2008.05.05 憲法9条世界会議、参加者あふれる
―場外でも演説、異例の幕開け―

岩垂 弘 (ジャーナリスト)


 予想外の幕開けとなった。4日に千葉県幕張メッセで開幕した「9条世界会議」である。主催者の予想をはるかに上回る参加者が全国から駆けつけ、おびただしい数の人々が会場に入れず、やむなく近くの公園で主催者の弁明と一部外国代表のスピーチに耳を傾けるという異例の事態となったからだ。遠方から来たのに会議に参加できず途方に暮れる人もいたが、こうした“異常事態”は、見方によっては日本人の間で日本国憲法第9条を守ろうという人々が増えつつあることの表れとも言えるわけで、これからの護憲運動に影響を与えそうだ。

 「9条世界会議」は、ピースボート、日本国際法律家協会、GPPAC(武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ)ジャパンなどが中心となった実行委員会が1年がかりで準備を進めてきた。呼びかけ人には、浅井基文(広島平和研究所所長)、池田香代子(翻訳家)有馬頼底(臨済宗相国寺派管長、金閣寺・銀閣寺住職)伊藤真(伊藤塾塾長)、井上ひさし(作家・劇作家)、加藤登紀子(歌手)、香山リカ(精神科医)、品川正治(経済同友会終身幹事)、辻井喬(詩人・作家)、新倉修(日本国際法律家協会会長)、水島朝穂(早稲田大学教授)、ジャン・ユンカーマン(映画監督)、湯川れい子(作詞家・音楽評論家)、吉岡達也(ピースボート共同代表)の各氏ら各界の著名人88人が名を連ねる。

 狙いは、戦争放棄と戦力不保持をうたった日本国憲法第9条を世界に広げることにある。9条世界会議のプログラムには、こうある。
 「世界中紛争が絶えず、武器が次々と作られています。地球環境の変化が人々を脅かし、貧困は広がっています。そんな世界でいま人々が注目し始めているのが、日本の憲法9条です。『武力によらず平和をつくる』この9条の考え方を、いま、世界で生かしたい。戦争のない世界のために。一人ひとりが、平和に生きられる未来のために」
 つまり、世界会議開催の狙いは憲法9条の世界化、国際化にあるというのだ。これまで日本で開かれてきた世界会議といえば、専ら「原水爆禁止」のためのものだった。そのうえ、これまで、日本における「9条擁護」の運動はどちらかというと内向きの傾向が強かっただけに、今回の世界会議は初めての試みといえる。

世界会議


      (あふれた参加者を前にスピーチするマイレッド・C・マグワイアさん
        =左端の白いスーツ姿)
 であれば、なおのこと世界会議をのぞいてみなくては。そう思った私は、この日午後1時過ぎJR京葉線海浜幕張駅で下車、会場の幕張メッセ・イベントホールへ向かった。開会は1時30分から。会場に着いたのは1時15分だったが、会場前にはすで長い長い人の列ができていた。開会時間が過ぎても、列は少しも動かない。そこで、「実行委員会」の腕章をつけた人をつかまえて質すと、「会場のキャパは7000人。すでに8000人が入場しており、これ以上は無理なので、ただいま入場をストップしている」とのこと。入場出来ずに待っている人の数は3000人にのぼるという。それを、私の横で聞いていた中年の男性が、憤懣やるかたないといった口調で私に話しかけてきた。「そりゃあ困ったな。私は、きょう、北海道からやってきた。ちゃんとチケットを事前に買い、交通費や宿泊費に五、六万円もかけて。これで会場に入れないなんてあんまりだ。弱ったな」

 そのうち、列の中から「いつまで待てばいいんだ」「トイレに行きたいという人がいる。どうしたらいいんだ」「病人が出たらどうする」などの声が飛び交った。
 午後2時すぎ、実行委員会からマイクで「消防法の規定により、もうこれ以上入場できない。並んでいる人は近くのメッセモールに移動してほしい。そこで、実行委員会から事情説明をする」との伝達があり、約3000人がそこへ移った。メッセモールとは、公園ふうの空き地だった。そこで、実行委員を名乗る人から「まもなく実行委員会の責任者と海外代表がきてスピーチをする」との説明があった。

 待つこと約1時間。吉岡達也・実行委員会共同代表(ピースボート共同代表)とマイレッド・C・マグワイアさん(北アイルランド、ノーベル平和賞受賞者)、コーラ・ワイスさん(米国、国際平和ビューロー元会長)が姿を現した。吉岡代表は「こんなに参加者がくるとは思わなかった。入れない人がでて申し訳ない。来年は東京ドームで開くようにしたい」と陳謝。
 マグワイアさんは「皆さん、9条をなんとしても守らなくてはなりません。9条は世界にとって最も重要なものだからです。9条は、こう言っています。私たちは戦争をしたくない、核兵器はいらないと。私たちは、話し合うことによって和解を達成することができると。きょうは、会場から人があふれ出ています。いかに多くの人々が平和を求めているかの証左です」と述べた。そして、こう付け加えた。
 「日本はアジアの多くの人たちを傷つけてきた。その人たちに謝罪し、赦しを請うべきです。そうすれば、真の平和を達成することができ、朝鮮半島、中国、ロシアの人々と友人になることができます。そして、日本の人たちが9条を維持することができれば、世界の人々に手本を示すことができます」
 ワイスさんは「世界各国の憲法が、日本国憲法の9条と同じような規定を持つよう働きかけましょう。皆さんが9条の大使となって各国の人々に働きかけてほしい。人間には、『平和』というDNAはありません。ですから、平和教育がなんとしても必要です」と訴えた。
 二人のスピーチに、野外集会の参加者から割れるような拍手。最後は、全員が立ち上がり、「ウイ・シャル・オーバーカム」の合唱となった。そこには、もう会場に入れなかったことへの不満の声はなく、人々の顔には笑みさえ浮かんでいた。

 この世界会議は6日まで。最終日に「9条世界宣言」を採択する。

Comment
「9条を世界に広める」とは一見もっともな考えのように思えますが、私はそんなに9条は世界に誇れるものかと冷めた気持ちを持っております。なぜなら9条がありながら日本は軍事費世界第5位、アメリカの軍事同盟下、沖縄は24時間臨戦態勢、米軍基地には核兵器の可能性、着々と進む戦争準備、社会は年々疲弊、親子・きょうだい・夫婦同士が殺しあっている国民(沖縄戦では軍の命令で行われたことが今自主的に殺しあっている)、年金・医療崩壊、真面目に働いているのにワーキングプア・・・こんな日本を9条があるからと世界に誇れるでしょうか? 多くの国が日本のことをアメリカの属国でかわいそうな国としか見ていないと思います。9条のないスウェーデンは190年間戦争をしていないそうです。あの国に他国の軍事基地がありますか? 医療や年金が崩壊寸前ですか? 世界9条の会で9条を本当に誇れる国にしようという話し合いこそすべきではなかったか?と思います。
おばらのぶこ (URL) 2008/05/09 Fri 07:26 [ Edit ]
おばらのぶこさんの指摘、鋭いですね。しかし、だからこそ、世界会議の意義があるのではないでしょうか。日本国内の、9条に相応しくない、状況を乗り越えるためにも、世界から力をもらい、世界に9条の力を発信しましょう。
琵琶玲玖 (URL) 2008/05/09 Fri 17:01 [ Edit ]
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