2010.03.29 「日本財政破綻」―野口教授の悲観論
―国債バブルは本当だろうか(6)―

半澤健市 (元金融機関勤務)
       
            
 世界「金融バブル」の行方は「08年恐慌」に結末した。
それなら世界の「国債バブル」、「財政バブル」は新たな「恐慌」をもたらすのか。
いま、経済メディアは内外ともに「国債破綻論」「財政破綻論」の洪水である。それは「論」ではなく際どい「現実」でもある。そこで私の「国債バブルは本当だろうか」論は、「日本経済破綻」論の検討に入る。

《4つの破綻論議と野口悲観論》
 まず、この数週間私が面白く読んだ文章から次の4つをあげる。
1つ 野口悠紀雄「ついに国債破綻が始まった」(『文藝春秋』、10年3月号)
2つ 藤巻健史「日本経済は1年で破綻する」(『週刊朝日』、10年3月5日号)
3つ 悪夢「20XX年日本破綻」(『朝日新聞』、3月7日第一面に始まる記事)
4つ 高村薫「社会時評 本当に〈命守る〉予算か」(『東京新聞』、3月17日夕刊)
最初の野口説が論理明解でまとまりも良い。今回はその紹介に絞る。

早大野口教授は既に馴染みの論客である。
09年3月20日本欄で紹介した「日本経済最悪のシナリオ 野口教授の悲観論」は、中国経済を過小評価したきらいはあるが、総じて日本経済の構造問題をよく指摘していた。氏の視点は今回も変わらない。以下は半澤による野口論文の要約である。

野口教授の「国債破綻」論は、10年度予算の分析に始まりその結末の予想で終わる。
予算は歳出92兆円、税収37兆円、差額補填は実質55兆円の国債発行であった。
この予算には「日本の死相」が明瞭に現れており「まともに直視すれば、気が狂ってしまう事態である」。862兆円も国に借金があっても「日本には1400兆円の個人金融資産があるから大丈夫」というのは誤りだ。個人金融資産は銀行預金などの形ですでに使われている。新たな水(新規国債発行)を入れるのには桶(おけ)のサイズが毎年大きくなる(個人金融資産の増加=経済成長)か、すでに入っている水を抜く(企業貸出しの減少)必要がある。しかし個人金融資産の源泉たる貯蓄率は90年代の10%から1.7%(07年)にまで低下した。桶は以前のように大きくならないのである。90年代の銀行の企業融資残高は500兆円だったの最近は400兆円に落ち込んだ。つまり「水を抜いて」(貸付けを減らして)銀行が国債を買った。国債増発はこの「水抜き」メカニズムに支えられているのである。このメカニズムは限界に達しつつある。

《円の暴落とインフレの発生》
 国内で国債が消化できなければ次には外国のカネに頼ることになる。
しかし論文は「日本の死相」に関する外国発信の警告を述べている。
IMF(国際通貨基金)は10年1月26日の「国際金融安定性報告」で日本国債への市場の警戒感が高まったと指摘した。格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は日本国債格付け引き下げの可能性を示唆した。野口はいう。
▼現在の予算に見られるように無駄な用途に用いられて将来の返済能力強化に役立っていないと判断されて〈日本国債は危ないから買わない〉と評価される危険は大きい。そうなれば、日本国債は買い叩かれて暴落する。
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