない。「信なくば立たず」という、安倍政権の本質にかかわる深刻な事態と結合して浮上しているのである。それは、被災地へのその時々の慰問など、安倍首相の小手先のパフォーマンスでごまかせるような問題ではないのである。

また、杉田議員の性的マイノリティ侮辱発言は、今後、若者世代が安倍政権への見方を変える大きな引き金となるだろう。麻生財務相は「新聞を読まない若者は(みんな)自民党支持だ」などと訳のわからないことを言ったが、私から言えば、この発言は若者全体に対する愚民発言そのものだ。しかし、今度の杉田発言に対する批判がインターネットを通して広まったことを思えば、新聞を読まない若者でも人格を傷つける発言に対しては敏感に反応することがわかる。事実、自民党本部に抗議するために集まった集団はほとんど若者たちだった。

5年余にわたる安倍政権支配は余りにも長い。安倍政権による国民生活への影響がこの間の「異常気象」ともいうべき酷暑となり、猛暑となって国民を苦しめてきた。その深刻な後遺症が次から次へと顕在化しているいま、国民世論は恐ろしい勢いで変化しつつあるのではないか。安倍政権への〝飽き〟と〝疲れ〟が国民世論の中に色濃く漂い始め、「アベチャンの顔を見たくない」人たちが急速に増えているのである。自民党が総裁選などコップの中の嵐にうつつを抜かしている暇があるのであれば、その背後に広がる国民世論の動向にもう少し怖れを抱くべきなのだ。

2018.08.13 翁長沖縄県知事の死去に伴う二つの問題
――辺野古埋め立ての承認撤回と知事選

宮里政充(もと高校教師)

埋め立て承認撤回――翁長知事の遺志は受け継がれる
8月8日午後6時43分、沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が膵癌のため、浦添市の病院で死去した。67歳だった。

翁長知事は、死去の直前の7月27日午前、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事が2013年12月に決めた「辺野古埋め立て承認」を撤回すると表明していた。
次は同日に発行された沖縄タイムスの号外「承認撤回表明」の記事である。

「名護市辺野古の新基地建設を巡り、翁長雄志知事は27日午前、前知事の埋め立て承認を撤回する意向を示し、事業者の沖縄防衛局の意見を聞き取る『聴聞』を終えれば、防衛局が8月17日を目安に予定する埋め立て土砂の投入の前に承認を撤回する見通し。
土砂の投入という重大局面に差し掛かる前に知事の最大権限である承認撤回に踏み切り、工事を停止させる。沖縄防衛局が撤回を無効化する法的な対抗策を打ち出してくるのは必至で、県と国の争いは再び法廷の場へと移る。
27日午前10時半から県庁で会見した翁長知事は『さまざまな観点から国の工事内容を確認し、沖縄防衛局の留意事項違反や処分要件の事後的不充足などが認められた。公有水面埋め立て承認の効力を存続させることは、公益に適合し得ない』と述べ、撤回に向けた聴聞開始の理由を説明。
撤回の理由について、承認の条件となった留意事項に盛り込まれた県と国の環境保全策などの事前協議が行われていないことや、大浦湾側の軟弱地盤や活断層の存在、新基地が米国防総省の航空機の制限に抵触していることなどを挙げた」

翁長知事の埋め立て承認「取り消し」は2016年12月、最高裁によって違法だと見なされ、県側の敗訴が確定した経緯がある。「撤回」は埋め立て承認を無効にする力を持っているから、国側は総力を挙げて対抗策を練ってくるだろう。案の定、防衛局は沖縄県が通知した8月9日の「聴聞」の期日を9月3日以降に変更するよう求めてきた(沖縄タイムス 8月4日電子版)。準備期間が短すぎるという理由であるが、仮に9月3日以降に延期した場合、防衛局が以前から計画している8月17日の土砂投入はすでに終わっていることになる。つまり、防衛局は何としても撤回前に土砂投入を済ませたいのである。

しかし、翁長知事死去に伴う職務代理者である謝花喜一郎副知事は8日夜、予定通り9日に聴聞を行う考えを明らかにし、沖縄県は9日午後2時から県庁内で「聴聞」を行った。
防衛局側は中嶋浩一郎局長らが出席し、予定されていた午後4時を20分ほど過ぎて聴聞が終了した。防衛局側は撤回通知に対する弁明を述べた上で、改めて弁明の機会を設けるよう求めたが、県辺野古対策課は報道陣に対し、「今日で聴聞が終了したと理解している」との考えを示した。職務代理者による撤回の決断がいつになるか、が次の焦点である。
読売新聞は政府に次のような意向があることを報じていて興味深い。「政府は、翁長氏の死去を受け、土砂投入の延期を検討している。死去に乗じて埋め立て工事を進めていると見られれば、『移設反対派の怒りを買い、静かな環境での選挙戦にならなくなる』(自民党幹部)ためだ」(8月8日朝刊)

知事選挙――争点ぼかしは通用するか?
「沖縄に新しい米軍基地を作らせない」という翁長知事の政策を支えてきた人たちは今、深い悲しみと動揺に包まれている。
翁長知事の死去により、11月18日に投開票が予定されていた知事選は9月に前倒しされることになるが、自民党は7月下旬に、現宜野湾市市長の佐喜真淳(さきま・あつし)氏を翁長知事の対立候補として立てたばかりだ。翁長市長を失った基地反対派は「オール沖縄」を軸に、急遽、翁長知事の後継者を絞らなければならない。翁長知事以外の候補者を想定していなかった「オール沖縄」は感傷に浸っている時間はないのである。
琉球新報は10日の朝刊で、現在候補者として噂に上っている人々の名前を挙げている。

○金秀グループの呉屋守将氏(69)、「オール沖縄」体制の構築にも貢献した
○現職の那覇市長、城間幹子氏(67)
○前名護市長、稲嶺進氏(73)
○参院議員、糸数慶子氏(70)
○参院議員、元宜野湾市長、伊波洋一氏(66)
○現副知事、謝花喜一郎氏(61)

ただ、本格的な検討は13日の知事告別式が終わってからということになる。「オール沖縄」としては、これまで市町村議会議員選挙で惨敗してきているので、候補者選びは慎重にならざるを得ない。特に、政党色・革新色の強い候補者は避けなければならないだろう。「イデオロギーよりアイデンティティー」で県民を束ねてきた翁長知事の路線をしっかり守ることが勝利の必須条件だろう。
今回の知事選については県政与党・野党に戸惑いがある。「翁長知事のかわりは翁長知事以外にはいない」という姿勢で知事選に臨んできた与党が候補者の人選に迷うのは無理からぬことである。野党としては名護市長選挙をはじめとして連勝を重ねてきたが、今回は翁長知事の「弔い合戦」になる可能性が十分にある。朝日新聞は自民党の戸惑いを次のように伝えている。

「知事選は移設計画反対の旗振りだった翁長氏の『弔い合戦』の色合いが濃くなる可能性があり、官邸幹部は『無党派層を含めて票の流れが読めない』とみる。普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で予定している土砂投入のタイミングを見直すかどうかを含めて、改めて検討するという」(8月8日朝刊)

基地問題を棚上げし、争点をぼかして何とか勝ってきたその場しのぎの手法が果たして今回も通用するだろうか? 特に、野党候補の佐喜真淳氏は普天間基地を抱えている宜野湾市の市長であり、その彼が普天間基地の移設先である辺野古をかかえる渡具知武豊(とぐち・たけとよ)名護市長と何ら連絡を取り合わずに選挙戦を闘えるであろうか。私はむしろ、佐喜真氏と渡具知氏が手を取り合って、戦後73年間の沖縄の現実に真正面から向き合って闘うことを心から願っている。
辺野古移設についての賛否を問う県民投票の準備も進められている。沖縄の現実に向き合わない生き方などありうるはずがないのだ。今度の選挙が、普天間基地返還・辺野古移設容認か否かを選択する歴史的な選挙とならなければならない。そのことは「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返す政府に対して、「本当にそうなのか? それで政府の責任は果たせているのか?」と問い続けることでもあるのだ。
最後に、佐藤優氏の次の文章に賛同の意を表したい。

「日本における沖縄に対する構造的差別は国家機構のすべてにいきわたっている。裁判所も日本の陸地面積の0.6%を占めるに過ぎない沖縄県に在日米軍専用施設の約70%が所在するという不平等な状況を是正しようとはしないであろう。それであっても、「あの人たち」すなわち日本によって設定されたゲームのルールのなかで、構造的差別の脱構築とともに東アジアで平和を求める流れに沖縄を組み込もうと翁長氏は必死になっている。健康状態を考えた場合、翁長氏は、沖縄のために文字通り命を差し出すつもりだ。筆者も東京に住む一人の沖縄人として、翁長氏のような指導者がいることを誇りに思う。」(東京新聞2018.8.3「本音のコラム」)
(2018.8.10記す)
2018.08.09 よくもぬけぬけと、「公務員懲戒 免除を検討」だと!
政治の傲慢をまた見過ごすのか
暴論珍説メモ


田畑光永 (ジャーナリスト)

 酷暑に加えて豪雨、台風に挟み撃ちされて、気の休まる暇のない日々が続くが、7日の朝刊(『毎日』)で「公務員懲戒 免除を検討」という記事を読んだ時には、怒りよりため息が先に立った。
 それによれば、「複数の政府関係者」が明らかにしたそうなのだが、政府は来年の天皇退位・皇太子即位に合わせて、「国家公務員が過去に受けた懲戒処分の免除を行う検討を始めた」そうなのだ。
 そんなことが出来るのかと驚いたが、「公務員等の懲戒免所等に関する法律」というのがあって、内閣が定める政令によって公務員の懲戒処分(免職、停職、減給、戒告)を免除することができ、過去にも1989年2月、昭和天皇の大葬の礼など「恩赦」が行われたおりに、合わせておこなわれた例があるという。
 公務員への処分が免除されるとはどういうことか。減給処分を受けている最中に免除されれば、減給が停止されるが、期間が過ぎていれば減給分は返されない。そのほかの処分に対する免除は要するに履歴から消されるということらしい。
 したがって、執行中の刑罰が減刑される恩赦とは性格がちがうようだ。なぜなら公務員が懲戒処分を受けるというのは、国家、国民に対する義務違反を犯したのであるから、それをなかったことにするのは、一般の犯罪に対する刑罰の減免とは意味がちがう。しかも、安倍内閣がそれを行うのは、われわれとしては断じて受け入れることはできない。
 というのは、官僚の不祥事がこの内閣ではとりわけ多いからだ。防衛省のイラク駐留日報消失問題とか厚生労働省の裁量労働制をめぐるデータ改ざんとか、単純に当該公務員の利益とか都合とかによるのでなく、そこに何らかの内閣の政策意図とかかわりがありそうな不祥事が多い。
 とりわけ重大なのは、言うまでもなく森友学園に対する国有地払い下げ問題にかかわる膨大な財務省文書の改ざんである。昨2017年2月から3月にかけて、当時の財務省理財局・佐川宣壽局長の主導のもとに本省と近畿財務局において数百頁にもわたる公文書の改ざんが行われた。まさに前代未聞の不祥事である。国税庁長官に昇格していた佐川氏はこの春、「懲戒」処分を受けて辞職したが、関わった官僚からは自殺者も出た。
 つい最近の事件だから、詳細は省くが、事件の直接の責任を問われた麻生財務相は「行政文書を改ざんし、それを国会に提出することはあってはならないことで、はなはだ遺憾だ。・・・深くお詫び申し上げる」と一応、頭は下げたが、自身の辞任は拒み、「閣僚給与の12か月分の自主返納」をお詫びの証しとした。
 最高責任者の安倍首相も「信なくば立たず、国民の信頼を得るために、行政のトップである私自身が、一つ一つの問題について、責任を持って必ず全容を解明し、うみを出し切っていく決意だ」とのべた。
 しかし、こうした麻生、安倍両氏の発言に、国民は名状しがたい自嘲の気分で苦笑するしかなかった。「あってはならないこと」とか、「うみを出し切る」とか、あくまで官僚がとんでもないことをしでかしたのを、その上に立つものとしてきびしく糺すという両氏の態度には開いた口がふさがらなかったからだ。
官僚はしたくて改ざんしたのでもなければ、悪いことと思わずに改ざんしたのでもない。改ざんの目的は不明朗な土地の払い下げに安倍首相夫妻が関わっていた証拠を消すため、その一点だったことは、改ざんの内容から明らかだった。そんな分かり切ったことを、まるでなかったもののようにして、ことを公文書管理問題などというあたりさわりのないところにすり替えたのがつい今年の春であった。
 こんなタネの見える手品のような手口でも国民を騙しおおせたと思っているから、安倍首相は来月の自民党総裁選に出馬して、さらに政権の座に居座ろうとしているのだ。そして自民党という政党はそんな総裁を引き続きトップに押し戴くのであろう。
 この国を覆うそういうどんよりとした空気の中にいるからこそ、つい最近、悪人役を割り振った佐川氏をはじめ、政治の泥をかぶった官僚たちから懲戒という形だけの汚名をも取り除いてやろう、という政治の傲慢が頭をもたげる。それが「公務員の懲戒免除」にほかならない。
 これもまたこともなく、なんでもない政治の所作として過ぎ去っていくのであろうか。
2018.08.06 〝吹き出物〟のように次から次へ出て来る自民党議員の暴言
国民はいつまでこの政党に我慢するのか

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

 「魚は頭から腐る」というが、頭やはらわたはもとより尾ひれや背びれまで腐っているのが今の自民党だ。それでいて国会では絶対多数の議席を占めているのだから、彼・彼女らのなかには「自省」という言葉がないのだろう。要するに、「言いたい放題」「したい放題」の幼稚なチルドレン議員が大手を振って国会を歩いているのである。

 しかも気になるのは、彼・彼女らの暴言が最近になって社会的弱者や少数者(マイノリティ)に対して向けられてきていると言うことだ。6月末の衆院厚生労働委員会の質疑では、自民党の穴見議員が参考人として出席した肺がん患者代表の長谷川氏に対して、「いいかげんにしろ!」とヤジを飛ばしたことは記憶に新しい。法案審議のために参考人の意見を求めるのが議会制民主主義の原則である以上、穴見議員の発言は国民と国会に対する冒涜行為であることはいうまでもない。しかし私は、それ以上に穴見議員の発言の中にがん患者に代表される病弱者への恫喝とも言える強圧的響きを強く感じた。病弱者に対する受動喫煙対策などこれ以上の配慮は無用だ―とする強者の心情が、「いいかげんにしろ!」という発言になったのだ。

 自民党の杉田衆院議員が、雑誌『新潮45』に寄稿した「『LGBT』支援の度が過ぎる」という論稿もまったく同じ延長線上にある。「LGBT(性的少数者)のカップルは子供を作らない、つまり『生産性』がない」と言いきり、税金を使うことに疑問を唱えたのである。私は杉田議員が使った「生産性」という言葉に注目する。なぜなら、それはいみじくも人口減少時代の自民党の人口政策、労働力政策の本質をあらわす言葉であり、人間を労働力としかみないこの政党の素顔を赤裸々に暴露しているからだ。

 ナチスドイツも帝国日本も「生産性」を極めて重視した。両国は「産めよ増やせよ」との人口政策を大々的に推進する一方、障害者や少数民族は徹底的に差別して弾圧した。要するに、労働力や兵力として利用できる人間を大量生産することが「生産性」が高いのであり、人を人として尊重し大切にすることは「生産性」が低いというのである。この伝統を受け継いだのが自民党だ。非正規労働者を増やすだけ増やして労働力を酷使し、若者が結婚もできない家庭も持てない状況に追いこみながら、その一方で「生産性」の低い、すなわち子どもを産まない(産めない)若者を非難してきた。こんな非人道的で矛盾極まる政策を推進してきたのが自民党なのである。

 だが、構造的な人口減少、急速に高まる人手不足を目前にして、自民党はこれまでの人口消耗政策をもはや継続することができなくなった。外国人労働者の大量受け入れに踏み切らざるを得なくなり、労働力政策を大転換することになったのである。しかしながら、自民党の外国人受け入れは家族持ちを除外しているように、それはあくまでも「労働力」としてであり、市民や社会人としてではない。言い換えれば、広まりつつある階層社会の底辺に外国人労働者を滞留させ、その上に日本人労働者の「生産性」を高めようというのである。

移民を大量に受け入れてきた先進諸国では、いま人口構造に大きな異変が生じている。移民すなわち少数民族の人口が急激に増加するかたわら、白人を中心とする人口はむしろ減少傾向に向かっている。市民権を得た移民労働者がこのまま増え続ければ選挙行動や政治行動への波及は避けられず、やがては政治構造そのものを大きく変える方向へ発展していくだろう。

このような趨勢を見るとき、安倍首相はもとより日本会議に結集する自民党議員の多くにとっては、「瑞穂の国」を守ることが至上命題である以上、日本人の「生産性」を高めなくてはならないと考えるのは当然であろう。それが、優生思想と人種差別にもとづく「生産性」の強調となるのであり、ときにはヘイトスピーチへと発展していくのである。

穴見議員や杉田議員の発言を幼稚なチルドレン議員の暴言と侮ってはならない。そこには人口減少時代の自民党政策を象徴する危険な芽が含まれているのであり、それを未然に摘み取ることは保守層も含めての課題である。平気でウソをつき、平然と居直り、あくまで権力の座を降りようとしない安倍首相への批判を含めて、穴見・杉田両議員の暴言へ糾弾を止めてはならないと思う。

2018.07.28 保守岩盤層が形成されるなかで、野党共闘路線の膠着状態をいかに打開するか
広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)
                 
 今年1月22日から始まった第196回通常国会が7月22日、閉幕した。今国会では、モリカケ問題の引き続く疑惑隠蔽、財務省による公文書の改ざん、同省次官のセクハラ問題、防衛省の日報隠蔽など、どれ一つ取って見てもそれだけで内閣が吹っ飛ぶほどの大不祥事が続発したにもかかわらず、安倍政権は強引きわまる国会運営で野党をねじ伏せ、重要法案を悉く成立させた。安倍1強体制の下では、国会はもはや「言論の府」としての機能を失い、悪法といえども与党法案をトコロテン方式に成立させる〝自動マシーン〟と化したのである。

 7月23日に発表された共同通信社の最新の世論調査結果(7月21,22日実施)を見ても、自公与党らが強行採決した重要法案や政府の西日本豪雨への対応などに対しては、悉く国民から不支持が表明されており(京都新聞2018年7月23日)、民意の所在は余りにも明らかだ。にもかかわらず、なぜ安倍政権はかくも世論を無視した国会運営に走るのか、そこには国民世論への怖れはないのか、次の参院選での与党敗北に対する懸念はないのか―、など、通常の政治感覚では理解できない疑問が次から次へと湧いてくる。

 戦後最悪といわれる安倍政権の専制体質、衆参両院で3分の2の議席を占める数の驕り、野党共闘路線の分断など、安倍1強体制の継続に関するこれまでの解釈に加えて、ここではそこにどんな新しい政治構図を見出せるか、今回の共同通信調査を参考にしながら考えてみたい。まずは、調査結果を以下に示そう。

〇大きな被害を出した西日本豪雨について、警戒中だった5日夜に、安倍晋三首相ら自民党議員が飲み会に参加していましたが、首相は初動対応に問題はなかったとの認識を示しています。あなたは、安倍内閣の豪雨対策を評価しますか、しませんか。→「評価する」27.5%、「評価しない」62.5%
〇政府、与党は、カジノを含む統合型リゾート施設整備法を今国会で成立させました。カジノの解禁には、地域の活性化や経済効果への期待がある一方で、ギャンブル依存症や治安悪化への懸念が指摘されています。あなたは、カジノを解禁する今回の法律に賛成ですか、反対ですか。→「賛成」27.6%、「反対」64.8%
〇自民党などは、参院選の「1票の格差」是正に向け、選挙区で「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区を継承しつつ、定数を6つ増やす改正公選法を今国会で成立させました。野党は自民党の党利党略だと指摘し、定数を増やすことを批判しました。あなたは、この法改正は問題だと思いますか、思いませんか。→「問題だ」55.6%、「問題ではない」27.6%
〇今国会で「働き方改革関連法」が成立し、高収入の一部専門職を残業代支払いなど労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」が導入されることが決まりました。野党は「残業代ゼロ」法と批判しました。あなたは、働き方改革関連法を評価しますか、しませんか。→「評価する」27.8%、「評価しない」60.9%
〇今国会では、森友学園問題や加計学園問題など政権の不祥事や疑惑が注目を集めました。あなたは、次の国会でもこれらの問題について追及するべきだと思いますか。→「追及するべきだ」45.7%、「追及する必要はない」49.3%

 この調査結果について私がとりわけ注目するのは、どの質問項目に対しても安倍内閣の方針を支持する回答が全体の4分の1強を占めていることだ。しかもその比率が、「豪雨対策、評価」27.5%、「統合型リゾート施設整備法、賛成」27.6%、「参院選定数増加、問題ではない」27.6%、「働き方改革関連法、評価」27.8%とコンマ以下までほぼ揃っており、驚くほど安定していることである。このことが意味することは、国民世論の中に安倍内閣の如何なる政策に対しても(無条件で)支持する「保守岩盤層=中核的保守層」の影響力がこれまでになく強まっているということだろう。

 加えて、「モリカケ問題、追及する必要ない」が49.3%と4分の1強を20%も上回っているように、モリカケ問題の「幕引き」を容認する世論が保守岩盤層のみならず保守周辺層にも広がっている。自民党支持率が41.6%と驚くほど高いレベルに達しているのは、モリカケ問題の「風化」が保守周辺層の自民回帰に少なからず寄与しているからだ。

 安倍政権の強引な国会運営は、こうした強固な保守岩盤層の形成と無関係ではあるまい。小選挙区制の特質を利用して得票数の過半数を制すれば議席を確保できるし、野党候補が乱立すればそれ以下の得票数でも楽々と当選できる。投票率が全体として50%台に低迷する中で、28%近い保守岩盤層の存在は決定的とさえいえる。世論動向はどうあろうとも、保守岩盤層さえ固めておけば「当選確実」となる政治構造が既にでき上がっているというべきであろう。最近の自民党の選挙戦術が空中戦を避け、もっぱら既存組織の票固めに集中しているのはこのことを物語っている。

 一方、こうした世論調査ではなかなか把握しにくい国民の政治感情はいったいどうなっているのだろうか。安倍内閣の政策には反対だが、その声が国会での議論や議決に何ら反映しないとなると、国民の間には政治に対する深い失望感が引き起され、何をやっても無駄との諦めの感情を拡がってくることは避け難い。国会での論戦が封じられるにつれて、それが与党に対する怒りよりも野党の不甲斐なさに対する絶望感につながり、野党支持率低迷の原因になっていることは明らかなのだ。また、野党共闘路線がいっこうに具体化しないことが、野党への期待感を著しく削いでいることは言うまでもない。

 こうした政治情勢の中で野党共闘路線をいかに再構築していくのか。私は野党間の政策協定や選挙協定の成立に精力をすり減らすよりも、保守岩盤層との直接的対話が重要だと考える。「日本の政治はこれでよいのか」「安倍政権をこのまま継続させてよいのか」「モリカケ問題に象徴される統治機構の劣化をこのまま放置してよいのか」などなど、青臭くてもまともな議論を街角から提起していくことが先決だと思うのである。果たしてこんな素人っぽい提案が玄人筋に通じるかどうかわからないが、日本の政治構造の岩盤が大きく変容しつつある情勢の下では、小手先の解決案は通用しない。国民の間に広がる失望感と無力感に立ち向かうには、「足元を掘る」しかないのではないか。

2018.07.14 百聞は一見に如かず、安倍首相も出席した豪雨災害予報中の「赤坂自民亭」の宴会写真
 
広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)

              
 私はフェイスブックもツイッターもやらない(できない)ので、西村官房副長官が拡散したツイッター写真、「赤坂自民亭」の宴会写真のことは当初知らなかった。知ったのは、インターネットで配信される共同通信社の7月10日のニュースからだ。12日からは全国紙でも一斉に報道され、続いて西村氏の地元の神戸新聞でも掲載された。神戸新聞は次のように言う。

 「西日本豪雨の被害が迫っていた(7月)5日夜、自民党国会議員ら約50人が宴会を開いたことを巡り、安倍晋三首相と共に出席し、写真をツイッターに投稿した西村康稔官房副長官(兵庫9区)の地元で批判の声が上がっている。兵庫県内では当時、10万人以上に避難勧告が出ており、阪神・淡路大震災を経験した淡路島の住民らは『緊張感が足りない』と厳しい目を向ける。(略)西村氏の事務所には批判の電話やメールが寄せられ、11日午後、自身のツイッターで『災害発生時に会合を開いているかのような誤解を与え、不愉快な思いを抱かせたことをおわび申し上げます』と謝罪。宴会には藤井比早之衆院議員(兵庫4区)も参加していた」

 平成になってから史上最悪の死者200人を超える豪雨災害をもたらした西日本豪雨は、いまなお安否不明者の捜索が続く中、犠牲者が連日増え続けており痛ましい限りだ。7月5日にはすでに気象庁から豪雨予報が出され、気象庁は厳重警戒を呼び掛けていた。兵庫県内では10万人以上(15万人)の住民に避難指示・勧告が出され、各自治体は職員に非常招集を掛けていた。それにもかかわらず(ものともせず)、7月5日夜には政府側からは安倍首相、小野寺防衛相、上川法相などの閣僚が居並び、自民党側からは岸田政調会長、竹下国会対策委員長など幹部が出席して議員会館で大宴会を催していたのである。加えてそれを、西村官房副長官がツイッターで「和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を撮り放題!正に自由民主党」と誇らしげに広報するのだから開いた口が塞がらない。

 いったいこの連中には災害に対する危機意識というものがないのか、徹夜で災害情報の分析に取り組んでいる気象庁職員、災害出動に備えている自治体職員や自衛隊員に対する配慮はないのか、公務に専念すべき議員会館で大宴会に興じていいのかなどなど―、次から次へと抑えきれない怒りがこみ上げてくる。広島県庁に勤務する知人に現地の様子を尋ねてみたら、地元では岸田氏に対する怒りが凄まじい勢いで広がっているのだという。その怒りの渦は西村氏に対する兵庫県民の比ではない。なにしろ広島県は連日連夜NHKニュースでも報道されている如く、今回の豪雨では西日本最大の災害を被っているのである。しかも、広島県の豪雨災害は今回が初めてではない。4年前には広島市北部が集中豪雨に見舞われ、80人近い死者を出しているのである(過去30年間最大規模)。それでいながら、岸田氏は豪雨予報の最中にも地元にも帰らず、東京赤坂の議員会館で大宴会に興じていたのである。

 安倍首相は豪雨災害の拡大を受けて、予定していた大好きな外遊日程(7月11日から18日の欧州・中東歴訪)を取りやめざるを得なかった。首相自身は最後の最後まで(たとえ日程を短縮してでも)外遊日程にこだわったらしいが、西村官房副長官のツイッターに対する国民の批判が日増しに高まり、このまま外遊すれば帰国後の政治情勢の激変は不可避との説得を受けて、漸く断念したのだという。自らが置かれている事態の重大性を理解できないからだろう。

 宴会に同席した竹下国会対策委員長が7月9日の記者会見で、「どのような非難もお受けする。これだけすごい災害になるという予想は持っていなかった」と釈明したように、政府の今回の豪雨災害に対する初動対応は遅きに失した。7月5日に大雨警報が出され、6日になると西日本各地から早くも河川の氾濫や堤防の決壊、大規模な土砂崩れなどの災害情報が相次いでいたにもかかわらず、緊急閣僚会議が開かれたのは7日午前(僅か15分間)、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部が設置されたのは8日朝だった。安倍首相はその場で「過去の災害の教訓を生かし、被災府県、市町村と連携しながら先手先手で被災者支援に当たってほしい」と訓示したというが、ご本人は土日とも早々に都内の自宅に引き揚げたという(青木理、『理の眼』、毎日新聞7月11日夕刊)。

 安倍首相は7月11日、視察先の岡山市内の被災現場で記者団に「初動の遅れが指摘されているが」と問われたのに対し、西日本豪雨への政府の初動対応について、「一丸となって発災以来、全力で取り組んできた」と述べ、問題はなかったとの認識を示したという(時事通信、7月11日)。しかし、問題があるかないかを判断するのは被災者であり国民であって、災害初動対応を放置して宴会に興じていたご本人が言うべき言葉ではあるまい。安倍首相はまだ、自らの言動を客観視する資質と能力に欠けていることに対して自覚がないと見える。

 先週末に実施されたNHKの世論調査では、内閣支持率で「支持」が「不支持」を4カ月ぶりに上回った。支持する理由は「他の内閣よりもよさそう」、支持しない理由は「人柄が信頼できない」と変わらない。この支持率の上昇をどうみるかについてNHKの解説委員が述べていたことは、「北朝鮮問題をはじめ日本を取り巻く国際情勢も流動化が際立っており、米中貿易摩擦で株価も乱高下している。少しでも安定を望む国民心理の表れだ」ということだった。安倍首相が災害対策に全力を尽くすというのは、この国民心理を有効に利用したいということなのだろうか。
 
 もうそろそろ、国民は目覚めてほしい。「仏の顔も三度まで」というが、口先男の仮面の裏にどんな素顔が隠れているかまともに見るべき時なのだ。「二度あることは三度ある」ようなことはもう終わりにしたいのである。

百聞は一見にしかず⓵
自民飲み会に野党批判 災害警戒中「責任感欠如」
共同通信社
2018/07/10 19:54

百聞は一見にしかず➁

© KYODONEWS 5日夜に議員宿舎で開かれ、安倍首相らが出席した懇親会の写真(西村康稔官房副長官のツイッターより)