2007.12.31
年末雑感 「失望から希望へ」
半澤健市 (元金融機関勤務)
〈韓国大統領選挙の印象〉
年末に訪韓して日韓歴史学者による歴史認識に関する会議に参加した。
その本題と別に休憩時間や飲み会の席で私は複数の韓国人研究者に次の問いを発した。
(1)「97年の金大中、02年の盧武鉉、07年の李明博の大統領選挙で一番知的に興奮したのはいつか」
(2)「02年に盧武鉉に熱狂した若者はどこへ行ったのか」
(3)「次期大統領は経済再生をうたうが、財閥企業出の李明博はグローバリゼーションを推進するのではないか。格差は拡大するのではないか」
(1)へは「盧武鉉」という答えが多かった。ネット選挙に彼ら自身が酔っていた感じである。むろん金大中の時の興奮を付け加えるのを忘れない人もいた。それに比べて李明博へは 冷え切った反応であった。
(2)への回答は「彼らはどこかへ消えてしまった」「彼らは食うために李明博へ投じた」というものである。
(3)への回答は「お前の言う通りである」「複雑なコースを辿ろう、現時点での予想は困難」と言った。
李明博が直面する韓国経済の問題はなにか。
(1)不動産バブルを伴う物価上昇。
マンション価格は日本とそう変わらないという。お茶のペットボトルは韓国製品で1200ウォン=約150円、「おおい!お茶」が1700ウォン=約200円であった。
(2)所得格差拡大、失業率増加(大学新卒の就職率が50%)、非正規雇用者比率の増大
(3)物価高とウォン高による国際競争力低下
などである。日本の政策課題ともいくつかは共通している。
韓国国民は「経済再生最優先」という選択をした。
李明博の政策の詳細はまだそれほど明確ではない。とにかく企業経営の実績を経済政策に応用するといって彼は勝ったのである。CEO大統領とも、「コンピュータ付ブルドーザー」とも呼ばれている。日本の田中角栄は高度成長を背景にして壮大な「バラマキ政策」による「利権の構造」を作り上げた。だが李明博の課題は、角栄的手法を以てするには世界規模の経済競争が進みすぎていることである。
理念優先の現政権に失望した国民は「生活優先」を選択した。「失望から希望へ」がキーワードとみえる。