2021.05.08 バイデン米政権下、ペルシャ湾に大きな変化(1)

イラン核合意の復活へ。サウジは初めてイランに和解をよびかけ

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 バイデン米大統領の政権発足から3か月半。トランプ前政権下の米国とイスラエルがイランを敵視して、危なさが拡まっていた世界の石油の宝庫ペルシャ湾に、はやくも緊張緩和の兆しが見えてきた。4月上旬、春を待っていたかのように、バイデン政権は、トランプ政権が敵視してきたイランとの3年ぶりの和解交渉を、国際原子力機関(IAEA)本部があるウイーンで開始した。双方の代表はオバマ政権でイランとの核合意にかかわったマレーイラン担当特使、イランはアラグチ外務次官。以後、英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国とIAEA本部の代表も必要に応じて加わり、トランプ政権が脱退し、イラン制裁を復活したため、弱体化した「イラン核合意」の復活を目指している。

 米国を含め6か国とイランは、2015年7月、イランの核開発の平和利用と国際協力を定めた「合意」文書に調印、10月に発効。国際原子力機関(IAEA)は16年1月、イランがウラン濃縮の停止をはじめ「合意」の実行をしていること確認。以後もIAEAは査察で、これを同様に確認してきた。
 ところが、トランプ前政権は2018年5月、このイランとの合意から一方的に離脱。以後、イランに対する制裁を原油、金融、海運、自動車部門での禁輸はじめ1,500件以上の禁輸で、イランを苦しめてきた。日本の場合、原油輸入国の順位では、イランは、2016年度4位、17年度は6位、19年は9位と低下している。
 イランはトランプ政権下の米国の制裁に抵抗して、2015年7月の米国を含めた「合意」事項に逸脱するとしながら、低濃縮ウラン貯蔵量上限300キロの制限を遵守しないと発表。さらに、「合意」で認められているウラン濃縮度上限3.67%をこえて約4.5%にしたと表明。9月には核関連研究開発の制限を全廃、新遠心分離機の稼働を発表。20年1月には中部ファルドの地下研究施設でのウラン濃縮を進めると発表した。
 さらに21年1月4日、イラン原子力庁は、ファルドの施設でウラン濃縮度を20%に引き上げたことを明らかにした。6か国「合意」の制限を大きくオーバーしている。同庁によると、同月中に濃縮度20%ウランの貯蔵量は50キロに達している。
 核弾頭として使用するためには、最低90%以上の濃縮度が必要だが、20%から90%台に濃縮度を上げるのは、容易だとする専門家も少なくない。
 イランは最近まで、IAEAの予告なし査察を受け入れてきたが、最近になって、予告なし査察を拒否すると通告。トランプ政権以来の米国の制裁が5月末までに解除されなければ、IAEAが設置した監視カメラの録画映像を削除すると通告したという。
 イランとしては、2015年の「合意」の完全復活を求めているが、米国の新政権を信頼しきれず、いわば交渉戦術で、前記のような「合意」に反する行動をやって見せているのではないか。
 主にウイーンで行われている、IAEA・6か国とイランの交渉が妥結して、「核合意」が復活すれば、ペルシャ湾とホルムズ海峡の緊張緩和に、大いに役立つに違いない。