2013.01.10 革新政党の不振と衰退は目を覆うばかりだ、総選挙の総括なき敗北は政党消滅への道に通じる、(ハシズムの分析、その42)
~関西から(85)~ 

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)


昨年の総選挙以来、「リベラル21」同人の舌鋒が日増しに鋭さを増している。論旨は各人各様だが、革新勢力の収縮と後退が露わになるなかで、戦後民主主義を担ってきたリベラリストたちがいまなお不屈の闘志と強靭さを発揮していることは心強い。私自身もほぼ同世代に属する一員なので、これに負けず劣らず論陣を張りたいところだが、今度ばかりは少し落ち込んでしまってなかなか筆が進まない。

なぜかくも気が重いのか。理由は2つある。ひとつは革新政党(社民党、共産党)の得票数の落ち込みが並み大抵のものではなく(私自身はもう少し頑張れるものと期待していた)、歴史的な惨敗・大敗を喫したという厳しい選挙結果に圧倒されたからだ。もうひとつは、にもかかわらず選挙総括が現実を直視したものになっておらず、その体質に絶望に近い気持ちを抱かざるを得ないからだ。

選挙結果は事実そのものだから認める他はない(いまさらとやかく言っても仕方がない)。だが、選挙総括はこのような事態を招いた原因や背景を究明し、そこから如何にして立ち直るかという今後の方針を見出す作業だから絶対にゆるがせにできない。選挙総括にはいわば政党の未来がかかっているのであり、キチンとした総括ができない政党には「未来がない」と言っても過言ではないからである。

総選挙後の世間の大方の関心は、民主党の壊滅と自民党の圧勝に集中した。確かに民主党の惨敗ぶりは凄まじかった。前回総選挙(2009年、比例区)の得票数2984万票の2/3に当たる2021万票を失い、議席数は308→57(比例87→30、小選挙区221→27)へ激減した。これに対して自民党は前回1881万票から219万票(1割強)を失ったものの、議席数は119→294(比例55→57、小選挙区64→237)と激増した。

一方、社民党や共産党の敗北はあまり注目されなかった。こちらの方はもはや政権はおろか政局にも影響することが少ない「周辺部分」だと思われているのか、まとまった論評も出なかった。だが、社民党が前回301万票の過半数152万票を失い、共産党も前回494万票の1/4に当たる125万票を失ったことは、少数政党とはいえ両党が革新政党の中心的存在であるだけに、日本の革新勢力にとっては大きな痛手であることは間違いない。

その結果、社民党得票数は301万票(4.3%)から142万票(2.4%)へ、議席数は7→2(比例4→1、小選挙区3→1)へと激減し、共産党もまた494万票(7.0%)から369万票(6.2%)へ、議席数は9→8(比例9→8、小選挙区0→0)へと後退した。

この数字の意味するところは深刻だ。一言で言って、社民党は“解党的惨敗”、共産党はその一歩手前だと言ってよい。現行の選挙制度では得票率が4~5%を割ってくると、小選挙区はもとより比例代表区の議席数が極端に少なくなるという特徴がある。今回の社民党得票率はいわばその“臨界点”を超えてしまったのであり、共産党はそれに近づいているといえるからだ。

得票率4~5%の“臨界点”の次の段階には、政党自体が消滅する得票率2%という“沸点”がある。周知のごとく、政党助成法における政党要件(第2条)は、「衆参国会議員5人以上を有する政治団体」あるいは「直近の国政選挙で有効投票の2/100以上を得た政治団体」となっている。この要件を満たせなければ政党として認められず、したがって政党交付金も受け取れない。

社民党の参院議員は目下4人だ。しかし今年7月の参院選挙で任期切れを迎える議員が2人いるので、もし議席ゼロになれば衆院2人、参院2人と合わせても政党要件の5人を割ることになる。勿論、得票率を2%以上確保すれば話は別だが、いまの社民党にそれだけの集票能力を期待することは相当無理がある。このままでいくと社民党得票率は2%を割り、議席ゼロになる可能性も否定できない。

政治資金の圧倒的部分を政党交付金に依存している社民党にとって、政党交付金が無くなることは文字通り死活問題に直結する。政党交付金が無くなれば足腰の弱い社民党の政党活動は決定的打撃を受け、党を支える活動家の人件費や行動費も支給できないことになり、事務所も閉鎖せざるを得ない。いわば政党としての実体が無くなるわけだから、次回の総選挙をまともに戦えなくなることは眼に見えている。今回辛うじて当選した2人の衆院議員が、次回も議席を守れる保証などどこにもないのである。

こんな危機存亡の事態に直面した社民党がいったいどんな選挙総括をしているのだろうか。次はそのことに触れたい。
Comment
社民共産にはもう期待できない。
民主党内のリベラル派に期待する。
というか民主党内の保守派は自民や維新に移籍してほしい。
反自民だけで集まった寄せ集めだったから政権運営に躓いたわけで、民主党はリベラル路線で党内純化を図るべき。
名無しさん (URL) 2013/04/21 Sun 13:58 [ Edit ]
夏の参議院選挙では、民主党に入れず、社会党、共産党に投票していた連中が、「もう無駄だ」と民主党に入れるので、民主党は大敗はしない気がします。
いずれにしても最近の国政選挙は「グレート・スイング」で、前々回は大きく民主に振れ、前回は反対に自民に行ったので、この次は民主の方に少し揺れもどす気がします。
もう、その辺にしか希望はないのかと思うと本当にひどい時代になったものです。

今の自民党に、昔の古き良き保守はなく、維新はそれ以上の新自由主義と超右翼思想で、どうにもならない。
さすらい日乗 (URL) 2013/04/23 Tue 22:48 [ Edit ]
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2013/01/12 Sat 09:43