2015.05.16  「機能性表示食品」なんて、いらない・下
    早くも問題商品が相次ぐ
  
岡田幹治(ジャーナリスト)
         

 「機能性表示食品」制度が4月1日に施行され、多くの事業者から届出書類が消費者庁に郵送されてきた。ただ、記載内容に不備のあるものが多く、同庁は大半について書き直しを要請。その結果、16日に7社の8件を受理し、ウェブサイトで公表した。
 その中に早くも、問題商品がいくつも見られる。

◆トクホ失格商品が「自作自演」で機能性表示食品に
 まず、食品企業キューピーが届け出た「ヒアルモイスチャー240」というサプリメントである。このサプリはヒアルロン酸を含み、「肌の水分保持に役立ち、乾燥を緩和する機能がある」と表示しているのだが、実はかつて特定保健用食品(トクホ)に申請しながら、2008年に却下されたものだ。
 キューピーは2002年から、(政府の許可がない)「いわゆる健康食品」としてこのサプリを販売しており、却下後もその事実を伏せたまま販売を続けてきた。このたび、三つの臨床試験を根拠にして「機能性(健康への効果)あり」と判断したのだが、その試験と評価は「自作自演」に近い(注3)。

注3 詳しくは植田武智の次の記事を参照してほしい。
http://www.mynewsjapan.com/reports/2149

 ヒアルロン酸は動物の結合組織の成分で、ヒトの皮膚・腱・筋肉・軟骨などに分布しているが、加齢とともに減少する。俗に「美肌効果がある」「関節痛を和らげる」といわれており、健康食品がいくつもの企業から売り出されている。しかし、経口摂取によるヒトでの有効性については「信頼できるデータは見当たらない」と国立健康・栄養研究所の「安全性・有効性情報」は記している。
 キューピーが機能性の根拠としたのは、乾燥肌に悩んでいる成人を対象に肌のうるおいへの効果を調べた三つの論文だ。その一つによれば、1日に120ミリグラム(mg)のヒアルロン酸を含むサプリを飲み続けたグループと、同成分を含まないサプリ(プラセボ)を飲み続けたグループで皮膚の水分量を比べると、成分を含むグループの方が3週間後でも6週間後でも増加量が有意に多かったという。

 しかし、三つの論文はいずれもキューピーの社員によるもので、それらを評価して「効果あり」と判断したのも同社の社員だ(同社は試験担当者と評価担当者は別人で、試験も評価も公正に実施されたとしている)。
 しかも、キューピーが届け出た動物実験では、肌まで届くと確認されたヒアルロン酸の量は最大で0.3%程度。さらにヒト対象の3論文の中には、試験終了の2週間後にだけ効果が出たという理解しにくい論文もあるという。

◆食品安全委が安全性を確認できなかった成分も
 食品安全委員会が安全性を確認できなかった成分を含む機能性表示食品も現れた。健康食品素材の研究開発企業リコム(東京都豊島区)の「蹴脂粒(しゅうしりゅう)」である。このサプリは、エノキタケの抽出物が配合されており、「体脂肪(内臓脂肪)を減少させる働きがある」と表示されている。
 同社は同じ抽出物を同量含有した飲料「蹴脂茶」を、2009年にトクホに申請。審査はまず機能性について消費者委員会の新開発食品調査部会で行われ、効果ありとされた後、食品安全委員会の新開発食品専門調査会で安全性審査を実施。「安全性を評価できない」との「評価書」が5月12日の食品安全委で決定された。事務局は「安全性に問題があるということではない」と説明している(注4)。

注4 詳しくは松永和紀の次の記事を参照してほしい。
http://www.foocom.net/column/editor/12585/

 食品安全委が問題にしたのは、エノキタケ抽出成分が脂肪細胞に作用して体脂肪を減少させるというメカニズムをリコムが主張している点だ。申請通りなら、作用は脂肪細胞だけでなく「多岐にわたる臓器に影響を及ぼす可能性は否定できない」と指摘している(この成分は医薬品にも使われており、その場合には心血管系・泌尿器系など多岐にわたる臓器に影響を及ぼす副作用があることが明らかになっている)。
 これに対してリコムは同社のサイトなどで「サプリに含まれる抽出物の量は医薬品に比べてはるかに少なく、生のエノキタケに換算して4gにすぎない。サプリは各種試験で健康への有害な影響はみられなかった」とし、予定通り販売する方針だ。
 消費者庁は「(商品を個別に審査するトクホと違って)機能性表示食品は制度上、書類が整っていれば受理する。受理後に問題が確認できれば回収命令などを出すこともある」と説明している。しかし食品安全委が安全性を確認できなかった成分を「体によい成分」として販売するのは適当なのか。食品安全委の評価書の内容は消費者庁の情報サイトに出ていないが、それで消費者は的確な判断ができるのか、といった批判が出ている。

◆レベルの低い論文を根拠に、具体的な効果を表示する
 もう一つ、機能性と安全性の根拠に疑問が出されている例を挙げよう。健康食品大手ファンケルの「えんきん」という「中高年の老眼対策」サプリだ。
 このサプリはルテイン、アスタキサンチン、シアニジン-3-グルコシド、DHAという4成分が配合されており、「手元のピント調整機能を助けるとともに、目の使用による肩・首筋への負担を和らげる」と、きわめて具体的に表示されている。

 根拠となったのは、45~64歳の102人を対象にした臨床試験だ。4成分を含むサプリを4週間摂取し続けたグループと、成分を含まないサプリ(プラセボ)を摂取し続けたグループを比較したところ、4成分を含むサプリのグループの方が目の「調節近点距離」(ピントを合わせられる最短距離)がより改善され、「目のかすみ」と「肩や首のこり」もより改善されたという。
 しかし、この論文は欠陥が多く、厳格な査読が行われる学術誌なら、おそらく掲載されない程度の内容だ。その程度の論文を根拠に具体的な効果をうたうことに疑問の声が出ている(注5)。

注5 詳しくは松永和紀の次の記事を参照してほしい。
http://www.foocom.net/column/editor/12648/

 この論文は、Immunology Endocrine and Metabolic Agent in Medicinal ChemistryのVol.14-Nomber.2,2014に載ったのだが、この雑誌は米国立医学図書館が提供する世界最大級の医学・生物学文献のデータベースである「PubMed(パブメド)」には収録されていない(つまり世界での評価は高くない)。主任編集者は、規制改革会議などで議論をリードした人物として「上」で紹介した森下竜一・大阪大学大学院教授だ。
 制度づくりを主導した人物が、大手企業の研究者が発表したレベルの低い論文を、自分が責任をもつ学術誌に掲載して、機能性表示食品への道を開いてやる――そんな構図が浮かんでくる。
「えんきん」には、安全性の根拠にも疑問が出されている。消費者庁のガイドラインは機能性表示食品の安全性について、「食経験」があるかないか調べ、情報が不十分な場合は既存情報を調べ、それでも不十分な場合は安全性試験をするよう求めている。
 ファンケルは届出製品と似た製品を2007年から販売しているが、同社に寄せられた同製品の健康被害情報は湿疹の発生などしかなく、それらも個人の体質や体調によるところが大きいとされており、健康被害は発生していないと判断できるとし、この「食経験」によって安全性は確認されたとしている。

 しかし、自社製サプリの10年足らずの販売量で、日本人に広範囲に摂取されてきた「食経験」といえるのだろうか。しかも健康被害については自己申告にすぎず、第三者による検証結果は示されていない。普通の食品とは違うサプリの安全性は「食経験」ではなく、既存情報や試験によるべきではないか。
 ちなみに、消費者庁の「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」報告書によれば、食経験について米食品医薬品局(FDA)は仮の目安として「広範囲に25年間摂取されていること」とし、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局は「摂取期間が2、3世代あれば十分だが、5年以下では短い」としている。

◆恐ろしい時代にどう対応するか
 消費者庁への届け出はその後も続き、受理件数は4月1か月で20件に達した。今後、続々と届け出が行われ、6月中旬には第1陣の販売が可能になる。しかし、第1陣の8製品だけとっても以上のような問題製品を指摘できるのだ。恐ろしい時代が始まったともいえる。
 いま政府は消費者を被害から守るために何をなすべきか。主婦連合会が消費者担当相などに宛てた「申し入れ」(4月10日づけ)は以下のような要望をしている。

▽市場に出た機能性表示食品について、安全性と機能性の根拠に関する調査を幅広く実施し、調査結果を踏まえて適切な措置を実施し、公表すること。
▽被害事例を把握し、内容と対応を公開すること。被害が潜在化することのないよう、十分な情報収集体制を構築すること。
▽被害防止の観点から、欠陥だらけの機能性表示制度の見直しに速やかに着手すること。そのさいは、トクホ・栄養機能食品・いわゆる健康食品を含めた健康食品全体について、制度の整合性・消費者の安全の確保・適正な表示の観点から、抜本的な見直しを行うこと。

 高橋久仁子・群馬大学名誉教授は「健康食品はそもそも不要だ」と、次のように言っている――。
 多くの健康食品は宣伝文句で暗示したり、ほのめかしたりして消費者を誘っていますが、健康食品で健康は買えません。「これさえ飲めば食事は気まま」というようなものはないのです。栄養機能食品に指定されているビタミンやミネラルにはそれなりの保健効果がありますが、これらも適切な食事をしていれば必要量を摂取できます。「適度に動く。睡眠などで休養をとる。適切な食事をする」が健康管理の基本です。
(敬称は略しました)
Comment
 醜(みにく)い癒着(ゆちゃく)の構図が、目に見えるようです。
 癒着は許せませんが、反面、こんな経済世界も日本経済を支える歯車になっているのか、と思ったりもします。どうなんでしょうか。
鳴門舟 (URL) 2015/05/16 Sat 04:55 [ Edit ]
福島近くで大量座礁中死亡したイルカに発見された白肺・血液供給の断絶・放射能被曝に関連(ENENews)
http://www.asyura2.com/15/genpatu42/msg/733.html
阿修羅へ投稿

13. 2015年5月09日 09:48:05 : rWn9PLlcps
>肺が真っ白で虚血状態(局所の貧血)
潜水病の症状と思います。急浮上による急減圧で血液中の窒素がすべて気化して発生した無数のマイクロバブルが、肺胞の毛細血管をすべて閉塞して血液が流れなくなり肺の血液ガス交換機能がゼロになる窒息症状が、肺で起こったのでしょう。
肺だけでなく全身のすべての臓器に窒素マイクロバブルによる毛細血管閉塞にもとづく多様な虚血状態が出現しているのではないでしょうか。

14. 2015年5月09日 17:25:15 : IhfOeGf3iI
水生哺乳動物(アシカ、クジラなど)は、人間より遥かに海の環境に適応している。
もちろん人間と違って、潜水病に対する防御機構も備わっている。

防御機構の主たるものは、高圧になると折りたたまれる肺である。

空気(窒素、酸素)は肺胞から気道上部に排除され、血液に取り込まれない。

しかし、この防御機構が何らかの原因(有力な原因として船舶ソナーの騒音が疑われている。)で、うまく機能しなかった場合、水生哺乳動物にも潜水病が起こり得る。

渚に打ち上げられたクジラの全身から、微細気泡が発見された例は、潜水病が起きたことを示している。

ただ、今回の場合、微細気泡の解剖所見がないので、潜水病は否定される。

>Ocean STEMulation: How Marine Mammals Avoid the Bends

http://www.oneworldoneocean.com/blog/entry/ocean-stemulation-how-marine-mammals-avoid-the-bends

16. 2015年5月18日 15:51:25 : rWn9PLlcps
>>14
>潜水病に対する防御機構
>微細気泡の解剖所見がない
防御機能の限界を超える深深度からの急浮上があれば通常の潜水病で生じる微細気泡ではなく一気に巨大気泡が発生して大血管臓器では内腔が気体で満たされ空転が供給血液を途絶し一瞬で完全虚血臓器が出現すると考えられる。深度を徐々に上げていくときは肺がゆっくり開いていくが急浮上では対応できないので血液中に微細気泡ではなく巨大気泡が発生し大血管に空気塞栓が起こることになるのである。
これによって肺がガス交換機能を失い、よって浮上して空気を直接肺に吸い込んでももはや酸欠が改善されず多臓器不全を起こし、再び潜ることが出来ないまま海上や浜辺で窒息死するのである。

急浮上の原因は緊急避難行動である。潜水艦のソナーの高出力攻撃から逃れるために生物の限界を超えた急浮上を行った本能的回避行動であることは言うまでもあるまい。
通りがけ (URL) 2015/05/19 Tue 07:24 [ Edit ]
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