2008.03.08 正気か!舛添厚労相の「50兆円ファンド」
「暴論珍説メモ」(36)

田畑光永 (ジャーナリスト)

 舛添厚労相が六日、自民党の「資産効果で国民を豊かにする議員連盟」に出席して、「公的年金の積立金百五十兆円の三分の一の五十兆円をまずファンドなどの形で運用してみることは国民にも納得を得られる」と発言した。具体的には、今後、民間のヘッジファンドや与党が設立を検討する日本版政府系ファンドに積立金を配分することを考えるということらしい。
 同相は「短期間で欠損が出ることがあるかもしれないが、上手なファンドの組み方をすれば、五−十年単位で見ると損は出ない」と語ったという。
 冗談ではない。どうしてそんなことが言えるのか。「利益を上げる年もあるかもしれないが、いつ大損するかわからない」のが金融世界の現状ではないか。そんなところへ国民の虎の子の公的年金の積立金の三分の一もつぎ込んで、大きく損を出したら誰がどう責任をとるというのか。現に昨年の十−十二月期には積立金の市場運用部分で一兆五千億円の損失を出したばかりではないか。まさか「五千万人分の行方不明台帳」ですっかり信用を落とした年金制度をこれで名誉挽回などと考えているわけではあるまい。
 大体「資産効果で国民を豊かにする議員連盟」などというのもまことに胡散臭い。サブプライム・ローン問題でアメリカの大手金融機関が軒並み巨額の損失を出し、資本不足に陥りそうなところへ中東や中国の政府ファンドが高利で出資したのを見て、「そんな儲け話があるなら、日本も一口」と欲の皮を突っ張らせた動きである。
 確かにこのところ世界的に政府ファンドが注目されているのは事実だ。しかし、米金融機関への巨額融資ははたして大丈夫なのか。米金融機関にしてみれば、資本不足に陥って公的資金の導入ということになれば、現経営陣はクビを覚悟しなければならないから、高利を払ってでも自力で資本を増強して、とりあえずの危機をしのごうということである。あえて例えれば、株で大損してサラ金から金を借りて急場をしのごうとする姿に近い。シティバンクだの、メリルリンチだの、モルガンスタンレーだのと、立派な看板を掲げているから、よもや倒れることはあるまいと思いたくなるが、今、起きていることは前例のない事態なのだ。どんなことがこれから起るか誰にも分からない。穴をあけられない年金の積立金をつぎ込むような場ではない。
 今、世界中に行き場のない資金(過剰貯蓄)が運用先を求めて大量にさまよっている。だから怪しげな、証券化されたサブプライム・ローンにアメリカはもとより世界中の金融機関が飛びついたのだ。つまり資本が活躍する場が次第に狭まってきているのだ。これがここ十数年の世界の趨勢である。だから有利な運用をと誰しもが考えるが、そこに落とし穴がある。私的資本が自己責任でどんな冒険をするのも勝手だが、国会議員が国の金を使ってマネーゲームに手を出そうなどはとんでもない心得違いだ。
 石原都知事の野心が生んだ「新銀行東京」は無残な失敗に終わり、知事自身が「進むも地獄、引くも地獄」といわざるを得ない窮地に陥っている。この銀行は東京都が一千億円を出資して最大株主となり、〇五年に設立されたのだが、わずか三年、今年三月末の累積損失は一千十六億円に達する見通しという。そこで石原知事は「進むも地獄」を選んで、都からさらに四百億円を追加出資する案を都議会に出して、今、審議中である。これが「泥棒に追い銭」、「どぶに金を捨てる」結果になった時に石原知事は一体どう責任をとるのか。
 銀行経営とファンドの運用は違うけれど、プロでも足をすくわれる地獄と隣り合わせの世界である。お膝元の東京にこんな教訓材料があるのに、大事な国民の年金を使ってマネーゲームをするような愚は絶対にやめてもらいたい。
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() 2008/03/12 Wed 13:33 [ Edit ]
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