2007.11.28 守屋(前防衛次官)を居座らせたのは誰だ!?
暴論珍説メモ(27)

田畑光永 (ジャーナリスト)


 守屋前防衛次官の所業は「暴論珍説」と槍玉に上げるのも憚られる、意地汚いとしか言いようのないもので、なかなか取り上げる気分になれなかった。とはいえ、年間予算約5兆円、アジアで最精強といわれる武装集団を管理する事務方のトップが、武器装備を売り込む業者からずるずると八年にもわたって三百回もゴルフ、酒食の接待を受けていたとなれば、これは日本の行政機構そのものの病いの深刻さを明らかにした事件として、しっかりと歴史に書き残されなければならないだろう。
 守屋氏(まだ逮捕されていないので、こう呼ばざるをえない)は衆議院の証人喚問で、防衛省職員には業者とのゴルフを禁じておきながら、自らそれを破り続けたことについて、「なかなか止められなかった」とのべた。断る理由はいくらでもあるのに、「止められなかった」から続けたとは、いかに誘惑に弱い人間であるかを白状したに等しい。とすれば、きっとほかの誘惑にも弱かったにちがいない。
 一方で守屋氏を接待漬けにしながら、山田洋行なる会社、あるいは宮崎容疑者なる人物が何をしていたか、何を得ていたかは、過大請求、見積もり書改ざんなど、おいおい明らかになりつつあるが、もっと大きなものがおそらく出てくるであろう。それはこれからの検察当局の捜査に期待しよう。
 ただ、それとは別にどうにも分からないことがある。それはなぜこの守屋という人物が四年間も事務次官の座におさまっていられたかである。役所の事務次官というのは、通常は一年、長くて二年で、四年というのは異例の長さだ。なぜなのだ。
「防衛庁生え抜きで最初の次官だから」とか、「防衛庁の省昇格を控えていたから」などと言われるが、いずれもなるほどと頷けるほどの理由ではない。この間の長官、あるいは大臣は次の各氏である。石破茂(〇四年九月まで)、大野功統(〇五年十月まで)、額賀福四郎(〇六年九月まで)、久間章生(〇七年7月まで)、小池百合子(〇七年八月まで)。このうち守屋氏を更迭した小池氏を除く四氏は、いずれも任命権者でありながら同氏の居座りを容認した。メディアはこの四氏にその理由を問いただしてほしい。四氏にはそれに答える義務があるはずだ。とくに大野、額賀、久間の三氏は守屋次官交代を当然考えなければならない立場にいたはずなのに、それをしなかった理由を明らかにすべきだ。
守屋氏は今年の夏、小池大臣から更迭を申し渡された後、白昼堂々と総理官邸に乗り込んで当時の塩崎官房長官に訴えて巻き返しを図った。任命権者の決定をその頭越しに覆そうとしたわけだ。そんな行動に出る自信はいったいどこから出てきたのか。
 今月十六日の神奈川新聞の「表層深層」という欄に、「宮崎容疑者が独立し『日本ミライズ』を設立すると、久間氏は山田洋行サイドで動き、守屋―宮崎ラインと対立。今年三月、当時の久間防衛相が守屋氏を次官から退任させようとした背景にも、両者の確執があったとされる」という一節があった。
 記事は「・・・とされる」と伝聞だから、事実かどうかは不明だが、ここから垣間見えるのは業者の内紛に大臣、次官が巻き込まれて争い、大臣が自らの人事権をそんなところで振り回そうとしたという、まことにおぞましい構図だ。ここではたまたま大臣、次官が対立したとのことだが、この次官はずっと政治家の大臣にとってはなはだ都合のいい次官だったのではないか。だから四年も居座っても、本人はまだ辞める気はなかったのではないか。
 わからないことはまだある。 
今月十五日の参議院外交防衛委での証言で、守屋氏は長官経験者の久間、額賀両氏が宮崎容疑者との宴席に同席したことを明らかにした。これについて久間氏は「記憶にない」としながらも、事実上同席を認めたが、額賀氏は断固否認し続けている。
 この件について福田首相は「よくあること」と不問に付す態度を示しているにもかかわらず、額賀氏の否認ぶりは異様である。嘘を言えば処罰される証人喚問の場での証言である。よもや守屋氏が嘘をつくとは思えないし、また故意に嘘をついて額賀氏を陥れようとしたとも思えない。その席で何か重大な問題が話し合われたと証言しているわけでもないのだから。福田首相のように「よくあること」とやり過ごそうとすれば出来なくはないことがらなのに、あくまで否認を通している。なぜか。
 額賀氏はまた官房副長官だった二〇〇〇年三月、山形県の建設業者を仙台防衛施設局(当時)の入札に参加させるよう防衛庁官房長だった守屋氏を通じて同局に働きかけたという、当時の太田述正同局長の証言も真っ向から否定している。太田同局長は克明に当時の出来事を日記につけていて、それをもとに証言したのだが、額賀氏は「それは部下からの伝聞にすぎない。関係者は全員否定している」と言う。
 確かに太田氏にそれを報告した元部下(現東北防衛局長)も業者も否定しているが、当事者にすれば認めたくない事柄だから否定するのは当然で、そういう人たちの否定には証拠能力はない。第三者としては伝聞とはいえ太田氏の日記の具体性に軍配を上げたくなる。
 ともかく、額賀氏の一連の頑張りぶりには「ここで認めたら、それが蟻の一穴となって堤防が決壊する」とでも思っているような印象を受ける。額賀氏はいったい何を恐れているのか。守屋次官というガン細胞を誰も摘出しない間にそれがすっかり肥大して、防衛庁(省)の機能が蝕まれてしまったのではないか。そしてその中に額賀氏はどっぷり漬かっていたのではないのだろうか。
 検察も宮崎容疑者を逮捕しただけで、その後どういう捜査がおこなわれているのか、さっぱりわからない。が、しかたがない、国民はあせらずじっと待つことにしよう。検察が裏切らないことを信じて。
Comment
夫婦で逮捕されるとは・・・。
収賄の役割分担をしていたわけで、次官秘書経験が無関係では無いような気がします。
見聞きしていて当然と思っていたのでしょう。接待の内容などは末節のことであり、長年にわたる防衛利権に絡む不正構造の全容解明を願うばかりです。
山彦 (URL) 2007/11/30 Fri 21:46 [ Edit ]
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