2013.03.08 鹿児島のジェフ
金持ちより時間持ちになりたい

松野町夫 (翻訳家)


面白みのない退屈な男をアメリカの俗語でジェフ(Jeff、Jeffrey の別称)と言うが、鹿児島のジェフは、そんなことはなく、逆に、人情味あふれる実にユニークなアメリカ人である。私にとってジェフは、低層ビルの表参道ヒルズを設計した異色の建築家、安藤忠雄と同じくらい魅力ある人物である。

え、鹿児島のジェフを知らないのですか!? それはいけません。もったいない、というか、人類の未来の文明を考える上で、彼の生き方を知ることはとても参考になりますよ。

まずは、MBCテレビ「MBCニューズナウ」のシリーズ「この人に聞く」をご視聴あれ。
ジェフリー・アイリッシュさん(2013年2月6日放送) - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=QBL3uAi9u1k

ジェフリー・S・アイリッシュ、Jeffrey S. Irish は1960 年米国カリフォルニア州生まれ。1982年エール大学を卒業。大学2年のときに黒澤明の「影武者」を見て感動した。3時間の映画を続けて2回見て、翌日もまた行った。日本文学に触れたのもその頃。「こころ」で漱石が描いた人間関係はとてもこまやかで印象的だった。藤村、谷崎、三島などの著作を英訳で読み、日本文化に興味を抱くようになり、卒業後、清水建設に入社。

清水建設の本社で2年働き、ニューヨークに派遣される。日本人2人と彼で現地法人を設立。5年で従業員は160人になり、人事・法務担当の副社長になったが、これは自分の目指した道ではないと、1990年、退職して鹿児島の下甑島(しもこしきじま)で定置網の漁師に。その後、ハーバード大学大学院と京都大学大学院で民俗学を専攻。

1998年より鹿児島県南九州市川辺町の土喰(つちくれ)に移り住む。島で漁師をしたので次は山里で暮らしたいと、バイクに乗って探していると、牧場の丘に小屋が見えた。開聞岳が望める素晴らしい場所で、一目ぼれした。土喰は1998年当時、20軒の家とたった27人が身を寄せ合う里山の小さな集落。平均年齢は77歳。65歳以下はジェフを入れて3人だけ。

2006年3月28日、公民館で集落の寄り合いが開かれた。

一年前から小組合長を務めているチカノリさんが、「ジェフがここに来て長いから、小組合長をしてもらおうか」と推薦してくれた。そこで氷川きよしに惚れているサチさんが大きな笑顔を見せて「お願いします」と言った。周りも賛成の声をあげて、そのまま決まった。
(ジェフリー・S・アイリッシュ著 『幸せに暮らす集落』14ページから引用)

小組合長(こぐみあいちょう)というのは集落のまとめ役、連絡係で任期は1年。住民がかわるがわる順番にする。彼は土喰の小組合長を2006年度と2009年度、2回務めた。

先進国日本からある意味取り残されたところ(土喰)に長くいるのはどうしてですか?(田舎の人は)人がいいからですか、との質問に彼は言う。
(土喰は)人がいいのと、たぶん世界で一番ぜいたくな暮らしをしているところだからではないでしょうか。犠牲になってここに住んでいるとか、苦労してここに住んでいるのではなくて、一番幸せな場所を選んでいるというか、道を選んでいるということですね。空気も水も食べ物も人づきあいもすべておいしい。

へーえ、土喰は世界で一番ぜいたくな暮らしをしているところですか!?私は鹿児島の田舎で生まれ育ち、若いとき都会にあこがれて上京し、長年、東京に住んでいたが、これまで故郷を世界で一番ぜいたくな暮らしをしているところなどとは思ってもみなかった。ウーム、なるほどね。自然のリズム、豊かな時間。知識は重要だが、知恵がもっと大事だ。現代文明は、人間の幸福という視点から根源的に見直したほうがいいのかもしれない。

Comment
最近色々な本で、日本に住み着いてしまった外国人の記事を見ますが(日本の陶芸を勉強しに来てそのまま陶芸家になったり、格闘技や黒澤映画を見て日本に興味を持って来日して住み着いてしまったりとか。)鹿児島にもそうゆう人が田舎暮らししているとは知りませんでした。
早速「ツタヤ」で『幸せに暮らす集落』を買ってきました。先週は風邪でダウンしてしまいましたがやっと良くなってきましたので読み始める事にしました。
tora (URL) 2013/03/21 Thu 21:47 [ Edit ]
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