2013.03.09  現在の情勢を“大局的”につかむということはどういうことか、それは当面する情勢を軽視(無視)することにつながらないか、革新政党の不振と衰退は目を覆うばかりだ(10)
~関西から(94)~

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

 共産党の6中総決定を読んでの2番目の印象は、冒頭の「1.現在の情勢を大局的にどうつかむか」にみられるような、当面する政治情勢への危機意識が著しく弱い(欠落している)ことだ。6中総決定は次のように言う。

 「第2次安倍晋三内閣が弱肉強食の新自由主義の全面的な復活をめざし、憲法9条改定を現実の政治日程にのせようとし、さらに過去の侵略戦争を美化する「靖国」派をその中枢にすえていることは、日本の前途にとってきわめて危険なものであることはいうまでもありません。くわえて、日本維新の会という憲法改定と新自由主義の突撃部隊ともいうべき反動的潮流が衆院で第3党の地位を占めたことも重大であります。こうしていま、日本政治はその表層だけを見れば反動的逆流が猛威を振るっているようにも見えます」

 この一節を読んだ時、正直言って私は自分の眼を疑った。小見出しが「政治の表層では逆流が激しいが、深部で古い政治の矛盾が蓄積」とあるように、当面する政治危機を単なる“表層の反動的逆流”だと見なして「慌てることはない」と諭しているのである。つまり言っていることは、総選挙で大敗したことには落胆せず、「全体を綱領の立場でつかみ、反動的潮流を恐れず正面から立ち向かうとともに、日本社会の深部で蓄積されている変革へのエネルギーに信頼を置き、未来への大局的な確信をもってたたかうことがいま何よりも大切だ」ということなのだろう。

 確かにこの主張は、当面する情勢に眼をつぶっていれば正しいと言えるのかもしれない。「日本国民の変革へのエネルギーに信頼を置き、未来への大局的確信をもってたたかう」というフレーズは、いつの時代でも“枕詞”あるいは“結語”として通用する言葉だから、どんな情勢のもとであれとにかく文章上は間違ってはいない。だが、夏の参院選を目前にした現時点において“大局的確信”を強調することは、当面する政治情勢の分析を放棄したのも同然であり、選挙方針としても何も言っていないのに等しい。要するに、「負けても負けても挫けずに頑張れ」と言っているだけのことである。

 しかし、当面する政治情勢はそれどころではないぐらい深刻だ。総選挙で2/3以上の325議席を得た安倍政権は、目下余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で改憲街道を驀進(ばくしん)している。しかもその先頭には維新の会が暴走車よろしく突っ走り、後続部隊にはみんなの党や民主党改憲派の車列が続いている。軍艦マーチが聞こえるようなまさに右翼街宣車並みの隊列ではないか。この状態はまさしく右傾化に向かっての“地殻変動”とも言うべき事態であり、“表層的逆流”などでは決してない。

 このことを顕著に示すのが安倍内閣支持率の推移だ。ここ2か月の各紙の世論調査をみても、「第2次安倍内閣の支持率の動きは最近の内閣では異例」といわれるほど高率で推移し、60%台から70%台へと連続上昇している。また不支持率が20%台前半と極めて低いことも特徴的であり、この傾向は無党派層でもそれほど変わらない。目に見える株価上昇を梃子にして、広範な国民の間には「安倍内閣が景気を良くしてくれる」との期待感が広がっており、それが内閣支持率を押し上げているのである。
このような状況にあって、野党が多数を占めているはずの参院では2012年度補正予算案がそのまま成立し、民主党は為す術もなかった。補正予算案に反対することは「景気に水を差す」ものと、世論の反発を恐れた野党の一部が賛成に回ったからだ。目下「眼中に敵なし」ともいえる安倍政権は、参院選までは「安全運転」に徹し、参院選で改憲発議に必要な2/3以上の議席(維新他を含めて)を獲得した後は躊躇することなく憲法第96条の改定に着手し、延いては第9条の改定に向かうだろう。

 望田幸男同志社大学名誉教授(ドイツ近現代史)は、『ハシズムとナチズムの間に立って』と題する最近の講演で、ナチスが登場したワイマール時代の政治経済状況(不況・高失業・閉塞)を分析して、「ドイツ国民は『食えない民主主義』(ワイマール体制)よりも『食える独裁』(ナチス体制)を選んだ」と指摘した。ナチスは、軍備増強やアウトバーン(高速道路)建設でワイマール時代の大量の失業者を吸収し、それがナチス体制への熱狂的支持につながったとの分析である。ついこの間まで「自民党はコリゴリ」と思っていた圧倒的多数の国民が、今度は札付きの改憲タカ派である安倍首相にエールを送っている状況は、まさにこの事態をまざまざと想起させるではないか。

 このように情勢は危機的状況にあるにもかかわらず、これを“表層的逆流”としか見ない6中総決定は、必然的に次期参院選の選挙方針として「情勢は、新しい政治を求める国民の模索と探求にこたえる『変革者の党』―日本共産党の躍進を強く求めています」といった主観的結論(願望)に傾くことになる。そして「比例代表で5議席絶対確保」、「得票は650万票に挑戦」を目標として、従来通り(党独自)の選挙戦をたたかうことを表明するのである。

昨年末の総選挙から今年2月の6中総決定までの間に情勢が劇的に変わったというなら話は別だが、この間の内閣支持率の推移を見ても世論はむしろ安倍政権への追い風となって、共産党の主張とは逆方向に展開している。いわば共産党は逆風状態のなかで参院選を戦わなければならず、選挙方針を「日本社会の深部で蓄積されている変革へのエネルギー」に託するだけでは、結果は総選挙の二の舞になることは目に見えている。共産党が“KY政党”などと言われないためにも、もう一工夫、二工夫あって然るべきではないか。(つづく)
Comment
共産党の選挙総括への私の意見
これを中央本部に送りましたが、音沙汰なしでした。

前半省略
選挙結果についての共産党の声明とそれに対する私の意見
声明に書かれた選挙結果の評価は
① 今回の自民党の勝利は民主党への国民の怒りの結果であり、自民党が評価されたのではない。
② 自民党は国民の願いに何ら解決の見通しを持っていない。国民の願いを解決するのは共産党が示してきた改革ヴィジョンである。
③ 崩壊的危機にある自民党に勝てなかったのは党の自力の問題にあった。
④ 自民党型の政治は行き詰まっており、新しい政治を求める模索の過程が現れているので、強大な日本共産党の建設が不可欠だ。全党の知恵と力をふりしぼってこの仕事にとりかかることを呼びかける。
というものであるが、
私は以下のように考える。
① 今回の選挙をみると、民主党へ投票した票が大幅に離れ、一部は棄権し、一部は維新の会へと向かった。自民・維新両党の極めて大きな特徴は、超右翼的な公約をした点にあり、両党の得票を合計すれば比例で48%、得票で7200万票になる。
② 自民党の票も前回に及ばなかったように、決して大きく支持されたわけではないが、維新と合わせて右翼が相対的に支持を伸ばしたことは疑いない。これと比べ護憲、反原発、消費税反対勢力は支持を減らし、棄権が増えた。
③ 今回の選挙に際し共産党は党の力をつけるため一昨年7月に第3回中央委員会総会を開き、党員拡大運動に取り組んできた。その結果2万人の党員を拡大し、650万票、議席倍増を目指し取り組んだ。
④ だが、共産党票は激減した(前回衆議選比)。その理由は「党の力不足」だけではなく、日常の活動スタイルや選挙方針にも問題があったと思う。たとえば、大衆活動や文化活動への力の入れ方は選挙活動と比べて極端に少なかったと思うし、選挙方針でも他党との選挙協力をせず、すべての選挙区から立候補したことは、護憲勢力の力を結集して改憲勢力に立ち向かおうとする人にとっては理解できない行動であった。
⑤ 安倍自民党政権は今後、長期的には憲法改正に向けての施策、短期的には次期参議選に向けての政策を打ち出すに違いない。したがって、今後我々が力を振り絞って行わなければならないのは、憲法改悪に向けた安倍政権の企みを明らかにし、次期参議選で改憲勢力の過半数取得を防ぐことである。そのためには参議選を視野に入れながら、いかに幅広い勢力と手を組むか、ということが大切だと思う。
⑥ 声明全体を通して今回の選挙結果に対しての共産党中央の危機感のなさを強く感じた。
2012年12月30日
田島 隆 (URL) 2013/03/09 Sat 16:51 [ Edit ]
考えさせられる広原先生の発信「革新政党の不振と衰退は目を覆うばかりだ(10)(11)しか読めませんが、(9)以前のものはどうすれば読めるのでしょうか。お手数ですが教えて下さい。PCに余り詳しくないものです。
佐藤 三郎 (URL) 2013/03/15 Fri 16:13 [ Edit ]
> 考えさせられる広原先生の発信「革新政党の不振と衰退は目を覆うばかりだ(10)(11)しか読めませんが、(9)以前のものはどうすれば読めるのでしょうか。お手数ですが教えて下さい。PCに余り詳しくないものです。
tiger21 (URL) 2013/03/18 Mon 00:29 [ Edit ]
> 考えさせられる広原先生の発信「革新政党の不振と衰退は目を覆うばかりだ(10)(11)しか読めませんが、(9)以前のものはどうすれば読めるのでしょうか。お手数ですが教えて下さい。PCに余り詳しくないものです。

佐藤さま
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tiger21 (URL) 2013/03/18 Mon 01:10 [ Edit ]
私も佐藤三郎さんと同じ疑問を持っていました。

しかし、ブログ記事の右コラムは、ず~~と『白紙状態』で、過去記事にアクセスできないものと思っていました。
上記の説明で、ブログ記事も途絶えた処の う~~ん と下をたどってゆくとカテゴリーなどが見付かりました。

これは、テンプレートのせい、と思われます。
余計なお節介ではありますが、訪問した読者が分かり易いテンプレート(壁紙)に変更されることをお薦めします。

当方のブログは、ブログ記事のすぐ横に過去記事が表示されます。
http://blog.goo.ne.jp/junsky
http://junsky07.blog89.fc2.com/

御一読頂ければ幸いです。

JUNSKY (URL) 2013/03/25 Mon 11:23 [ Edit ]
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