2007.10.17
「段ボール肉まん」報道、ホンモノだった!?
丹藤佳紀 (ジャーナリスト)
この夏、中国の北京テレビ局が「段ボール紙を餡の材料にした肉まんが製造・販売されている」と報道し、外国にも伝えられて国際的な話題になった。その後、北京市当局が調査に乗り出して「あれは担当者による“やらせ”だった」と結論、北京テレビ局は自己批判して謝罪した。これについては、本ブログでも8月3日と23日の二度にわたり取り上げている。
最初が「段ボール肉まん」とルポ番組で伝えられ、その報道が“やらせ”だったという大逆転になったこと。二度目は、その“やらせ”を仕組んで番組を制作した担当者にスピード判決が下されたなどの事後処理だった。こうした経過から「段ボール肉まん」報道は“やらせ”だったということで一件落着と受け取られた。
しかし、中国の食品の危険性を潜入取材で暴露した在野ジャーナリスト・周勍(けい)氏はこのほど来日して東京で講演し、「段ボール肉まんは事実あったと思う」と語った。周勍氏は、自著『民以何食為天』(民はいかなる食を以って天と為すか)(邦訳『中国の危ない食品』草思社)の広報・宣伝のため来日したもので、ニセ食品問題を含む中国の政治・社会問題をテーマに講演した。
周勍氏がその根拠としてまず挙げたのは、肉まんの餡の基本材料である豚肉の高値である。これは、大口消費国である中国も関係のある世界的な原油高によって、トウモロコシがエタノール抽出に転用されるなど家畜飼料が騰貴した。それが豚肉の価格に跳ね返ったものである。
北京の場合、標準的な豚肉は1斤(500グラム)が12元(180円)。これが肉まん30個分の素材になる。北京の勤労者の多くは、出勤前に屋台で肉まんを買って朝食にするが、こうした肉まんは10個で3元(45円)ほど。一方、名の通った店で販売されるものは30個で20元(300円)と二倍近い開きがある。だから、屋台で製造・販売される肉まんは、そうした安い価格を維持するためにはどうしても豚肉以外の“混ぜ物”が必要になってくるというのである。
第二に周勍氏が指摘したのは、事前、事後の経緯に不可解なできごとが含まれる点。“やらせ”を仕組んだとして有罪判決を受けた北京テレビ局の担当者は、ニセ肉まんを追及するため3ヶ月にわたってあちこちの屋台で肉まんの試食を続け、上司からその取材姿勢をほめられたことがあったという。
また、“やらせ”と断定されたこの担当者は、最初、「虚偽報道を行なった」と糾弾されたが、判決では「商品名誉信用毀損罪」という罪名になった(これについては「法的根拠があるのか」という疑問が投げかけられた)。さらに、起訴から判決に至る過程で、人権派として知られる弁護士が弁護の名乗りをあげたものの被告本人から断られる一幕があったという。
いまひとつ、中国共産党や政府当局に批判的な立場から周勍氏のあげたのが、中国共産党中央宣伝部の対応。北京テレビ局の報道が“やらせ”だったと断定された後、マスメディアの総元締めである党中央宣伝部は、国家ラジオ・映画・テレビ総局、新聞出版総署などその指揮下の行政機関とともに、「マルクス・レーニン主義、毛沢東思想の学習」を含む原則を強調した通達を、下部の党・行政機関ばかりでなくすべての新聞・通信・テレビメディアに発した。周勍氏によると、党中央宣伝部がこのようにメディアに直接の指示を下したのは初めてのことだという。
周勍氏の見てとったこの問題の背景:
1 「段ボール肉まん」報道が事実とされると、北京市の関係当局者の責任問題になってくる(北京はオリンピック主催都市)
2 毎日口にしている食品だけに、市民、国民に社会不安が広がる
3 こうした分野に首を突っ込まないよう、メディアを規制する必要がある
以上、周勍氏が講演で語った内容を軸に“やらせ”説への反論を紹介した。ただ、「段ボール肉まん」問題に関して、北京テレビの伝えた内容を裏付ける直接の証拠・証言はなく、いずれも“状況証拠”に留まっている。その意味では真相は依然として「藪の中」というべきだろう。ただ、周勍氏は、ロシア革命で戦艦ポチョムキンの反乱が「艦内食の肉の腐敗」から始まったことを引いて「食の問題は政治に密接に関わっている」と強調したことを付言しておく。
北京の場合、標準的な豚肉は1斤(500グラム)が12元(180円)。これが肉まん30個分の素材になる。北京の勤労者の多くは、出勤前に屋台で肉まんを買って朝食にするが、こうした肉まんは10個で3元(45円)ほど。一方、名の通った店で販売されるものは30個で20元(300円)と二倍近い開きがある。だから、屋台で製造・販売される肉まんは、そうした安い価格を維持するためにはどうしても豚肉以外の“混ぜ物”が必要になってくるというのである。
第二に周勍氏が指摘したのは、事前、事後の経緯に不可解なできごとが含まれる点。“やらせ”を仕組んだとして有罪判決を受けた北京テレビ局の担当者は、ニセ肉まんを追及するため3ヶ月にわたってあちこちの屋台で肉まんの試食を続け、上司からその取材姿勢をほめられたことがあったという。
また、“やらせ”と断定されたこの担当者は、最初、「虚偽報道を行なった」と糾弾されたが、判決では「商品名誉信用毀損罪」という罪名になった(これについては「法的根拠があるのか」という疑問が投げかけられた)。さらに、起訴から判決に至る過程で、人権派として知られる弁護士が弁護の名乗りをあげたものの被告本人から断られる一幕があったという。
いまひとつ、中国共産党や政府当局に批判的な立場から周勍氏のあげたのが、中国共産党中央宣伝部の対応。北京テレビ局の報道が“やらせ”だったと断定された後、マスメディアの総元締めである党中央宣伝部は、国家ラジオ・映画・テレビ総局、新聞出版総署などその指揮下の行政機関とともに、「マルクス・レーニン主義、毛沢東思想の学習」を含む原則を強調した通達を、下部の党・行政機関ばかりでなくすべての新聞・通信・テレビメディアに発した。周勍氏によると、党中央宣伝部がこのようにメディアに直接の指示を下したのは初めてのことだという。
周勍氏の見てとったこの問題の背景:
1 「段ボール肉まん」報道が事実とされると、北京市の関係当局者の責任問題になってくる(北京はオリンピック主催都市)
2 毎日口にしている食品だけに、市民、国民に社会不安が広がる
3 こうした分野に首を突っ込まないよう、メディアを規制する必要がある
以上、周勍氏が講演で語った内容を軸に“やらせ”説への反論を紹介した。ただ、「段ボール肉まん」問題に関して、北京テレビの伝えた内容を裏付ける直接の証拠・証言はなく、いずれも“状況証拠”に留まっている。その意味では真相は依然として「藪の中」というべきだろう。ただ、周勍氏は、ロシア革命で戦艦ポチョムキンの反乱が「艦内食の肉の腐敗」から始まったことを引いて「食の問題は政治に密接に関わっている」と強調したことを付言しておく。
Comment
「藪の中」に留めておくとの表現にジャーナリスト精神を見ました。党中央宣伝部がマス・メディアに直接指示と周氏が言っていますが、メディアのすべてを党が握っているのではないのですか。行政機関に出したついでにという気がします。
小国寡民 (URL)
2007/10/23 Tue 08:26 [ Edit ]
党中央宣伝部がメディアの全権を握っているのは事実です。ただ、「戦争と革命」の時期ならいざ知らず、「法治」をとなえざるを得ない今では中国共産党といえども国民・企業・団体などに直接の
<命令>はできませんだから、行政・司法組織に命じて代行させるのです。
今回、異例だったのは、マスメディア担当の行政機関と連名という
形はとったものの、<黒子>であるはずの党中央宣伝部が表に出て
きたこと。中国共産党大会を控えて何としても抑えこみたいと言う
姿勢がよくうかがわれました。
<命令>はできませんだから、行政・司法組織に命じて代行させるのです。
今回、異例だったのは、マスメディア担当の行政機関と連名という
形はとったものの、<黒子>であるはずの党中央宣伝部が表に出て
きたこと。中国共産党大会を控えて何としても抑えこみたいと言う
姿勢がよくうかがわれました。
すべてが共産党政権に原因があります。世界中のマスメディアがもっと真実を伝えるべきです。食の問題だけでなく、人権問題、環境問題などなど・・・共産党が居座っている限り何も変わらないともいます。共産党が崩壊して初めて中国に、世界に平和が訪れるでしょう。
坂本ゆみ (URL)
2007/10/26 Fri 12:05 [ Edit ]
| Home |





肉まん事件は始まったときから、本物の報道だと確信がもてました。周さんだけでなく、少しでも関心のあるものはみなそうおもっています。とにかく外食は怖い。
江蘇省北部の連雲港市では3本足のひよこ・6本足の豚などが連続して生まれるというサスペンスがありました。でも、市政府は何もしません。中国で暮らすのはスリルがありますよ。