2008.01.21
「温暖化」を都合よく使うな!
「暴論珍説メモ」32
通常国会が始まった。今年は衆目のみるところ「解散・総選挙の年」だそうだから、これから与野党ともに国民の顔色をうかがいながら、すこしでも自分の方に好感を持ってもらおうと色目を使う日々が続くことになるのだろう。
そしてこの通常国会は「ガソリン国会」だという。道路特定財源のガソリン税の暫定税率が今年度で期限切れとなるが、自民党はさっさとその「暫定」を今後十年間は維持すると決めているのに対して、民主党は衆参のねじれをたてにそれを認めず、年度末で「暫定切れ」に持ち込み、ガソリン1リットル当たり25円ほどの値下げを実現しようとしている。
なにしろ原油の価格は去年一年で急騰した。それが末端のガソリンスタンドでの小売値段にもろに響いて、1リットル100円前後だったのが150円以上にまで上がってしまった。今の生活はあらゆる面でガソリン、あるいは石油に依存しているから、生活諸物資の値段も上がり始めた。ここで最近のガソリン値上がりの半分ほどが帳消しにできるなら、それにこしたことはないというのが、大方の実感だろう。
野党がそれをふりかざすのは、かなりの程度ご都合主義だが、当然である。そもそも「暫定」が何十年も続いたことが異常なのに、さらに十年も続けようというのはいかにも常識に反する。しかし、自民党は暫定税率分2.7兆円の税収が消えてしまっては大変だから、いろいろ理由をつけてそれを維持しようとしている。たとえば、2.7兆円のうち0.9兆円は地方に配分される分だが、それがなくなると、一般経費を削って道路整備に当てなければならないから、その分、文教予算や福祉予算が削られると言った議論である。風が吹けば桶屋が儲かる式の牽強付会の論理である。
しかし、それだけではまだ足りないと持ち出してきたのが、ガソリンの値段を下げるのは温暖化抑制に反するという暴論である。
町村官房長官は十九日、千葉県市原市での講演で「ガソリンの値段を下げればそれだけで日本の環境問題はそんな程度の取り組みなんだということになる。そのマイナス効果は計り知れないものがある」とのべた。また、高村外相も十九日、山口市で講演し、(洞爺湖サミットで)「地球温暖化でリーダーシップを発揮しようとしている時、『ガソリン税を下げました。もっとガソリンを使いましょう』という態度でいいのか」とのべたという。(『日経』『朝日』などによる)
田畑光永 (ジャーナリスト)
通常国会が始まった。今年は衆目のみるところ「解散・総選挙の年」だそうだから、これから与野党ともに国民の顔色をうかがいながら、すこしでも自分の方に好感を持ってもらおうと色目を使う日々が続くことになるのだろう。
そしてこの通常国会は「ガソリン国会」だという。道路特定財源のガソリン税の暫定税率が今年度で期限切れとなるが、自民党はさっさとその「暫定」を今後十年間は維持すると決めているのに対して、民主党は衆参のねじれをたてにそれを認めず、年度末で「暫定切れ」に持ち込み、ガソリン1リットル当たり25円ほどの値下げを実現しようとしている。
なにしろ原油の価格は去年一年で急騰した。それが末端のガソリンスタンドでの小売値段にもろに響いて、1リットル100円前後だったのが150円以上にまで上がってしまった。今の生活はあらゆる面でガソリン、あるいは石油に依存しているから、生活諸物資の値段も上がり始めた。ここで最近のガソリン値上がりの半分ほどが帳消しにできるなら、それにこしたことはないというのが、大方の実感だろう。
野党がそれをふりかざすのは、かなりの程度ご都合主義だが、当然である。そもそも「暫定」が何十年も続いたことが異常なのに、さらに十年も続けようというのはいかにも常識に反する。しかし、自民党は暫定税率分2.7兆円の税収が消えてしまっては大変だから、いろいろ理由をつけてそれを維持しようとしている。たとえば、2.7兆円のうち0.9兆円は地方に配分される分だが、それがなくなると、一般経費を削って道路整備に当てなければならないから、その分、文教予算や福祉予算が削られると言った議論である。風が吹けば桶屋が儲かる式の牽強付会の論理である。
しかし、それだけではまだ足りないと持ち出してきたのが、ガソリンの値段を下げるのは温暖化抑制に反するという暴論である。
町村官房長官は十九日、千葉県市原市での講演で「ガソリンの値段を下げればそれだけで日本の環境問題はそんな程度の取り組みなんだということになる。そのマイナス効果は計り知れないものがある」とのべた。また、高村外相も十九日、山口市で講演し、(洞爺湖サミットで)「地球温暖化でリーダーシップを発揮しようとしている時、『ガソリン税を下げました。もっとガソリンを使いましょう』という態度でいいのか」とのべたという。(『日経』『朝日』などによる)
いずれも暫定税率を廃止することを、ガソリン値下げ、そしてガソリン消費奨励へとつなげる論理である。これが何故暴論か。
まず暫定税率をやめることはガソリンを値下げすることではない。税金を下げる、正確に言えば税金の取りすぎ分を取らなくするだけである。そこを混同してもらっては困る。ただ消費者にとってはその分、ガソリンが安くなることは事実である。しかし、それがガソリン消費奨励となるか。とんでもない。最近の急騰で消費者はなるべくガソリンを使わないようにしている。仕事でどうしても使わなければならない人達が泣く泣く高いガソリンを使っているのだ。たとえ暫定税率分がなくなっても、この一年間の値上がり分の半分程度のことである。とても安くなったからどんどんガソリンを使おうなどと考えられる値段ではない。
しかも、ガソリンの値段を下げると消費を増やすというが、それなら値段を高いままにして入ってくる税金を道路整備にあてるというのは論理矛盾ではないか。道路を整備することこそ、ガソリン消費を増やすのだ。
つぎに町村氏も高村氏も国際的評判を持ち出してくる。インド洋での外国艦船への給油の問題と同じ言い方である。外国から後ろ指を指されると言えば、国民は「それは大変だ」と恐れ入るとでも考えているのだろう。しかし、インド洋での給油が中断してどうなったか。政府はまるで日本の評判ががた落ちになるようなことを言っていたが、そんな声はまるで聞こえてこなかった。第一、インド洋での給油はアフガニスタンにおける多国籍軍のタリバン討伐が功を奏して、タリバンがインド洋へ逃れ出てくるのを抑えるための作戦を支援するのが目的だったが、残念ながらアフガニスタン国内でのタリバン討伐は一向に成果を上げられず、タリバンは最近かえって勢力を盛り返している。タリバンは海に逃げる必要などないのだ。衆議院での再議決という非常手段を使ってまで、政府は給油を再開したが、ほとんどが米国軍艦に給油されるその油はどこに使われるか分かったものではない。
すると今度は温暖化での日本の評判が持ち出されてきた。この問題での日本の評判なら、昨年秋のバリ島での国際会議でもうすっかり定着している。きちんとした数値目標を設定しようというEUなどに対して、日本は米国を引き入れるためということを隠れ蓑にして、数値目標設定にあくまで反対した国という評価だ。
今夏の洞爺湖サミットでリーダーシップを発揮したいなら、政府はきちんと温暖化ガスの排出を減らす具体的な方策を打ち出すべきなのだ。それには環境税(排出するCO2などに課税)を避けて通ることはできないはずだ。ところが経済界の顔色をうかがう政府はそれにはいっこうに手をつけようとしない。実際のところなにもしていないのが現状だ。
自分の無策でさんざん評判を落としておきながら、税収が減るとなったら、国際的評判を振りかざして国民の悲鳴を踏みつけようとするのは言語道断の振る舞いだ。勿論、国民も無駄なエネルギー消費を少しでも減らすべく努力しなければならない。そんなことは言われなくてもわかっている。それをいやだという国民はほとんどいないだろう。
しかし、自分たちの懐勘定の都合でそれを錦の御旗のように振りかざす大臣なるものの言動は許しがたい。そんなことを言うなら、ガソリン代がいくらになろうとなんの心配もない大臣公用車を返上してから出直して来い!
まず暫定税率をやめることはガソリンを値下げすることではない。税金を下げる、正確に言えば税金の取りすぎ分を取らなくするだけである。そこを混同してもらっては困る。ただ消費者にとってはその分、ガソリンが安くなることは事実である。しかし、それがガソリン消費奨励となるか。とんでもない。最近の急騰で消費者はなるべくガソリンを使わないようにしている。仕事でどうしても使わなければならない人達が泣く泣く高いガソリンを使っているのだ。たとえ暫定税率分がなくなっても、この一年間の値上がり分の半分程度のことである。とても安くなったからどんどんガソリンを使おうなどと考えられる値段ではない。
しかも、ガソリンの値段を下げると消費を増やすというが、それなら値段を高いままにして入ってくる税金を道路整備にあてるというのは論理矛盾ではないか。道路を整備することこそ、ガソリン消費を増やすのだ。
つぎに町村氏も高村氏も国際的評判を持ち出してくる。インド洋での外国艦船への給油の問題と同じ言い方である。外国から後ろ指を指されると言えば、国民は「それは大変だ」と恐れ入るとでも考えているのだろう。しかし、インド洋での給油が中断してどうなったか。政府はまるで日本の評判ががた落ちになるようなことを言っていたが、そんな声はまるで聞こえてこなかった。第一、インド洋での給油はアフガニスタンにおける多国籍軍のタリバン討伐が功を奏して、タリバンがインド洋へ逃れ出てくるのを抑えるための作戦を支援するのが目的だったが、残念ながらアフガニスタン国内でのタリバン討伐は一向に成果を上げられず、タリバンは最近かえって勢力を盛り返している。タリバンは海に逃げる必要などないのだ。衆議院での再議決という非常手段を使ってまで、政府は給油を再開したが、ほとんどが米国軍艦に給油されるその油はどこに使われるか分かったものではない。
すると今度は温暖化での日本の評判が持ち出されてきた。この問題での日本の評判なら、昨年秋のバリ島での国際会議でもうすっかり定着している。きちんとした数値目標を設定しようというEUなどに対して、日本は米国を引き入れるためということを隠れ蓑にして、数値目標設定にあくまで反対した国という評価だ。
今夏の洞爺湖サミットでリーダーシップを発揮したいなら、政府はきちんと温暖化ガスの排出を減らす具体的な方策を打ち出すべきなのだ。それには環境税(排出するCO2などに課税)を避けて通ることはできないはずだ。ところが経済界の顔色をうかがう政府はそれにはいっこうに手をつけようとしない。実際のところなにもしていないのが現状だ。
自分の無策でさんざん評判を落としておきながら、税収が減るとなったら、国際的評判を振りかざして国民の悲鳴を踏みつけようとするのは言語道断の振る舞いだ。勿論、国民も無駄なエネルギー消費を少しでも減らすべく努力しなければならない。そんなことは言われなくてもわかっている。それをいやだという国民はほとんどいないだろう。
しかし、自分たちの懐勘定の都合でそれを錦の御旗のように振りかざす大臣なるものの言動は許しがたい。そんなことを言うなら、ガソリン代がいくらになろうとなんの心配もない大臣公用車を返上してから出直して来い!
Comment
自民・公明政権の風評加害がよくわかりました。野党は、政府の屁理屈を無視して、「暫定税率の廃止でリッター当たり25円安くなる」、・・・民にこれだけを繰り返し訴え続けることです。これが最良の戦術と思います。具体的な金銭表示はウソ・言い訳ができないことを、民はよく知っています。ポピュリズムなどと、地方振興券とやらをばらまいた公明・自民に言う資格はありません。自党・他党共地方議員の道路拡張などの陳情は際限がないので、「ハイハイ」と聞き流しておけばいいでしょう。
小国寡民 (URL)
2008/01/21 Mon 18:39 [ Edit ]
田畑光永様のご健筆に溜飲が下がります。かって,TBS系列?・18時30分・のニュースでキャスターを勤めておられた頃から信頼申し上げていましたが,今「リベラル21」でお目にかかれる事を嬉しく幸せに思っています。これからも,もっともっと私たち庶民のオピニオンとしてのご活躍を切望致しております。(熊本県八代市竹原町1840−4庄島忠國拝・08年1月22日)
自民党はご都合主義かもしれない。しかし、ガソリンを25円安くするよりは、道路特定財源を一般財源化して、少しでも借金を減らす方がスジだと思いますよ。
むすこ (URL)
2008/01/25 Fri 23:11 [ Edit ]
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