2010.03.24
民主党、生方氏の副幹事長職解任を取り消し――これぞ独裁の証し
暴論珍説メモ(79)
民主党は新聞のインタビューで小沢幹事長を批判する発言をしたという理由で、去る18日、副幹事長職を解任することを決めた生方幸夫衆院議員について、23日、小沢幹事長が直接、生方氏に会って解任取り消しの意向を伝え、生方氏も留任を了承したために、事態は一転、元の鞘に収まって終息した。生方氏解任に対する世論の激しい反発に小沢氏が譲った形だが、この経過そのものが党内における小沢氏の独裁振りを証明したと言える。
生方氏の小沢氏についての発言は「民主党では権限も財源もどなたか一人に集中している」、「小沢氏は自らの政治資金問題について説明責任を果たすべきだ」というもので、政治家の発言としてはそうとりたてて過激なものではない。総裁選や代表選ともなれば、どこの党でも内部でもっと激しい批判が飛び交う。
生方氏の弱点は党内では黙っていて外部で発言したということだが、この点については21日のテレビ朝日「サンデー・プロジェクト」で生方氏と一緒に出演した小沢氏に近いとされる同党の同じく副幹事長である細野豪志氏が副幹事長会議は短時間の事務連絡に終始することが多く、自由に意見を交換する場が党内にないことを認め、そういう場を作りたいと述べたことから見ても、そういう党内状況こそが問題だと言えるだろう。
そこであらためて経過を振り返ってみると、生方氏に解任を伝えたのは高嶋筆頭副幹事長である。それも当初は自発的辞任を促し、生方氏がそれを拒否すると、解任を通告し、生方氏を外した副幹事長会議でその決定をオーソライズした。その間、小沢氏は高嶋氏から電話連絡を受けた際、「円満解決できないか」とは言ったものの、結局は「任せる」と応じたという。
ところが、いくら党内人事の差し替えにすぎないなどと言いつくろっても、世論の反発には予想以上のものがあった。新聞各紙は社説で解任批判の論調を展開し、テレビ各局のニュース番組、ワイド番組では生方氏が一躍、独裁に刃むかう英雄となった。そこで今度はあらためて小沢氏が表に出てきて、解任取り消しというわけである。
田畑光永 (ジャーナリスト)
民主党は新聞のインタビューで小沢幹事長を批判する発言をしたという理由で、去る18日、副幹事長職を解任することを決めた生方幸夫衆院議員について、23日、小沢幹事長が直接、生方氏に会って解任取り消しの意向を伝え、生方氏も留任を了承したために、事態は一転、元の鞘に収まって終息した。生方氏解任に対する世論の激しい反発に小沢氏が譲った形だが、この経過そのものが党内における小沢氏の独裁振りを証明したと言える。
生方氏の小沢氏についての発言は「民主党では権限も財源もどなたか一人に集中している」、「小沢氏は自らの政治資金問題について説明責任を果たすべきだ」というもので、政治家の発言としてはそうとりたてて過激なものではない。総裁選や代表選ともなれば、どこの党でも内部でもっと激しい批判が飛び交う。
生方氏の弱点は党内では黙っていて外部で発言したということだが、この点については21日のテレビ朝日「サンデー・プロジェクト」で生方氏と一緒に出演した小沢氏に近いとされる同党の同じく副幹事長である細野豪志氏が副幹事長会議は短時間の事務連絡に終始することが多く、自由に意見を交換する場が党内にないことを認め、そういう場を作りたいと述べたことから見ても、そういう党内状況こそが問題だと言えるだろう。
そこであらためて経過を振り返ってみると、生方氏に解任を伝えたのは高嶋筆頭副幹事長である。それも当初は自発的辞任を促し、生方氏がそれを拒否すると、解任を通告し、生方氏を外した副幹事長会議でその決定をオーソライズした。その間、小沢氏は高嶋氏から電話連絡を受けた際、「円満解決できないか」とは言ったものの、結局は「任せる」と応じたという。
ところが、いくら党内人事の差し替えにすぎないなどと言いつくろっても、世論の反発には予想以上のものがあった。新聞各紙は社説で解任批判の論調を展開し、テレビ各局のニュース番組、ワイド番組では生方氏が一躍、独裁に刃むかう英雄となった。そこで今度はあらためて小沢氏が表に出てきて、解任取り消しというわけである。
これぞ典型的な独裁のメカニズムである。独裁者は腹のうちを明かさず、周りのものがそれを忖度して、気に入られるように物事を処理する。うまくいけばそれでよし。案に相違してうまくいかなければ、そこで独裁者が決定を改める。当初の決定をしたものの立場など意に介さないばかりか、場合によっては逆に責任を追及される。
お隣の北朝鮮では、昨年11月、ヤミ市場で小金持ちになった者や密輸で外貨を手にした人間の財産を取り上げて、金正日総書記に捧げるために、デノミという名の資産凍結(じつは没収)令を出したが、これが裏目に出て、経済が大混乱に陥ってしまった。その結果、最近、韓国から伝えられた情報によれば、デノミ実施の責任者は銃殺刑に処せられたということである。
これは決して大げさな喩えではない。メカニズムは同じである。生方氏解任を発意した高嶋筆頭副幹事長、それを了承した生方氏を除く12人の副幹事長たちの立場など、小沢氏は全く意に介さなかったのであろう。本来ならここで高嶋氏以下の面々はそろって辞表を出すべきところだが、もともとそんな形で小沢氏のすることに意地を通せるような組織ではないようだから、「誤った決定」のカドで「銃殺」されなかっただけ、やれやれと胸をなでおろして、一見落着となるのであろう。
したがって、生方氏が副幹事長に戻ったからといって、民主党が正常化したとはいえない。組織のあり方がそもそもおかしいのである。生方氏は民主党が政権を握ったとたんに廃止された党の政策調査会の復活を求める有志の会、約40人の代表者である。問題の根源はおそらくここにある。
政策調査会の廃止は「政策は内閣に一元化する」という名目で、小沢氏の主導で実施されたのだが、いよいよ政権与党となったとたんに政策に口を出すなというのはいかにもおかしい。小沢氏はなんでそんなことをやったか。言うまでもなく政策調査会長という「党幹部」が幹事長のほかに存在することを嫌ったのであろう。それに唯々諾々と従った所属議員たちの腰抜けが責められなければならないのだが、ここへ来てようやくその復活を求める動きが表面化したわけである。
本来ならせいぜい「口頭注意」くらいですますべき生方発言を捉えて、解任という刀を振り回した高嶋氏の行動は、小沢氏が生方氏らの政策調査会復活要求をいかに嫌っていたかを物語る。確かに今の民主党には小沢幹事長の下に輿石幹事長代理、高嶋筆頭副幹事長、13人の副幹事長が「幹事長室」を構成する以外、役員会だの常任幹事会だのといってもこれという実権はない。予算編成のときに各地、各界からの陳情を幹事長室だけで一手に処理したのが象徴的であった。生方氏解任も23日の役員会、常任幹事会で承認されることになっていたのを、小沢幹事長が開会を延期して、その間に生方氏と会って取り消しをきめてしまったのである。民主党における党内組織の有名無実ぶりがここにも現われている。
自民党でさえ幹事長のほかに政務調査会長、総務会長がいて、「党三役」を構成する。族議員を生むから功罪の判断は難しいが、政調の各部会は各省予算にかなりものを言うし、論客がそろった総務会では時にはげしい意見の応酬が見られるし、大事なことは総務会の了承を得なければ決まらない。
民主党にもせめて自民党程度の民主化を求めたい。生方解任が取り消されたことは小沢氏自身が世論の逆風にたじろいだことの現われだろう。北教祖からの不正献金を受けた小林千代美議員が離党も議員辞職もしないと言って頑張っているのは、北教祖関係者の逮捕、起訴を理由に小林議員が離党したり、辞職したりすれば、当然、秘書3人が起訴された小沢氏にあらためて世間の目が注がれるのを避けたいがため、本人の意思とは別に頑張らされているのだと言われるが、そんな形で政治の筋をねじ曲げ続ければ、結果はさらに悪くなるだけである。
鳩山首相は小林議員について「何らかの対処をする必要がある」と述べているが、ここはせめて「指導性」を発揮して、きちんとした対応をすると共に、小沢幹事長の進退にも総裁としてのけじめを見せてもらいたいものだ。
お隣の北朝鮮では、昨年11月、ヤミ市場で小金持ちになった者や密輸で外貨を手にした人間の財産を取り上げて、金正日総書記に捧げるために、デノミという名の資産凍結(じつは没収)令を出したが、これが裏目に出て、経済が大混乱に陥ってしまった。その結果、最近、韓国から伝えられた情報によれば、デノミ実施の責任者は銃殺刑に処せられたということである。
これは決して大げさな喩えではない。メカニズムは同じである。生方氏解任を発意した高嶋筆頭副幹事長、それを了承した生方氏を除く12人の副幹事長たちの立場など、小沢氏は全く意に介さなかったのであろう。本来ならここで高嶋氏以下の面々はそろって辞表を出すべきところだが、もともとそんな形で小沢氏のすることに意地を通せるような組織ではないようだから、「誤った決定」のカドで「銃殺」されなかっただけ、やれやれと胸をなでおろして、一見落着となるのであろう。
したがって、生方氏が副幹事長に戻ったからといって、民主党が正常化したとはいえない。組織のあり方がそもそもおかしいのである。生方氏は民主党が政権を握ったとたんに廃止された党の政策調査会の復活を求める有志の会、約40人の代表者である。問題の根源はおそらくここにある。
政策調査会の廃止は「政策は内閣に一元化する」という名目で、小沢氏の主導で実施されたのだが、いよいよ政権与党となったとたんに政策に口を出すなというのはいかにもおかしい。小沢氏はなんでそんなことをやったか。言うまでもなく政策調査会長という「党幹部」が幹事長のほかに存在することを嫌ったのであろう。それに唯々諾々と従った所属議員たちの腰抜けが責められなければならないのだが、ここへ来てようやくその復活を求める動きが表面化したわけである。
本来ならせいぜい「口頭注意」くらいですますべき生方発言を捉えて、解任という刀を振り回した高嶋氏の行動は、小沢氏が生方氏らの政策調査会復活要求をいかに嫌っていたかを物語る。確かに今の民主党には小沢幹事長の下に輿石幹事長代理、高嶋筆頭副幹事長、13人の副幹事長が「幹事長室」を構成する以外、役員会だの常任幹事会だのといってもこれという実権はない。予算編成のときに各地、各界からの陳情を幹事長室だけで一手に処理したのが象徴的であった。生方氏解任も23日の役員会、常任幹事会で承認されることになっていたのを、小沢幹事長が開会を延期して、その間に生方氏と会って取り消しをきめてしまったのである。民主党における党内組織の有名無実ぶりがここにも現われている。
自民党でさえ幹事長のほかに政務調査会長、総務会長がいて、「党三役」を構成する。族議員を生むから功罪の判断は難しいが、政調の各部会は各省予算にかなりものを言うし、論客がそろった総務会では時にはげしい意見の応酬が見られるし、大事なことは総務会の了承を得なければ決まらない。
民主党にもせめて自民党程度の民主化を求めたい。生方解任が取り消されたことは小沢氏自身が世論の逆風にたじろいだことの現われだろう。北教祖からの不正献金を受けた小林千代美議員が離党も議員辞職もしないと言って頑張っているのは、北教祖関係者の逮捕、起訴を理由に小林議員が離党したり、辞職したりすれば、当然、秘書3人が起訴された小沢氏にあらためて世間の目が注がれるのを避けたいがため、本人の意思とは別に頑張らされているのだと言われるが、そんな形で政治の筋をねじ曲げ続ければ、結果はさらに悪くなるだけである。
鳩山首相は小林議員について「何らかの対処をする必要がある」と述べているが、ここはせめて「指導性」を発揮して、きちんとした対応をすると共に、小沢幹事長の進退にも総裁としてのけじめを見せてもらいたいものだ。
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