2015.11.17  野党共闘は前途多難――だが方法はある
          ――八ヶ岳山麓から(164)――

阿部治平 (もと高校教師)

9月20日頃日本共産党の志位和夫委員長が「戦争法廃止の国民連合政府」の実現をよびかけたというニュ-スがあった。しばらくすると村の共産党の活動家3人がそのビラをもってわが家にやって来た。「これを読んでほしい。知り合いにも配ってくれ」という。

ビラは、「1、戦争法(安保法制)廃止、安倍政権打倒の戦いをさらに発展させよう」「2、戦争法廃止で一致する政党・団体・個人が共同して国民連合政府をつくろう」「3、戦争法廃止の国民連合政府で一致する野党が、国政選挙で選挙協力を行おう」という3ヶ条からなる主張だった。
私は安保法制廃止のための選挙協力には一も二もなく賛成だったから、共産党の活動家たちに「おれのところでぐずぐずしているより、ほかの家を回ったほうがいい」と勧めた。

ビラは何枚かもらったので、それを小中学校の同級生に見せて、「どうだ?」と感想を求めた。この同級生は安保法制には反対、安倍内閣には批判的な人物である。友人は「前半はどうもいつもと同じような文章だ。後半の連合政府の考えはよくない。安保関連の法律を廃止したら、すぐまた解散・総選挙では無責任だ」という。
ビラには確かに「この連合政府の任務は、集団的自衛権行使容認の『閣議決定』を撤回し、戦争法を廃止し、日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻すことにあり、その性格は暫定的なものとなる」とある。

ビラは配ったものの、ほんとうのところは私も共産党に異議を申し上げたい。
2012年国政選挙がらみの共産党の演説会で、私はアンケートに政策の近い未来の党や社民党との選挙協力を希望する旨を書いて提出した。2,3日後、市田書記局長から返事があって、「選挙共闘は国政の基本問題で一致しないと(たとえば憲法、安保、消費税など)野合ということになり無理ですが、選挙後の国会ではどの党とも一致点で力を合わせてがんばります」と書いてあった。
いま共産党は「“国民的な大義”が明瞭な場合には、政策的違いがあってもそれを横において柔軟に対応する……」といっている。この変更は共産党指導部だけの決定なのか、下部の党員もこれを討論し賛成した結果なのか。
どういうあたまで、2012年には選挙協力が「野合」で、いまは選挙協力が「国民的大義」に応えることになるのか。この前の参院選では選挙協力をすれば、長野県では護憲勢力が勝利できたのである。今頃になってなんだ!

11月11日に地元共産党の呼びかけで選挙共闘の「座談会」があった。私は、晩酌をやるので夜は人前に出たくないのだが、このたびは特別だと思って出席した。酒の勢いをかりていわでものことをいったかもしれない。
「座談会」出席者は党員と、私のような是々非々の人が半々くらいだった。主催者のYさんは、次の国政選挙では集団安保法制に反対する勢力は、自民党と公明党に勝利しなければならない。安保関連法に反対する政党と多くの人が共闘して国民連合政府をつくらなければならない。「国民的大義」があれば政策的に違いがあっても共闘しなければならないと、先の志位和夫ビラと同じ趣旨のことをいった。

座談会では、選挙共闘にはみな賛成だった。そこで出た意見を順不同であげるとこんな具合である。

じっさい民主党などとの選挙共闘とその先にある国民連合政府は、実現がかなり困難な課題だ。すでに民主党の右派勢力からは共産党との共闘に反対する意見がでている。
民主党には右翼集団日本会議に属する元外相の前原誠司や、集団的自衛権の行使に賛成している細野豪志などがいる。
民主・維新は分裂と合併を議論している政党である。民主党執行部が党内の右翼を抑えて共産党と共闘することはできまい。
民主党は2年間ひどい政権運営をやって、人々の期待を片っぱしから裏切った。だから野党に転落して初の参院選では、17議席(選挙区10、比例7)に終わった。いまも政党支持率は自民党が30%強なのに民主党は10%前後と低迷している。選挙協力ができてもよほど頑張らないと一人区での当選はかなり難しい。
さらに、かりに共産党が右派勢力を抱えたままの民主党などと選挙協定を結ぶことができたとしても、自民党と同じ主張の右翼議員を当選させるのはまずいという意見もあった。
これに対して共産党員のひとりが「政党同士の話し合いができれば、(候補者が誰であれ)選挙共闘はやる」といった。私はびっくりした。共産党の皆さんは党中央にお任せの考え方でいいのか。
東京など大都市ではインターネットで呼びかけあって結集したというSEALDs(シールズ)などの学生集団が登場して、その新しさが注目されたとのことだ。共産党は従来のような発想方法で新しい感覚の若者の心を捕まえることができるだろうか。

自分の村を考えると、共産党をめぐっては微妙で面倒な問題があると思う。例を引こう。
私は「憲法九条を守る会」で共産党員が熱心に活動するのを感謝の気持ちで見ている。だが党員だと村人に知られている人が「九条の会」の中心になっている。だから村の「九条の会」は共産党がやっていると思われて、その影響がせまい範囲にとどまっていると思う。私だけでなく、信濃毎日新聞で、同じ心配を長野県伊那地方の憲法擁護組織の中心メンバーが語ったことがある。
私が家の壁に「守れ9条!」の青い張紙を張ったら、さっそく親戚の若いのが、「おめぇさまは共産党に入っただか?」と聞いてきた。私はおおいそぎで「九条の会」の趣旨を説明して「共産党とは違うぞ」と念を押したことがあった。
村の中でも共産党は嫌いだが、集団安保法制には反対だという人はかなりいる。その一方で「集団安保反対」とか「九条を守れ」というと、また共産党かと思う人もいるのである。
小中学校の同級生で村の共産党の指導者だった男は、「九条の会」が村の中心で「スタンディング」をやって安保法制反対を訴える方向を打出したとき、「おれは参加しない。おれが顔を出せば『九条の会』は共産党だと思われるから」と表だって活動するのを避けた。良識ある判断だったと思う。
以上のようなわけで、村の中では共産党が先頭に立って選挙協力をよびかけては、反安保法制候補はなかなか得票は伸ばせないのではなかろうか。

私は、日本共産党は中国共産党と友好関係にあるのだから、できるだけ早く南シナ海や東シナ海での中国の動向を牽制し批判してほしいといった。
国際情勢では米中両国は武力衝突を避けているが、中国国内には民族問題や格差問題、経済成長の低速化など問題は山積している。中共中央にはそれをめぐって熾烈な派閥争いがある。省レベルの指導者が軒並み逮捕もしくは取調べの対象になっているのは、派閥争いのためである。
習近平総書記は李克強総理の影がかすむほど権力を集中しているが、彼が国内の問題を対外矛盾に転化するために強硬外交にでる危険性は十分にある。中国が尖閣をめぐって踏み込んだ行動にでたとき、日本の世論は一挙に集団安保体制支持に傾く。選挙協力など吹っ飛んでしまうかもしれない。
「いや、そのくらいのことは共産党の中央はよくわかっているでしょう」という党員の発言があったが、私はそれは疑問だと思って、とにかくこういう意見があったということを党中央に上げてほしいと頼んだ。

「座談会」のなかでこんな意見が出た。
――政党間で協力が難しいなら、参議院選挙で自民党・公明党に勝利するための別な戦術を考えたほうがいい。共産党は当選の見込みがない候補者をいま全部おろして、集団安保法制反対の他党候補を応援することにしてはどうか。そうすれば中央の政党間ではなく、選挙区ごと比例のブロックごとに協力関係をつくることができる。
また民主党や生活の党、社民党などの足のない政党を一方的に助ける形になるが、共産党の「選挙共闘を心から呼びかける」という決意が誰の目にも明らかになり、共産党の評価が一気に高まり、その後の政治工作はやりやすくなるだろう。
これには党員のなかでも賛成する人がいたが、選挙共闘をめぐる私の結論も同じである。

Comment
>共産党は当選の見込みがない候補者をいま全部おろして、集団安保法制反対の他党候補を応援することにしてはどうか。
、、まず、むりでしょう。
なぜかというと、共産党が安保法制を反対しているのは、その実現(廃案)そのものではなく(出来ない事を分かり切っている)、安保法制に反対の声を利用して共産党の議席(職)を確保、Upすることに、あるからにほかないからです。 世界平和や国民の為というよりは党の既得権益の維持、確保の為の主張と捉えるほうがより適切です。
本当に9条をまもる、安保法制を廃案にしたいなら、その対立政党(野党)に望みをかけるのではなく、自民、公明の中のそうした声を増やしてゆく活動、地道な説得が 一番の近道とおもいます。
(時間がかかるでしょうが、それが正当な主張であれば、、)
名無し (URL) 2015/11/17 Tue 09:29 [ Edit ]
毎回興味深く読ませていただいております。
共産党の方針もいろいろ動いていると思っています。たとえば、境市長選では共産党は立候補せずに反維新で闘い勝利しました。ところが滋賀県知事選では嘉田氏を応援せず独自候補を立てました。幸い嘉田氏が当選しましたが、もう少し票を伸ばしたら嘉田氏は落選し自民党が勝利したでしょう。
共産党はもともと「政策協定・組織協定を結ばないと共闘しない」という方針だったと思いますが、長野県知事選(田中)のときに初めて「政策、組織協定なし」ながら独自候補を出さず、実質的に田中康夫を応援し勝利させました。これらをみると、共産党もいろいろ試行錯誤しながらそれなりの方向を探っていると私は思っています。今回の方針は、なかなかいい方針だと歓迎しているところです。
ひと (URL) 2015/11/18 Wed 17:43 [ Edit ]
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