2012.04.18 首都攻撃に平然装う米大使―撤退協定調印が目前
―末期症状のアメリカのアフガン戦争(14)

坂井定雄(龍谷大学名誉教授)


アフガニスタンの反米武装勢力による首都カブール攻撃(15日)は、今年の春の不吉な展開のスタートだ。首都カブール中心部の厳戒地区に集められたアフガニスタン議会、米、英、独、日大使館、国際治安支援部隊(ISAF)司令部を、近くの建設中のビル3カ所から、RPG(携帯式ロケット推進弾)で攻撃した。昨年9月、米大使館などを攻撃したのと同様、首都に潜入し、空きビルからRPG攻撃した。ただし今回は厳戒地区のなかでもとくに厳重警備されている「鉄の環」地区にも武装勢力の一部が侵入。南東部のパキスタン国境に近い3州でも、外国軍やアフガン軍・警察を同時攻撃した。すべての攻撃が真昼間の午後1時台にほぼ一斉に始まった。アフガン国軍が、NATO軍のヘリの支援も得て応戦、18時間後にやっと制圧。武装勢力36人、国軍や警察隊は11人、民間人4人の死者を出して戦闘が終わったと、政府側から発表された。
米軍側は、首都攻撃のやり方から、前回同様、タリバンと共闘関係にある武装勢力ハッカーニ派の攻撃とみている。攻撃部隊は、拠点のあるパキスタン国境地域からカブールまでの山道を200キロ程度、大量のRPGや爆発物を積んだランドクルーザで走ってカブールに入ったはずなのだが、事前情報はなかった。米軍が育成してきたアフガン治安部隊は国軍17万人、国家警察隊は14万人、数に上では計31万人に達しており、とくに首都の治安を全面的に担っているのだが、今回のケースでも、国軍と警察隊の治安態勢の弱さが露呈した。

だが奇妙なことがある。クロッカー米大使は堅固に防護された大使館からCNNテレビに、「アフガンの治安部隊は非常に、非常に良く、非常にプロフェッショナルに任務を果たした」と称賛。アレン駐アフガン米軍兼ISAF司令官も「カブール攻撃に対し、アフガン治安部隊が敏速に対応したことを大きな誇りとする」と褒めそやしたのだ。
一方、カルザイ・アフガン大統領は、アフガン治安部隊の対応を「彼らの国を守る能力を証明した」と褒めたうえで、「われわれ、とくにNATOの情報収集の失敗は厳しく調査しなければならない」と指摘した。
米大使や米軍司令官が、アフガンの治安部隊を褒め、弱体さや失態について触れなかったのには理由がある。2014年に予定される米軍・NATO軍の大部分撤退後の、米軍駐留と巨大軍事基地維持、駐留米軍の法的地位や任務を取り決めた両国の「パートナー・シップ協定」の最終合意が迫っているからだ。オバマ米大統領は、同協定を5月20日にワシントンで開かれるNATO首脳会議に報告、了承を求める手はずになっている。同協定では、治安任務は全面的にアフガン国軍、国家警察隊が担うが、相当数(2万人以下)の米軍が少なくとも10年間、駐留することを取り決めるという。今回の攻撃などで、アフガン治安部隊への信頼が揺らげば、同協定は共和党の絶好の攻撃材料となるだろう。
米国はイラクでも、同様な米軍駐留継続をイラク政府に要求して交渉したが、イラク政府は米軍の免責特権拒否を盾にして駐留拒否を貫いた。(アフガンでの協定交渉について、日本のメディアは、なぜか伝えていない)
同協定の最終合意を前に、4月8日、両国はカルザイ大統領がかねてから強く要求していた、米軍とアフガン国軍による夜襲はじめ特殊部隊攻撃の実施権限の大部分を、米軍からアフガン国軍に移譲する取り決めに調印した。深夜、村落を急襲し、民家に押し入ってタリバン容疑者を捕まえるか殺害する米軍特殊部隊の夜襲は、米軍の攻撃の中でも特に恐れられ、反米感情の大きな原因となっていた。コーラン焼却事件や3月の深夜集団殺りく事件でさらに反米感情が高まったため、現地米軍幹部の強い反対を押し切って、権限移譲が急いで取り決められとみられ、アレン米軍司令官とワルダック・アフガン国防相による調印式が首都で行われた。(パートナーシップ協定と夜襲権限委譲取り決めの内容については、次回に譲る)

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