2012.02.14 石原新党・ハシズムの本当の狙いと役割は「保守2大政党制をぶっ壊す」ことにある、(ハシズムの分析、その9)
~関西から(52)~

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

 本当かウソかは知らないが、12月3日の産経新聞は、石原新党の基本政策(草案)の概要を報じた。極右政党の機関紙を目指している産経新聞のことだから、「好機至れり」としてこの際“誇大宣伝”に打って出たのかもしれない。しかしそれにしても、その内容たるや「憲法9条改正による国軍の保持」、「軍事産業の育成と核武装」、「国家公務員3分の1削減」、「首相公選制」、「皇室男子継承」、「平成版教育勅語起草」などなど、戦前はおろかまるで1世紀以上も前に時計の針を戻したような項目がズラリと並んでいるのだから驚く。

 こんな時代錯誤の政策をもし本気で考えているとしたら空恐ろしくなるが、それがまるきり「虚構の話ではない」と思わせるところに、石原新党の狙いと役割があるのだろう。それほど現在の政局は「出口のない膠着状態」に陥っているからであり、大阪ダブル選挙と同じく世論が「ベント」を求めているからだ。なにしろ消費税増税反対の世論は高まる一方だし、田中防衛相のぶざまな国会対応はもはや限界を超えている。野田内閣の支持率も「右肩下がり」の一方だからだ。

 石原新党の話でいえば、当初、石原氏は橋下氏や大村氏との「大都市首長連合」を掲げて「地方から中央をぶっ壊す」と言明していた。ところがここにきて、平沼氏などとともに一転して「右寄り急旋回」を始めたのはなぜか。私はその理由として、石原氏の本当の狙いは「第3極」を立ち上げること自体にあるのではなく、その“振り”をすることで(あるいは部分的に実行することで)、「2大政党制をぶっ壊す」ことにあると睨んでいる。要するに、政策は同じでありながら目先の権力争いに終始している民主・自民両党の2大政党制に終止符を打ち、財界直轄の“保守大連立政権”を樹立するための導火線や起爆剤になるため、「第3極」を打ち出したと考えているのである。

 理由はいくつかある。まず「産経広告」のような時代錯誤の基本政策では、ファッショ的でありながらも中身は新自由主義バリバリの大阪維新の会やみんなの党が石原新党に「乗れない」と思うのがひとつだ(国民新党もあやしくなるだろう)。グローバリゼーションや地球市民社会を幻想と断じ、「一国家一文明」を唱えるような国粋主義は、なによりも日本を従属的な経済・軍事同盟に縛りつけておこうとするアメリカの戦略にも反する。こんな国粋政党に政治資金を出す財界(グローバル企業)はいまどきいないだろう。

 そうなると、大言壮語するばかりで自らの手足を持たないような極右政党は早晩存在感を失い、マスメディアにも相手にされなくなること請け合いだ。石原新党は、「立ち上がれ日本」と同じく「立ち枯れ日本」へ没落していく以外に道がなくなるのである。石原氏もバカではないから、まさかこんな自滅作戦は選択しないだろうが、となると、残る選択肢は大阪維新の会等との連携になる。しかし維新の会顧問の堺屋氏などは石原氏との「抱き合い心中」を極度に警戒しているので、なかなか新党結成に踏み切る気配がない。「産経広告」の後ではなおさらのことだ。

しかし「石原新党」になるか「橋下新党」になるか、あるいは両党が並立するかは別にして、何らかの形で次の総選挙で「第3極政党」が出てくることはまず間違いない。なぜなら「第3極政党」の狙いと役割は、独自の政策を持った自立した政党の擁立ではなく、その策動を通じて「保守2大政党制をぶっ壊す」こと、すなわち政界大再編の機運をつくることにあるからだ。次期総選挙では、「第3極政党」の国会進出によって民主・自民両党を横断する政界再編の大波が襲い、財界直轄の大連立政権の樹立によって、消費税増税、TPP参加、比例代表制廃止、年金・社会保障改革、憲法改正、沖縄軍事基地再編など、長年の財界懸案事項が次々と実現に移されていくことになるかもしれない。

石原新党や橋下新党などへの目下の動きは、所詮「目くらまし策動」の一環に過ぎないので、それにだけ目を奪われることは要注意であり危険だ。問題はその背後に流れる財界直轄の大連立政権樹立への策動にあるのであって、この動きにこそ監視の目を集中しなければならない。そしてこうした保守大連立政権への動きに対抗するためには、これまでの革新政党間の共闘に加えて、新たに広汎な革新的市民層が参加できる「革新版救国戦線」構築の準備が喫緊に求められていると思う。「極右第3極」の動きに対抗する「革新第3極」の構築だ。

「革新第3極」への準備は、目下のところ必ずしも政党結成の形をとる必要はないのではないか。「ラウンドテーブル」(円卓方式)で革新諸派が自由に話し合う場をつくり、そこから全国民・全世界に対して「国のかたち」を問うメッセージを発していけばよいのである。いわばマスメディアも巻き込んで「国民総討論」の場をつくり、世論動向を左右できるぐらいの情報発信力を持てるようにすればよいのである。「9条の会」の面々をはじめ、いまこそもっと広汎な人たちが立ちあがるときだ。傍観座視して日本を「立ち枯れ」にしないためにも。


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