2015.12.04   ☆大賞に中日新聞グループの「平和の俳句」                  ☆中国にとり憑いているものは?
「本日は、記事二本立てです。」

大賞に中日新聞グループの「平和の俳句」
2015年度の平和・協同ジャーナリスト基金賞

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 反核・平和、協同・連帯、人権擁護等を推進するための報道に寄与したジャーナリストを顕彰する活動を続けている平和・協同ジャーナリスト基金(PCJF。代表委員、歴史学者・色川大吉、慶應義塾大学名誉教授・白井厚の各氏ら)は12月3日 、今年度の第21回平和・協同ジャーナリスト基金賞の受賞者・受賞作品を発表した。
 基金運営委員会によると、基金賞の選考は、鎌倉悦男(プロデューサー・ディレクター)、佐藤博昭(日本大学芸術学部映画学科講師)、清水浩之(映画祭コーディネーター)、高原孝生(明治学院大学教授)、鶴文乃(フリーライター)、前田哲男(軍事ジャーナリスト)、森田邦彦(翻訳家)の7氏によって行われ、候補作品84点(活字部門39点、映像部門43点、インターネット関係2点)の中から次の8点を授賞作に選んだ。

◆基金賞=大賞(1点)

 中日新聞社の「『平和の俳句』など戦後70年の平和主義を見つめ直す一連の報道」

◆奨励賞(6点)

 ★神奈川新聞取材班の「時代の正体――権力はかくも暴走する」(現代思潮新社)
 ★SEALDs編著の「SEALDs 民主主義ってこれだ!」(大月書店)
 ★下野新聞社取材班の「とちぎ戦後70年――終戦記念日特別紙面と一連のキャンペーン報道」
 ★西日本新聞安保取材班の「戦後70年 安全保障を考える」
 ★日本テレビ制作の「南京事件 兵士たちの遺言」
 ★本田雅和・朝日新聞南相馬支局長の「朝日新聞連載ルポ『プロメテウスの罠』シリーズ・希望の牧場」

◆荒井なみ子賞(1点)

 漫画家・西岡由香さん(長崎市)の「被爆マリアの祈り――漫画で読む三人の被爆証言」(長崎文献社)

 基金運営委員会によると、候補作品は、活字部門、映像部門とも、昨年から今年にかけての政治・社会情勢を反映して、集団的自衛権、憲法改定、安保関連法、原発といった問題を論じたものが多く、さらに、今年が「戦後70年」という節目の年に当たったため、「15年戦争」を回顧して、日本人の戦争体験を検証した力作が地方紙、ローカルテレビ局で目立った。

 ■基金賞=大賞には、中日新聞社の『「平和の俳句」など戦後70年の平和主義を見つめ直す一連の報道』が選ばれた。「平和の俳句」は中日新聞、東京新聞、北陸中日新聞など中日新聞グループの朝刊に連載されたもので、1日1句。「平和への思いを俳句の形でつぶやいてほしい」と読者に呼びかけて募り、選者は俳人の金子兜太、作家いとうせいこうの両氏。これまでに5万通の投稿があった。
 選考委では「安保関連法などで日本の平和主義が大きく揺らいだ年の新聞の企画として出色」「5歳から100歳までの人が参加しているのは素晴らしい]との発言があった。さらに「中日新聞グループが憲法、安保関連法案などの問題で積極的な報道を展開した点も評価したい」という声もあって大賞を贈ることになったという。

 ■奨励賞には活字部門から5点、映像部門から1点、計6点が選ばれた。
 まず、神奈川新聞取材班の『時代の正体――権力はかくも暴走する』については、審査員によって「ジャーナリズムでは一般的に客観報道が原則とされるが、ここでは、時として記者たちが客観主義の枠をはみ出て、取材対象、例えば安保問題、米軍基地、ヘイトスピーチなどに肉迫している。それが、読者の心をつかむ迫力ある記事となっている」と絶賛された。

 SEALDs編著の『SEALDs 民主主義ってこれだ!』は、安保関連法案反対運動に登場して一躍世間の注目を集めたSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)に参加している学生たちの主張や、メンバーの奥田愛基氏が参院特別委で意見陳述した全文などが収録されている。「SEALDsの行動を理解するには最適の文献」と、全会一致で授賞が決まった。
 
 下野新聞社取材班の『とちぎ戦後70年――終戦記念日特別紙面と一連のキャンペーン報道』は、戦後70年を機に栃木県民の戦争体験を検証したもの。「同様の企画がいくつかの地方紙によって取り組まれたが、下野新聞のそれは質・量ともに群を抜いている」「まさに新聞社の総力を挙げて取り組んだことがうかがえる大作」と評価された。
 
 西日本新聞安保取材班の「戦後70年 安全保障を考える」は、日本にとっての安保問題をさまざまな観点から総合的に論じた連載企画。選考委では「安保問題を深く理解するのに役立つ力作」「専守防衛を見直したドイツ、報復テロの後遺症に悩むスペイン、帰還兵の自殺が社会問題化している米国の現状を伝えるルポは読ませる」とされた。
 
 原発関係で1点入れたいということで選ばれたのが、本田雅和氏の『朝日新聞連載ルポ「プロメテウスの罠」シリーズ・希望の牧場』。これは、福島第1原発から14キロしか離れていない旧警戒区域で被曝した牛300頭を今なお飼い続けている酪農家の吉沢正巳氏を取り上げた連載で、「原発事故から4年たった被災地の現状と、この間、国や電力会社が何をやってきたかをリアルに伝える優れたレポート」とされた。

 映像部門で奨励賞に選ばれたのは『南京事件 兵士たちの遺言』。2015年10月4日深夜、日本テレビ系列でNNNドキュメント’15として放映された。審査員の評価は「日本の政治家や評論家等の一部には、南京事件はなかった否定する人々がいるが、そうした情況の中で、この事件を、兵士の陣中日記等から、本格的にきちんと伝えようとした製作姿勢には評価すべものがある」というものだった。

 ■荒井なみ子賞には西岡由香さんの『被爆マリアの祈り――漫画で読む三人の被爆証言』が選ばれた。この賞は、生協運動などで活躍された故荒井なみ子さんからの寄付金を基に創設された賞で、女性ライターが対象。西岡さんの受賞は7人目。西岡さんの作品は、長崎で被爆した3人の体験を通して原爆被害のすさまじさと被害を乗り越えて生きてゆく人間のたくましさを漫画で表現したもので、選考委では「読みやすい」「若い人たちにも原爆被害を知ってもらうには、漫画が効果的。その試みに挑戦しつつあることにエールを送りたい」とされた。

 基金賞贈呈式は12月12日(土)午後1時から、東京・内幸町の日本プレスセンター9階、日本記者クラブ大会議室で開かれる。参加費は3000円。 
                              以上
                              以下に「中国にとり憑いているものは?」



中国にとり憑いているものは?

(新・管見中国 1)

田畑光永 (ジャーナリスト)


 私はこれまで本ブログに「管見中国」という題で中国についての時評を40数本書いてきた。しかし、この2、3年、つまり習近平体制になってから、さっぱり書けなくなった。恥ずかしいことだが、わけが分からなくなってしまったのである。
 もとより中国は謎の多い国柄である。自分で「管見」と名付けざるを得ないのは、分からないことを自覚しているからでもある。謎が多いのにはさまざまな理由があるが、それでもこれまでは、ある程度の時間と距離を置いてみれば、それなりに分かった心算になれることもあった。
 しかし、最近はそういかなくなった。どこまでいっても分からないことは分からないし、そういうことがますます多くなった。そこでこれからは、分からないことは分からないままで中国を眺めることにするしるしに「新・管見中国」に看板を変えさせていただく。

海へ!海へ!

 分からないと言えば、習近平体制が発足したのは、3年前、2012年秋の中国共産党第18回党大会からであるが、その直前に起こった尖閣諸島を日本の野田政権が地主から買いあげる方針を決めたことに対するあの「国を挙げての反日騒ぎ」は何だったのだろう。
 当時の中国の表向きの言い分は、そもそも国交回復の際に周・田中首脳会談で、この問題は棚上げにすると合意したのに、一方的に国有化するとはけしからんということであったが、中国自身、1992年に領土領海法を定めて「釣魚島」を領土に組み入れたのだから、別に日本の国内手続きで私有地を国有地に変えたにしても、両国関係におけるこの問題の性格が変わるものではなかった。
 しかも周知の通り、あの国有化は当時の石原東京都知事が、地主から東京都が買いあげてあの島に船溜まりのような施設をつくるなどそれこそ具体的な現状変更を行おうとしたのを、未然に阻止するための措置であったし、その間の事情は外交当局を通じてきちんと説明したのだから、中国側としては歓迎はしないまでも、目くじらを立てる理由はなかったはずである。
 それがあの騒ぎである。騒ぎがあそこまで大きくなったのには、中国社会が抱えるさまざまな矛盾が噴き出たという解説が行われ、それには一理あるにしても、それを許したのは中国政府の対日態度であったことは間違いない。
 それで結果はどうなったか。あれ以来、中国は「海警」などの公船を3日に1度くらいの頻度であの海域に派遣して、待ち受ける日本の巡視船と洋上で怒鳴り合いを演じるという、お互い無駄なエネルギーの消耗合戦が続いている。
 それだけではない。米国はかねて日中間の領土紛争には「中立の立場」だとしながらも、安保条約がある以上、現に日本の統治下にある尖閣諸島がもし攻撃された場合には日本への武力攻撃としてそれを「守る」という2段構えの方針を明らかにしてきたが、あの騒ぎ以来、後段が国際的により鮮明に印象付けられた。藪蛇とはこのことであろう。
 領土では「日中間で中立」という米の立場は、「日中間に領土問題は存在しない」とする日本政府を中国の望む交渉の場へ引き出すための有効な手がかりになるはずであった。日本が尖閣諸島の領有権を主張する直接の根拠は、サンフランシスコ講和条約以後も米の統治下にあった南西諸島の中に尖閣諸島も含まれていて、それが沖縄返還協定でそっくり日本に返還されたことなのだから、ある意味で当事者の米に中国が働きかけて日本を交渉のテーブルに着かせることも考えられる着地点の1つであった。ところが3年前のあの騒ぎで、そんな筋立ては当面考えられなくなってしまった。
 しかし、分からないのはさらにその先である。あの騒ぎの後、あれだけ日本に圧力をかけても、日本を翻意させるどころか、乱暴な中国という印象を国際的に広めてしまったことを中国も反省しているという話がしばしば伝えられた。勿論、公式に確認されるようなことではないが、結果をみればありそうなことであった。
 だとすれば、こと海の権益に関しては強行突破では必ずしもうまくいかない。薮を突いて蛇を出してしまうことになりかねない。慎重にやるにしくはない、くらいのコンセンサスは指導部内にできなければおかしいではないか。
 ところがその後の経過を見ると、中国のしたことはまるで違う。尖閣の後、今度は舞台を南シナ海に移して、ベトナム、フィリピンとの、摩擦を増大させた。フィリピンに対しては中国人観光客の渡航制限、バナナの輸入制限などの圧力を加えて、領土争いをねじ伏せようとした。しかし、やはりことは思い通りに運ばず、フィリピンを米や日本の側に追いやるだけに終わった。
ベトナムとも西沙群島(パラセル諸島)をめぐる昔からの争いをエスカレート、両方の漁船がぶつかる状況を拡大し、さらに昨14年5月には同海域に大型のオイルリグ(海底油田掘削装置)を持ちこんで、多数の船に護衛させて油田探査を強行した。これにはベトナム世論が沸騰、在ベトナム中国工場で両国人の衝突が起こり、多数のけが人が出るまでになった。すると中国側は7月16日、「昨日までで探査は終わった」と言って、リグを引き撤収し、その後、この動きは止まっている。成果があったのかどうか知る由もないが、すくなくとも予期した結果がえられたとは思えない。
その次が今の焦点、埋め立てによる南シナ海における人工島建設の加速だ。無人島に無理やり人を住まわせたり、滑走路を作ったりして、既成事実で領有権を認めさせようというつもりらしいが、これは周辺国だけでなく米をも刺激して、「新しい大国関係」ならぬ「新しい大国対立」を招いてしまった。ここ20年ほどの中国経済の拡大はアセアン諸国経済の中国依存度を高め、東南アジアは中国の裏庭とも見える状況が生まれつつあったが、埋め立てのおかげで、東南アジア諸国内に親中、反中、中立といった色分けをもたらし、中国にとって必ずしも居心地のいい場所ではなくなってしまった。
こう見てくると、尖閣騒動以来のこの3年というもの、中国はやみくもに海へ、海へとエネルギーを注いで、なにを得たのであろうか。人工島がその成果と言えば言えるかもしれないが、その引き換えに「力づくで現状を変えようとする横紙破り」というレッテルを貼られたのでは、差し引き勘定としてはプラスとは言えまい。
それでも今のところ、この路線を考え直す兆候は見られない。私は、中国はなにかにとり憑かれて、焦っているのではないか?という気がしてならない。それが何なのか、まだうまく言えない。あの国を見ながら考えていくつもりだ。
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