2008.05.09
ヒラリー氏大苦戦、大票田の予備選終わる
米民主党大統領候補指名争い
バラク・オバマ上院議員(イリノイ州選出)とヒラリー・クリントン上院議員(ニューヨーク州)の
間で、民主党の大統領候補の指名を争う南部ノースカロライナ州(8月党大会への代議員
115人)と中西部インディアナ州(72人)の予備選が5月6日に行われた。
結果はノースカロライナ州でオバマ氏が大勝(オバマ氏の得票率56%に対しヒラリー氏
42%)、インディアナ州ではヒラリー氏が辛勝(得票率51%対49%)となった。スコアは
1勝1敗だが、獲得代議員数で大きくリードされているヒラリー氏はこの2州で2勝することで
挽回のきっかけをつかもうとした作戦が実らず、大苦戦を強いられている。
AP通信の集計によると、この日の結果を加算したオバマ氏の獲得代議員数は1,843
人、ヒラリー氏は1,697人となった。大統領候補を正式指名する8月の民主党大会で
の代議員過半数は2,025人。オバマ氏はあと182人で過半数に達するが、ヒラリー氏は
なお328人を要する。1月から始まった指名争いの予備選・党員集会は、この日の
ノースカロライナ、インディアナ両州で大票田を抱える州は終わった。残るのはウェストバー
ジニア州(5月13日)、ケンタッキー、オレゴン州(5月20日)、自治領プエルトリコ、
モンタナ州(5月27日)、サウスダコタ州(6月3日)の人口の少ない5州1自治領だけで、
代議員数は全部合わせて217人しかない。
してみると、ヒラリー氏が獲得代議員の数でつけられた146人の差を埋めることは、単純
計算でまず不可能だ。それなのにヒラリー氏は6日夜インディアナポリスで開かれたインディ
アナ州勝利集会で「私は最後まで闘い続ける。さらに選挙資金カンパをお願いする」と
叫んだ。負け続けながら最後に勝利したボクサー、ロッキーのように闘い続けるという
ヒラリー氏はこれからどう闘うというのか。
伊藤力司 (ジャーナリスト)
バラク・オバマ上院議員(イリノイ州選出)とヒラリー・クリントン上院議員(ニューヨーク州)の
間で、民主党の大統領候補の指名を争う南部ノースカロライナ州(8月党大会への代議員
115人)と中西部インディアナ州(72人)の予備選が5月6日に行われた。
結果はノースカロライナ州でオバマ氏が大勝(オバマ氏の得票率56%に対しヒラリー氏
42%)、インディアナ州ではヒラリー氏が辛勝(得票率51%対49%)となった。スコアは
1勝1敗だが、獲得代議員数で大きくリードされているヒラリー氏はこの2州で2勝することで
挽回のきっかけをつかもうとした作戦が実らず、大苦戦を強いられている。
AP通信の集計によると、この日の結果を加算したオバマ氏の獲得代議員数は1,843
人、ヒラリー氏は1,697人となった。大統領候補を正式指名する8月の民主党大会で
の代議員過半数は2,025人。オバマ氏はあと182人で過半数に達するが、ヒラリー氏は
なお328人を要する。1月から始まった指名争いの予備選・党員集会は、この日の
ノースカロライナ、インディアナ両州で大票田を抱える州は終わった。残るのはウェストバー
ジニア州(5月13日)、ケンタッキー、オレゴン州(5月20日)、自治領プエルトリコ、
モンタナ州(5月27日)、サウスダコタ州(6月3日)の人口の少ない5州1自治領だけで、
代議員数は全部合わせて217人しかない。
してみると、ヒラリー氏が獲得代議員の数でつけられた146人の差を埋めることは、単純
計算でまず不可能だ。それなのにヒラリー氏は6日夜インディアナポリスで開かれたインディ
アナ州勝利集会で「私は最後まで闘い続ける。さらに選挙資金カンパをお願いする」と
叫んだ。負け続けながら最後に勝利したボクサー、ロッキーのように闘い続けるという
ヒラリー氏はこれからどう闘うというのか。
ヒラリー氏が賭けているのは、彼女に投票してくれるスーパー代議員獲得と、代議員資格
を拒否されているフロリダ州とミシガン州の代議員資格復活である。スーパー代議員とい
うのは、連邦議会議員や州知事、元正副大統領、民主党党役員などの795人で、党大会
で各州の予備選・党員集会の結果とは無関係に、自分の判断でどちらかに投票できる人々
だ。民主党での政治経歴の長いヒラリー氏は、4月22日ペンシルベニア州予備選が終わ
った時点でスーパー代議員258人を確保、233人のオバマ氏に25人の差をつけていた。
しかし5月6日の時点で、その差は15人に縮まった。いまだに去就を明らかにしていない
スーパー代議員は約250人だが、スーパー代議員の多くは最終的には地元の予備選・
党員集会の結果に従う意向だという。ヒラリー氏のスーパー代議員に賭ける思惑の実現
可能性はすこぶる厳しい。
最南端のフロリダ州と最北端のミシガン州は、党の規則に反して1月早々予備選挙を行っ
たために、党全国委員会から大会代議員資格を剥奪されている。このままでは、両州は党
大会に代議員を派遣できない。しかしヒラリー氏は、ヒラリー支持が高いとみられる両州
の代議員資格を復活させることで、何とか挽回するチャンスをつかもうとして、旧知の民
主党役員たちに懸命に働き掛けるつもりだ。民主党全国委員会の法規委員会はヒラリー氏
の申し立てを受けて5月31日に会議を予定した。この日、同委員会は両州の代議員資格
をどうするか再検討する予定だ。ここでヒラリー氏の思惑がみのるかどうか。
衆目の一致するところ、2週間前のペンシルベニア州予備選で敗れたオバマ氏にとって、
ノースカロライナ州の勝利は「極めて価値ある勝利」だった。というのは、この2週間は
オバマ氏にとってまさに「試練の2週間」だったからだ。オバマ氏が20年来通い続けた
シカゴの黒人教会の牧師、ジェレミア・ライト師の奇矯な発言が彼を苦しめたのである。
ライト師はオバマ氏の結婚式や2人の娘の洗礼式を司った牧師で、いわば「心の師」であ
った。4月のペンシルベニア州予備選を前にテレビ放映されたビデオで、ライト師の奇矯
な説教が暴露され、彼の悪名は全国的に高まったのだった。
ライト師の説教は普通のアメリカ人にはとてもショッキングだった。例えば「アメリカは
これまで他国に傲慢な行いをしたのだから、9・11のようなテロ攻撃を受けても仕方が
ない」「アメリカ政府は黒人などマイノリティを殺すために、AIDSウイルス=HIVを導入
した」「米国のイスラム教指導者ルイス・バラカン師は立派な人物だ」などである。
このビデオ放映の後オバマ氏はペンシルベニア州フィラデルフィアで、「自分は黒人の父、
白人の母から生まれたことから、アメリカの人種問題を克服したいと願い、アメリカ国民
を統合するため、大統領選に立候補した」という主旨のテレビ演説を行い、ライト師発言
によるマイナスを大筋で克服したと、一般に受け取られていた。
ところが4月、ノースカロライナ、インディアナ州の予備選たけなわの時点で、あちこち
のテレビ局に招かれたライト師は、白人有権者の気持ちを逆撫でする発言を続けた。ライ
ト師は再びオバマ氏にピンチを招いたのだ。危機に立ったオバマ氏は4月29日、テレビ
記者会見で「自分の心、自分の考えはライト師と正反対だ」と語り、ライト師との絶縁を
宣言した。それでも多くの選挙アナリストは、ライト師発言がオバマ氏にダメージを与え
る続けるだろうと予言した。
ノースカロライナ、インディアナ州の結果は、オバマ氏がダメージから脱却したことを示
した。この結果、オバマ氏は共和党ジョン・マケイン候補と対決する11月の本選挙に向
けて「捲土重来」の決意を固めたであろう。一方「降りない」と宣言したヒラリー氏は今後、
各方面から「撤退」を呼び掛ける圧力を受け続けるであろう。いずれにせよヒラリー氏が
降りない限り、最後のサウスダコタ州予備選を終えた時点でも、オバマ氏が2、025人を
獲得したと勝利宣言をすることは無理なようだ。勝負は決まっている感じだが、最終
決着は8月末の民主党大会まで持ち越される公算が高い。
を拒否されているフロリダ州とミシガン州の代議員資格復活である。スーパー代議員とい
うのは、連邦議会議員や州知事、元正副大統領、民主党党役員などの795人で、党大会
で各州の予備選・党員集会の結果とは無関係に、自分の判断でどちらかに投票できる人々
だ。民主党での政治経歴の長いヒラリー氏は、4月22日ペンシルベニア州予備選が終わ
った時点でスーパー代議員258人を確保、233人のオバマ氏に25人の差をつけていた。
しかし5月6日の時点で、その差は15人に縮まった。いまだに去就を明らかにしていない
スーパー代議員は約250人だが、スーパー代議員の多くは最終的には地元の予備選・
党員集会の結果に従う意向だという。ヒラリー氏のスーパー代議員に賭ける思惑の実現
可能性はすこぶる厳しい。
最南端のフロリダ州と最北端のミシガン州は、党の規則に反して1月早々予備選挙を行っ
たために、党全国委員会から大会代議員資格を剥奪されている。このままでは、両州は党
大会に代議員を派遣できない。しかしヒラリー氏は、ヒラリー支持が高いとみられる両州
の代議員資格を復活させることで、何とか挽回するチャンスをつかもうとして、旧知の民
主党役員たちに懸命に働き掛けるつもりだ。民主党全国委員会の法規委員会はヒラリー氏
の申し立てを受けて5月31日に会議を予定した。この日、同委員会は両州の代議員資格
をどうするか再検討する予定だ。ここでヒラリー氏の思惑がみのるかどうか。
衆目の一致するところ、2週間前のペンシルベニア州予備選で敗れたオバマ氏にとって、
ノースカロライナ州の勝利は「極めて価値ある勝利」だった。というのは、この2週間は
オバマ氏にとってまさに「試練の2週間」だったからだ。オバマ氏が20年来通い続けた
シカゴの黒人教会の牧師、ジェレミア・ライト師の奇矯な発言が彼を苦しめたのである。
ライト師はオバマ氏の結婚式や2人の娘の洗礼式を司った牧師で、いわば「心の師」であ
った。4月のペンシルベニア州予備選を前にテレビ放映されたビデオで、ライト師の奇矯
な説教が暴露され、彼の悪名は全国的に高まったのだった。
ライト師の説教は普通のアメリカ人にはとてもショッキングだった。例えば「アメリカは
これまで他国に傲慢な行いをしたのだから、9・11のようなテロ攻撃を受けても仕方が
ない」「アメリカ政府は黒人などマイノリティを殺すために、AIDSウイルス=HIVを導入
した」「米国のイスラム教指導者ルイス・バラカン師は立派な人物だ」などである。
このビデオ放映の後オバマ氏はペンシルベニア州フィラデルフィアで、「自分は黒人の父、
白人の母から生まれたことから、アメリカの人種問題を克服したいと願い、アメリカ国民
を統合するため、大統領選に立候補した」という主旨のテレビ演説を行い、ライト師発言
によるマイナスを大筋で克服したと、一般に受け取られていた。
ところが4月、ノースカロライナ、インディアナ州の予備選たけなわの時点で、あちこち
のテレビ局に招かれたライト師は、白人有権者の気持ちを逆撫でする発言を続けた。ライ
ト師は再びオバマ氏にピンチを招いたのだ。危機に立ったオバマ氏は4月29日、テレビ
記者会見で「自分の心、自分の考えはライト師と正反対だ」と語り、ライト師との絶縁を
宣言した。それでも多くの選挙アナリストは、ライト師発言がオバマ氏にダメージを与え
る続けるだろうと予言した。
ノースカロライナ、インディアナ州の結果は、オバマ氏がダメージから脱却したことを示
した。この結果、オバマ氏は共和党ジョン・マケイン候補と対決する11月の本選挙に向
けて「捲土重来」の決意を固めたであろう。一方「降りない」と宣言したヒラリー氏は今後、
各方面から「撤退」を呼び掛ける圧力を受け続けるであろう。いずれにせよヒラリー氏が
降りない限り、最後のサウスダコタ州予備選を終えた時点でも、オバマ氏が2、025人を
獲得したと勝利宣言をすることは無理なようだ。勝負は決まっている感じだが、最終
決着は8月末の民主党大会まで持ち越される公算が高い。
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