2015.10.19 情けないユネスコ分担金・拠出金停止の脅し

坂井定雄(龍谷大学名誉教授)

国連総会は15日、日本を国連安全保障理事会の非常任理事国に選出した。有効投票190票のうち支持票184票で、今回の投票では選出5か国のなかで最も多数の支持を得た。吉川元偉大使の誠実な根回しが、成果を上げたのかもしれない。地域ごとに割り振られているとはいえ、通算11回目で、名誉なことだ。米国の小間使いになるのではなく、国連憲章を尊重して、世界の平和と人権のために、自主性を少しでも発揮して、貢献してほしい。今秋、ノーベル生理学・医学賞を大村智氏、物理学賞を梶田隆草氏が受賞した。世界に誇れる素晴らしい業績だ。だが、情けないことに、その世界に貢献する日本の顔に泥を塗る、恥ずかし、嫌らしい一面を、政府と自民党は世界に見せつけてしまった。
いうまでもなく、ユネスコ(国連教育文化機関)が世界記憶遺産に中国が申請した「南京大虐殺の記憶」の登録を決めたことに対し、安倍政権が反発、菅義偉官房長官が13日、分担金・拠出金の停止を検討する考えを表明したことだ。自民党も翌14日、外交部会などの合同会議で、政府に対し登録撤回を提案するよう求める決議を行い、ユネスコの分担金・拠出金の停止などを要求した。自民党や安倍政権が、南京大虐殺の記憶文献・文物などのユネスコ世界遺産登録に反対するだけなら、まだいい。韓国政府も7月にユネスコが文化遺産登録を決定した「明治日本の産業革命遺産」の登録に強く反対した。両国間、ユネスコとの交渉で、韓国政府は反対を引っ込めたが、強い反対運動の中でも、分担金・拠出金を減額するとか停止するとか、ユネスコを脅すような言辞を表明したことはなかった。
国連機関に対して自国の主張が通らなければ、分担金・拠出金を払わない、減額すると脅すなどは、世界の国々から軽蔑される、よくても失望させる行為だ。かつて米国が、国連に言うことをきかそうとして、分担金を大幅に凍結した時期があったが、その真似なのか。
ここは南京大虐殺について議論する場ではないが、どんなに否定したくても、現地の生存者の証言、現地にいたドイツ人、アメリカ人の医師や、宣教師らの証言、証拠は否定しようもなく、東京裁判では、犠牲者は20万人以上と認定されている。犠牲者が30万人か、20万人か、あるいはそれ以下かについては検証の余地はあるかもしれない。そうであっても、旧日本軍による行為の証拠、証言を、被害者側の中国が世界遺産として申請し、加盟国の多数が賛成し、ユネスコが登録を決定したことを非難するばかりか、分担金、拠出金を出さないと脅すことは、戦争を二度と繰り返さないと表明した日本人の決意を、世界に疑わせることになりかねない。政府は「分担金・拠出金の削減はしない」と早く表明すべきだ。
国連安保理非常任理事国にトップ当選した日本は、「歴史的事実のより正確な解明と記録、それに学ぶことによって、世界平和に貢献することを願う」と表明して、平和大国としての度量を示した方が、よほど各国から尊敬されるのではないか。

Comment
 私も同じ事を考えていました。
まったく大人気(おとなげ)ない論だと言わざるを得ません。
 私には、日本が満州事変をきっかけに、国際連盟を
脱退した行為と重なって見えました。
 南京事件を否定して、日本になんの国益があるというのでしょうか。
 むしろ、日本の価値をおとしめる論だと言えるでしょう。
 敗戦国は、後に罪に問われないように、たくさんの公文書なり証拠書類を廃棄処分にします。
 また、罪に問われるような行為をした人たちは、固く口を閉ざしてしまいます。
 それだけに、現地にいた人たちの証言は貴重なものです。
被害者は人数を多く言い、加害者は少なく言う。当たり前のことです。
日本の立場として、南京でそのような事実があったことを認めていながら、
異議を申し立てている。まったくおとなげがありません。

 歴史を学んでゆけば、明治以降、日本がどう歩んできたか中韓に対してどうであったのか、想像力を持って知ることができます。
鳴門舟 (URL) 2015/10/19 Mon 07:47 [ Edit ]
これは「文化芸術懇話会」で出たという、“意に沿わないメディアは広告引き揚げで締め上げ、思い知らせよう”の国際社会版ですね。
自民党は国恥を世界に晒しているだけということに、いい加減気づくべきです。
AS (URL) 2015/10/19 Mon 18:00 [ Edit ]
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