2007.11.09 ねじれ国会 (a divided Diet)
松野町夫(翻訳家)

 最近、「ねじれ国会」ということばをよく耳にするようになった。マスメディアにも頻繁に登場する。「ねじれ国会」とは、衆参両院のいずれかで野党が過半数を占める状況の国会をいうようである。7月の参院選で民主党が大勝したことで、衆議院はこれまでどおり与党が多数を維持しているものの、参議院は野党の民主党が過半数を占めるようになった。政府与党による法案の国会での成立が困難になってきている。国会に「ねじれ」が生じたというわけである。
 「ねじれ国会」という表現は新語のようだ。いったい、誰が最初に使い始めたのだろう。おおかたの辞書や事典にはまだ掲載がない。ジャパンタイムズでは、「ねじれ国会」をa divided Dietと英訳していた。オックスフォード辞典(OALD) ではdividedを以下のように説明している。
  divided: adjective
  (of a group or an organization) split by disagreements or dif  ferent opinions:
  The government is divided on this issue. ・a deeply divided s  ociety

  しかし、この「ねじれ国会」という表現を私は好きになれない。少しおかしいと思う。「ねじれ」には、日本語としてどこか否定的な響きがあるからだ。
  講談社の日本語大辞典第2版によると、
  ねじ・れる【*捩れる・*拗れる・*捻れる】(下一自)
  (1) くねり曲がる。よじれる。twist <用例>ネクタイが〜。
  (2) ひねくれる。become perverse <用例>心が〜・れている。
 あまり、いい意味ではない。特に、「心がねじれている」という用例は気になる。


 二大政党制のもとでは、与野党伯仲の緊迫した国会、つまり「ねじれ国会」は、国民にとって、むしろ望ましいもの。与野党お互いに、ちょっとした不用意な発言やスキャンダルが命取りになる、いつ、政権交代がおきるかわからない、国民の声に鈍感な政権はすぐに追いやられる。「ねじれ国会」、大歓迎である。
 インターネットで「ねじれ国会」を検索していたら、ある野党の衆議院議員のホームページに次のような主張が掲載されていた。(http://www.koorikazuko.jp/column/?d=20071101)
 
  「ねじれ」国会を政策の停滞を招くとの批判的な声は、当たっては いない。「ねじれ」は、これまで暗室に閉じ込められていた政府の情報を公開させるのに大きな力を発揮している。虚偽・隠蔽体質に対して大きな力を発揮し、政府の失政を正す効果を上げている。糸も縒った方が、鉢巻もねじったほうが強い、のです。

 彼女の意見はもっともなことで私も賛成だが、最後の一文「糸も縒った方が、鉢巻もねじったほうが強い、のです」は、少し変だ。鉢巻は「ねじり」、ねじる (五自) から派生したもの、「ねじれ」とは異なるから。
 それなら、いっそのこと、「ねじれ国会」に代えて、「ねじり国会」と呼んでみたらどうだろう。「ねじり」には否定的なニュアンスなどまったくない。「ねじれ」と「ねじり」は幸いなことに、一文字違うだけなので、たいていの人は同じ意味に捉えるはず。混乱など生じない。ねじり鉢巻など、むしろ、前向きな積極性がある。美空ひばりの「お祭りマンボ」のノリがある。

  ねじりはちまき そろいのゆかた
  雨が降ろうが ヤリが降ろうが
  朝から晩まで おみこしかついで
  ワッショイ ワッショイ ワッショイ ワッショイ
  景気をつけろ 塩まいておくれ
  ワッショイ ワッショイ ワッショイ ワッショイ
  ソーレ ソレソレ お祭りだ

 皆さんも、ここで試しに一度、「ねじり国会」と唱えてみてください。「ねじり国会」、いいですね。ね、違和感ないでしょう!それでも、「ねじり」の使用に抵抗のある人は、ねじりの「り」を少し弱く発音すればいいだけの話です。本サイト代表の田畑光永さんなど、著名人が使用すれば、たちまち、「ねじり国会」が全国に定着するはずです。
 7月の参院選で民主党が大勝したことで、国会に「ねじれ」が生じたのではなく、国民は、7月の参院選で民主党に大勝させ国会に「ねじり」を実現した、のです。

Comment
はじめまして。原と申します。リベラル21はオープン当初より拝見させていただいております。私も「ねじれ国会」という表現に疑問を感じて拙文を公開させていただいています。「ねじれ国会」と呼ぶのが当たり前になってくると現状の本質を見誤るのではないかと思います。松野さんの「ねじれ国会 (a divided Diet)」を読んで、心強く思った次第です。
原 秀介 (URL) 2007/11/15 Thu 00:59 [ Edit ]
原秀介様
コメント、ありがとうございます。ね、そうですよね、「ねじれ」は絶対おかしいですよ。原さんの【もっとねじって「ねじれ国会」】を早速、拝見させてもらい、こちらも心強く思いました。いま必要なのは、「ねじれ」を解消することではない。衆議院と参議院で異なった議決がされたときに、それを解決していく経験と知恵の集積だ、と主張されていますね。私もそう思います。ご活躍を期待しております。(松野)
松野町夫 (URL) 2007/11/24 Sat 13:51 [ Edit ]
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