2017.08.21 今年の8月、反戦・平和の報道でよみがえったNHK
新たな事実、証言、証拠を発掘したドキュメンタリー

坂井定雄(龍谷大学名誉教授)

2014年1月、事実上安倍首相が送り込み、安倍政権の意のままにNHKの報道に干渉した籾井勝人会長が、留任の野望を果たせず、今年1月24日に3年の任期を終えてNHKを去ってから半年余り。午後7時半の「クローズアップ現代」を10時台に動かしてのキャスター国谷裕子外しや、原発報道抑制が象徴した、籾井会長の人事と放送内容への干渉に、自己規制を余儀なくされていたNHKの現場。この8月の反戦・平和への報道で、見事に蘇った、と感じた。もちろん、国内政治・政局報道はじめ、NHKに強い不満、批判を持っている人もなお少なくないとは思うが、わたしは、NHKは蘇った、頑張ってくれよ、と励ましたい。
この8月のNHK番組の反戦・平和の報道はー
(1) 定時ニュースでは、ほぼすべてで、全国各地での戦争体験、戦争の残酷さ、平和の大切さを人々が語り合い、行動する姿が報道された。戦争を体験した高齢の人々が戦争体験を語り、戦争は二度としてはならないと語った。
15日には朝4時半のニュースから「戦後72年の終戦の日。相次ぐ砲弾発見の背景」が報道された。
(2) 12日から15日の4日間のNHKスペシャル。戦場、部隊で残酷な戦争に参加し、多くが生死をさまよって生還した高齢者の証言、ソ連での裁判の記録フイルムなど、よくこれだけ集めた新証言、証拠をまとめた1時間特集番組。
(3) ETV特集「原爆と沈黙」(12日)、「戦争を体験した障碍者。ろう者は『ポイすて』」などの特集番組。新たに発見された沈没病院船の特集では、残存している装置から、国際法で他国からの攻撃を禁止する条件だった重兵器の運搬もしていたことが判明したと報道。
すでにネット上でも(2)について、驚き、怒り、感動した反響があふれているが、一部を見逃した人のために、新聞の番組紹介から、自分の感想をふくめ、紹介しよう。

▽8月12日「本土空襲・全記録」:66都市2000回の空襲を発掘現場と機密資料で
徹底分析▽乱射の瞬間
 わたしは当時小学校2年生だった。東京・中野に住み、夜になると防空壕で過ごした。下町をほぼ全焼した大爆撃の直後、母親、姉と岩手県に疎開した、その1か月半後、新宿、渋谷、中野を含む東京西部が絨毯爆撃され、ほぼ全焼した。

▽8月13日「731部隊の真実」スクープ・肉声の記録。なぜ一線を越えた?人体実験とエリート医学者」:
探し当てた生存兵士たちの証言、ロシアで保存していた731部隊の裁判記録フィルムを入手。731部隊幹部らの証言。NHKが今回初めてロシアで入手したようだ。旧満州での731部隊の細菌戦研究・生産・実行については、わたしも森村誠さんの「悪魔の飽食」を真っ先に読み、以後、常石恵一さんの研究報告、著書でかなり知っていたつもりだが、京大、東大を始め計数十人の大学教授ら研究者が、軍の求めによって現地での研究・開発に参加しとことは、正直にいって知らなかった。まして、リーダー格の京大教授が、現地で証拠隠滅後、真っ先に帰国し、日本の医学界のトップにまで上り詰めたことなどを知り、ショックを受けた。わたし自身は、60年台に共同通信の京都支局で大学・学術担当記者をやった。そのころ、京大はノーベル物理学賞受賞者の湯川秀樹さんをはじめ科学者の平和運動の一つの中心だった。まさか、細菌戦研究・開発のリーダーがいたことは当時どころか今回のNHK報道まで全く知らなかった。わたしが不勉強だっただけなのかもしれないが。
▽8月14日「知られざる地上戦」:樺太・5000人の犠牲者なぜ?終戦後も戦闘を続けた悲劇の7日間明らかに:天皇が終戦を宣言したのに、さらに1週間戦争を続けさせられた樺太、千島の兵士そして日本人住民たち。このことも、私はまったく知らなかった。日本軍はひどい軍隊だったのだ。敗戦当時だから仕方がなかった、という言い訳は、決して成り立たない。
▽8月15日「戦慄の無謀な作戦はなぜ」:
潜入取材・国境地帯
死者3万の白骨街道
元兵士・消えぬ悪夢
牟田内司令官の肉声
責任逃れの参謀たち
旧日本軍のインパール作戦がどれほど無謀で残酷な作戦だったかは、多くの人が知っているだろう。だが、数少ない生存兵士の声を、当時を再現する豪雨と泥海の現地映像
とともに聞いたとき、無謀、無責任きわまる現地司令部と参謀本部のもとで、極まった戦争の恐怖を、視聴者のだれもが感じたに違いない。(終わり)