2007.04.11 こんな言葉が!(2) 中国で
丹藤 佳紀


和諧社会(hexieshehui=ホォシエショーホィ)
衣食足りて礼節を知る調和社会


 中国の定例国会である全国人民代表大会が3月に開催され、「和諧社会」(調和の取れた社会)建設をめざす方針が打ち出された。胡錦涛=温家宝政権は、高度経済成長の基礎の上に、バランスを重視した政策、より具体的にいえば、これまでより民生に配慮した政策を志向し始めたといえよう。達成の目標は2020年である。

 この和諧社会について、中国では、「和」は穀物を表すノギヘンに口で、食べることを示す。「諧」は「皆」が「言」だから自由な物言いを表す。二つ合わせれば「民生」と「民主」になるーという文字の国らしい字解きがはやっている(武吉次郎・摂南大名誉教授のご教示による)。

 周知のように、中国の人口は世界一。その人口の圧力はさまざまな分野で競争として現れる。たとえば、交通機関では、バスはいうまでもないが、座席の指定されている旅客機や列車でも先を争う。加えて、1970年代までの計画経済が市場経済に転換され、「優勝劣敗」(すぐれたものが勝ち、劣ったものが負ける)が原理となったから、格差があって当たり前という考え方が強くなった。
 和諧社会という目標は、2006年10月に開かれた中国共産党の中央委員会総会で決定されたが、その背景として、上記のような考え方や行動を容認してきた高度成長一本やりの軌道を修正する必要が生じていることが挙げられる。
 この総会で採択された「社会主義的調和社会の建設に関する若干の問題についての決定」という長たらしいタイトルの文書は、中国社会が「総体としては調和の取れたものである」とまずうたった。しかし、すぐ続けて、「社会の調和に影響する矛盾や問題が数多く存在している」と指摘した。こうした文書は、通常、まず総論として肯定的な評価を打ち出し、次いで各論で問題点を挙げるというスタイルをとる。本当に主張したいのは後者だ。

 では、どんな「矛盾や問題」があるのか。
 第一は、都市と農村の発展に大きな不均衡があり、人口・資源・環境からの圧力が増大
していること。第二に、就職、社会保障、所得配分、教育、医療、住宅、労働災害、治安など大衆の切実な利益に関わる問題が各分野に存在すること。第三に体制メカニズムがなお十分なものでなく、民主的な法制度も健全なものになっていない。第四は、腐敗現象が依然としてかなり深刻であること。
 第二グループなど日本にも共通する問題だが、日本以上のスピードで高齢化の進む中国
では、いま国民の最大の関心事は社会保障制度の確立だという。温家宝首相が政府活動報
告で公約した「公正で効率的で節約型の政府を築く」という政治目標を今秋の中国共産党
大会がどのように具体化するか、和諧社会の成否はそのあたりにかかっている。
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