2011.02.28
「わが道」を信じてこそ菅首相に存在感
総辞職や衆院解散は6月末に考えること
菅直人政権が民主党の内外から揺さぶられている。主な揺さぶりは野党の予算案と予算関連法案への反対表明、総選挙要求と、民主党内のプロ小沢グループによる会派離脱の動きなどで、「菅政権の存立基盤は日一日、弱体化している」という見方が政界では強まっている。こうした状況の中で、菅首相がどのように振る舞えば日本を「失われた30年への道」から救うことができるのか。自ら掲げた政策を信じて猛進することが唯一の手立てではないだろうか。まなじりを決して進む姿を国民に示せば存在感を増し、内閣支持率も上昇に転ずるであろう。
前週のプロ小沢グループ代議士16人の会派離脱騒動に続いて、小沢氏側近の松木謙公代議士が24日、農水政務官を辞職した。これについて自民、公明両党の幹部は「民主党崩壊の始まり」などと述べ、大部分の主要紙とテレビ局もそれに近い評価に基づく報道を展開している。しかし、この見方は正しいとは思えない。
松木氏を含むプロ小沢グループ議員は造反の理由を「菅内閣の政策を政権交代の原点に戻させるため」などと主張しているが、それは方便にすぎない。菅内閣が今日掲げている主要政策は昨年秋の民主党代表選挙で菅首相が主張したもので、民主党員が公式に認めた政策である。造反の原因は執行部が政治資金問題で強制起訴された小沢氏の党員資格を判決が確定するまで停止したことに対する反発であることは明らかだ。
最近、行われた朝日新聞をはじめとする主要新聞社の世論調査の結果で明らかのように、有権者の90%近くが国会での弁明を拒否する小沢氏の態度に異議を唱え、約70%が民主党執行部の小沢氏に対する処分を評価している。小沢氏の国会無視の姿勢を認めたら、民主政治は成り立たない。また、小沢氏は「検察による起訴と検察審査会による強制起訴は異質ものだ」と主張しているが、2つが同じものであることが法律的には明らかであるにもかかわらず、小沢グループが認めようとしないのはどうしてであろうか。不思議である。
小沢氏の政治資金をめぐる党内の内紛は執行部による処分によって、一応、区切りがついた。プロ小沢グループからの反撃はまだ続くであろうが、執行部は冷静に受け流せばいい。もし、予算案や予算関連法案の採決をめぐって、本格的な造反が出た場合には、執行部は除名などの厳格な処分を行うべきである。これによって内紛は収束する。有権者はそれを評価すであろう。
菅政権は予算案と予算関連法案を成立させるために全力を挙げるべきことは当然である。これは政府与党としての最大の義務である。そのためには、野党の主張に対して柔軟の上にも柔軟に対処し、場合によっては、野党提案の「丸呑み」も考えるべきである。しかし、野党や一部マスコミの要求・主張に屈して、今から総辞職や衆院解散・総選挙を考える必要はない。最近、菅首相も述べているように、国民にとって最も重要なことに全力を注ぐのが政権の責務であるからだ。また、相次ぐ首相と政権の交代は政府の政策実行力を著しく弱め、国家の国際的信用を失墜させるので、極力、避けなければならない。
いま、菅内閣が実行すべき政策は①社会保障と消費税増税を含む税財政の一体改革②TPP(環太平洋経済連携協定)参加を含む、いわゆる「平成の開国」③石油や食料の価格高騰の防止と経済水準の維持④今日の世界情勢にマッチした安保政策の構築などである。菅内閣がこれらの政策で目に見える成果を挙げれば、内閣支持率は回復することは間違いない。要は菅首相が自らの政策と実行能力を信じ、存在感を示すことだ。
政権非難に終始する野党に対する国民の批判は次第に高まっている。日本経団連の米倉弘昌会長は「国会が国民のために何もしないのは、給料泥棒のようなものだ」と苦言を呈した上で、予算関連法案の早期成立を求めた。統一地方選挙が終われば、公明党や自民党の態度に変化が起きる可能性はある。野党が頑固な態度を貫く場合、菅政権としては総辞職や衆院解散を考えざるをえないが、それは6月下旬になってからでいい。
重ねていう。菅直人首相は、総辞職や衆院解散を考える時間と余力があるなら、それを重要政策に注ぎ、存在感を高めるべきである。
(2月25日記す)
早房長治 (地球市民ジャーナリスト工房代表)
菅直人政権が民主党の内外から揺さぶられている。主な揺さぶりは野党の予算案と予算関連法案への反対表明、総選挙要求と、民主党内のプロ小沢グループによる会派離脱の動きなどで、「菅政権の存立基盤は日一日、弱体化している」という見方が政界では強まっている。こうした状況の中で、菅首相がどのように振る舞えば日本を「失われた30年への道」から救うことができるのか。自ら掲げた政策を信じて猛進することが唯一の手立てではないだろうか。まなじりを決して進む姿を国民に示せば存在感を増し、内閣支持率も上昇に転ずるであろう。
前週のプロ小沢グループ代議士16人の会派離脱騒動に続いて、小沢氏側近の松木謙公代議士が24日、農水政務官を辞職した。これについて自民、公明両党の幹部は「民主党崩壊の始まり」などと述べ、大部分の主要紙とテレビ局もそれに近い評価に基づく報道を展開している。しかし、この見方は正しいとは思えない。
松木氏を含むプロ小沢グループ議員は造反の理由を「菅内閣の政策を政権交代の原点に戻させるため」などと主張しているが、それは方便にすぎない。菅内閣が今日掲げている主要政策は昨年秋の民主党代表選挙で菅首相が主張したもので、民主党員が公式に認めた政策である。造反の原因は執行部が政治資金問題で強制起訴された小沢氏の党員資格を判決が確定するまで停止したことに対する反発であることは明らかだ。
最近、行われた朝日新聞をはじめとする主要新聞社の世論調査の結果で明らかのように、有権者の90%近くが国会での弁明を拒否する小沢氏の態度に異議を唱え、約70%が民主党執行部の小沢氏に対する処分を評価している。小沢氏の国会無視の姿勢を認めたら、民主政治は成り立たない。また、小沢氏は「検察による起訴と検察審査会による強制起訴は異質ものだ」と主張しているが、2つが同じものであることが法律的には明らかであるにもかかわらず、小沢グループが認めようとしないのはどうしてであろうか。不思議である。
小沢氏の政治資金をめぐる党内の内紛は執行部による処分によって、一応、区切りがついた。プロ小沢グループからの反撃はまだ続くであろうが、執行部は冷静に受け流せばいい。もし、予算案や予算関連法案の採決をめぐって、本格的な造反が出た場合には、執行部は除名などの厳格な処分を行うべきである。これによって内紛は収束する。有権者はそれを評価すであろう。
菅政権は予算案と予算関連法案を成立させるために全力を挙げるべきことは当然である。これは政府与党としての最大の義務である。そのためには、野党の主張に対して柔軟の上にも柔軟に対処し、場合によっては、野党提案の「丸呑み」も考えるべきである。しかし、野党や一部マスコミの要求・主張に屈して、今から総辞職や衆院解散・総選挙を考える必要はない。最近、菅首相も述べているように、国民にとって最も重要なことに全力を注ぐのが政権の責務であるからだ。また、相次ぐ首相と政権の交代は政府の政策実行力を著しく弱め、国家の国際的信用を失墜させるので、極力、避けなければならない。
いま、菅内閣が実行すべき政策は①社会保障と消費税増税を含む税財政の一体改革②TPP(環太平洋経済連携協定)参加を含む、いわゆる「平成の開国」③石油や食料の価格高騰の防止と経済水準の維持④今日の世界情勢にマッチした安保政策の構築などである。菅内閣がこれらの政策で目に見える成果を挙げれば、内閣支持率は回復することは間違いない。要は菅首相が自らの政策と実行能力を信じ、存在感を示すことだ。
政権非難に終始する野党に対する国民の批判は次第に高まっている。日本経団連の米倉弘昌会長は「国会が国民のために何もしないのは、給料泥棒のようなものだ」と苦言を呈した上で、予算関連法案の早期成立を求めた。統一地方選挙が終われば、公明党や自民党の態度に変化が起きる可能性はある。野党が頑固な態度を貫く場合、菅政権としては総辞職や衆院解散を考えざるをえないが、それは6月下旬になってからでいい。
重ねていう。菅直人首相は、総辞職や衆院解散を考える時間と余力があるなら、それを重要政策に注ぎ、存在感を高めるべきである。
(2月25日記す)