2009.12.31 葦の穴から日本をのぞく
――チベット高原の一隅にて――(64)                      

阿部治平(中国青海省在住、日本語教師)


日本のニュースはネットで見るだけ。それも大メディアのホームページといくつかのブログに限られる。日本の週刊誌も月刊誌もない。だから、わたしの頭は井の中の蛙である。だいぶずれているとはおもうものの、中国から見た印象を述べたい。

米軍普天間飛行場の移設をめぐって、「米、同盟協議を延期」(読売)、「普天間暗礁 同盟に影」(朝日)だそうだ。鳩山内閣発足以来、ずっと品のない悪口を続けてきた「産経」や「読売」だけではなく、「朝日」や「毎日」も日米安保の危機を訴え、のきなみ「日米同盟が危ない」という主張を繰返している。「朝日」なんか社説で「日米関係の基盤は安保条約であり、日本が基地を提供するのは不可欠の要件である」などという。

普天間飛行場の移設がなければ、海兵隊のグアムへの移転はない。沖縄への土地返還もない。アメリカは現行計画通りに進まなければ、米軍再編全体が停滞すると強く警告したそうだ。それで「米大使一変激怒」(産経)ということなのか。――ふつう外交官が「激怒」なんかするかね。翌日は戦争をはじめるつもりでも、冷たい顔で笑いあうのがふつうじゃないか?

わたしはハナから民主党政権に期待はしないことにしていたが、はじめこうした記事を見たとき、むかし鳩山首相がいった「常時駐留なき安保」に民主党政権が一歩踏み出し、それでアメリカが怒ったのかとおもって小躍りした。
昨年の衆議院選挙では、民主党は沖縄で普天間米軍基地の「県外、国外移設」を主張して、「辺野古移転」というアメリカとの合意実施を主張した自公候補を根こそぎ葬ったという経緯がある。

ところが、新内閣が成立して半年もたたないうちに「グアム全面移転は不可能」「海兵隊は必要だ」などと自民党と変らない発言をする。沖縄地方選挙で基地反対派が勝利すれば、それをテコによりましな方向で日米交渉が始まるかもしれないという期待があるけれども、鳩山内閣はどこまでやれるだろうか――もしやわれわれは防衛も外交もまるっきり素人にまかせたのではないかしらん。

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