2012.04.30 「無罪」で勢いづく小沢派 さらに沈む民主党
大局観持たぬ政治家に国民の不信募るばかり

早房長治 (地球市民ジャーナリスト工房代表)


東京地裁は26日、政治資金規正法違反の罪で強制起訴された民主党元代表・小沢一郎被告に対し、無罪の判決を言い渡した。これを受けて、民主党の小沢派は勢いづき、消費増税への反対など、執行部に対する抵抗を強め、自民党をはじめとする野党は、小沢氏への証人喚問を要求するなど、攻勢に出ている。しかし、大多数の国民は、大局観を欠き、政局に走るばかりの政治家に対して、不信感を募らせるばかりである。

小沢派の議員たちは「小沢先生は完全無罪を勝ち取った。政治家として完全復活する時が来た」と狂喜している。彼らの間では小沢氏の今後をめぐって「党員資格停止の解除―消費増税、TPPなどの反対運動の先頭に立つー9月の党代表選への立候補」といった期待があからさまに語られている。

もし、小沢氏がこのようなスケジュールに従って突っ走った場合、民主党の分裂状態はさらに深刻になるであろう。その結果、今日でも極めて弱い野田内閣の政策の決定力・実行力はさらに弱まることは必至である。いい換えれば、政権党としての民主党の統治能力を決定的に劣化させることになる。

万一、小沢派の反対によって消費増税法案が今国会の会期末までに成立しないような事態になれば、民主党は事実上、沈没状態に陥るであろう。よしんば、小沢派が沈み行く船を乗っ取ったとしても、再浮上の展望はまったく開けない。野田首相と民主党執行部が反乱を恐れて増税法案の審議の先送りを図るようなことになれば、同党は即沈没の泥船と化すに違いない。このことを小沢氏はどのように考えているのであろうか。

一方、自民党、公明党をはじめとする野党勢力は、小沢氏の説明責任を追及するために、国会への証人喚問を要求している。小沢氏がそれに応じなければ、重要法案の審議を停止することも辞さない構えである。小沢氏は何らかの形で国会での説明責任を果たすべきであるが、それを拒否する可能性も高い。その場合、野党は今のところ、審議拒否という対抗手段しかなく、国会は事実上、機能不全に陥ってしまうであろう。

このような政治の混迷を、国民の大部分はあきれ顔で見つめている。心の中で燃え盛っているのは政治家に対する不信である。国民の多くは、政治の混乱の原因が目先の利益だけを追う政治家にあることを見抜いている。「大局観を欠く政治家は、国民にとって、百害あって一利もない」と考えている。

政治家が「政治は自らや党派のためではなく、国民のために行う」という単純な原則を再認識しない限り、政治家と国民はますます乖離し、政治は機能不全に陥ることは必至である。それを避ける道は、政治家が心を正した上で、大連立で消費増税法案など重要案件を処理した後、総選挙で出直すことしかないのかもしれない。
                          (4月27日記す)