2008.08.30
黒澤明全作品30作の放映(19) 『蜘蛛巣城』(1957年)
―日本版「マクベス」はどう描かれたか―
■『蜘蛛巣城』は08年9月2日(火)午後9時からNHK・BS2で放映されます■
《黒澤明にとって「マクベス」とは》
『蜘蛛巣城』は、シェークスピアの「マクベス」の翻案で、時代劇としては54年の『七人の侍』に続く作品である。黒澤はその舞台を日本の戦国時代に据えた。
英語題名は The Throne of Blood で、直訳すれば「血の玉座」である。主君(ダンカン)や親友(バンクォー)を裏切って王となった武将(マクベス)が亡き主君の息子(マルコム)たちに復讐される物語である。映画評論家佐藤忠男とのインタビュー―英国人研究者に代って佐藤が行ったもの―で映画化の理由を問われて黒澤はこういう。
▼黒澤 日本の戦国時代には『マクベス』に描かれているような事件がたくさんありますね。下克上といって。だから『マクベス』の物語は非常に身近に感じられて翻案しやすかったのです。
佐藤 『マクベス』によってあなたは何を表現しようとしたのですか?
黒澤 『マクベス』には、弱肉強食の時代に生きた人間の姿が集約されています。強烈に人間が描かれています。この意味で、私の他のすべての作品と共通するものがあると思います。(『全集黒澤明』第四巻)
別の対談で黒澤はこういっている。
▼どうしてシェークスピアの『マクベス』を急にやりたくなったのかな。やはり何か、骨組の深いガッチリできてるドラマと、まともに取組みたかったのですね。中でも『マクベス』はいちばん戦国時代に移しやすい。たぶん、採りあげたときは〈三船君がマクベスを演じたらどうだろう〉そんな気持もたしかに働いていたんです。(略)撮る前には、シェークスピアや『マクベス』に関する研究もかなり読みましたけど、これはいくら読んだってキリがない話でね。結局は、日本式にやってしまえ、と。(「全自作を語る」)
半澤健市 (元金融機関勤務)
■『蜘蛛巣城』は08年9月2日(火)午後9時からNHK・BS2で放映されます■
《黒澤明にとって「マクベス」とは》
『蜘蛛巣城』は、シェークスピアの「マクベス」の翻案で、時代劇としては54年の『七人の侍』に続く作品である。黒澤はその舞台を日本の戦国時代に据えた。
英語題名は The Throne of Blood で、直訳すれば「血の玉座」である。主君(ダンカン)や親友(バンクォー)を裏切って王となった武将(マクベス)が亡き主君の息子(マルコム)たちに復讐される物語である。映画評論家佐藤忠男とのインタビュー―英国人研究者に代って佐藤が行ったもの―で映画化の理由を問われて黒澤はこういう。
▼黒澤 日本の戦国時代には『マクベス』に描かれているような事件がたくさんありますね。下克上といって。だから『マクベス』の物語は非常に身近に感じられて翻案しやすかったのです。
佐藤 『マクベス』によってあなたは何を表現しようとしたのですか?
黒澤 『マクベス』には、弱肉強食の時代に生きた人間の姿が集約されています。強烈に人間が描かれています。この意味で、私の他のすべての作品と共通するものがあると思います。(『全集黒澤明』第四巻)
別の対談で黒澤はこういっている。
▼どうしてシェークスピアの『マクベス』を急にやりたくなったのかな。やはり何か、骨組の深いガッチリできてるドラマと、まともに取組みたかったのですね。中でも『マクベス』はいちばん戦国時代に移しやすい。たぶん、採りあげたときは〈三船君がマクベスを演じたらどうだろう〉そんな気持もたしかに働いていたんです。(略)撮る前には、シェークスピアや『マクベス』に関する研究もかなり読みましたけど、これはいくら読んだってキリがない話でね。結局は、日本式にやってしまえ、と。(「全自作を語る」)