2008.01.02
憲法をめぐるせめぎ合い
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
連合通信社が護憲テキストを発行
労働組合や市民団体にニュースを配信している連合通信社(東京都港区)が、『憲法をめぐるせめぎ合い――その今とこれから』と題するブックレットを出版した。同通信社製のチラシに「止まらない改憲策動に勝つための新たなたたかいの展望を示す一冊」とあるように、参院選後の新しい情勢を踏まえて平和憲法を守る運動をさらに強めるためにつくられたテキストである。これは、法律の専門家による「日本国憲法の解説書」や「憲法問題の解説書」ではない。改憲阻止の運動を進める自由法曹団で、運動の先頭に立ってきた坂本修弁護士(前自由法曹団団長)に「マスコミ・文化九条の会 所沢」がインタビューし、改憲問題の現状と、護憲運動の課題と展望を語らせたものだ。いわば、坂本弁護士による護憲のための実践レポートといってよい。
ブックレットは第1章「激変の情勢――国民の意思は改憲ノー」、第2章「開かれた情勢を生かすために」、第3章「新たな視点で、かつてない共同を広げる」、第4章「自由法曹団とともに――憲法の語り部として」の四章からなる。
この中で、坂本氏は、まず自民党が大敗した07年7月の参院選挙にふれ、「(これは)けっして一時の逆風や表層雪崩(なだれ)ではなく、自公政権と国民の間に深まる何重もの矛盾の広がりが厳しい審判となって現れたのだ」とし、「第一の矛盾は、小泉内閣以来の新自由主義と規制緩和によって、社会が弱肉強食化し、格差拡大で惨たる状態になっているのに、この路線をさらに強行しようとしていることへの国民の怒りです。第二は、教育基本法の改悪や国民投票法の強行制定など、国会を投票マシンのように暴走させる手法への不信の広がりだったのではないでしょうか。そして第三の矛盾は、日米同盟を『血の同盟』と位置づけ、それを現実化させるために『戦後レジーム(体制)』の解体を叫ぶ、危うい安倍内閣への危機感です」と述べる。
そして、こう続ける。「国民に痛みを与え続け、それを拡大する構造改革をさらに進める。解体すべき対象の第一に憲法9条をあげ、しかも2010年までに改憲を強行するという公約をトップに掲げた。こうした路線に対する国民の危惧と批判が、自民党や安倍前首相らの予想を超えて広がったのは間違いありません」
つまり、自民党大敗の背景には、改憲へ突っ走る安倍自民党への国民の危惧と批判があったというのだ。
大敗した自民党は改憲をあきらめたのだろうか。こうした問いに坂本氏は「(安倍から福田へ)内閣は変わっても、アメリカに忠誠を誓う姿勢と、財界・大企業本位の路線に本質的な変化はないでしょう。構造改革路線と改憲路線の方向は基本的に変わらないと考えています」と語る。そして、参院選の結果により明文改憲のスケジュールが大きく狂った自民党としては、当面は解釈改憲と、恒久派兵法などの新しい法律をつくることで事実上の改憲状態をつくりだす立法改憲を続けるのてはないか、とみる。したがって、これからは、解釈改憲と立法改憲に反対する運動を重視すべきだとしている。
坂本氏は、今後の運動のあり方についても提言している。
第一は、「共同を広げること」で、「労働組合、宗教者や市民団体、学生、弁護士団体、婦人団体など国民各層のあらゆる団体」が「憲法改悪反対の一点で共同し、平和憲法を守り抜く」よう呼びかけている。
第二は、労働組合が改憲反対闘争に立ち上がるよう呼びかけていることで、「市民による改憲反対運動のかつてない広がりに比べて、労働組合運動側のこの課題についての取り組みはまだ弱いのでは、という印象をもっています」と話し、「改憲発議を許さない草の根からの運動をつくることを考えたとき、労働運動の力がどうしても必要だ」として「憲法闘争に労働運動がどう立ち向かうかは、これからのせめぎ合いの勝敗に大きくかかわる戦略的に重要な課題だと考えます」と述べている。
A5判、72ページ。定価500円(送料別)。申し込みは連合通信社(03−3454−1105)へ。
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