2012.01.20   生協も「脱原発」へ
 日本生協連が提言「エネルギー政策の転換をめざして」を発表
                  
岩垂 弘 (ジャーナリスト)


 生活協同組合(生協)の全国組織、日本生活協同組合連合会(日本生協連、組合員2300万人)は1月17日、「エネルギー政策の転換をめざして」と題する提言を発表した。昨年3月11日の東日本大震災によって生じた東京電力福島第1原子力発電所の事故を受けて、生協として日本のエネルギー政策はどうあるべきかを検討してきたが、この提言はその検討結果をまとめたもので、「原子力発電に頼らないエネルギー政策への転換」を求めている。日本最大の消費者団体が脱原発の主張を明確にしたことは、原発をめぐる世論に影響を与えそうだ。

 福島第1原発の事故は、生協陣営にも衝撃を与えた。生協陣営はこれまで原子力発電の是非については踏み込まないできたが、福島第1原発の事故は世界最大級の規模で被害も甚大だっただけに、生協陣営にも何らかの態度表明を迫るものとなった。
 このため、日本生協連執行部は昨年6月の通常総会に「福島第1原発の事故は、日本のエネルギー政策のあり方を根本的な見直しを迫るものとなりました。日本生協連としては、こうした情勢を正面からとらえて、原子力発電を含むエネルギー政策を検討するために、理事会の専門委員会として『エネルギー政策検討委員会』を設置し、今後の社会的な論議の動向も見据えながら、今後の日本のエネルギー政策のあり方、くらしの見直し活動と生協事業のあり方について、生協としての見解をまとめていきます」との方針を提案、これが可決されたことから、理事会のもとに設けられたエネルギー政策検討委員会で検討を続けてきた。この間、全国の各生協でも討議が行われたという。
 1月17日にエネルギー政策検討委員会から理事会に検討結果の答申があり、理事会がこれを承認し、決定した。記者会見に臨んだ芳賀唯史・専務理事によれば、提言は内閣、原子力委員会、経済産業省などに伝えるという。

 提言は第1章「くらしとエネルギーを取り巻く情勢」、第2章「日本のエネルギー政策への提言」、第3章「生協における取り組み」からなる。
 
 核心は、第2章「日本のエネルギー政策への提言」といってよく、そこでは「今後のエネルギー政策の5つの重点課題」として、①原子力発電に頼らないエネルギー政策への転換②省エネルギー(節電)による使用電力量の大幅削減③再生可能エネルギーの急速拡大④天然ガス火力発電へのシフト⑤電力・原子力に関わる制度改革と次世代送電網(スマートグリッド)の構築、の5点をあげている。
 そして、①原子力発電に頼らないエネルギー政策への転換、では「既存原子力発電所の老朽化や地震の頻発などによるリスクの増大、新増設の困難、未解決の放射性廃棄物の処分の問題、国民世論の動向や政府の方針などを踏まえるならば、原子力発電への依存を段階的に低減し、原子力発電に頼らないエネルギー政策への転換に踏み出すことが、今後の電力のあり方を考えていくにあたっての現実的な選択であると考えます」と述べ、「具体的には以下の通りです」として4点をあげている。
 ①安全対策の抜本的強化と地元合意(既存原子力発電所の再稼働の前提条件)
②老朽化およびリスクの高い原子力発電所の廃炉
③新増設計画の凍結
 ④核燃料サイクル政策の見直しと高レベル放射性廃棄物問題への対応

 エネルギー政策検討委員会がこのような内容の提言をまとめる上で大きな影響を与えたのは、昨年7月に全国の生協組合員2351人を対象におこなった「節電とエネルギーに関するアンケート」の結果だったようだ。
 それによると、「今後の日本における原子力発電所のありかたについての考え」を尋ねた設問の答えは、「増設はせずに長期的には全廃する」51.2%、「現在稼働している発電所は可能な限りすぐに停止させ、早期に全廃する」15.2%、「積極的に増設を続ける」0.3%、「慎重に増設を続ける」4.2%、「増設や廃止はせずに現状を維持する」19.2%、「わからない」10.0%だったという。「原発をなくしたいという組合員が66.4%にのぼったんですよ」と、芳賀専務理事は強調した。 

 ところで、生協陣営内でも、パルシステム生活協同組合連合会(本部・東京、組合員130万人)、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(本部・東京、組合員35万人)などは、すでに、内橋克人、大江健三郎、落合恵子、鎌田慧、坂本龍一、澤地久枝、瀬戸内寂聴、辻井喬、鶴見俊輔の各氏ら9人の文化人が提唱した「原発にさようなら1000万人署名」に参加している。
 「日本生協連としてもこれに参加するか」の問いに、芳賀専務理事は「エネルギー政策を転換させるためのさまざまの運動がある。日本生協連としては、個別の運動を支持するということはしない。しかし、さまざまな運動に関する情報は会員生協に伝えてゆく」と答えた。

 それにしても、この提言をマスメディアが報道しなかったのはなんとも理解しがたい。原発問題には国民の関心がひときわ高いのだから、報道に値するニュースといっていいだろう。まして、生協はいまや世帯加入率が30数%という日本最大の市民組織だ。その動向を伝えるのはメディアの役割の一つと思うのだが。
Comment
情報をありがとうございます。芳賀専務理事がそこまで言及したのですね。特に今年は国際協同組合年として内橋克人氏を代表にさまざまな取り組みがありますので、その中で積極的に発信していってもらいたいものです。
maeda (URL) 2012/01/20 Fri 21:24 [ Edit ]
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