2007.10.31  壊心4 長沼町に陽が沈む
原田克子 

 父や母、
 もはやあなたたちに会いたいとはおもいません
 ただこどものことが気掛かりです
 ちょうどこの夕日の真下にいる
 こどものことが気掛かりです
 長沼町を通り抜け
 高速道路の向こう側に
 幕張の海を埋め尽くした
 高層ビルに点滅する明かりは
 このままハンドルをきらずに進めという信号のようです
 いつかそうしてしまうかもしれません

 海を壊し
 空を汚したこの手で
 また、花をたおりました
 でも、こどものことが気掛かりで
 長沼町へ向かうのです
 戻るわけでもなく
 帰るわけでもなく
 近づく闇夜が嫌いなわけでもなく
 夕日が美しいわけでもなく


          詩集『シュールダンスをあなたと』より