2010.01.31 死に体になってしまったか、鳩山首相
暴論珍説メモ(76) 

田畑光永 (ジャーナリスト)


 鳩山民主党政権が出来て4ヵ月半が過ぎた。この間、組閣に続いて麻生政権の補正予算見直しと第二次補正予算編成、事業仕分けを経ての10年度予算編成と、とにかくこなさなければならない任務を一応こなして年明けを迎え、1月18日からは通常国会に臨んでいる。ここでもとりあえず09年度の第二次補正予算を成立させ、あらためて29日に鳩山首相が施政方針演説を行ったというのが現段階である。
 その施政方針演説を聞いた。正直なところ苦痛であった。戦後二番目という、一時間近い長さはともかく、去年秋の臨時国会での所信表明演説に比べると、私の印象では首相の表情はどこかおどおどとして、自信なさげであった。ガンジーの言葉を長々と引用し、また阪神・淡路大震災の被災者の声を細かく紹介したのは、なんとか聞く者を感動させたいという焦りではなかったか。この人のキメ台詞「・・・しようではありませんか、皆さん!」という呼びかけも、無理に声を絞り出している感じでむしろ痛々しかった。聞いているほうは耳をおおいたくなる。
 首相のこのおどおどの原因ははっきりしている。首相自身の母親からの献金問題と小沢幹事長の政治資金問題が今、政権をすっぽりおおっていて、内部の息苦しさは外部の人間にもわかる。首相自身、何度となく同じ事を聞かれ、同じ答えをすることはさぞや苦痛であろうし、小沢幹事長の問題にいたっては今後どう転ぶものか見当もつかない。政権トップ二人が泥沼に足を取られている格好だから、足を上げて前へ進めないのは当然である。
 だからこの後、二月、三月の予算審議がどう進み、七月の参議院選挙を迎える頃の政治情勢がどうなっているのか、まるで見通しがきかないが、そんな先のことよりも鳩山政権の死に体ぶりは施政方針演説の中味にすでに示されているように思える。
 政策課題はいろいろあっても、政権がとりわけ明確な方針を示さなければならないのは経済と外交である。このうち経済は相変わらず展望が開けないが、この状況は鳩山政権の責任ではないし、打つ手にしても誰がやろうとそう奇手妙手があるわけではない。公約に掲げたことが実行できなくても、また景気回復を確実にする具体策が示せなくてもやむをえない。ない袖を振れとは国民も言うまい。
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