2010.08.08 ミツバチの警告―「新農薬」は生態系と人の健康を脅かす
その1 長崎県で起きていること

岡田幹治(フリーライター)


 イチゴやメロンの花粉を媒介する交配用ミツバチの不足で大騒ぎになった昨年春から1年が過ぎ、今年は大きな不足がないまま交配のシーズンを終えようとしている。だが、ミツバチの大量死は各地で続いており、養蜂業者はネオニコチノイド系(ネオニコ系)の農薬(殺虫剤)こそ最大の原因との疑いを強めている。
 相次ぐミツバチの大量死は何を意味するのか。原因と疑われている新しい農薬は生態系と私たちの健康にどんな影響を与えるのか。本稿では、それらについて3回に分けて報告する。
1 長崎県で起きていること
2 「農薬」という巨大利権システム
3 ネオニコ系新農薬の特徴とその影響

梅雨晴れになった6月のある日、長崎県佐世保市のニホンミツバチ研究家、久志冨士男さん(74)に、佐世保市や平戸市(平戸島)を中心とする長崎県北部を案内してもらった。久志さんはこの地域の40カ所に合計200余りの巣箱を置いて、ニホンミツバチを育てている。
元気な群れが巣分かれ(分蜂)を終えるこの時期、ミツバチは一匹の女王バチを中心に一万匹もの雌の働きバチと少数の雄バチから成る群れで生活している。例年なら100群以上が住み着いているはずだ。

「ミツバチの墓んごたる」
しかし、佐世保市志方の県道沿いの雑木林では、置いてある四つの巣箱がすべて空だった。
「ミツバチの墓場んごたる(墓場みたいだ)」と久志さん。
 次に訪れた同市柚木の国道沿いでは、9個置いてある巣箱の一つにニホンミツバチが出入りしていた。
「ありぁー。この前来たときは全滅だったとに、野生のものが分蜂して住み着いとる。お前たち、命拾いしたんだ。よかったなー」
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