2011.12.31 トップは東日本大震災と福島原発事故
私家版今年世界10大ニュース

伊藤力司 (ジャーナリスト)


年末に当たり、自己流で今年の世界10大ニュースを選んでみたら、以下のようなランキングになった。
1 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故
2 アラブの春でエジプトなどの独裁政権崩壊
3 欧州財政危機 ユーロ不安高まる
4 中国の軍事大国化進み、米は中国包囲網の構え
5 ウサマ・ビンラディン殺害 アフガン14年末撤兵へ
6 金正日の死亡 朝鮮半島情勢不透明化
7 米軍のイラク戦争終結
8 プーチン、オバマの人気低落
9 リビアの独裁者カダフィ惨殺
10 IT革命の天才児スティーブ・ジョブズ死亡

1)3月11日に起きた東日本大震災と津波は世界の自然災害史上でも稀な大天災だったが、東京電力福島第1原発の事故は米スリーマイル島原発事故(1978年)、旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)を上回る大人災となった。放射性物質の大量流失や事後処理の困難度などから、当初軽視していた日本政府も原発事故の重大性を示す世界基準最高度のレベル7に指定せざるを得なくなった。日本の国内ニュースとしては文句なしにトップだが、世界ニュースの観点からもトップニュースに推すべきと判断した。ちなみに米AP通信は、2011年12月27日10大ニュースの2位に指定している。

2)チュニジアに端を発したアラブの独裁政権に対する抗議運動は、ツイッターやフェイスブックなどインターネットによる交流手段を通じて、あっという間にアラブ諸国の民衆の間に広がった。アラブ諸国では30年、40年も続いた独裁政権が民衆の不満を抑え込んできたが2011年、突如として「アラブの春」に目覚めた民衆は弾圧に抗して粘り強い抗議行動を続けた。チュニジアのベンアリ政権は1月、エジプトのムバラク政権は2月、リビアではカダフィ政権が10月に崩壊した。イエメンではサレハ大統領がようやく条件付き退陣に同意、シリアでは3月から5000人の死者を出した反政府抗議運動が越年した。
インターネットを通じた抗議運動の展開という点では、富の格差拡大に抗議するために貧しい99%が決起したという「ウォール街を占拠せよ」運動の拡大・持続に同じ傾向が見られた。

3)ギリシャを始めとする欧州共同体(EU)加盟南欧諸国の財政危機は、あっという間にEUの共通通貨ユーロの弱体化を招いた。為替市場はこれに引きづられてスイス・フランと日本円が猛烈に買われ、空前のスイス・フラン高、円高が続いている。もともとユーロは加盟17カ国の金融政策を一本化しながら、財政政策は各国の自主判断に任せるという構造的矛盾を抱えていた。アメリカ系の格付け会社にギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアなどの無責任財政を突かれ、これまたアメリカ系投機筋の売りを浴びて各国の国債は暴落、国債を大量に抱えた欧州の銀行の信用危機が拡大した。ドイツ、フランスを先頭とするEU首脳陣は財政政策の基準化を目指してEU基本条約の改定にまで踏み込もうとしているが、英国の反対もあって先行きは定かではない。ドル安が続く中でのユーロ安という想定外の国際通貨危機は越年する。
... 続きを読む