2007.07.25 考察 憲法9条、候補者アンケートで見えるもの
田尻孝二 (生協役員)


 いよいよ投票日が近づいて来た。選挙区は人で選ぶ。大切な一票、よく考えて自分の代弁者となる候補者を選ばねばならぬ。争点は種々あるが、わたしの関心は憲法にある。そこにしぼって東京選挙区の候補者たちの主張をまとめてみた。

 考察は毎日新聞の候補者アンケートをもとにしている。ボートマッチ(政党相性度チェック)作成の際に実施した21問である。今回、憲法に関わる質問を選び候補者の主張を比較できる一覧を作成した。

回答は毎日新聞が予め用意した選択肢の中から自分の考えを選ぶ形式で行われた。考察で採り上げた4つの設問と選択肢は以下のようである。
Q 憲法を改正すべきだと思いますか。
 1 改正すべきだ
 2 改正すべきでない
Q 憲法9条を改正すべきだと思いますか。
 1 改正すべきだ
 2 改正すべきでない
Q 憲法9条と自衛隊の関係についてあなたの考えに近いものを一つ選んでください。
 1 海外でも武力行使できる軍隊の保有を憲法に明記すべきだ
 2 専守防衛を前提に自衛隊の保有を憲法に明記すべきだ
 3 憲法9条を改正せず、自衛隊も現状のままでいい
 4 憲法9条を改正せず、自衛隊は縮小すべきだ
Q 現憲法下で集団的自衛権の行使は認められていると思いますか。
 1 認められる
 2 認められない

 驚くべきことに東京選挙区の主だった候補者は全員が「憲法9条を改正すべきでない」と答えている。しかし、全員が同意見であろうはずがない。この問題は自衛隊の在り様の評価を背中にくっ付けている。だから、いくつかの関連質問の答え方を総合して初めて候補者が見えてくるのである。

アンケートの回答の一覧を見る前に「自衛権」についての簡単なまとめをご覧いただきたい。
国際法では国家に自衛権を認めている。
 国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。(国連憲章)

政府は自衛権の発動に3つの要件を示している。(72年田中内閣)
第1.わが国に対する急迫不正の侵害があること。
第2.これを排除する他の手段がないこと。
第3.必要最小限度の実力行使にとどめること。
歴代内閣はこの3条件を満たして守りに徹する、いわゆる専守防衛の考え方の中で自衛隊は憲法違反でないと言い続けてきた。

次に集団的自衛権の政府見解は以下のようである。(81年政府答弁)
 国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されてもいないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有しているものとされている。
 我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは主権国家である以上、当然であるが、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えている

 それではアンケートの結果を見てみよう。
2007.05.04 急速な改憲の動きに深い憂慮
全国憲法研究会が声明を発表

 約400人の憲法学者の集まりである「全国憲法研究会」代表の森英樹・龍谷大学教授が3日、東京で「日本国憲法施行60周年にあたって」と題する声明を発表した。
 声明は「施行60周年を迎えた憲法に対して、これを『改正』してその基本原理に『引退』を迫る政治状況が、急速かつ本格的に展開している。こうした動きは、深い憂慮の念を抱かせる」として、「全国憲法研究会は、引き続き、平和・民主・人権を基本原理とする日本国憲法を護る立場に立って学問的研究を展開する」と述べている。
声明の全文は次の通り。
2007.05.01 改憲の狙いを漫画でわかりやすく
連合通信社が発行

漫画『憲法メルトダウン』表紙 憲法改正の狙いをわかりやすく説明した漫画『憲法メルトダウン』が、労働組合や市民団体にニュースを配信している連合通信社(東京都港区)から発行された。

 同通信社によると、現在、急ピッチで進められている憲法改正への狙いを幅広い市民、とくに若い世代に伝えたくて発行したという。発行にあたっては、伊藤塾塾長・法学館憲法研究所所長の伊藤真さんと評論家・佐高信さんの話からヒントを得て漫画の内容を決めたとのことで、改憲派の「軍事力が国民を守る」という主張が幻想にすぎないこと、改憲によって国家権力と国民との力関係が逆転しかねないことなどを強調したストーリーにしたという。画は小桜広太さん。
2007.04.13 国民投票法案で平和アピール七人委が緊急アピール
 世界平和のために発言を続けている知識人のグループ「世界平和アピール七人委員会」は4月12日、衆院で審議中の憲法改正の手続きを定める国民投票法案について「アピール」を発表し、各政党、報道機関などに送った。
 アピールは、与党、民主党の両案について「憲法改正というもっとも根源的かつ基本的な投票を、投票率に関係なく、有効投票数の過半数という決め方をするのは適切でない」とし、「総有権者を基礎にしている諸外国の例にならって、総有権者の過半数の賛成を必要とするという成立条件を加える修正をおこなうことを強く要請します」と述べている。
 アピールの全文は次の通り。 
2007.04.11 慎重な審議を  国民投票法案で法学研究者が緊急声明
 国会で審議中の、憲法改正の手続きを定める国民投票法案について、憲法学者ら法学研究者111人が4月10日、「憲法改正手続法案の憲法原理に則った慎重な審議を求める法学研究者の緊急声明」を発表した。11日、衆院議長らに送る。

声明は、法案に投票の成立に必要な最低投票率制度が設けられていないこと、公務員および教育者に対して国民投票運動を制限していることなどを「看過できない重大な問題点」とし、「これらの解消なしに同法が成立することは、大きな禍根を今後に残す」としている。

 声明には、愛敬浩二(名古屋大学)、植野妙実子(中央大学)、浦田賢治(早稲田大学名誉教授)、君島東彦(立命館大学)、坂口正二郎(一橋大学)、杉原泰雄(一橋大名誉教授)、田島泰彦(上智大学)、水島朝穂(早稲田大学)、渡辺治(一橋大学)の各氏らが賛同している。

 緊急声明は次の通り。
2007.03.17 1946年6月、第90帝国議会(憲法制定議会)
内田 雅敏

――日本国憲法制定過程で国民の意思が表明
          されたことはなかったという論は正確か――


1.あれは大学1年の最初の講義の際の出来事だった。確か一般教養、語学(英語)の時間だった。始業開始少し前に教室に入り、教授の登場を待っていたところ、突然、上級生が入って来て、憲法改悪反対の演説を始めた。熱っぽく訴える上級生の話を感銘深く聴きながら、これが大学だと思った。大学では講義の始まる前に憲法論議をすることができるのだと思った。
 もっとも、これは私の全くの思い込みであって、まもなく教授が登場し、講義を始めるから出て行ってくれと件の上級生に言った。そこで「大事な話をしているので少しばかり時間を下さい」と若干やりとりがあった後、上級生は教室から去って行き、憲法改悪反対の演説は中途で終わってしまった。教授の「事前に話しがあったならばともかく、突然は困る」という言い分は、今、考えれば至極当然のことであるが、それでもその時は、せっかく熱っぽく訴えていたのにと、その上級生がちょっぴり気の毒な気がした。