2012.12.31
私選国際10大ニュース オバマ再選がトップ
冷戦終結後21年-世界はなお混沌
大小さまざまなニュースが世界を駆け巡った2012年も間もなく暮れる。歳末恒例により、筆者の私的関心から今年の国際10大ニュースを選んでみた。
1) オバマ米大統領再選
2) 中国・習近平体制発足
3) 主要国の指導者交代(プーチン・ロシア、オランド仏大統領、安倍首相)
4) シリア内戦泥沼化
5) 北朝鮮が長距離ミサイル発射
6) EU債務危機、ユーロ圏不況
7) イラン核開発に欧米が制裁
8) 韓国に初の女性大統領
9) エジプトにイスラム派大統領
10) ミャンマーの民主化進む
今年の世界での最大関心事はやはり、衰え始めたとはいえ「唯一の超大国」アメリカの大統領選挙でオバマ大統領の再選が成るかどうかだった。11月6日全米で行われた投票の結果、共和党のロムニー候補を破って民主党オバマ候補が再選された。一般投票では51%対48%の僅差だったが、獲得選挙人の数では接戦州7州で全勝したオバマ氏が332人対206人で圧勝した。アメリカの政治風土は今年の大統領選を機に、リベラルな民主党と「小さな政府」を求める保守の共和党との分裂がさらに激化した。その後遺症は問題の「財政の崖」をめぐる政治不全に持ち越された。衰えつつある超大国が国内の分裂でよろめく(例えば米経済が失速する)と、世界全体は動揺するのである。
アメリカに次ぐ世界第2の経済大国となった中国では、11月の共産党大会で“太子党”習近平氏が共産党トップの総書記と中央軍事委員会主席に就任した。同氏は来年3月の全国人民代表大会(国会)で国家主席に就く予定で、党と軍と政府の全権を握ることになる。習氏は今後10年間の在任中に、中国がアメリカを抜いて世界一の経済大国を目指すという歴史的役回りを担う。習総書記は党大会後に中国が「海洋強国」を目指すと宣言、日本との尖閣諸島やベトナム、フィリピンなどとの南シナ海の南沙(スプラトリー)、西沙(パラセル)諸島の領有権争いをめぐり、強硬姿勢を打ち出した。経済大国化と並行して中国が覇権国家の道を歩み始めた今、中国の命運を握る習氏に世界の注目が集まっている。
3月のロシア大統領選挙では予想通りプーチン大統領が復活した。周知のように2000年から2期8年大統領を務めたプーチン氏は、3選禁止の憲法に従って08年に盟友のメドベージェフ首相に大統領の座を譲り(08年大統領選挙でプーチン与党「統一ロシア」のメドジェーエフ候補が当選)、自分は首相を務めるという“政治的軽業”を演じた。“軽業”の続きで今度は任期6年(再選可)に改定された大統領に就任、首相にメドベージェフ氏をたらい回し任命した。しかし中産階級が増えたロシアでは、こうしたプーチン独裁体制に対する反発も強まり、昨年末の下院選挙で「統一ロシア」が苦戦したし、大統領選でもプーチン氏の得票率は低下した。極東・アジア進出に関心を持つプーチン政権の今後は、日本としても見逃せない。
欧州の中心に位置するフランスの動向はやはり世界の関心事だ。アメリカ流のネオ・リベラル路線に傾斜していた保守派サルコジ前大統領は、4-5月の大統領選で社会党のオランド氏に敗れた。フランス社会党は、資本主義の悪弊を正すために生まれた欧州社会民主主義の「嫡子」である。17年ぶりの社会党政権は富裕層への増税、原発依存の軽減などの公約を実行に移しているが保守側からの抵抗は強く、政権発足当時のオランド人気は下降気味だ。一方、年末ぎりぎりに登場した安倍内閣に対して海外メディアの多くは「日本の右傾化」に警鐘を鳴らし、日中対立の激化を危惧している。
チュニジア、エジプト、リビア、イエメンなどの長期独裁政権を、民主化を求める民衆の街頭行動で倒した「アラブの春」は2011年3月シリアにも波及。しかしバース党に支えられたアサド大統領の長期政権は民衆の反政府行動を武力弾圧。カタール、サウジアラビア、トルコなどに支援された反政府各派は、首都ダマスカスなど各地で武装反乱を起こし本格的内戦に拡大した。この1年9カ月で死者は4万4千人、国外に逃れた難民は50万人を超えた。欧米諸国とアラブのイスラム教スンニ派諸国が反政府派を支援、シーア派政府のイラン、イラクと中露がアサド政権を支える構図になっているが、最近ロシアの姿勢が微妙に変化しつつある。停戦実現とアサド退陣のメドは立っておらず、内戦はまだ長引くかもしれない。
伊藤力司 (ジャーナリスト)
大小さまざまなニュースが世界を駆け巡った2012年も間もなく暮れる。歳末恒例により、筆者の私的関心から今年の国際10大ニュースを選んでみた。
1) オバマ米大統領再選
2) 中国・習近平体制発足
3) 主要国の指導者交代(プーチン・ロシア、オランド仏大統領、安倍首相)
4) シリア内戦泥沼化
5) 北朝鮮が長距離ミサイル発射
6) EU債務危機、ユーロ圏不況
7) イラン核開発に欧米が制裁
8) 韓国に初の女性大統領
9) エジプトにイスラム派大統領
10) ミャンマーの民主化進む
今年の世界での最大関心事はやはり、衰え始めたとはいえ「唯一の超大国」アメリカの大統領選挙でオバマ大統領の再選が成るかどうかだった。11月6日全米で行われた投票の結果、共和党のロムニー候補を破って民主党オバマ候補が再選された。一般投票では51%対48%の僅差だったが、獲得選挙人の数では接戦州7州で全勝したオバマ氏が332人対206人で圧勝した。アメリカの政治風土は今年の大統領選を機に、リベラルな民主党と「小さな政府」を求める保守の共和党との分裂がさらに激化した。その後遺症は問題の「財政の崖」をめぐる政治不全に持ち越された。衰えつつある超大国が国内の分裂でよろめく(例えば米経済が失速する)と、世界全体は動揺するのである。
アメリカに次ぐ世界第2の経済大国となった中国では、11月の共産党大会で“太子党”習近平氏が共産党トップの総書記と中央軍事委員会主席に就任した。同氏は来年3月の全国人民代表大会(国会)で国家主席に就く予定で、党と軍と政府の全権を握ることになる。習氏は今後10年間の在任中に、中国がアメリカを抜いて世界一の経済大国を目指すという歴史的役回りを担う。習総書記は党大会後に中国が「海洋強国」を目指すと宣言、日本との尖閣諸島やベトナム、フィリピンなどとの南シナ海の南沙(スプラトリー)、西沙(パラセル)諸島の領有権争いをめぐり、強硬姿勢を打ち出した。経済大国化と並行して中国が覇権国家の道を歩み始めた今、中国の命運を握る習氏に世界の注目が集まっている。
3月のロシア大統領選挙では予想通りプーチン大統領が復活した。周知のように2000年から2期8年大統領を務めたプーチン氏は、3選禁止の憲法に従って08年に盟友のメドベージェフ首相に大統領の座を譲り(08年大統領選挙でプーチン与党「統一ロシア」のメドジェーエフ候補が当選)、自分は首相を務めるという“政治的軽業”を演じた。“軽業”の続きで今度は任期6年(再選可)に改定された大統領に就任、首相にメドベージェフ氏をたらい回し任命した。しかし中産階級が増えたロシアでは、こうしたプーチン独裁体制に対する反発も強まり、昨年末の下院選挙で「統一ロシア」が苦戦したし、大統領選でもプーチン氏の得票率は低下した。極東・アジア進出に関心を持つプーチン政権の今後は、日本としても見逃せない。
欧州の中心に位置するフランスの動向はやはり世界の関心事だ。アメリカ流のネオ・リベラル路線に傾斜していた保守派サルコジ前大統領は、4-5月の大統領選で社会党のオランド氏に敗れた。フランス社会党は、資本主義の悪弊を正すために生まれた欧州社会民主主義の「嫡子」である。17年ぶりの社会党政権は富裕層への増税、原発依存の軽減などの公約を実行に移しているが保守側からの抵抗は強く、政権発足当時のオランド人気は下降気味だ。一方、年末ぎりぎりに登場した安倍内閣に対して海外メディアの多くは「日本の右傾化」に警鐘を鳴らし、日中対立の激化を危惧している。
チュニジア、エジプト、リビア、イエメンなどの長期独裁政権を、民主化を求める民衆の街頭行動で倒した「アラブの春」は2011年3月シリアにも波及。しかしバース党に支えられたアサド大統領の長期政権は民衆の反政府行動を武力弾圧。カタール、サウジアラビア、トルコなどに支援された反政府各派は、首都ダマスカスなど各地で武装反乱を起こし本格的内戦に拡大した。この1年9カ月で死者は4万4千人、国外に逃れた難民は50万人を超えた。欧米諸国とアラブのイスラム教スンニ派諸国が反政府派を支援、シーア派政府のイラン、イラクと中露がアサド政権を支える構図になっているが、最近ロシアの姿勢が微妙に変化しつつある。停戦実現とアサド退陣のメドは立っておらず、内戦はまだ長引くかもしれない。