2012.11.29 日本語、こんな言い方・書き方ってあるのかな?
―日ごろ見聞するあれこれから(39)―
                        
丹藤佳紀(ジャーナリスト)


≪大学新設の3件を不認可した≫
原文:「短大から4年制大学に移項する手続きに入っていた秋田公立美術大学など大学新設の3件を不認可した」(『読売新聞』、11月8日)
説明:田中真紀子文部科学大臣は、任命されたときから言動が危ぶまれていた。果たして、大学新設をめぐって騒動となった。その発端を告げる一節を投書から拾った。
役所にある権限をまとめてよく許認可権といい、認める場合、「許可する」「認可する」となる。しかし、逆の場合、「不許可する」「不認可する」とは言わないだろう。言うとすれば、許可・認可を名詞扱いにして「不許可にする」「不認可にする」ではないか。現に、曲折のあげく「認可する」ことになっての解説では「事務方から(不認可とすれば)訴訟の可能性があり」との説得があったという。
漢字語の名詞の多くは、「批評する」のようにサ行変格活用で動詞に使われる。否定表現のとき、漢語(中国語)では、否定の副詞「不」は動詞の前に来るから「不批評」になる。しかし、日本語ではそうは言わず、活用の未然形を使って「批評しない」となる。


≪視聴者や該当の声を裏取り もせず≫
原文:「特に見過ごせないと思うのは(中略)視聴者や該当の声を裏取りもせず、そのまま流すやり方だ」(『朝日新聞』、11月8日)  
説明:論説委員が社説について取り上げる「社説余滴」というコラムにあった表現。「裏取り」とは、事実かどうか「裏付けを取る」という確認作業を表す“業界用語”だ。一般の読者にこのままで通じるのだろうか。
他紙では「不正会計(中略)確認するためには、どのような裏の取り方が有効なのか」(『フジサンケイ・ビジネス・アイ』)という表現が目についた。


≪熊本弁が(中略)朴とつとした語り口≫
原文:「JR東日本副社長から畑違いの金融界に(中略)。出身地の熊本弁がかすかに残る、朴とつとした語り口」(『読売新聞』、11月5日)
説明:急逝したりそなホールディングス会長を紹介する記事の一節。「朴とつ」は漢字書きすれば「朴訥」だが、「訥」は常用漢字ではないからかな書きされている。辞書を見ると、「木訥」とも充てるようだ。ここでの問題はその用法である。
品詞は名詞・形容動詞で、「朴訥な」と修飾に使われるが、原文にあるような用法もあるのだろうか。読み方も意味も近い単語に「訥々」があり、こちらはよく「訥々とした」「訥々として」などと使われるが、それと混同したのではないだろうか。

≪羽田空港からTD(添乗員)が同行≫
原文:「羽田空港からTD(添乗員)が同行し、3日間ご案内いたします」(某旅行社の国内旅行募集の新聞広告、11月10日)  
説明:何を取り上げたいのか、もうおわかりだと思う。そう、「TD」。すぐ後ろに(添乗員)と補足があるので、意味はわかるとは言うものの、なぜここに「TD」とローマ字を入れなければならないのか。
この会社に電話で問い合わせると、案の定、「Tour Director」の頭文字だった。しかし、コールセンターの担当者では広告文の表記法のことはわからないという。比較のため、外国行きを含め他社の新聞広告もいくつか調べてみたが、みな添乗員で、「TD」なるものを使ったのはこの会社以外に見つからなかった。
『カタカナ語辞典』(三省堂)には、「ツァーガイド」とともに「ツァーコンダクター」が和製英語として添乗員の意で掲載されているが、この「ツァーディレクター」はない。“新参”のカタカナ語だから、元を表すために「TD」なんて入れたのかもしれない。


≪「役所が主張するのは常とう手段」と同省の狙いを読み解いた≫
原文:「ある裁判所関係者は『行政訴訟を起こされた役所が≪処分は済んでいなかった≫と主張するのは常とう手段』と同省の狙いを読み解いた」(『読売新聞』、11月7日)  
説明:これまで再三とりあげてきた「交ぜ書き」である。常套手段の「套」が常用漢字表にないものだからかな書きにしたのだろう。常套手段を見知っている読者はそのまま読み通せるだろうが、知らない読者は「常とう手段」で意味が取れるのだろうか。
これは4字熟語だから「常套(とう)手段」とルビ付きで漢字書きすべきものである。ルビを避けたければ「いつも使う手段」など言い換えを工夫したらいい。もっとも、この記事の場合、裁判所関係者の発言に使われていたようだから、直接引用としてルビ付きでも使わざるを得ないだろうが。


≪放送中に何回も「重大なお知らせ がありますから最後までお見逃しなく」とテロップ≫
原文:「気になったのは、放送中に何回も『重大なお知らせがありますから最後までお見逃しなく』とテロップが入ったこと。視聴者プレゼントと、ドラマをDVD・ブルーレイで発売するという話だったが、これが重大だろうか?」(『東京新聞』、11月9日)
説明:「反響」と題する読者からのテレビ評のひとつである。まさしくこの投書の結論通りで、たかがこの程度の視聴者サービスを「重大なお知らせ」とは誇大宣伝もいいところだ。
できの悪いドラマであることを承知しているだけに、その最後までチャンネルを切り換えさせないための“策略”ではないか。こんな“狼少年”もどきを繰り返していると、実際に「重大なできごと」のあったとき、信じてもらえなくなるだろう。

≪町にひとつきりある中学校の隣の文房具屋≫
原文:「町にひとつきりある中学校の隣の文房具屋が、私にとっての宝物」(『みすず書房ニュースレター』、10月30日)
説明:「ひとつきりある」のくだりが気になったのですが、如何でしょうか。ここにある「きり」は、「だけ」とか「しか」と置き換えられる単語ですが、後ろに否定を伴うことが多いようです。その点に関しては、「しか」の方が明確で、「・・・しかある」とは言いません。ただ、「きり」、「だけ」は両用で、「一人(    )で住む」のカッコ内に当てはまりますし、引用文も「町にひとつきりない中学校の隣の文房具」とも言えます。どちらかと言えば、否定形の続く方が自然な感じがするのですが、これは好みの問題でしょうか。
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2012/11/29 Thu 07:40