2017.07.20 単複同形(invariable)
単複同形は植物にもあるの?

松野町夫 (翻訳家)

英語の可算名詞には単数形と複数形がある。単数形の語尾に -s をつけると、たいてい複数形になる。たとえば、「ペン」や「本」の場合、pen(単数形)、pens(複数形); book(単数形)、books(複数形) というように。このように単数形に s (またはes) をつけた複数形を規則複数と呼ぶ。

しかし、可算名詞には単数と複数が同じ形のものもある。これを単複同形(invariable)という。単複同形は、群れをなして生活する生物(魚類・獣類・鳥類)に多い。たとえば、sheep(ヒツジ)、deer(シカ)、fish(魚)は単複同形である。

A sheep is a farm animal. ヒツジは家畜である。 → sheep(単数形)
He has six hundred sheep. 彼は600頭のヒツジを持っている。 → sheep(複数形)

A deer is a large wild animal. シカは大型の野生動物だ。→ deer(単数形)
The local people hunt deer. 地元の人々は鹿狩りをする。 → deer(複数形)

I found a small fish there. 私はそこに 1匹の小魚を見つけた。 → fish(単数形)
I caught two big fish yesterday. 昨日、私は大魚を 2匹釣った。 → fish(複数形)

sheep は常に単複同形で、複数形が sheeps になることはない。夜、眠れなくてヒツジを数えるときは、one sheep, two sheep (two sheeps はダメ) と数える。つまり、sheep は規則複数(s 複数形)を認めない。しかし、sheep 以外の生物、たとえば、以下の生物は単複同形だが、規則複数(s 複数形)も容認する。

fish(魚) catfish(ナマズ) carp(コイ) trout(マス)
cod(タラ) herring(ニシン) salmon(サケ)
bluefish(ブルーフィッシュ) shrimp(小エビ) mackerel(サバ) tuna(マグロ)
squid(体の細長いヤリイカなど) cuttlefish(甲イカ) jellyfish(クラゲ)
bison(バイソン) deer(シカ) reindeer(トナカイ) boar(イノシシ)
duck(カモ) grouse(ライチョウ) snipe(シギ) pheasant(キジ)

このように、単複同形は漁労・狩猟の対象となる生物(魚類・獣類・鳥類)に多い。一般に狩猟家は tiger,lion,elephant なども単複同形で扱う傾向があるという。この場合、狩猟家はこうした哺乳動物を個々の動物として見るのではなく、集合的に「種」として認識しているのかもしれない。

数詞は単複同形が多い。たとえば、hundred(百),thousand(千), million(百万), billion(10億), trillion(兆)が「数値」を示すときは単複同形となる。

one hundred = 100; two hundred = 200 (two hundreds はダメ)
Two hundred (people) are expected to attend. 200人が出席するはずです。
one thousand = 1,000; two thousand = 2,000 (two thousands はダメ)
There are about fourteen thousand airports all over the world.
世界には約14,000 の空港があります。

ただし、数詞が漠然と「多数」を意味するときは規則複数となる。
hundreds of people(数百人) thousands of people(数千人)
tens of thousands of people(数万人) millions of cars(数百万台の自動車)

同様に、数量の単位である dozen(ダース)も数値「12」を示すときは単複同形となり、漠然と「多数」を意味するときは規則複数(dozens)となる。

She bought two dozen eggs. 彼女は卵を 2 ダース買った。
She bought two dozen of the eggs. 彼女はその卵を 2 ダース買った。
I went there dozens of times. そこへは何十回も行った。 dozens of people(何十人)

ドル(dollar)やユーロ(euro)などの欧米の通貨単位は、one dollar, two dollars; one euro, two euros のように規則複数となるが、東アジアの通貨単位、yen(日本の円) yuan(中国の元) won(韓国・北朝鮮のウォン)は単複同形なので、one yen, two yen; one yuan, two yuan; one won, two won となる。

単複同形は、-s(e)で終わり発音上、規則複数と区別のつけにくい名詞に多い。たとえば、means(手段) series(シリーズ) species(種) corps(軍団) Japanese(日本人)Chinese(中国人)Taiwanese(台湾人)Vietnamese(ベトナム人)

語末がcraft(船舶)で終わる単語も単複同形だ。
craft(船舶) aircraft(飛行機) spacecraft(宇宙船) hovercraft(ホバークラフト)

単複同形は、群れをなして生活する生物(魚類・獣類・鳥類)に多い。
ところで、単複同形は植物にもあるのだろうか。ちょっと気になったので、草花や樹木、作物、穀物、野菜、フルーツ類などを手当たり次第、チェックしてみた。しかし残念ながら、植物の大半は可算名詞 [C] ではあるが、そのほとんどは規則複数で、単複同形の可算名詞を見つけることはできなかった。ただし、盆栽とフルーツを除く。bonsai(盆栽)は、日本語から借用された英語で複数形も bonsai.

bonsai [bɑnsái] : noun (pl. bonsai)
[C] a small tree that is grown in a pot and prevented from reaching its normal size.
[U] the Japanese art of growing bonsai.

17841_単複同形

上記の盆栽の定義と図はOALD7英英辞典から引用した。

フルーツ(果物)はふつう不可算名詞(U)として単数形で集合的に用いる。しかし、フルーツの種類をいうときは、可算名詞(C)として単数形や複数形で用いることもできる。fruit の複数形は fruit or fruits。イギリス英語では果物の意味の fruit は単複同形。

Do you like fruit? フルーツは好きですか?
Apples and oranges are fruit. リンゴとオレンジは果物だ。(イギリス英語)
Apples and oranges are fruits. リンゴとオレンジは果物だ。(アメリカ英語)