2022.08.31 ウクライナ戦争
英国防省は、ロシアの新たな大規模徴兵は戦況への影響は低いと分析―BBCの報道

坂井定雄(龍谷大学名誉教授)

 ロシアの軍拡計画は、ウクライナ戦争に影響を与える可能性は低いと、英国国防省は述べた。
 ロシアのプーチン大統領は最近、ロシア軍の軍人を13万7千人増やし、115万人以上にする政令に署名した。
 しかし英国防省は、この増員はロシア軍の戦闘力を高めることはないだろう、と述べた。現在ウクライナで進行中のロシア軍の損失が一因。

 プーチン大統領の命令は、軍の勧誘活動の中で出された。
 ロシア軍の勧誘担当者が刑務所を訪れ、受刑者に自由と金額を約束したという報告もある。

 現在、ロシアには100万人強の軍人と90万人近い文民職員がいる。
 戦争に関する定期的な最新情報の中で、英国防省は、ロシアが計画された増員を志願兵の募集によって達成するのか、それとも徴兵制を強化するのか明らかでないと述べている。
 しかし、どのような増員であっても、ウクライナに影響を与えることはないだろう。

 ウクライナでロシアは何万人もの軍隊を失っている。
 新規の契約軍人(非徴兵)の募集はほとんど行われていない。
 国防省によれば、徴兵制はロシア領外での勤務を義務づけていない。
西側当局によると、ロシアが6カ月前にウクライナに侵攻して以来、約7〜8万人の兵士が死傷している。
 ロシアは2月にウクライナに侵攻した際、短期間で決定的な作戦を計画したが、ウクライナの抵抗で進行が遅れ、ここ数週間、前線はほとんど動いていない。

 現在、18歳から27歳までのロシア人男性が徴兵の対象となっているが、医学的免除や高等教育への入学により、通常1年間の兵役を回避または短縮することができる者も少なくない。

▼ロシアのウクライナ侵略直前の両国の兵力
        ウクライナ         ロシア
総兵力   1、096、600     2、900、000
内現役     196、600       900、000
内待機     900,000     2,000,000

 ▼危険な原発への砲撃
 ウクライナは、ロシア軍が過去24時間の間に広大なザポリジャー原子力発電所の敷地内を再び砲撃したと非難している。しかし、モスクワは逆に、ウクライナ軍が原発を砲撃していると言っている。
 原発を運営するウクライナの原子力庁エネルアトムのペトロ・コティン代表は、原子炉の横に保管されている使用済み燃料にミサイルが命中すれば、放射能が局地的に放出される可能性があると警告している。

 エネルホアトムは「定期的な砲撃の結果、発電所のインフラが損傷し、水素漏れや放射性物質の発散のリスクがあり、火災の危険性が高い」と述べた。
 また、地元関係者によると、ロシアの砲兵隊が原発からドニプロ川を挟んだウクライナの町に発砲している。(了)