2008.03.17 サブプライム問題の射程(7)
―ウォール街を震撼させたベア・スターンズ証券の危機―

半澤健市 (元金融機関勤務)

ニューヨーク証券取引所NYSEでベア・スターンズ社Bear Stearnsの株価が見る間に下落するさまを08年3月14日深夜に衛星放送テレビで見ていた。株価は前日の57ドルから30ドル下げて27ドルになった。下落率は47.37%。暴落である。
ベア・スターンズは、日本ではモルガン・スタンレーやメリル・リンチほどの知名度はないが、85年の歴史をもつアメリカの老舗証券会社である。テレビ画面からも伝わる緊張感から、端末画面を凝視していた金融センターのトレーダーと金融マンにどれだけの不安と戦慄を与えたかは容易に想像できる。
同社の資金繰り不安はこのところ噂されていたが、同社の社長兼最高経営責任者のアラン・シュワルツは前日まで手許資金は潤沢であり問題はないと発言していた。それが遂に、JPモルガン・チェース銀行を経由して、ニューヨーク連銀の資金援助を受けることになったのである。金額は不明だが28日間という期限付きである。FRBが銀行以外の金融機関に資金供給するのは1930年代の大恐慌以来初めてだという。ダウ工業株30種平均株価も前日比194.65ドル安の11951・09ドルで引けた。
参考までに5大証券会社の同日のNYSEの株価データ(1株、単位は米ドル)を掲げる。

  銘   柄     終値   同前日比    同%  過去1年の高値 同安値
・ベア・スターンズ    30.00   −27.00  −47.37     159.36    50.48
・リーマン・ブラザース  39.26   − 6.73  −14.63     82.05    41.61
・メリル・リンチ      43.51   − 2.75  − 5.95     95.00    42.58
・ゴールドマン・サックス 156.86   − 8.58  − 5.19     250.70   155.23
・モルガン・スタンレー  39.55   − 2.05  − 4.39     75.50    38.18

ところで短期金融市場は、相対(あいたい)取引、つまり一対一の市場だから、個別企業の信用崩落を救うことはできない。市場参加者がベア・スターンズに不信を抱き、預けてある資金を引揚げたり、ベア社商品の解約を続ければ資金繰りができなくなる。2月28日の「サブプライム問題の射程(5)」で紹介したルービニ教授も、「金融緩和は一般的な流動性は増加させるが個別金融機関の支払能力不足の解決にはならない」と書いていた。その事態が現実になったのである。日本でも1965年の山一証券危機の際の日銀特融は基本的に同じであった。1997年の金融危機では、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券(は再び)、が資金繰りに行き詰まって破綻した。海外マネーセンターにある本邦金融機関の出先ではベア・スターンズ社の事態を見て97年の東京を思い出したと日経紙が伝えている。今度はウォール街が兜町・霞ヶ関に一周遅れで走っている感じである。

3月17日に始まる週は、証券4社の08年2月に終わる四半期の決算発表が予定されている。18日にゴールドマン・サックスとリーマン・ブラザース、19日にモルガン・スタンレー、20日にベア・スターンズの順である。この週は、2008年の世界金融市場にとっての最も劇的な週の一つになるかも知れない。
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