2012.09.27 ハシズムをどう包囲するか、ハシズムとどう闘うか、「おおさか社会フォーラム2012」で議論になったこと(1)
ハシズムの分析(その32) ~関西から(75)~ 

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

 9月15、16日の両日、大阪で「おおさか社会フォーラム2012」が開かれ、2日目には実行委員会主催のワークショップ企画、『橋下現象を読み解く:大阪とウイスコンシンを結んで』が開催された。会場では並行して数多くのワークショップが開かれていたが、やはり「橋下現象」と「ウイスコンシン」をリンクさせたこの企画は参加者の注目を引いたらしく、100人近い人びとが熱心に討論に参加した。

このテーマは、すでに今年2月の「プレフォーラム」でも取り上げられており、『公教育と公務員労組の解体と闘うウイスコンシンからの報告』と題する時宣を得た討論会は、熱気あふれる日米交流の場となった。アメリカ・ウイスコンシン州では、その直前の2012年1月、ウォーカー知事に対するリコール運動が法定数の倍近い100万人を超える署名を集めて選管に提出され、リコール成立は確実なものになっていた。また大阪では「大阪ダブル選挙」(2011年12月)に敗れたものの、反ハシズム陣営の士気は決して衰えていなかった。

私はそのときの印象記を、2012年3月2日の『リベラル21』に書いている。タイトルは「大阪ダブルリコール運動を準備しよう、反ハシズム運動の局面打開のために」というものだ。主旨は「ユナイティッド・ウイスコンシン」(団結したウイスコンシン)と呼ばれる広汎な市民によって組織されたリコール署名運動の成功に学んで、「反ハシズム、ユナイティッド・オーサカ」を結成し、大阪府知事・市長の大阪ダブルリコール運動に果敢に打って出ようというものだった。

あれから半年、ウイスコンシンでは残念ながらリコール後の州知事選挙でウォーカー知事の再選を許すことになった。また大阪では維新の会がますます勢いを得て、あろうことか国政選挙にまで進出しようとしている。にもかかわらず、「おおさか社会フォーラム」がウイスコンシンと大阪を結ぶ再度の企画を立てたのはなぜか。それは両者とも選挙では敗れたものの、労働運動・市民運動レベルでは決して「負けた」とは思っていないからだ。

私もフォーラムの準備段階の事務局会議に出たが、印象的だったのは実行委員会メンバーのなかに共通するある種の落ち着きと余裕だった。「いずれ(必ず)ハシズムをやっつける!」という確信がある所為なのか、当面の情勢に一喜一憂することなく、“ハシズム包囲網”をどう構築するかが共通の話題になった。ワークショップでは、橋下氏個人や維新の会に対する批判よりも、なぜ彼らにそれほどの支持が集まるのかをじっくり議論しようというのである。

そこで来日する反ウォーカー陣営のアドレンヌ・パジックさん(ウイスコンシン大学院生、政治経済学、ウイスコンシン大学院生・助手組合役員)には、リコール運動の大成功にもかかわらず、なぜ州知事選挙で敗れたのかを率直に報告してもらうことになった。また日本側は橋下市政に対決している抗議運動の立場から一歩離れて、『誰が橋下を支持しているのか』(世界、2012年7月号)という注目すべき論文を書いた松谷満氏(社会学、中京大学)に“橋下現象”を読み解いてもらうことにした。そして、私はコメンテイターの役割を務めることになった。

ウイスコンシン側の代表は、いつも大学の組合役員それも(若い)女性に決まっている。おそらく社会フォーラム実行委員会とのコネクションがそのあたりにあるのであろうが、自らが組織している運動を分析的視点で溌剌と語る報告はいつ聞いても楽しく説得力がある。パジックさんもその例にもれず、臨場感あふれる口調で「州知事選挙に負けた原因」と「私達が負けていない理由」を語ってくれた。なお特筆されるのはワークショップ当日、実行委員会の翻訳でジョン・ニコルス著、『市民蜂起~ウォール街占拠前夜のウイスコンシン2011~』(かもがわ出版)が出版されたことだ。詳しい内容は是非この本を参考にしてほしい。

選挙の直接的な敗因は、ウォーカー陣営に対して全米の大金持ちや巨大企業から投じられた1億ドル近い選挙資金とそれによるネガティブキャンペーンの巨大な影響によるものだったという。アメリカの選挙では相手側の候補者個人に対して攻撃が行われるのが通常だが、今回の場合はリコ―ル運動の中核である公務員組合・教員組合に対する攻撃が中心になった。彼らは公務労働者が豊かである一方、民間労働者は困窮しているとして、民間労働者と公務労働者を対立させることに集中した。

だが、このようなキャンペーンはいまに始まったことではなく、大企業・保守派によって長年組織的に行われてきたものだ。その結果、実際は大企業が民間労働者から安定した雇用を奪い、組合を破壊してきたにもかかわらず、多くの民間労働者は公務労働者が自分たちよりも恵まれていると信じている。また公務労働者の組合の力があってこそ(中産階級の)市民生活に必要な教育・福祉・消防・治安・衛生などの公共サービスが確保されるにもかかわらず、そのことが必ずしも十分に理解されていない。

教員や公務員個人は地域社会のなかで市民のひとりとして生きている。また公務労働者は「公共の仕事」(パブリックサービス)の担い手として尊敬も集めている。にもかかわらず、このような民間労働者と公務労働者を対立させるキャンペーンが功を奏したのは、長年にわたる保守派の「個人の自助努力」イデオロギー(組合の力によってではなく、自分の個人的努力で豊かになる・なれる)の浸透があり、“反組合・反組織”の感情を組織したからだという。事実、労働組合員とその家族の38%が自分たちの利益に反するにもかかわらずウォーカーに投票したのである。(次回は日本側報告について)
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