2007.08.29  被爆体験を継承するにはどうしたらいいか
岩垂 弘 (ジャーナリスト)


広島・長崎での見聞から

 8月21日付の朝日新聞の「声」欄にこんな投書が載っていた。
 「スティーブン・オカザキ監督の『ヒロシマナガサキ』というドキュメンタリー映画を見た。被爆者の体験に基づく証言は、何度聞いても悲惨で苦しくなる。
 今回の映画で一番印象深かったのは、人口の75%が戦後生まれという事実だった。戦争の生き証人がいなくなるという危機感が初めて伝わってきた。75%が80%になり90%になった時、戦後生まれの私たちが『戦争』『原爆』の愚かさ、悲惨さをどう伝えていくか、考えていかないといけないと強く思った」
 長崎県在住の、53歳になる無職の女性からの投稿だった。

 私は今年も、8月6日の「広島原爆の日」、8月9日の「長崎原爆の日」をはさんで、広島、長崎両市で開かれた一連の被爆62周年関連の催しを見て回ったが、その間、私がとくに痛感したことの一つは、この投書の主と同様の懸念だった。すなわち、「これから先、被爆体験を伝えてゆくにはどうしたらよいか」という懸念だ。

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