2015.11.19  国連安保理の決議によるIS壊滅作戦と人道支援拡大を
    シリア紛争解決への転機に③

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)


シナイ半島上空でのロシア旅客機の爆破テロ、パリでの大規模連続テロ事件。犯行声明を出した「イスラム国(IS)」の本拠地シリアで、ロシアとフランス、さらに英国がISへの爆撃に加わった。中国を除く安保理常任理事国が、特定の敵対勢力への軍事攻撃を行うのは、初めての事態だ。その背景には、シリアだけで25万人の生命が失われ、400万人以上の人々が国外難民となっている悲惨な人道危機がある。シリアでの人道危機を出来るだけ早く解決するために、国際社会の支持があれば、このIS壊滅作戦は成功できるはずだ、
この4大国は、第2次大戦後、さまざまな、いかがわしい戦争、軍事干渉を行ってきた。今回はどうか。さらに、シリアでISを壊滅しても、ISはすでにその準備が始まっているともいえる他のイスラム諸国に拡散し、多様なテロ作戦を続ける可能性が残る。だからこそ、イスラム諸国をはじめ、幅広い国々の支持、参加が必要なのだ。
そのために、シリアでの軍事行動を、国連安全保障理事会の決議による、平和と人道的救済のための行動としなければならない。なぜ4か国は、安保理の決議を求めないのか。シリア内戦の解決のため、国連安保理は2代にわたる調停特使を任命し、ロシアとイランが支持するアサド政権と欧米やアラブ諸国が支持する反政府勢力との合意による、停戦、選挙、新政権発足を実現しようと努力を重ねてきたが、成功しなかった。民主化運動を過酷に弾圧したアサド大統領の辞任か存続かをめぐって、対立が解けなかったのが、最大の争点だった。
そのため、アサド政権と世俗派反政府勢力、イスラム主義反政府勢力の内戦が続き、その内戦に乗じて勢力を拡大したのがIS。今ではISの支配地域は、全シリアの半分を超えるまでになった。
だが、内戦が続き、人道被害がますます拡大し、ISに対して米国の空爆が拡大したことに、ロシアも危機感を深めたに違いない。ロシアはアサド政権を支えるため、今夏以降、軍事援助を拡大、さらに10月、カスピ海の水上艦からのシリアの「テロリスト」に向け巡航ミサイル攻撃を始めた。「テロリスト」という呼び名はロシアが反政府勢力に対して使った呼び名で、実際に北西部の反政府勢力が攻撃されて数十人が死亡した。その一方で、北部のISの拠点も攻撃されるようになった。そして10月31日にロシア旅客機がシナイ半島上空で爆破墜落。「IS」の傘下組織を表明したエジプト・シナイ半島の過激派組織「シナイ州」(「イスラム国」の一部とする自称)が犯行を宣言したことで、ロシアはISの犯行と断定。シリアのIS本拠地への大規模な爆撃を開始した。爆撃は本土発進のツポレフ長距離爆撃機と地中海の潜水艦からの巡航ミサイル攻撃で、ISの”首都”であるシリア北部のラッカ市周辺の指令拠点、訓練キャンプ、弾薬集積所などを攻撃したと発表した。
一方フランスは。地中海シリア沖の空母「シャルル・ドゴール」から30数機の攻撃機でISへの爆撃を大規模に開始した。
米国、英国、サウジアラビアはじめ一部アラブ諸国、トルコは、反政府勢力を支持しつつISへの攻撃を拡大、ロシアはアサド政権を支持しつつ、ISと他の「テロリスト」を攻撃する戦争を始めているのである。アサド大統領の処遇を巡る対立は、とりあえず棚上げできるのではないか。この戦争を、一刻も早く安全保障理事会の決議に基づき、国際法を順守する平和回復、平和維持の軌道に乗せなければならない。それによってのみ、戦争を終わらせ、過酷な難民生活を辛うじて生きているシリアの人々に、故郷での平和な日々を取り戻すことができるのだ。
(続く)
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