2008.03.24
サブプライム問題の射程(8)
―ベア・スターンズ救済の100時間―
〈「劇的な一週間」は終わっていた〉
3月17日の拙稿「サブプライム問題の射程(7)―ウォール街を震撼させたベア・スターンズ証券の危機―」で私は「3月17日に始まる週は2008年の金融市場にとって最も劇的な週の一つになるかもしれない」と書いた。しかしそうはならなかった。それは私が見通しを誤ったからか。その通りである。劇的なことは終わっていたからである。それを私は見通せなかった。それを「ベア・スターンズ(以下ベア社)救済の100時間」と名付ける。米英の経済新聞を読んだ。邦字紙に出ていないことを選んで100時間を再構成してみたい。会社が潰れるのは資金繰りに行き詰まって潰れるのである。1930年代の大恐慌にも生き残り85年の歴史をもつ老舗投資銀行ベア・スターンズはどのように破綻したのか。それを時系列的に追ってゆくことにする。
半澤健市 (元金融機関勤務)
〈「劇的な一週間」は終わっていた〉
3月17日の拙稿「サブプライム問題の射程(7)―ウォール街を震撼させたベア・スターンズ証券の危機―」で私は「3月17日に始まる週は2008年の金融市場にとって最も劇的な週の一つになるかもしれない」と書いた。しかしそうはならなかった。それは私が見通しを誤ったからか。その通りである。劇的なことは終わっていたからである。それを私は見通せなかった。それを「ベア・スターンズ(以下ベア社)救済の100時間」と名付ける。米英の経済新聞を読んだ。邦字紙に出ていないことを選んで100時間を再構成してみたい。会社が潰れるのは資金繰りに行き詰まって潰れるのである。1930年代の大恐慌にも生き残り85年の歴史をもつ老舗投資銀行ベア・スターンズはどのように破綻したのか。それを時系列的に追ってゆくことにする。
〈ベア社破綻への道行〉
すでに昨年の子会社破綻からベア社への危惧はうわさされてはいたがこんな形で破綻することを予想していた人は業界にもいなかったであろう。
・3月10日(月)ベア社は、アラン・シュワルツ最高経営責任者(CEO)が同社バランスシートは健全で流動性も豊富と発表する。市場に流れる資金繰り危機説を否定したのである。
・3月11日(火)大手資産運用会社がベア社と取引を停止した。
・3月12日(水)シュワルツCEOはフロリダ州パームビーチでの投資家への説明会を抜け出して経済専門チャネルテレビCNBCのインタビュー番組に出演。ここでも経営の健全性を訴える。
・3月13日(木)
「ウォールストリート・ジャーナル」紙がベア社の取引先が警戒感を強めていると報道。ベア社経営陣は、資金繰り不安説の否定、各方面からの問い合わせ、融資銀行からの増担保要求、などの対応に追われる。同日午後、顧客の資金引揚などで状況は極度に悪化し事実上の「取付」状態となる。午後4時半、シュワルツは破綻と判断する。
〈救済の100時間の開始〉
・13日午後6時過ぎ、シュワルツは、「JPモルガン・チェース銀行」(以下モルガン)のCEOジェームズ・ダイモンに電話して救済の可能性を打診する。ダイモンは直ちに2人の投資銀行部門責任者のスチーブン・クラーク(休暇中のカリブ海から帰国)とウィリアム・ウインターズをトップとするベア社買収チームを組成した。
・午後7時半。
FED(連邦準備銀行)幹部も事態の緊急性と早急な対策の必要性を認識する。しかし投資銀行(証券会社)への資金供給は、ベア社を含む「プライマリーディーラー」20社に対してすでに短期金融市場参入を許していたがその内容は業者間取引である。投資銀行はFEDとの直接取引は原則不可能である。業者間取引に必要な良質な担保がベア社にはすでにない。1932年の連邦準備法では、FEDは商業銀行との直接取引は可能だが、投資銀行のようなノンバンクとは不可能だ。ただし7人の理事中5人の同意で直接取引は可能という例外規定があった。この規定は1930年代の大恐慌以降は発動されたことがなかった。この例外規定の発動を求めて、ベア社とSEC(米証券取引委員会=証券取引の監視機構)がFEDに対しベア社の資金繰り状況を説明する。
〈FEDによる徹夜の監査〉
FEDはそれを受けて徹夜でベア社の監査を行った。夜が明ける。
・3月14日(金)午前5時。
ニューヨーク連銀総裁ガイトナー、FED議長バーナンキ、財務長官ポールソン、財務副長官スチールが会合する。その結果、午前7時にFEDはベア社への直接貸出を決定、財務長官ポールソンはブッシュ大統領(在ニューヨーク)に事情を説明する。FED理事会は2名が空席、1名は海外出張中であったが特例により4名の賛成で決議した。
午前9時。
NY連銀ガイトナー、財務長官ポールソン、SEC市場規制部長シリー、モルガン銀行ダイモン、ベア社シュワルツが、ニューヨーク・メロン銀行、ウォール街の主要証券会社を招集する。そしてポールソンが関係者の役割と努力を説明し理解を要請する。この救済策が伝えられたが当日のベア社株価は57ドルから27ドルへ下落した。私が日本の衛星放送で株価暴落の様子を見ていたのはこの時、日本時間の15日午前である。
〈モルガンによるベア社の買収〉
・3月13日(木)夜にモルガンのベア社買収チームはスタートしていた。
・3月14日(金)には、不良債権化するリスクの多いベア社保有の住宅金融関連資産の査定方法を検討する。
・3月15日(土)午前8時、ニューヨーク市中心街パークアベニューのモルガン本社の8階の幹部専用フロアにある役員室へ、40人の行員が、秘密裏に招集された。ここは「臨時の戦闘準備室」となった。投資銀行業務担当の役員ブラックとウィンターズ両名の指示で、彼らは十数班に編成された。ベア社の実態を調査査定するためである。通りを距てたベア本社に乗りこんだ。帳簿やデータをひっくり返してくまなく調査した。モルガン側の動員数は200人に達した。
・15日夜、モルガンは、ほぼ買収の結論に達して投資家への説明策の作成し始める。買取株価は、同日引値27ドルのほぼ半値、二桁の数字を想定していた。
〈査定困難な不動産関連資産〉
しかしベア社保有資産の査定は最終結論が出なかった。ダイモンと部下行員は8階の部屋中を歩き回って新情報の収集につとめる。 そしてモルガンは、大胆にもFEDに対して買収により発生するリスクを限定する方策を求める。ベア社保有の証券に対して数百 億ドル単位の保証をしてくれというのである。虫がいい話である。これが実現すれば中央銀行としては前例のない行動となる。
・3月16日(日)朝。
モルガンではまだ結論がでていない。ダイモンはFEDに対してリスクが大きすぎる、買収からは手を引きたい。別の選択肢を考えたらどうか、と半ば脅しにでている。政権は、個別銀行の破綻に関心ないが金融市場の安定性には関心がある、「ベア社は大きすぎて潰せない」、破綻は広範な悪影響を与える、とブッシュ政権高官はいったという。FEDが政権の支持のもとで買収資金融資を決断したのは市場安定のためである。財務省幹部によれば、ポールソン財務長官が最初にベア社に危機感をもったのは13日(木)午後であった。ポールソンは、直ちにバーナンキ、ガイトナーとベア社の処置に関する協議を開始する。彼らはアジア市場が3月17日(月)に開くまでに問題解決したいと考えた。それまでにベア社に買手がつかず倒産したら世界市場は混乱すると思ったのである。しかしニューヨーク時間の午後3時にはまだ結論がでない。3月17日の東京市場開始まであと5時間である。次第に空気は政府保証へと流れていった。午後7時過ぎ、銀行側と政府・連銀側との交渉は遂に合意に達した。アジア市場開始まで1時間はなかった。ダイモンは直ちに融資の実行を指示した。ポールソン、ガイトナーにも知らせた。ベア社への市場の圧力の強さは「神のみぞ知る」とダイモンはいった。ダイモンはモルガンがもっていないベア社の有望業務を救済した上、ベア本社社屋までを安く手に入れたのである。ベア・スターンズ救済の100時間はこのようにして終わった。
〈この緊迫した救済劇をどうみるか〉
ベア・スターンズ買収劇は資金繰り不能で破産寸前の大手投資銀行を救い世界的なパニックを防いだといえるかも知れない。この決断と行動力の速さを示した米国金融当局と業界を評価すべきなのか。それともブッシュ政権の屋台骨を揺るがす金融危機を感じてなり振り構わぬ手当に出ただけとみるべきなのか。救済後の一週間、株式市場は当面安定の方向に向かっているように感じられる。しかしサブプライム問題の本質は、資産価格低下に発する不況だとすれば、バランスシートの不良債権がなくならない限り不況からの回復はない。ベア・スターンズ救済劇は、パニックを伴う長期不況の予兆的事件に過ぎない。私にはそのように思われる。
(本稿は「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」、「ウォールストリート・ジャーナル」、「フィナンシャル・タイムズ」のプリント版、電子版の最近10日間ほどの紙面を読んで再構成しました)。
すでに昨年の子会社破綻からベア社への危惧はうわさされてはいたがこんな形で破綻することを予想していた人は業界にもいなかったであろう。
・3月10日(月)ベア社は、アラン・シュワルツ最高経営責任者(CEO)が同社バランスシートは健全で流動性も豊富と発表する。市場に流れる資金繰り危機説を否定したのである。
・3月11日(火)大手資産運用会社がベア社と取引を停止した。
・3月12日(水)シュワルツCEOはフロリダ州パームビーチでの投資家への説明会を抜け出して経済専門チャネルテレビCNBCのインタビュー番組に出演。ここでも経営の健全性を訴える。
・3月13日(木)
「ウォールストリート・ジャーナル」紙がベア社の取引先が警戒感を強めていると報道。ベア社経営陣は、資金繰り不安説の否定、各方面からの問い合わせ、融資銀行からの増担保要求、などの対応に追われる。同日午後、顧客の資金引揚などで状況は極度に悪化し事実上の「取付」状態となる。午後4時半、シュワルツは破綻と判断する。
〈救済の100時間の開始〉
・13日午後6時過ぎ、シュワルツは、「JPモルガン・チェース銀行」(以下モルガン)のCEOジェームズ・ダイモンに電話して救済の可能性を打診する。ダイモンは直ちに2人の投資銀行部門責任者のスチーブン・クラーク(休暇中のカリブ海から帰国)とウィリアム・ウインターズをトップとするベア社買収チームを組成した。
・午後7時半。
FED(連邦準備銀行)幹部も事態の緊急性と早急な対策の必要性を認識する。しかし投資銀行(証券会社)への資金供給は、ベア社を含む「プライマリーディーラー」20社に対してすでに短期金融市場参入を許していたがその内容は業者間取引である。投資銀行はFEDとの直接取引は原則不可能である。業者間取引に必要な良質な担保がベア社にはすでにない。1932年の連邦準備法では、FEDは商業銀行との直接取引は可能だが、投資銀行のようなノンバンクとは不可能だ。ただし7人の理事中5人の同意で直接取引は可能という例外規定があった。この規定は1930年代の大恐慌以降は発動されたことがなかった。この例外規定の発動を求めて、ベア社とSEC(米証券取引委員会=証券取引の監視機構)がFEDに対しベア社の資金繰り状況を説明する。
〈FEDによる徹夜の監査〉
FEDはそれを受けて徹夜でベア社の監査を行った。夜が明ける。
・3月14日(金)午前5時。
ニューヨーク連銀総裁ガイトナー、FED議長バーナンキ、財務長官ポールソン、財務副長官スチールが会合する。その結果、午前7時にFEDはベア社への直接貸出を決定、財務長官ポールソンはブッシュ大統領(在ニューヨーク)に事情を説明する。FED理事会は2名が空席、1名は海外出張中であったが特例により4名の賛成で決議した。
午前9時。
NY連銀ガイトナー、財務長官ポールソン、SEC市場規制部長シリー、モルガン銀行ダイモン、ベア社シュワルツが、ニューヨーク・メロン銀行、ウォール街の主要証券会社を招集する。そしてポールソンが関係者の役割と努力を説明し理解を要請する。この救済策が伝えられたが当日のベア社株価は57ドルから27ドルへ下落した。私が日本の衛星放送で株価暴落の様子を見ていたのはこの時、日本時間の15日午前である。
〈モルガンによるベア社の買収〉
・3月13日(木)夜にモルガンのベア社買収チームはスタートしていた。
・3月14日(金)には、不良債権化するリスクの多いベア社保有の住宅金融関連資産の査定方法を検討する。
・3月15日(土)午前8時、ニューヨーク市中心街パークアベニューのモルガン本社の8階の幹部専用フロアにある役員室へ、40人の行員が、秘密裏に招集された。ここは「臨時の戦闘準備室」となった。投資銀行業務担当の役員ブラックとウィンターズ両名の指示で、彼らは十数班に編成された。ベア社の実態を調査査定するためである。通りを距てたベア本社に乗りこんだ。帳簿やデータをひっくり返してくまなく調査した。モルガン側の動員数は200人に達した。
・15日夜、モルガンは、ほぼ買収の結論に達して投資家への説明策の作成し始める。買取株価は、同日引値27ドルのほぼ半値、二桁の数字を想定していた。
〈査定困難な不動産関連資産〉
しかしベア社保有資産の査定は最終結論が出なかった。ダイモンと部下行員は8階の部屋中を歩き回って新情報の収集につとめる。 そしてモルガンは、大胆にもFEDに対して買収により発生するリスクを限定する方策を求める。ベア社保有の証券に対して数百 億ドル単位の保証をしてくれというのである。虫がいい話である。これが実現すれば中央銀行としては前例のない行動となる。
・3月16日(日)朝。
モルガンではまだ結論がでていない。ダイモンはFEDに対してリスクが大きすぎる、買収からは手を引きたい。別の選択肢を考えたらどうか、と半ば脅しにでている。政権は、個別銀行の破綻に関心ないが金融市場の安定性には関心がある、「ベア社は大きすぎて潰せない」、破綻は広範な悪影響を与える、とブッシュ政権高官はいったという。FEDが政権の支持のもとで買収資金融資を決断したのは市場安定のためである。財務省幹部によれば、ポールソン財務長官が最初にベア社に危機感をもったのは13日(木)午後であった。ポールソンは、直ちにバーナンキ、ガイトナーとベア社の処置に関する協議を開始する。彼らはアジア市場が3月17日(月)に開くまでに問題解決したいと考えた。それまでにベア社に買手がつかず倒産したら世界市場は混乱すると思ったのである。しかしニューヨーク時間の午後3時にはまだ結論がでない。3月17日の東京市場開始まであと5時間である。次第に空気は政府保証へと流れていった。午後7時過ぎ、銀行側と政府・連銀側との交渉は遂に合意に達した。アジア市場開始まで1時間はなかった。ダイモンは直ちに融資の実行を指示した。ポールソン、ガイトナーにも知らせた。ベア社への市場の圧力の強さは「神のみぞ知る」とダイモンはいった。ダイモンはモルガンがもっていないベア社の有望業務を救済した上、ベア本社社屋までを安く手に入れたのである。ベア・スターンズ救済の100時間はこのようにして終わった。
〈この緊迫した救済劇をどうみるか〉
ベア・スターンズ買収劇は資金繰り不能で破産寸前の大手投資銀行を救い世界的なパニックを防いだといえるかも知れない。この決断と行動力の速さを示した米国金融当局と業界を評価すべきなのか。それともブッシュ政権の屋台骨を揺るがす金融危機を感じてなり振り構わぬ手当に出ただけとみるべきなのか。救済後の一週間、株式市場は当面安定の方向に向かっているように感じられる。しかしサブプライム問題の本質は、資産価格低下に発する不況だとすれば、バランスシートの不良債権がなくならない限り不況からの回復はない。ベア・スターンズ救済劇は、パニックを伴う長期不況の予兆的事件に過ぎない。私にはそのように思われる。
(本稿は「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」、「ウォールストリート・ジャーナル」、「フィナンシャル・タイムズ」のプリント版、電子版の最近10日間ほどの紙面を読んで再構成しました)。
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問題は末尾の〈救済劇をどうみるか〉の評価です。特に最後の数行の「サブプライム問題の本質は、資産価格低下に発する不況だとすれば、バランスシートの不良債権がなくならない限り不況からの回復はない。ベア・スターンズ救済劇は、パニックを伴う長期不況の予兆的事件に過ぎない。私にはそのように思われる」という診断には同感です。
実はベア社救済劇終了後の3月中旬、ある研究会(私もメンバーの一人)でこのサブプライム・ローン問題がテーマに取り上げられました。
報告者の主張の要点は以下の通りです。
(1)2007年夏に明確化したサブプライム・ローンは、不動産バブル崩壊の域にとどまらず、いきなり世界的な金融問題として浮上した。
(2)最近の事態は金融問題から経済問題へと懸念が広がりつつある。
具体的にはつぎのような懸念がある。
・金融機関のバランスシート調整が発生
サブプライム・ローンによる損失で金融機関の自己資本が減少し、自己資本比率維持などのため貸し出し抑制(貸し渋り)が発生 → 米国景気の鈍化 → 世界景気への悪影響、という連鎖が生じている。
・不動産価格低下による個人消費の停滞
・世界的な株安(先行き不安の強まりの反映)
(3)国際的に高まる経済・金融分野のリスク
・米ドルの信認の低下と円高
以上をめぐって意見交換が行われましたが、考えてみるべき問題は、米国の不動産バブル崩壊を端緒とする今回のサブプライム・ローン問題は、日本が経験した1990年代初頭のバブル崩壊と同質の破綻なのか、それとは異質の破綻なのか、です。
前者だとすれば、日本の90年代の「失われた10年の経験」に、学べばよいともいえますが、後者の異質の破綻だとすれば、その打開策は容易ではありません。私は後者に近い捉え方です。研究会の席上で以下の3点を概略指摘しました。
(1)米国における「貧困のビジネス化」の行き詰まり
サブプライム・ローンはそもそも低所得者を相手とするビジネスで、詐欺的手段(もっとも当事者はその意識はなかったかもしれないが)でローンを貸し付け、焦げ付いた。このような貧困者を相手にビジネスを仕掛けなければならないほどアメリカ経済は新たなフロンティアと未来性を失っており、そのビジネスが破綻した。だからもはやつぎの新たなビジネスが考えにくくなっている。
(2)マネーゲーム型資本主義の行き詰まり
アメリカ経済は1980年代以降、実物経済よりもマネー経済に重点がシフトしていた。日本経済もその模倣に走っているが、複雑な証券化(当事者もその実態をつかめないほど)を梃子とするマネーゲームの行き詰まりを示唆しているのではないか。
(3)ドルの下落=アメリカ帝国そのものの信認低下
アメリカが1980年代に「双子の赤字」(財政と経常収支の赤字)を背景に世界最大の債務国家に転落してからすでに20年以上も経過している。にもかかわらず軍事力を乱暴に振り回す「帝国」(対外的な債権国家であることが最低必要条件)としての面子を保持しようとしている。
これが何とか可能になっているのは、中国や日本が巨額のドル建て外貨準備の運用先として米国債を購入して、資金を米国へ環流させているからである。しかしドルが急落すれば、この資金循環も破綻する。
今回のサブプライム・ローン問題は、以上の3つの行き詰まり、破綻を表面化させつつある、というのが私の診断です。アメリカ型資本主義経済に巣くう病は深刻です。もはや全治は不可能ではないでしょうか。