2007.11.07
世界最大の銀行シティグループの混迷
半澤健市 (元金融機関勤務)
サブプライム問題の射程(3)
またサブプライムかといわれそうだが、事態は急展開しているのでシティグループに関するニュースを短くお知らせする。
持株会社シティグループの実態は米国最大の銀行シティバンクである。米国最大とは世界最大ということである(ただし「リベラル21」9月13日付の拙稿「日中株式時価総額の逆転」で報じたように株式時価総額で「中国工商銀行」に抜かれた)。
世界最大の銀行が2007年10月に発表した第三・四半期(7月〜9月)の決算でサブプライム関連を含め65億ドル(7500億円)にのぼる損失を計上した。11月4日にはそれを追いかけるように約80億ドル〜110億ドル(9200億円〜1.26兆円)に達する膨大な損失発生の見通しを発表した。損失発生の責任をとって会長兼最高経営責任者(CEO)チャールズ・プリンスが辞任した。
次期会長にはロバート・ルービンが、暫定CEOにはウィン・ビショフが就任した。ルービンは元米国財務長官(任期は1995〜1999年)で、過去8年はシティグループの経営執行委員会会長として前会長プリンスを支えてきた。ルービンへのシティからの報酬は昨年は1500万ドル(17億円)だったといわれる。
ルービンの執務室はプリンス会長(当時)の隣室であり、専用ジェット機をもち同社の法人顧客接遇、社内外要人と米国政府との橋渡しという自称「世界最良の仕事」をしていた。財界人と閣僚が“回転ドア”で往来するのを日本ではイメージしにくいが、ルービンは財務長官のその前は大手投資銀行ゴールドマンサックスの共同会長であった。
シティバンクの欧州法人会長であったビショフは、シティグループが英国の名門シュローダー銀行を2000年に買収したときの被買収側銀行の会長である。「サー」の称号をもつ。ビショフCEOが暫定(interim)と発表されたのに、ルービン会長はそうでなかった。
ルービンは会長になりたくなかったらしい。シティグループで火中の栗を拾うことになるからだ。実際、同社は経営調査委員会をつくり次期会長候補者の物色を始めている。一方でとにかくルービンを押さえておかねばならぬほど事態は深刻だという見方もある。
シティグループが発表する財務情報に対してウォール街は疑心暗鬼になっている。
たとえば10月の発表で、同行のサブプライム関連の投融資残高は約15億5千万ドル(1720億円)と言ったのに、次には550億ドル(6兆8千億円)あると修正した。業界を震撼させるサプライズだった。
シティグループの株価の過去一年の高低をみると、最高値は57ドル(06年12月28日)だったのが07年11月5日には35ドルの最安値をつけた。40%近い下落である。
早くもシティグループに関してウォール街では、too big to fail(大きすぎて潰せない)のコトバが出始めているという(「ウォールストリート・ジャーナル」11月7日論説欄)。逆にいえば同社はすでに破綻(fail)したことを意味しているともいえる。
偶然ではあるが、シティグループはプリンス会長辞任報道のさなかの11月5日に、東京証券取引所に株式を上場した。ニューヨーク市場の前日値から円換算した4330円の基準価格からスタートしたが、高値4580円、安値4500円のあと終値4550円と当日は堅調に終わった。あとでみれば、これが悪材料出尽くしの安値となるのか、更に下落が続くかはだれにもわからない。
とまれ、日本の投資家にとってスリリングなスタートであり、グローバリゼーションが一歩身近になったとはいえそうだ。
シティグループのほかに証券大手のメリルリンチも危機に見舞われている。
シティ同様、約一兆円に達する損失を計上し会長兼CEOのスタンレー・オニールが辞任した。ほかにもこの種報道は枚挙にいとまがない。いま世界の金融市場はサブプライム問題に起因する金融市場混乱の行方を固唾をのんで見守っているのである。
英国の経済専門紙「ファイナンシャル・タイムズ」は11月5日付記事の一つに「犠牲者続出で血の海の出現か」(Bloodbath expected to claim more victims)の見出しをかかげ、大手金融機関の損失見込みを報じている。
国内は民主党小沢一郎代表の辞任表明とその翻意の報道で一杯だ。人々の耳目は政治に集中している。しかし金融の世界では火の回りは速いのである。
シティバンクの欧州法人会長であったビショフは、シティグループが英国の名門シュローダー銀行を2000年に買収したときの被買収側銀行の会長である。「サー」の称号をもつ。ビショフCEOが暫定(interim)と発表されたのに、ルービン会長はそうでなかった。
ルービンは会長になりたくなかったらしい。シティグループで火中の栗を拾うことになるからだ。実際、同社は経営調査委員会をつくり次期会長候補者の物色を始めている。一方でとにかくルービンを押さえておかねばならぬほど事態は深刻だという見方もある。
シティグループが発表する財務情報に対してウォール街は疑心暗鬼になっている。
たとえば10月の発表で、同行のサブプライム関連の投融資残高は約15億5千万ドル(1720億円)と言ったのに、次には550億ドル(6兆8千億円)あると修正した。業界を震撼させるサプライズだった。
シティグループの株価の過去一年の高低をみると、最高値は57ドル(06年12月28日)だったのが07年11月5日には35ドルの最安値をつけた。40%近い下落である。
早くもシティグループに関してウォール街では、too big to fail(大きすぎて潰せない)のコトバが出始めているという(「ウォールストリート・ジャーナル」11月7日論説欄)。逆にいえば同社はすでに破綻(fail)したことを意味しているともいえる。
偶然ではあるが、シティグループはプリンス会長辞任報道のさなかの11月5日に、東京証券取引所に株式を上場した。ニューヨーク市場の前日値から円換算した4330円の基準価格からスタートしたが、高値4580円、安値4500円のあと終値4550円と当日は堅調に終わった。あとでみれば、これが悪材料出尽くしの安値となるのか、更に下落が続くかはだれにもわからない。
とまれ、日本の投資家にとってスリリングなスタートであり、グローバリゼーションが一歩身近になったとはいえそうだ。
シティグループのほかに証券大手のメリルリンチも危機に見舞われている。
シティ同様、約一兆円に達する損失を計上し会長兼CEOのスタンレー・オニールが辞任した。ほかにもこの種報道は枚挙にいとまがない。いま世界の金融市場はサブプライム問題に起因する金融市場混乱の行方を固唾をのんで見守っているのである。
英国の経済専門紙「ファイナンシャル・タイムズ」は11月5日付記事の一つに「犠牲者続出で血の海の出現か」(Bloodbath expected to claim more victims)の見出しをかかげ、大手金融機関の損失見込みを報じている。
国内は民主党小沢一郎代表の辞任表明とその翻意の報道で一杯だ。人々の耳目は政治に集中している。しかし金融の世界では火の回りは速いのである。
Comment
立石武士様
コメント有り難うございます。
私がシティパンクの損失を懸念し報告するのは同社が困るからではなく世界経済に不要不当な迷惑がかかるからです。日本経済にも様々なルートで悪影響が出るでしょう。米国金融界が自由経済の名の下に非常識な経営活動をしていることには私も批判的です。米ドルへの信認の失墜はいよいよ来るべきものか来たという感じですね。
コメント有り難うございます。
私がシティパンクの損失を懸念し報告するのは同社が困るからではなく世界経済に不要不当な迷惑がかかるからです。日本経済にも様々なルートで悪影響が出るでしょう。米国金融界が自由経済の名の下に非常識な経営活動をしていることには私も批判的です。米ドルへの信認の失墜はいよいよ来るべきものか来たという感じですね。
半澤健市 (URL)
2007/11/09 Fri 20:10 [ Edit ]
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従って、シティバンクが具合が悪くなり、経済界に多大の影響を及ぼしたとしても、「身から出た錆」のように思えてしようがありません。
私の認識に間違いがなければ、他人の住宅ローンを商売道具にするなんてトンデモナイと思っています。今回の深刻な事態は、正しくこのようなマネーゲームの報いだと思っていますが、倒産というような事態には至らないのでしょう。
それにしても、「ドル」は確実に力を失いつつあり、その歴史的役目を早晩終えるのではないでしょうか。