2013.03.11  護憲第3極の形成のためには、“国共合作”を目指すくらいの方針大転換が必要だ、革新政党の不振と衰退は目を覆うばかりだ(11)
~関西から(95)~

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)


 率直に言って、2013年夏の参院選において革新勢力が改憲発議を阻止するために必要な121改選議席の1/3、41議席を獲得することはもはや絶望に近い。それどころか自民・公明・維新各党と民主・みんなの改憲勢力を合わせると、議席数の2/3はおろか3/4を突破する可能性が濃厚だ。その後は2016年夏の参院選までの3年間は総選挙が行われないので(2/3以上の議席数を確保した自民党政権が衆院解散をすることなどあり得ない)、衆参両院で改憲勢力が議席数2/3以上を占める「改憲国会」がここ当分継続することになる。

 想像するだけでも恐ろしいこの状況は、まさに戦後民主政治における「空前の危機」ともいえるものであって、中曽根元首相の言う「戦後体制の総決算」の時期が目前に迫っていることを意味するものだ。この状態を目の当たりにしながら、それでいて「日本政治はその表層だけを見れば反動的逆流が猛威を振るっているようにも見えます」などと能天気なことをいっているのでは、革新政党としての見識を根底から疑われても仕方がない。

また当面する危機に対しても従来通りの運動方針しか提起できず、「日本社会の深部で蓄積されている変革へのエネルギーに信頼を置き、未来への大局的な確信をもってたたかうことがいま何よりも大切です」としか言えないような政治方針は事実上の待機主義であり、古い左翼用語で言えば「(右翼)日和見主義」に通じるものでしかない。

 私はこれまで度々主張してきたように、この危機的状況を乗り切るためには社民党・共産党など既成革新政党がそれぞれの独自路線にもとづく闘争を展開してもその効果は限定的であり、広範な護憲勢力が結集する“護憲第3極=反ファッシズム統一戦線”の形成以外に危機打開の道はないと考えている。その具体的イメージをいまこの場で具体的に提案できないのは残念だが、しかし“護憲第3極”形成に至る道は複雑であり容易でないことを思えば、取りあえずその議論を始めることが“護憲第3極”への第一歩であると確信する。

 この点に関して言えば、官邸前の反原発デモは日本の新しい政治局面を拓く市民エネルギー結集の兆しと期待されていたが、不思議なことに総選挙や都知事選挙には連動しなかった。とりわけ総選挙と同時に行われた都知事選では、宇都宮候補が革新統一・市民統一候補になったにもかかわらず、石原後継候補に空前の差を付けられて大敗した。この事態は反原発デモが展開している他ならぬお膝元の首都東京での出来事であるだけに、市民運動が必ずしも自然成長的に“護憲第3極=反ファッシズム統一戦線”へ発展していくものではないことを示している。

 先進国における市民運動が政治運動へ発展していく可能性に関しては、発展途上国のアラブ諸国における「ジャスミン革命」のようなプロセスをたどるとは考えにくい。また、アメリカの「オキュパイ運動」のような街頭型運動では高度な政治課題に系統的に取り組むことは困難だ。だから、日本の「9条の会」や「反原発デモ」のような草の根型市民運動を恒常的な政治組織に発展させていくには、革新政党と市民運動団体をつなぐ新たなフレームが必要になると思う。

 これは大西広慶大教授(中国経済)から示唆されたアイデアであるが、中国共産党は盧溝橋事件突発を契機にして国民党に「抗日全面戦争」を呼びかけ、“国共合作”を成立させて日中戦争に勝利した。中国国内では激しい戦争状態にあった共産党と国民党が互いに連携してはじめて、日本軍国主義による中国侵略に対抗し得たことは教訓的と言える。“護憲第3極=反ファッシズム統一戦線”を形成するためには、日本の革新政党は“国共合作”に匹敵するぐらいの政治決断を求められるのではないか。

 目前に迫った参院選でたとえ革新政党が選挙協力体制を組めなくても、選挙後は直ちに“護憲第3極”形成に向かっての話し合いをスタートさせるべきだ。ただしその場合、政党間の話し合いだけではなく広範な護憲勢力の結集が必要だろう。選挙後の政治情勢は、日本国憲法第96条第1項の規定によって憲法改正の是非を問う“国民投票”に政治決戦の舞台が移るのだから(議会闘争ではない)、国民自身が改憲阻止の運動に立ち上がる体制をつくらなければ“国民投票”に勝利することはできないからだ。

 これも大西教授の意見だが、国民投票に標的を合わせて右派勢力が中国や韓国との領土問題に火を付け、国内世論を一挙に硬化させて9条改憲を強行するという筋書き(謀略)も考えられないことはない。太平洋戦争の惨禍を体験した世代が少なくなり、「戦争を知らない世代」が圧倒的多数を占める日本の世論空間は、「日本社会の深部で蓄積されている変革へのエネルギー」に信頼を置けるほど楽観的状況にあるわけではないからである。
Comment
社民は村山政権の時、自民党に取り込まれました。いわば“日和った”んです。
民主は地方で自民と手を握っている上、内部には“民社協会”のような、自民にシンパシーを持つ派閥さえあります。
いつ転ぶか分からないようでは共産党から信用されません。
(前に共産党に「なぜ小異を捨て、護憲の一点で共闘しないのか」と質問した際に受け取った応答の趣旨です
社民にも同様の質問を投げたのですが応答はありませんでした)
AS (URL) 2013/03/12 Tue 11:55 [ Edit ]
状況をずっと見ていて思うこと。ナチュラルに改憲でジ・エンドだろう、これは!例えばかつてのナベツネ、もとい讀賣試案みたいな改憲ならば…すんなり「まっ、いいかも」と何となく認められてしまいそうだ。あべちゃんたちより、まともに見えてしまう(笑)。
それに老人会そのものな九条の会などが、力強く「論客」として、いまどきのテレビ局が取り上げようか?そもそもだ!北朝鮮の核ミサイルを迎撃するのに、イージス艦とかが九条違反的な議論をしていそうな組織(笑)が、一般受けするだろうか…自明の理である。
広原先生の「言わんとすること」には、めちゃくちゃ感じ入るもんがある。しかし、米英連合軍と半世紀以上タッグを組んでいる現実、自衛権は当然あるが、じゃあ万一外国が日本にけんか売ってきた時に、竹ほうきか何かで自衛するのか?みたいなツッコミされて、もごもごしちゃう日本共産党など…要するに、護憲側に「瞬殺的な」説得力がないからではないか?
今、社民党や共産党などに期待しても無駄。こんな時、タケチャンマンならぬ、小田実みたいな、無茶苦茶なパワーを持ったオッサンとかがいたら、多少はおもしろいんだが。理屈より人を巻き込むパワーこそ、肝要なのだ!かなり厳しく書きますが、今回の広原先生のご指摘の中で、原発問題がアンチファシスト票に殆どなりえなかったくだりは、読むに値した。
旅マン (URL) 2013/03/16 Sat 00:22 [ Edit ]
広原さんの発言を注意しながら読んでいます。
分析と提案に賛同します。
一番肝心な点は 政党が「党の成長・発展目標」よりも「護憲勢力の再構築」を上位に位置づけることができるかどうかという点でしょう。そのためには強力な市民の力がないと不可能だと思います。選挙の総括を公開で行うことができるかどうかは市民の側がその土俵を作り、乗ってこなければ孤立するような状態を作るならば可能だと思います。たとえばその呼び掛けを「九条の会」に加わっている何人かと日野原医師、菅谷市長、宇都宮弁護士などにお願いすることができれば可能性は生まれると思います。
共産党は護憲を目標とした統一戦線ということは今まで考えてきませんでした。「安保破棄」「民主連合政府」などを想定してきたように思います。共産党大会では「安保破棄」の目標で一致できないから手を組む政党はないという論だったように思います。今大切なのは「憲法を守ること」あるいは「九条を守ること」ですから護憲のための統一戦線が求められています。本来ならばこのような統一戦線の呼びかけは共産党が行うべきなのですが、今の状態ではとても見通しがありませんので、それを市民の側からやってもらうことができないかと思います。「憲法を守るための統一戦線を作るために市民・政党は今何をすべきか」というシンポジウムを呼びかけることはできるでしょう。前記の人や社民党や共産党の機関紙寄稿者、「潮」の投稿者などを交えて何人かが呼びかけ、賛同者を募るならば可能性はあると思います。現在長野県では統一候補を立てようという動きが有り、そこには社民党員、共産党員、緑の党員なども加わっているそうです。賛同者に政党のメンバーがたくさん加わるならば可能性はさらに高まるでしょう。
田島 隆 (URL) 2013/03/23 Sat 22:26 [ Edit ]
素晴らしい。欺瞞に満ち溢れた自称進歩的文化人の断末魔が実に心地よく響く。本当に胸がすく思いだ。反体制などとのたまっておきながら今や自らが権力機構と成り果てている自称リベラル派の老害どもが、一刻も早く退場してもらうことを願うばかりだ。もはや左翼リベラルは歴史に必要とされていない。必死に否定するかもしれないが、既に若者は新時代の幕開けを敏感に感じ取っている。長い長い日本の夜明けを……。
院生 (URL) 2013/03/26 Tue 23:40 [ Edit ]
ほっほぉ~!「院生」なる肩書きを僭称している割に、その主張内容はまことに没理論的、非学問的なものでしかありませんなぁwww

たしかに、20世紀左翼とその残党に多くを期待することは無理でしょう。ソ連東欧の崩壊原因や崩壊を招いた政権党の破綻理由、未然防止策を依然総括・解明出来ないんですからね。

しかしさりとて、「新時代の幕開けを敏感に感じ取っている」ハズの「若者代表氏」も、基本的な分析や骨格提言さえ出来ないようでは「夜明け」の展望もしょせんはハッタリに過ぎませんねwww

やはり、「夜明け」は、20世紀左翼にも体系的理論無き非左翼にも期待出来ないということでしょうね。
現代が、本物の左翼が依然として求められている時代であることは、第1、第2千年紀最大の偉人としてマルクスを評価し続けるヨーロッパや南米人民が証明しているということかなw
バッジ@ネオ・トロツキスト (URL) 2013/03/27 Wed 16:45 [ Edit ]
補足: 広原さん、大西広なる人物をあまり信用しない方が良いと思いますよ。彼の思想も理論的能力も、あまり大したことないと思いますからね。
彼は、唯生産力主義(=疎外された生産力への拝跪)や物象化永劫論の立場から中村静治氏や山口正之氏たちの正論の尻馬に乗っているだけです。
件の「アイデア」や「意見」も、凡百の抽象論や実証主義が陥る事態把握の一面化でしかありません。ネット界にはもっと具体的で精緻な左派・リベラルに向けた国政選挙対策についての提言も登場していますし、先の高裁判決が現国会の憲法論的正当性を否定している以上一路改憲とも行かないでしょうからね。

ただ、国内外の20世紀左翼(とその残党)の体たらくについては、ほとんどご指摘の通りですから、引き続きご健筆を振るわれることを期待しております。
バッジ@ネオ・トロツキスト (URL) 2013/03/28 Thu 11:05 [ Edit ]
いわゆる「既成左翼」および、その代表とされる共産党の弱点をいくらあげつらっても、改憲右派に対抗する陣営は構築できないでしょう。そもそも、護憲統一戦線ができない責任を、なぜ共産党だけに押し付けるのですか?なぜ「共産党と組まない」といっている社民党などを批判しないのでしょうか。次期参議院選挙で、共産党は沖縄で自分の候補者を降ろして糸数氏を応援しようとしているのを見ても、きちんと筋を通せば共闘する意思を持っている。問題はそれを拒否している側にあることをなぜ問題にしないのか。革新的(と自負する)知識人が、思い通りにならない情勢にいら立ってニヒリズムに陥っていく姿は極めて醜い。
きよちゃん (URL) 2013/04/08 Mon 19:40 [ Edit ]
>きよちゃんさん

貴方は、日本共産党の統一戦線論をご存知ですか?

日本共産党の統一戦線論では、他の党派との統一戦線結成が不可能な政治情勢(そのことの原因についてはさしあたり留保する)の下でも、「無党派との共同」を追求することが謳われています。
たしかにその「共同」は、現在のところ一致する要求に基づくいわゆる「大衆運動」次元でのものではありましょうが、それを「選挙闘争」に広げることは否定されていません。
事実、同党は沖縄のケース以外にも、かつては「革新共同」なるかたちで自党公認以外の候補者による選挙戦を戦った歴史をもっています。また、その後も「革新懇」なるものを提唱して、他党派との統一の条件が存在しない政治情勢下でも無党派との共同を追求することを方針としてきました。

そういう歴史や方針の存在からだけみても、現在の日本共産党の統一戦線追求姿勢には問題があるのではないでしょうか?建て前と実態の乖離や、積極性の欠如を指摘されても仕方ない状況だと思います。

ご調査の上、ご再考を!
バッジ@ネオ・トロツキスト (URL) 2013/04/09 Tue 08:44 [ Edit ]
拝復、貴兄のご意見は、小生のコメントへの答えになっていません。小生は、「たとえ共産党が候補者を降ろしても『共産党とは組まない』という政党ばかりだ。そう言う政党への批判もしないで共産党ばかりをあげつらうのはおかしい」と言っているのです。「お前とは組まない」という相手に対して、何の政策協定もなしに「その政党の候補者を支持してください」と放り投げたら、共産党は無定見のお人よしかアホだということになります。貴兄は共産党にそうしろとおっしゃっているのですか?
きよちゃん (URL) 2013/04/11 Thu 16:55 [ Edit ]
バッジ@ネオ・トロツキストさん

貴兄は「きよちゃん」氏に日本共産党の統一戦線論を知っていますかとご質問なさっています。もしきよちゃん氏が私の知るかたと同一人物なら、氏は大阪革新懇の代表を為されたかたとお見受けします。

私は神奈川県におりますが、広原盛明さんが京都市長選で革新統一候補として出馬した時はインターネット勝手連の立場で応援しました。氏はもともとは京都市長選選対委員長の立場でしたが、誰も立候補しないので自ら立候補した義のひとです。

今回の4/14神戸の護憲集会は、どうやら共産党不参加で残念でした。しかし、同日開票された富山市長選には、共産党を除くすべての自民党から社民党までの政党が相乗りして現職を支持しました。社民党には、いざという時に反動候補と相乗りすることが多々見られます。そのことはやはり社民党が国会でも共産党よりもひどい票の減り方をしている原因と私は考えます。

佐藤三郎氏を代表として、壊憲阻止、護憲の運動を立ち上げた市民運動に共感をもちます。私も賛同者に名を連ねました。日本共産党には、外から見るといくつもの欠点が見られます。それでも共産党は、自民公明維新みんな民主と比較すると、はるかにまともな政党です。
今回のような試みを蓄積させて日本の統一戦線運動を蓄積させていくことが必要と思います。
櫻井智志 (URL) 2013/04/15 Mon 09:49 [ Edit ]
>櫻井さん

暴露だか邪推だかデマだか、当方には判別出来ませんが、冒頭部分には非常に驚きましたw

確かなことは、革新懇のような統一戦線組織の役職者には、その地位に相応しい人物に就任して頂かないと、組織の本旨の忠実な実行も創造的発展もおぼつかないということですね。
バッジ@ネオ・トロツキスト (URL) 2013/04/15 Mon 18:47 [ Edit ]
各位、
私は大阪革新懇の代表などを務めたことはありませんので、誤解なきように。在住地は広島です。とにかく、「あれは誰なのだ」とかの邪推はやめ、きちんとした議論をしましょう。なお、現下の情勢を打開するカギは「若者がいかに社会の動きを批判的に考えるようになるか」、「そのためシニア世代はどのようなアプローチをすればよいか」だと思い、1月初めから毎日欠かさず、二つのツィート記事を発信しています(ただし、ここでその内容を紹介する必要なし)。
きよちゃん (URL) 2013/04/19 Fri 11:40 [ Edit ]
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2013/03/24 Sun 22:47