2010.01.30 女性蔑視の女偏の漢字16字を改造すべきだ
-中国の若手弁護士が公開状で提案- 

丹藤佳紀 (ジャーナリスト)
                                
漢字の本家・中国で、フェミニストと目される上海の若手男性弁護士が女偏の漢字16字について「女性を蔑視している」と主張し、改造するよう提案した。1月10日、自分のブログに国家語言文字工作委員会(文化庁に相当)宛の意見書として発表した。

「16漢字の誤り:女性を尊重していないばかりでなく児童の人生観をミスリードする」の題で掲載され、これまでになかった角度からの問題提起とあってすぐさまネット世界で取り上げられた。甲骨文字以来、数千年の重みを持つ漢字の問題だけに、おびただしい量の賛否両論がかわされているが、8割方は批判的、否定的な意見・コメントだという。

この提案を出した葉満天弁護士(写真=本人ブログから)は、2004年6月、大学を卒業して9月の統一司法試験に合格し、弁護士になった。現在は上海の法律事務所に勤務し、知的財産権や契約などの問題を担当している。学生時代、自分の名前・葉書伝を改めようと思い立ち、漢字の成り立ちを解説した 『説文解字』を読んだ。その改名が今回の問題提起のきっかけになったという。中国で「80後」といわれる、改革・開放時代(1980~)に生まれた世代のトップバッターである。
丹藤写真


今回、葉満天弁護士のやり玉に挙げた女偏の漢字16個には次のようなものが含まれる。
娯・嫉・妬・嫌・奴・娼・妓・妖・嫖・奸(姦)。
葉弁護士はこれらの漢字について、「すべての文字におとしめる意味合いが含まれている。こうした漢字を児童が学んだり、大人が書いたり読んだりする過程で、視覚的にこれらの漢字と女性に関わりがあると思うようになる」と主張した。

たとえば「嫖」。これは現代中国の代表的な辞典である『現代漢語詞典』(第5版)では「売春婦とたわむれる堕落した行為」と説明されている。また、「飲む・打つ・買う」を示す4文字成語にも使われる。
葉弁護士は「こうした行為は男性によるものなのに、嫖という文字はなぜ女偏でできているのか。こうした文字は中国語の汚点だから『行人偏に不』と改めるべきだ」と主張する。『行人偏に不』という造字はどういう意味かというと、「二人の人間が社会的に許されないことをすること」だそうだ。そこから「この文字を見るたび無形の教育を受けることになる」と葉弁護士は主張している。

同じような趣旨で、「娯」は「行人偏に呉」、「嫉」は「行人偏に疾」と改める。前者には、女性が男性を楽しませるという含意があり、後者は何も女性に限った感情ではないという理由からである。また、「奸」は「犭(獣偏)+行」としてこれが蛮行であることを表すという。葉弁護士は「こうすることによって強姦罪を20%減らすことができると思う」と語っている。

賛成・支持する意見には少数ながら「5000年の文明に登場した 『革命』だ」と諸手をあげたものがある。他方、批判的なものやはっきり反対したコメントしには次のようなものがある。 
 ①16文字にはたしかにそういう傾向が含まれる。しかし、よく使われる漢字「好」や「妙」だって女偏でいい意味を持っており、慎重な対処が必要だ ②歴史的に男尊女卑が長く続いてきた。だから漢字の中には女性を蔑視した成分も含まれているだろう。しかし、「嫉妬」は女性だけの物ではないし、田を耕す力で「男」という漢字ができているからといって男性を蔑視したわけではあるまい ③問題はある。しかし、だからといってその文字を改造すれば一件落着というものではない。やはり、鍵は思想や文化、教育にある。

あるネット・サーファーの報告によると、ネット世論では、葉弁護士の主張・提案に賛成するネット市民は2割、反対や批判的な声が8割ぐらいの比率になっている。その理由について男性ネット市民がこう皮肉った。「この提案を非難したり、悪口を言ったりしているのはみな男性だ。それは、こういう主張を打ち出した葉弁護士を『いい子になっている』、 『ええかっこし』とひがみ、嫉妬しているからだ」。